【特別企画】
「スト6」公式オフ大会「Fighters Crossover 全国大会#01」現地レポート
プロ選手も乱入する対戦台にベガ立ち勢続出。ゲーセン感が堪らなく楽しい
2025年2月18日 20:10
- 【Fighters Crossover 全国大会 #01】
- 2月16日 開催
- 会場:ASH WINDER Esports ARENA 高田馬場店
- 入場料:3,000円
格闘ゲーム「STREET FIGHTER 6(以下、スト6)」を使用したオフライン対戦会、大会などを開催するコミュニティ「Fighters Crossover」は、2024年12月より「スト6」のカプコン公認オフライン大会「Fighters Crossover 全国大会 #01」を開始。その頂点を争う決勝大会を2月16日に開催した。
「Fighters Crossover」は北は北海道、南は九州、沖縄まで全国の会場にてオフラインによる対戦会を実施している日本最大の格闘ゲームコミュニティで、主催するのはかげっちこと影澤潤一氏(以下、かげっち氏)。対戦会は定期的に開催する地域もあれば、不定期開催の地域もあるが、詳細については毎月公式サイトにて開催地のカレンダーが公開されている。
この対戦会は、入場料を払うことで会場内のPCなどを使用して「スト6」のオフライン対戦が楽しめる場となっていて、会場では様々な人たちとゲームの対戦が行なえるほか、ちょっとしたミニ大会のようなイベントも頻繁に開催。格闘ゲームを楽しむ仲間たちが集まる場として、定額で遊べるゲームセンターのような施設として運営されている。
今回の全国大会は2024年12月より全国各地で順次予選会が行なわれていた。そして各地で勝ち残った30チームに加え、2月15日にASH WINDER Esports ARENA 高田馬場店で行なわれた最終予選(LCQ)で最後の2チームを決定。こうして2月16日には予選を勝ち残った32チームの頂点を決める「Fighters Crossover 全国大会 #01」が開催される運びとなった。
前回同様、「Fighters Crossover」の全国大会は予選から決勝まで全ての対戦がオフラインで行なわれた。近年増加傾向にあるオンライン対戦とは異なり、オフラインでの対戦は相手が目の前や真横にいて、声や音が聞こえ、その姿などが目に見えるため、その場でしか味わえない緊張感や臨場感がある。こうした異なる環境でいつも通りのプレイを続けるためにはかなり強靭なメンタルが要求される。
加えて、本大会は選手3人で1つのチームを構成する3on3で、1試合先取の勝ち抜き方式である通称1先が採用されている。近年の大型大会では2本先取(BO3)の通称2先が主流となっているが、1先の場合、相手の実力以外にも、初見の相手の予測不能な行動や、相手キャラの予想外の挙動に対する読み合いなど、想定外の事態が連続すると、優勝候補のチームがあっさり負けてしまう可能性が常に存在する。
実際に「Fighters Crossover 全国大会」では、百戦錬磨の格闘プロゲーマーも多く参戦しているが、想定外の事態が発生して、あえなく撃沈してしまう例が数多く見られてきたし、観戦する側からしてもそんな番狂わせも楽しみの要素の1つと言える。
今回はそんな「Fighters Crossover 全国大会 #01」を現地で取材した様子を簡単にレポートしていく。
物販や対戦台も魅力の大会観戦!
会場のASH WINDER Esports ARENA 高田馬場店に到着すると、早速熱気溢れる対戦台の様子が確認できた。レイアウトとしては、会場最奥部に決勝大会を行なうステージがあり、会場中央には向かい合いで対戦できる「スト6」の対戦台が数多く設置されており、参加予定の選手だけでなく、一般入場の観客も対戦を楽しむことができるようになっている。加えて、壁面側には横並びで着座して戦える対戦台も複数設置されていた。
本大会では対戦せずに、観戦目的のファンも多く訪れるが、当日の会場の様子を見ていると、前回と比べて観戦勢がやや減少している代わりに対戦台の熱気が去年より凄まじい熱気を放っている印象を受けた。
また、ステージの反対側には本大会の協賛企業のうち、コントローラーなどの周辺機器を取り扱うホリ、アイ・オー・データ機器のゲーミングモニターブランド「GigaCrysta」、eスポーツ関連製品などを取り扱うGRAPHTブランドが出展し、自社製品のアピールや物販などが行なわれていた。
大会が開始する前も開始した後も対戦台の熱気は凄まじく常に満席となっており、2先で負けた相手が抜けて入れ替わる勝ち残りで対戦が行なわれていた。「Fighters Crossover」の対戦台では、直接対戦に参加するのも楽しいが、対戦の様子を眺めているだけでもめちゃくちゃ面白い。というのも全国大会ともなると集結するプレーヤーはかなりハイレベルな人ばかりなのに加えて、プロ格闘ゲーマーたちもこうしたメンバーに混ざってともに対戦に興じる様子が各所で見られるからだ。多くのプロたちも参加する「Fighters Crossover 全国大会」の対戦台ならではの光景と言える。
ふと対戦台に目をやると、「EVO Japan 2024」など大型大会の優勝経験がある強豪プレーヤーのMenaRD選手の姿も。MenaRD選手といえば、先日ウメハラ選手への果し状ともとれるXの投稿を行なっていた、最近「スト6」界隈で話題となっている人物だ。そんなプレーヤーが一般のお客さんに混じって普通に対戦台に座っているのだからついびっくりしてしまった。来場した格闘ゲームファンにとっては記念になったことだろう。
プロたちのチームですら初戦敗退するスリリングなバトルの連続!
全国大会の進行は、集結した32チームを8チームずつ、A~Dの4ブロックに分け、それぞれトーナメントにてブロックごとのトップを決めていく。その後はAブロックとBブロックの勝利チーム同士で準決勝が行なわれ、CブロックとDブロックでも同様に激突して決勝戦となる。準決勝も決勝もルールは共通の1先だ。
ブロックごとの対戦はAから順次行なわれていったが、トーナメント初戦の衝撃はCブロック、立川地区代表のチーム「てゃいなもち」が福岡代表のチーム「紺雪村(こうせつむら)」に敗退したことだ。チーム「てゃいなもち」は、JOZ所属のもっちー選手、FAV gaming所属のりゅうせい選手、広島TEAM iXA所属の稲葉選手といずれも強豪のプロ3人で編成されたチームだが、九州男児の意地を見せたチーム「紺雪村」のくろゆき選手、紺外郎選手、ナカムラ選手の3人のチームが見事に勝利を収める事となった。
また、Dブロックでは大坂代表のチーム「ゴーエイジー」が北海道代表の「北電の毒爪」に敗退したのも衝撃だ。「ゴーエイジ―」はCAG OSAKA所属のGO1選手とえいた選手、そしてIGZIST所属の小路KOG選手というトップレベルのプロ選手たちのチームという優勝候補の一角だったが、ここは「北電の毒爪」チームが北海道の意地を見せて大金星を飾る事となった。これが1先の魔力だ。
チーム「北電の毒爪」のきんぐすベガ選手、ろぜろぜ選手、なまこ選手を不勉強の筆者はあまり存じていなかったのだが、試合前になまこ選手がえいた選手に「ファンです!」と声を掛けて会話しているのを聞いていたので、そんなファンであってもプロ相手に勝利を掴む可能性がある。そんな夢のようなバトルが各所で行なわれるのが「Fighters Crossover 全国大会」なのだ。
試合は準決勝までは1度に2試合が同時に行なわれる2台体制で進行していった。そのため、会場では2試合を同時に見る事ができたが、オンライン配信では原則右側が配信台として設定されていたため、プロアマ問わず、配信台での試合の機会がなかったチームの多くが配信に出ることなく散ってしまっており、会場で観戦していた方がより多くの試合を楽しめる形となっているのは、会場ならではのアドバンテージと言える。
なお、取材後にかげっち氏から連絡があり、今年から未配信の対戦台の試合についても、録画してある物を編集して後日公開する方針になったとコメントがあった。後から見直しもできるのでこれは大変ありがたい対応だ。ファンの人たちはかげっち氏のXアカウントや「Fighters crossover」のホームページなどをチェックして楽しみに待っていてほしい。
ついに出そろった4強による大激闘、1先オフラインの栄光をつかみ取ったのは?
こうして、ブロックごとの代表が決まり、Aブロックは岩手代表となるNORTHEPTION所属のキチパ選手と、オニキ選手、JeSUライセンス所持プレーヤーのしみそ選手の3人によるチーム「しみそとノーセプ」、Bブロックは秋葉原代表の広島TEAM iXA所属・ACQUA選手、UKUSHIMA IBUSHIGIN所属のcosa選手、VARREL所属の水派選手によるチーム「韋駄天」、Cブロックは静岡代表となる、Beast所属のふ~ど選手、エヴァ:e所属のひかる選手、Burning Core所属の立川選手のチーム「ふーど一派」、Dブロックは郡山代表のSETOUCHI SPARKS所属・2BASSA選手、こばやん、Answer.M.Gameing所属のkobayan、ヤナイ、FUKUSHIMA IBUSHIGIN所属のYanaiの3人によるチーム「つばこばやな」となった。
試合が進む毎に対戦台は縮小されていき、準決勝では全ての対戦台が撤去。エリア全てが観客席となり、ステージ上でも1試合ずつが行なわれる運びとなった。
準決勝の第1試合は「しみそとノーセプ」と「韋駄天」の一戦。先鋒は「しみそとノーセプ」はしみそ選手のラシードが登場し、「韋駄天」先鋒に出たACQUA選手の舞を蹴散らして先制。続く中堅戦、「韋駄天」は水派選手のキャミィが登場するも、ここも連勝で「しみそとノーセプ」が王手を掛ける展開に。大将のcosa選手のケンが登場するも、ギリギリの攻め合いを制するのはしみそ選手のラシードで、いよいよ勝利まであと1歩のところから、cosa選手のケンが逆転勝利で絶体絶命のピンチを切り抜ける。
続く「しみそとノーセプ」の中堅はオニキ選手のベガが登場するも、cosa選手のケンの勢いが勝り、ここを連勝で撃破で2-2と追い上げを見せる。大将にはキチパ選手のザンギエフ立ちはだかるも、cosa選手のケンの勢いが止まらない。逆3タテの3連勝を見事に決めて「韋駄天」の勝利となり、決勝進出を決めた。
準決勝第2試合は「ふーど一派」と「つばこばやな」の一戦。試合前のコメントにて「ふーど一派」のリーダーのふ~ど選手は「今日は1回も試合をしてないが、2人が育っているのを後ろで見られたのが嬉しい。このまま準決勝も頑張ってほしい」とコメント。対する「つばこばやな」のリーダー、2BASSA選手は「大番狂わせを起こして勝利したい」と返すなど、やる気十分の姿勢を見せて会場を盛り上げる。
先鋒は「ふーど一派」が立川選手のM(モダン)舞、「つばこばやな」はヤナイのベガが登場し、ここはヤナイが勝利して勢いを見せる。続く「ふーど一派」の中堅はここまで試合のなかったふ~ど選手がエドで登場。先ほどのコメントをあっさりと覆す展開だが、ここをしっかり勝ち切りポイントを取り返す。
「つばこばやな」の中堅には2BASSA選手の舞が登場するも、冷静な立ち回りを見せて連勝。「つばこばやな」大将はこばやん選手のザンギエフが登場し、ギリギリまで追い詰めるも、最後のクリティカルアーツをジャンプでかわされてしまい、そのままふ~ど選手のエドが3タテを決めて見事に勝利して決勝に駒を進めた。
こうして、決勝戦は「韋駄天」と「ふーど一派」の頂上決戦となった。
試合前の挨拶にて、「韋駄天」のリーダーであるACQUA選手は「チームメイトの活躍のおかげでここまで来られたので、決勝は頑張りたい」とした。cosa選手はツボ資格の試験を控えているとのことで、コメントでも「人間には361のツボがあり、今はそれを覚えている最中です。頑張ります」とコメントし、会場を不思議な空気にさせた。水派選手は「チームメイトのみんなでここまで勝ち上がって来られたので、このまま優勝したい」と素直なコメントを残した。
「ふーど一派」のリーダー、ふ~ど選手は「先鋒立川、中堅ヒカル、大将ふ~どでお願いします」とまるでSFL(ストリートファイターリーグ)のオーダー発表のようなコメントで会場の笑いを誘う。ヒカル選手はただ一言、「優勝します」のみの潔さ。立川選手は「ここで勝って王の指くらいになれるように頑張ります」とふざける余裕をみせた。
最後となる「韋駄天」と「ふーど一派」の決勝戦はさらに大激闘となった。先鋒は「韋駄天」が水派選手のキャミィ、「ふーど一派」は立川選手のM舞が登場するも、水派選手がキレッキレの動きがで勝利。続く「ふーど一派」の中堅にはふ~ど選手のエドが登場するも、水派選手のキャミィを止めきれず、水派選手が連勝して追い詰める。大将戦ではひかる選手のA.K.I.水派選手を止めにかかるが、その勢いは止められず、なんと3連勝で勝負は決する事に。優勝はACQUA選手、cosa選手、水派選手のチーム「韋駄天」となった。
勝利者インタビューでは、ACQUA選手がcosa選手と水派選手を誘って参加した経緯を紹介。秋葉原会場は2枠用意されていたので、2回予選を行なったが、その1回目では負けてしまい、悔しかったので3人ともきっちり練習して2度目の予選に挑んだという裏話を語ってくれた。水派選手は、自分が危ない時はチームメイトが助けてくれて、逆に自分がチームに貢献できた場面もあって、楽しい1日になったとした。cosa選手も2人と同じ気持ちで、最初は気軽に挑んだが、やはり勝てなくて、過去の予選でも勝てずに苦しんだので、今回勝ててよかったが、ツボの記憶が全部飛んでしまったので1週間後の試験に備えてまた覚え直しますとして会場を笑わせた。
今回「韋駄天」の3人には個別で、オフラインの1先というプロシーンではあまり見られない形式について、事前準備や心掛けなどについて尋ねてみたが、ACQUA選手と水派選手はどちらも今まで通りの練習の積み重ねを信じて挑んだと語ってくれた。また、1先を意識した動きをあれこれ工夫していたのはcosa選手のみで、相手の動きをよく見て、慎重に対処するようにしていたとコメントしてくれた。
2月5日に実装したばかりの新キャラクター、不知火舞を使って大会に臨んだACQUA選手は、舞について「まだまだやり込みが足りていなかったので、負けてしまう場面も多かったけど、それでも優勝できたということは、舞を選んだからこそチームが優勝できたのかもしれないし、今まで使っていたブランカを選んでいたら優勝できなかったかもしれない。つまり舞チョイスの勝利ってことで!」と笑顔を見せてくれた。
また、水派選手は今まではこういった対戦会などにはあまり来た事がなかったとしており、実際に来てみるとすごく楽しかったと対戦会の魅力に目覚めた様子だった。
ゲームにおけるオフラインコミュニティの重要性
試合終了後は実況解説のメンバーたちや主催のかげっち氏たちの挨拶で配信を一旦終了。配信終了後には、これも去年と同様の会場限定の恒例イベントとして、事前に告知されていたプレゼント抽選会が行なわれた。毎年、やたらと豪華な景品が登場し、それが抽選番号やかげっち氏とのジャンケン大会でゲットできてしまうという、大盤振る舞いのイベントとなっており、こちらも盛り上がりを見せていた。
会場でかげっち氏に2度目の開催について話を聞いてみると「去年実施した時の反省点を改善してさらに洗練された大会にできたと思う。来年以降もできることならやりたいし、その時にはさらに多くの人たちが楽しめる大会にしていきたい」と語ってくれた。
前回に引き続き行なわれた「Fighters Crossover 全国大会 #01」。協賛として各メーカーからの協力や、商品提供などは行なわれているが、主催はあくまでもかげっち氏本人による“趣味の公式大会”という点は前年と同様だ。しかし、オフラインで「スト6」を楽しみたいという観客の需要は確実に増えていると実感できる盛り上がりとなった。
今回も、会場で撤収が終わるまで現地にて取材していたが、出場選手やファンだけでなくスタッフたちも笑顔で会場でのオフラインイベントの雰囲気を楽しんでいる印象を受けた。従来の大会とは異なり、選手たちですら、対戦台で観客たちとともに対戦を楽しむその距離感は、対戦会ならではの魅力の1つと言える。
「スト6」を日々オンラインで遊んでいるプレーヤーも観戦ファンもみんなで楽しめる「Fighters Crossover 全国大会」。来年に#02が行なわれるかは現段階では未定だが、興味がある人は是非来場してみてはいかがだろうか。
また、「Fighters Crossover」の対戦会は常時全国各地のどこかで行なわれているので、こちらもオフライン対戦の雰囲気を味わってみたい人は是非足を運んでみてほしい。
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