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【GTMF2013】次世代エンジン「Unreal Engine 4」の進化点をチェック
ゲームエディット機能を大幅強化した最先端ゲームエンジンの正体
(2013/7/23 21:19)
7月23日、秋葉原にて行なわれたミドルウェア業界のカンファレンス「Game Tools & Middleware Forum 2013」にて、エピック・ゲームズ・ジャパンによるセッションが行なわれ、次世代ゲームエンジンとして注目されている「Unreal Engine 4」の進化点が詳しく紹介された。
「アンリアル・エンジン 4 のご紹介 ~未来のゲーム制作を加速する最新ツールと機能~」と題されたこのセッションで解説されたのは、去る3月末のGDC 2013で公開された技術デモ「Infiltrator」を支えるエディタ機能について。ゲーム開発者にとって重要な命題となる生産性の向上に対し、大幅な機能強化が図られていることが明らかになった。
万能ビジュアルスクリプティング機能「BluePrint」
次世代機向けのゲームで活用が期待されている「Unreal Engine 4(以下“UE4”)」。まずは「Infiltrator」デモによって映像表現力に注目が集まったところだが、その表現力を生かして実際に優れたゲームが開発されるためには、相応に優れたエディタ機能が必要だ。
「UE4」は前世代のエンジンコードを全て捨て、“完全に作りなおした”とされる。それにより「CryEngine」や「Unity」といったモダンなゲームエンジンと同様、次世代ゲーム開発で求められるゲーム全体の高い生産効率を突き詰めるエンジンになっていることは間違いない。
その点でキモとなるのは「Blueprint」という新システムだ。これはゲーム中に登場する動的オブジェクトを示す“アクター”に紐付けられるスクリプト機能。ビジュアルエディットにより任意のロジックを繋ぎあわせることで、プログラマのコードを使うことなく、各オブジェクトに複雑な動作をさせることができるというものだ。
「Unreal Engine」におけるビジュアルスクリプティング機能といえば、「UE3」のカットシーン制作に活用されていた「Kismet」システムを思い出すが、大きく異るものだ。「Kismet」が各ステージに紐づくシーン全体の制御システムであったことに対して、「Blueprint」は各アクターに紐付き、ライブラリ化による再利用も可能というものになっている。
似た機能は他のモダンなゲームエンジンにも搭載されているが、「Blueprint」は編集環境が完全ビジュアル化されており、プログラマ以外にも扱うことができるほか、ゲームオブジェクトに関する多彩な制御が可能である点が強みだ。
例えば「Blueprint」で構成されたオブジェクトだけでシューティングゲームを作ることもできる。また、ステージ中に配置される各アセットを「Blueprint」でスマート化することも可能。会場のデモでは、ダンジョン内の列柱構造が「Blueprint」スクリプトによるインスタンシングで自在に数を増減し、適切な形で配列されるシーンを見ることができた。
他にも、例えば岩石や植物のようなオブジェクトを地形に合わせて多数配置するような制御が、アーティストの手によって可能となる。つまり、従来はDCCツールに頼っていたプロシージャル式のコンテンツ生成をゲーム側に持ち込む形となり、より柔軟なステージ構造を効率よく制作することも可能となるわけだ。
物理ベースのライティングを採用しエディタ機能も効率性を高める
グラフィックスの面で、「UE4」は開発中のものを含む他のモダンなゲームエンジンと同様に、物理ベースのライティングシステムを採用する。これにより表現がよりリアルになることはもちろんとして、前世代の「UE3」においてあまりにも複雑化していたシェーダーやマテリアルの管理・制御が大幅にシンプル化されることがポイントになるようだ。
これはエディター上のライブエディティング機能によく反映されていて、各オブジェクトに設定された“BaseColor(基準色)”、“Metalic(光沢感)”、“Specular(反射)”、“Roughness(ざらつき度)”といった基本的なパラメータを調整するだけで、様々な質感を表現。
また、マテリアルのレイヤー化をサポート。これにより、例えば金属の上にペンキが塗られたロボットの質感を調整する場合、ペンキの層だけ色を変えたり、金属の層をむき出しにしたりといった形で多彩な質感を出す制御がランタイムで可能だ。
映像業界でよく使われているというIES Texture機能もサポート。これは光源(電灯など)が放つ光が放射される際に、光源装置の指向性や形状により放射の模様が様々なものとなる現象を2次元テクスチャにより表現するものだ。これにより周囲の照らされ方の表現に大幅な自由度が生まれ、リアルな照光表現が可能となる。
また、意外と「UE3」で対応されていなかったGPUパーティクルにも「UE4」で対応。膨大なパーティクルの物理運動をリアルタイムにシミュレートし、表示することが可能となる。パーティクルは光源を持つことも可能で、例えば火花などのVFXが非常にリアルなものとなる。
こういった動的なVFXの制作・調整をサポートするため、エディター側で「Simulate」機能を装備。これは従来の「Play(実行)」機能とは違ってゲーム全体を実行させることなく、動的なVFXの見え方を確認できるようになるというものだ。
こういった様々な機能拡張により「UE4」は強力なライブエディティング機能を持つゲームエンジンに成長している。ちなみに業界の注目を集めた「Infiltrator」デモは20人以下の規模のチームで3カ月程度の期間で制作されたとのことで、その生産性の高さが伺い知れるというものだ。
「UE4」はEpic Games自身による新作アクションゲーム「Fortnite」(2013年内リリース予定)にて始めてユーザーにお披露目となる予定だ。この作品ではプレーヤーが砦を建設してゾンビを撃退するというサンドボックス系のシステムがフィーチャーされており、ステージ構造物のひとつひとつが「Blueprint」の機能でプロシージャルに制御されることになるのだろう。
ユーザーとしては、このように新しいゲームエンジンによって可能になる新しいゲーム体験を歓迎していきたい。国内外で幅広く活用された「UE3」の後継となるエンジンだけに、将来、多数のゲームでその威力を見ることができるようになりそうだ。