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【特別企画】コミック「孤独のグルメ」の主人公がアクションフィギュア“figma”に!

立ち姿の似合う、日常的な仕草が楽しい「figma井之頭五郎」。企画者インタビュー

立ち姿の似合う、日常的な仕草が楽しい「figma井之頭五郎」。企画者インタビュー

マックスファクトリー企画部の金子二等兵氏は、figma立ち上げのスタッフ
同じく企画部のI.G.坂井氏は入社2年目の新人だという
坂井氏こだわりの両手をポケットに入れたポーズ
2人の話からは、キャラクター表現へのこだわりが伝わってくる

――最初にお2人のこれまでのお仕事を教えてください。

金子氏: 主にfigmaやスケールフィギュアを手がけています。月に5~6の企画を同時進行しているので、かなり多くの作品に携わらせて頂いております。figmaは6年の歴史があり、現在200体以上のラインナップがありますが、初期の立ち上げから関わっています。

 印象に残る最近の仕事と言えば……「figma フライボーイゾンビ」ですね。実写ベースなので造形は大変なところがありました。これはいろいろな意味で自信作ですね(笑)。

坂井氏: 私は、去年入社の、2年目なんですよ。「figma井之頭五郎」は1から関わった作品です。あとは「ガールズ&パンツァー」のキャラクターなどを手がけています。元々ミリタリーモデルが好きなのもあって、「ガールズ&パンツァー」の方もかなり入れ込みました。

――「figma井之頭五郎」はどういった経緯でスタートしたのでしょうか。

金子氏: 井之頭五郎をフィギュア化して欲しい、という声はユーザーさんからも声は上がっていたんです。去年はfigma5周年、マックスファクトリー25周年の節目に当たり、イベントを開催したとき、figmaのモチーフのアンケートを取って……上位というわけではなかったのですが、妙に会場が盛り上がったのでいけるのかなと(笑)。

坂井氏: 扶桑社さんはこれまであまりお仕事の関わりはなかったのですが、とにかく企画を問い合わせてみよう、とやったところ、とんとん拍子で話が進み実現しました。

 企画側の想いとしては「一緒に連れて行って欲しいフィギュア」というものがあったんです。どこかに出かけるときに、figmaと一緒に出かけて、そこで写真を撮る。そういう商品が出せないかという想いがあって、「figma井之頭五郎」は例えば原作やテレビドラマに出てきたお店に行くときに、一緒に連れて行ってもらえるかなと。

 そして、「figmaのファン層を広げたい」というところがありました。figmaは美少女キャラクター中心ですが、それ以外のモチーフを取り上げることで、より多くのファンに見てもらいたいと思いました。

金子氏: figmaは時々、意図的に美少女以外をモチーフにしています。「ゾンビ」や寺沢武一氏の「コブラ」などもそうです。ある程度サイズで統一感を持たせているので、お客さんは原作の世界観を超えて色々からめて遊んでもらいたい。美少女ばかりでなく、幅を持たせることで、絡める楽しさが膨らむのじゃないかと思います。

――「figma井之頭五郎」の発表は2月のワンダーフェスティバルでしたが、ユーザーの反応はどうでしたか。

坂井氏: いつもと違うところから反響があったな、という感触です。HPに載せたワンフェスの写真でも他の数あるアニメ・コミックキャラクターを抑えて、1番人気でした。幅広い人が反応してくれたなと。テレビドラマ化で人気が高まったところもあると思います。

――「figma井之頭五郎」の企画を詰めていく中で、色々アイディアの取捨選択を行なったと思いますが、気をつけた部分、こだわった部分はどこでしょうか。

坂井氏: 企画の立ち上げは「キャラクターが好きだから」なのですが、好きだからこそあれもこれも入れたくなってしまう。そうなるとコストに見合わなくなり、お客さんが手に取りにくいものになってしまう。そうならないためのバランスを常に求められます。今回に関しては、おかずはもっとつけたかったんですが、ご飯、味噌汁、おかずを1品ずつに抑えている所などもそうです。

金子氏: 顔の種類は特に悩みますね。顔は最も手間のかかるパーツなので、だいたい2~3種類に決めています。他のパーツと違い、塗装がコンマ数mmずれただけで変になってしまうため、1番神経を使います。質とコストを考えると、増やせない。どの顔を選ぶかというのは、企画が本当に悩むところです。特徴的でも他のシチュエーションに使えない顔は、外してしまうことが多い。「ほおばり顔」は技をかけている顔にも似合う。汎用性も考えて選択します。

坂井氏: 顔を選ぶ話をすると、大概原作への想いの話になって、最後は何を話していたかわからなくなってしまいますね(笑)。先輩方から言われたのは「遊び方を考えながら作れ」ということでした。幅広い遊び方、他のキャラクターにも使えるアイテム、なども考え「遊ぶ」という事を常に考えています。

――figmaは他のアクションフィギュアや、超合金などのおもちゃ以上に、ほんのちょっと手の角度を変えてみたり、ポーズをとらせるときに細部にこだわりたくなる気がするんです、ちょっとずつ、ちょっとずつ手足や首の角度を変えて試したくなる。

金子氏: 他のフィギュアは、ヒーローだったり、ロボットだったり、派手なアクションやワザのポーズだったりすると思うんですが、figmaのモチーフって日常を感じさせるキャラクターも多いので、逆にあまり決まりきったポーズがないので、ユーザーさんが遊ぶときのイメージが固まりきってないのかもしれませんね。だからこそ細部までこだわると色々な表情が出せる。逆に日常風景を追求してみるというのは、figmaならではの楽しさと言えるかもしれません。

 figmaは私達と、原型師の浅井真紀氏ではじめたアクションフィギュアです。浅井さんはキャラクターを動かす可動の設計に、本当に長けている。「この衣装ならこういう可動、服のしわの表現はこう」、というように、単純に手足を曲げるだけだとマッチ棒のようになってしまうところを、曲線を使った自然な関節表現をしている。関節のどこかをオフセット(埋め合わせる)できるようにすることでより深く曲げられる、といったところは、開発当初の1~2年で本当に突き詰めていきました。

 「figma井之頭五郎」のズボンや服のノウハウは、学生服などの技術を活かしています。もちろん、女性も服装や体型に合わせた可動の設計も何パターンも作っています。2年ほどで下地をきちんと作ったので、現在も様々なキャラクターに挑戦できています。こちらの工房内で今までのノウハウを活かして作れるようになりましたが、それでも難しいモチーフの時は、浅井さんに手伝ってもらうということもあります。

 初期は本当に浅井さんに頼りきりでした。ノウハウも試行錯誤しながらの蓄積だったので、制作のスピードも速くはなかったのですが、今は月に3~5体を供給できるようになりました。

――現在は企画スタートから、商品販売まで何カ月くらいでしょうか。

金子氏: 平均すれば1年くらいです。ゾンビは2年くらい、造形以外の所でも掛かってしまいましたが(笑)。「figma井之頭五郎」は版元さんのチェックがスムーズで、早かったです。

――「figma井之頭五郎」は、井之頭五郎のアクションフィギュアとして、気をつけた部分はありますか? “井之頭五郎らしいアクション”というのはどんなものだったでしょうか?

坂井氏: まず、原型師側で、スーツのキャラクターなので、スーツのラインを崩さない造形にするというのが第1でした。アクションポーズでも、スーツのシルエットを崩さないようにしようというのは考えたとのことです。

坂井氏: 「figmaゴルゴ13」はスーツなんですが上着を閉めているので間接を仕込みやすい。井之頭五郎は上着のボタンを閉じてないので、間接を入れるのに少し苦労しましたね。井之頭五郎はスーツのキャラクターであり、リアルタッチというわけでもないので、これまでのノウハウを活かしやすかったです。ただ、ぴっちりした服や、フリルでごまかせる、といったキャラクターに比べ、シルエットを保つところは難しいですね。

坂井氏: 悩んだ点は“色”です。原作は白黒で、カラーなのは単行本の表紙くらいしかない。背広の色、肌の色はどうしようかというのは議論しました。

 また、「井之頭五郎らしさ」では“両手をポケットに突っ込んで立つ”というのは個人的にこだわったところです。他にも片手をポケットに突っ込んでたばこを吸うとか、本当に何気ない、大人が普通にする姿を、きちんと再現したかったんです。

金子氏: 「たたずんでいて絵になるfigma」って、確かに今まであんまりないかもしれないね。後は、同スケールの食べ物と絡めてもらいたいですね。figmaでも色々出してますが、実は食べ物は彩色が多いから、本音を言えばコストの面で大変なんですよ。

――金子さんは、figma立ち上げから関わられているとのことですが、キャラクターを立体化する、という仕事を続けている理由はどのようなものでしょうか。また、坂井さんはどういった経緯でこちらのお仕事を目指したのですか?

金子氏: 元々絵も好きなので、2次元を3次元にする面白さを感じています。キャラクターそのものよりも“造形”というところに魅力を感じる傾向があるかなと。やはりこの仕事は面白いですね(笑)。

坂井氏: 私も造形が好きで、ワンフェスなどに出展していたんです。モノ作りのできる仕事がやりたくて、この仕事をやっています。今は直接手を動かすわけではないのですが、作りたかったと思うものが実際に世に出るというのは、やはりとてもうれしいですし、もっと次はいいものを作りたいと思います。

――figmaで、今はできていないけど、将来的にもっとこの部分を進化させたい、という部分はありますか?

金子氏: 実は“将来できるようになればいい”と思う部分はないんです。figmaは関節部分や素材なども含めて、1つ1つの作品で様々な部分が進化し続けています。特に昨年の「figma初音ミク2.0」は、それまでの進化の象徴として販売しましたが、いきなりステップアップしたわけではないんです。

 技術の進化は、figmaの目的ではないんです。私達は、キャラクターに合った表現を模索し続け、実現させているので、技術側からのアプローチが主ではない。キャラクターがあり、表現したいものがあり、そこに最適な答えを見つけるために技術を磨いています。あえてこれからの夢を語る、という意味では、もっともっと多くの、可能ならばこの世界の全てのキャラクターをfigma化したい、というところですね。

 現在は作り手の人数も限られていて、美少女が中心ですが、ロボットや、ゾンビのようなクリーチャーなど幅広いモチーフにチャレンジしていきたいと思います。

――ユーザーへのメッセージをお願いします。

坂井氏: 「figma井之頭五郎」は今までのfigmaの形にとらわれない遊び方をして欲しいです。写真をTwitterなりでアップしてもらって、「#井之頭五郎」みたいなタグをつけてくれると探しやすいので、うれしいです。

 いろんなポーズをとったり、遊んで貰いたいですね。箱に入れておいたり、飾って貰ってもうれしいのですが、がしがし遊んで貰った方が、figmaも本望なのかなと。

金子氏: 「figmaも本望」って、初めて聞いたな(笑)。リアルな話をさせていただければ、やはり予約注文をして欲しいです。マックスファクトリーの製品は、基本的には受注販売の形で、予約をしないと店舗の発注数も少なくなって、結果としてお客様の手に届かなくなってしまう。発注していただければ、確実に手にできますので、よろしくお願いします。

坂井氏: 予約をすれば絶対「大盛りver.」も手に入ります。楽しいですので、よろしくお願いします。

【figma作品】
金子氏こだわりの「figma フライボーイゾンビ」。ラインナップの幅を広げるキャラクターだ
「figma 秋山優花里」。TVアニメ「ガールズ&パンツァー」のキャラクターで、坂井氏がミリタリー好きの想いを込めた作品
「figma ゴルゴ13」。こちらもスーツのキャラクター。背広の前は閉じている
「figma 初音ミク 2.0」。過去に販売した「figma 初音ミク」の進化モデル

(勝田哲也)