SCEJ、「The Last of Us」と「BEYOND: Two Souls」のプレミアムセッションを開催

目指されたテーマ、ゲームプレイシーンなどをプレゼンテーション


9月24日 開催



SCEJファーストパーティパブリッシング部の西島卓氏

 株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEJ)は9月24日、メディア限定のプレミアムセッションをソニー本社の特別会場にて開催した。

 今回のプレミアムセッションで取り上げられたタイトルは、プレイステーション 3専用となる「The Last of Us」と「BEYOND: Two Souls」の2本。いずれも2013年発売予定とされており、来年の注目作となること間違いなしの大作だ。今回説明された両作品の概要はE3 2012でのプレゼンレポートでも紹介しているので、参考にしていただきたい。

 なお会場では、SCEJファーストパーティパブリッシング部の西島卓氏より挨拶があった。西島氏は「今回はアメリカとヨーロッパから、同じ大作ながら違うアプローチのタイトルが2本揃った。今年、新たにファーストパブリッシング部が立ち上がり、『GRAVITY DAZE』、『TOKYO JUNGLE』とお陰様で立て続けにヒットを飛ばしている。ヒットするタイトルというのは、いずれも作り手の思いが強いという共通点があり、その思いを届けていくことが大事だと感じている。今回のような形式で、来年以降も新しい作品を届けていきたい」と話した。



■ 愛、忠誠、そして犠牲をテーマとしたサバイバルアクション「The Last of Us」

Naughty Dog Community Strategst(Promotion/Publicity)のアーニー・メイヤー氏
サバイバルの過酷さを描写するため、残酷なシーンも容赦なく細かく描かれている
道中、2人は様々な生存者に出会うこともあるという

 親子ほど年の離れた2人の男女が、荒廃した都市部を生き抜いていくというサバイバルアクションの「The Last of Us」。その肌がひりつく様な緊迫感溢れる戦闘シーンでE3 2012に鮮烈なデビューを果たして以来、2013年の発売が待たれる期待の大作だ。

 今回説明を行なったのは、開発元の米Naughty Dog Community Strategst(Promotion/Publicity)のアーニー・メイヤー氏。「アンチャーテッド」シリーズに代表されるヒット作でも知られるNaughty Dogは、新しいIPとなる「The Last of Us」ではNaughty Dogらしさを前面に出したものを目指したという。

 Naughty Dogらしさとは、キャラクター主導でリアルタイムに展開する物語、バラエティに富んだステージ環境や戦闘シーン、謎解き、ハードの性能を押し上げるほどの世界トップレベルのアートディレクション、そして「プレイする映画」と呼ばれる映画のようなゲーム体験のこと。

 今回の新しいチャレンジは、上記の“らしさ”を「サバイバルアクション」というジャンルで実現することにある。そこで「サバイバルの意味とは何だろうか?」ということを探りながら、フィクションだからこそリアリティにこだわることで、キャラクターの心理描写と一緒に緊張感を味わえるようなものになっているという。

 「The Last of Us」の物語は、人間に寄生する冬虫夏草の1種が爆発的に繁殖してから20年経ったという世界の中で、40代の男性ジョエルと、14歳の少女エリーが協力しながらサバイバルをしていくというもの。物資は足りず、1撃の銃弾や1発のパンチでさえ無駄にはできない状況がひたすら続いている。サバイバルでは生き抜くために時に人を殺めることも避けては通れないが、プレーヤーに2人の過酷な状況を感じてもらうため、どんなに残酷なシーンでもこだわって描いているという。

 また最も力を入れたというAIも本作には欠かせない。敵のAIはジョエルの持っている武器や弾薬の数、ダメージで行動が変わるだけでなく、仲間との連携なども行なって1回の戦闘でさえ一筋縄ではいかない。そのため実にリアリティがあり、緊迫感溢れるシーンが生み出される。この高度なAIはエリーにも搭載されており、探索によって発見したものや行動によって2人の関係性にも影響を与える、というのは既報でもお伝えした通りだ。

 本作では、荒廃した都市の中で生き生きと育っている植物だったり、2人の残酷な行動の一方で親子愛にも似た絆が育まれるなど、生と死を対比させる様々な状況が描かれている。テーマは愛と忠誠、そして犠牲。戦闘シーンの目新しさだけではなく、過酷な状況下で引き起こされる人間心理の描写まで踏み込んだ大作であることを改めて感じさせられた。

 なお日本語ローカライズについては、フルボイスで対応するという。「驚くような人を声優陣に起用する予定」だそうなので、期待して続報を待ちたい。


【スクリーンショット】
エリーは、時には頼りになる相棒になる。パンデミック以前を知るジョエル、パンデミック後に生まれてきたエリーという対比も面白い
2人は様々なところを訪れ、その冒険の中で絆を深めていく
2人が出会うもの、発見したものは、そのまま2人の関係へと影響してくる。なお影響を受けた映画は「ノーカントリー」で、他にも映画「トゥモロー・ワールド」や「ウォーキング・デッド」のコミック版などの人類滅亡モノ、ポリオウイルスの流行を描いた著作なども参考にしているという

【ゲームプレイシーン】
エリーを持ち上げて高い場所へと移動させることができる生存者と遭遇すると一気に緊張感が高まる。画像では落ちている瓶を投げて敵の気を引いている
死と隣り合わせでも、物資を調達するために探索は必要となる前方の敵に気を取られていると後ろから突然襲われることもある
最後は逃げる丸腰の敵を追い詰め、火炎瓶と共に襲いかかってきたところを撃ち抜いた


■ オスカー女優が演じる少女と霊の物語「BEYOND: Two Souls」

Quantic Dream共同経営者兼エグゼクティブ・プロデューサーのギョーム・ドゥ・フォンドミエル氏

 「BEYOND: Two Souls」のセッションで登壇したのは、仏Quantic Dream共同経営者兼エグゼクティブ・プロデューサーのギョーム・ドゥ・フォンドミエル氏。「BEYOND: Two Souls」で目指しているのは、新しいゲームエンジンによるアニメーションの向上と、それによる新しいゲームプレイを「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」とは違った形で提供することだという。

 本作は、少女ジョディ・ホームズと、彼女にしか認識できない存在「エイデン」の15年間が描かれる物語だ。ジョディの8歳から23歳(前回15歳から23歳と紹介していたが、これは間違いで、こちらが正しい)をゲームプレイを通してなぞることで、ジョディとエイデンの間に起こる幸せや困難を様々に経験し、彼女らの感情を理解しながらゲームを進めることになる。


【登場人物】
こちらは2枚ともジョディ・ホームズ。右の画像では髪が剃り上げられ、印象が全く違う。何があったのだろうか公開されているトレーラーでジョディに優しく話しかけていた保安官ジョディをしつこく追っていたSWAT隊員長

キーアート
他人とは違う力を持つことで警官や特殊部隊に追われる身となってしまうジョディ。しかし、エイデンの力があればそれを跳ね返せる

 ジョディとエイデンを交互に操っていくというゲームプレイは既報にもある通りだが、今回は実際にフォンドミエル氏がプレイしてみせることで、具体的な操作方法がわかってきた。

 霊的存在であるエイデン・パートでは、人の見えないところから物質を吹き飛ばしたり人を操ったりして、世界に介入できる。操作はコントローラーのジャイロセンサーとアナログスティックを使用するようで、空中を浮遊する感じをコントローラーでも体験できるようだ。そのパワーは人を絞め殺したり車を吹き飛ばすこともできるくらいなので、身体能力的には普通の少女のジョディをカバーするには十分すぎる存在だ。

 一方のジョディは、追ってくる警官と戦うような勇敢な姿も見せるが、何分普通の人間なので、電車の揺れで上手く歩けなかったり、流れの激しい川を渡る際はゆっくり進まなくてはならなかったりと、プレーヤーがいくら一生懸命スティックを倒したりボタンを連打してもなかなか前に進んでくれないという、もどかしい気持ちにさせられることもある。こういった人物の心理とプレーヤーの心理を上手く重ね合わせる場面は、「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」からしっかりと受け継がれている所だ。

 今回プレイされたのは警官がジョディを追ってくるという前回のプレゼンと同じ場面だったが、最初から最後まで全て実際にプレイしていることがわかった。映像が綺麗なのと、カメラワークなどの演出があまりにダイナミックかつスムーズだったため前回は気付かなかったのだが、例えば、先のわからない森の中を逃げながら走るというシーンでも、コントローラーは常に触ってジョディを操作し続けなくてはならない。警官に捕まれば捕まった状態の物語が進行してしまうため、ジョディを救おうと思ったら、本気で逃げている気持ちにならないといけないという緊張感が生まれている。

 なおジョディを演じているのは映画「JUNO/ジュノ」でアカデミー主演女優賞を獲得したエレン・ペイジさんで、モーションキャプチャー用のマーカーを全身に付けながら4週間毎日撮影に臨んだという。登場人物は全てプロの俳優の演技によるモーションキャプチャーを使用しており、身体の動きから表情の変化までまさに映画級のこだわりとなっている。フォンドミエル氏いわく、「このレベルほどモーションキャプチャーが使われているものはない」そうだ。

 日本語ローカライズはフルボイスに対応しており、今回のゲームプレイもフルボイスの日本語モデルが使用されていた。なおジョディの声は、映画「インセプション」でもエレン・ペイジさんの吹き替えを担当している白石涼子さんが演じている。

 これまでに公開されているのは比較的アクションの激しいシーンが多いが、実際にはもっと感情の機微を表現したようなシーンも重要になってくるという。プロの役者による全身を使った演技が反映されているということで、会話劇や主人公たちのストーリーまで、全編に渡って濃厚さを感じさせる作品になりそうだ。


【ゲームプレイシーン】
エイデンは空中をふよふよと浮かんでいる。黄色いエフェクトが表示されたところには介入できる
ペットボトルを吹っ飛ばしてジョディを起こすイタズラ。このあと怒られる
映画のようなカメラワークを使ったシーンでも、操作入力をしなくてはならない。間にQTEも挟まれ、ジョディに思いっきり感情移入しながらプレイすることとなる
森のシーンでは逃げながら、犬と戦う場面も。バイクの近くにいる警官をエイデンによって操ることでバイクを奪う
バイクの操縦はコントローラーを傾けてプレイバリケードを作った警官隊に突っ込むジョディ。激しい銃撃もエイデンに守られているのでOK
エイデンパートでは、狙撃班を操って同士討ちさせたり、ガソリンスタンドでガソリンをバラまいた後、近くのネオン看板をショートさせて引火させるという頭脳プレーも肝になるようだ

【モーションキャプチャー】
本作にはエレン・ペイジさんをはじめとしたプロの演技によるモーションキャプチャーが使われている。分岐があるためセリフ量も膨大にある上、セットも衣装もないスタジオの中、想像力のみで演技している。顔に付けられたマーカーの数も半端ではない
こちらは実際の演技とゲーム内のシーンを比べたもの

「The Last of Us」:
(c)Sony Computer Entertainment America LLC. Created and developed by Naughty Dog, Inc

「BEYOND: Two Souls」:
(c)Sony Computer Entertainment Europe. Developed by Quantic Dream.

(2012年 9月 25日)

[Reported by 安田俊亮]