CCP Games、「EVE ONLINE」連動FPS「DUST 514」を出展

2タイトル間の連動要素なども明らかに。日本語版クローズドβ今冬開始予定


9月20日~9月23日 開催(20日、21日はビジネスデー)

会場:幕張メッセ1~8ホール

入場料:前売り1,000円、当日1,200円、小学生以下無料



「DUST 514」がプレイアブル出展されているSCEブース。プレイステーション3コーナーに3台の試遊機が用意されている

 SF-MMORPG「EVE ONLINE」を開発・運営するCCP Gamesは、現在開発中のプレイステーション3用FPS「DUST 514」をSCEブースにてプレイアブル出展。さらに「EVE ONLINE」と「DUST 514」が連動するユニークなゲーム仕様についての新情報を公開した。

 「DUST 514」はPlayStation Network(PSN)上での無料配信が予定されているオンラインFPSで、PC用のMMMORPGである「EVE ONLINE」の世界と密接に連動することが最大の特徴だ。

 概要としては、銀河系スケールのMMORPGである「EVE ONLINE」で惑星の争奪戦が発生すると、それが地上戦スケールのFPSである「DUST 514」の戦場となり、銃弾が飛び交う接近戦によって惑星系の新たな帰属先が決まるという流れになる。

 これまでのクロスプラットフォーム的な概念とは異なり、全く異なるスケールを持つ2つのゲームが大局と詳細を補完し合う関係だ。従って「EVE ONLINE」と「DUST 514」の間にはゲームシステム上の密接な関連性があり、その開発も2作品の間で共同歩調をとりながら進められている。

 そこで今回、弊誌取材に応えてくれたのは、CCP Gamesで「EVE ONLINE」のクリエイティブディレクターを担当するトルヴェ・フランス・オーラフソン氏と、「DUST 514」のゲームデザインを担当するイヴァン・エミルソン氏。「EVE ONLINE」および「DUST 514」の現状をはじめ、これまではおぼろげにしか知られていなかった2タイトル間の具体的な連携要素についても新たな情報を得ることができた。



■ 強力なプレーヤーコミュニティに支えられた「EVE ONLINE」の宇宙

取材に答えたエミルソン氏(左側)とオーラフソン氏(右側)
「EVE ONLINE」のプレイ画面イメージ
巨大アライアンスの動向次第で宇宙のマーケットも動く

 「DUST 514」のベースとなる「EVE ONLINE」は、月額課金制のMMORPGとしては世界でも有数の成功例であり、特にプレーヤーコミュニティの充実においては傑出したタイトルだ。2003年のサービス開始以来、継続的なアップデートでコア層を掴み、現在のユニークユーザー数はおよそ40万人を数える。

 一般のMMORPGに見られる並行世界が存在せず、すべてのプレーヤーが単一のゲームサーバーでプレイすることも特徴的だ。3月29日に始まった日本語版サービス(ネクソンが決済システムを提供)のユーザーも例外ではない。

 「日本語版サービスが始まり、日本プレーヤーのコミュニティが徐々に成長しつつあることを嬉しく思っています。CSM(※『EVE ONLINE』のプレーヤー評議会。コミュニティを代表し、ユーザーフィードバックの取りまとめ等を行なう組織)にはまだ日本人のプレーヤーの方はいませんが、いずれ投票によって選出されることを期待しています。

 また、過去2回の大規模拡張はコミュニティの協力もあり大きな成功を収め、今後につながる強力な基礎が築けたと考えています。今後も『EVE』を新鮮で奥深いものに保ち続けることを目標としています」。(オーラフソン氏)

 また、EVE宇宙において経済・外交・戦争など各種活動の中心となっているのがプレーヤーがつくる「コーポレーション」である。これは一般のMMORPGにおけるギルドに相当するが、さらに複数のコーポレーションが集まってつくる「アライアンス」もある。

 ゲーム中で最大のアライアンスは直轄コーポレーションだけでも6,000~7,000人のメンバーを抱え、関連コーポレーションも含めればゆうに1万人以上を支配下に置いている。その巨大さにおいて、EVE宇宙だけに見られるコミュニティの形だと言えるだろう。その他、複数の巨大アライアンスが存在し、ゲーム内の市場動向、領土紛争、その他の多数の面でプレーヤードリブンの世界が実現している。

 それほどプレーヤー主体の世界であるだけに、開発側としてもプレーヤーからのフィードバックを重視し、ゲームの仕様を決めていく上で助けとなるプレーヤーコミュニティと密接な交流も行なっているという。

 それだけに、つい最近起きてしまった悲劇は、CCP Gamesのスタッフらにとってもショッキングな出来事であったようだ。ゲーム内最大のアライアンスであるGoonswarmの外交部門を担当していたプレーヤー“VileRat”氏(ショーン・スミス外交官)が、9月11日、シリア・アメリカ領事館でのテロに巻き込まれ死亡した事件である。

 「VileRatさんは私たち開発者の多くとも友人でした。その彼が亡くなったことは、EVEコミュニティにとって巨大な損失であっただけでなく、私たちにとっても深い悲しみです。

 彼はゲームの中で重要な人物であったと同時に、『EVE』をさらに良くするための多くの貢献をしてくれました。彼の死後、友人たちは、所有する星系のステーション名をすべて彼の名前に変えるなど、ゲームの内外で大きな友情、兄弟愛を示しています。

 また、クリントン国務長官の秘書官による追悼スピーチでは、彼が外交官としてだけでなく、オンラインゲームの中でも多大の貢献をしたことに触れられていました。これらのことは、ゲームはひとりで楽しむだけでなく、人々と共に楽しみ、コミュニティに参加することに意義があることを示していると思います」(オーラフソン氏)

【DUST 514】


■ 「DUST 514」は「EVE」とどう繋がるのか?

実際のプレイでゲーム仕様を紹介
マーケット画面。車両はそこそこの値段だが、消耗品だ
所有している各種の乗り物は戦場のどこにでも呼び出せる
戦闘後の報酬画面。スキルポイント、ISK、戦利品の詳細が確認できる

 「DUST 514」については、実際のデモを交えて最新の状況を見ることができた。プレーヤーの基地となるのは、「EVE」と同様のステーション施設。アバターを操作してマップ画面を開くと、そこには『EVE』で見慣れた銀河マップがあった。数千の星系に、万単位の惑星が存在している。

 世界地図をはじめ、「DUST 514」には「EVE」と共通する要素が多数ある。実時間で勝手に成長するスキルシステム、艦船と同様にカスタマイズ可能な降下スーツ、ゲーム内通貨のISKや、プレーヤードリブンのマーケットシステムなどだ。

 ただし、スキルポイントについては戦闘の報酬として得ることも可能で、スキル構成も一部を除いて大幅に違う。マーケットに並べられるアイテムは「DUST 514」独自のもので占められるほか、「EVE」側の準備が整うまでアイテムの供給元はNPC経済に依存することになるようだ。なお、「EVE」の艦長が「DUST 514」の兵士に転職することは不可。あくまで別キャラクターで戦場デビューということになる。

 マーケットで装備を調達し、降下スーツにカスタマイズを施したらいよいよ戦場へ。プレーヤーは任意の惑星を選んで戦闘に参加できる。この日デモされていたのは「アンブッシュ」というゲームモード。相手チームのクローン(死亡時の再出撃時に消費されるチケットに相当)をゼロにすれば勝利という、デスマッチルールだ。最大48人の参加が可能で、マップは5km四方。それなりの広さがあるため、各種の車両を活用することが必要になる。

 「戦場が設定される方式はいくつかのタイプがあり、大別するとHighsec、Lowsec、Nullsecとなります。HighsecではNPCコーポレーションが引き起こした領土紛争に参加することができ、戦場での働きに応じてISK(ゲーム内マネー)の支払いを受けることができます。Lowsecでは『EVE』宇宙の4大帝国による領土紛争、Nullsecではプレーヤー同士の領土紛争に参加することができます。」(エミルソン氏)

 Highsecというのは、4大帝国の統治が盤石でNPC警察の目が行き届いている安全な地域のこと。Lowsecは各帝国の支配力が弱まっている地域で、Nullsecはまったくの無法地帯。それぞれにやや異なる報酬システムが用意されるようだ。

 いずれの戦場でもプレーヤーは、ラウンド内のキル数、味方へのサポート、アウトポストの占領といったチームプレイへの貢献度によってポイントを獲得する。それに応じてスキルポイントとISK、各種の戦利品を獲得できる仕組みだ。実演されたゲームセッションでは、数千のスキルポイントと十数万のISK、それから銃のパーツのような戦利品を獲得していた。新米艦長なら「DUST 514」で船代を稼ぐようなことも起きるだろう。

 それでは、「EVE」で稼いだ膨大なISKを「DUST 514」に持ち込むことはできるのだろうか? 答えはイエスだが、当初は経済規模の違いから一定の規制が導入されるそうだ。また、「EVE」リアルマネー通貨である「AUR」も「DUST 514」内に存在するが、2つのゲーム間でやりとりはできない。「DUST 514」のAURはPSNでの決済にのみ対応する。

 コーポレーションについては「EVE」と「DUST 514」で共通のものとなり、特に制限はない。2つのゲーム間でリアルタイムのテキストチャット、ボイスチャットが可能で、お互いに連絡を取り合いながらプレイできる。例えば、「DUST 514」で目標指示を行なうと、「EVE」で軌道上待機している艦船から砲撃支援を受けられる。逆に、地上からの砲撃で上空の艦船を攻撃することも可能だ。

 このような「EVE」と「DUST 514」の連動要素は開発中のものも多い。今回説明を受けた範囲では、「DUST 514」の装備や車両等を「EVE」内で生産・流通するプレーヤードリブン経済の要素が開発ロードマップに含まれている。

【DUST 514】


■ 「DUST 514」は11月~12月に日本語版クローズドβテストを実施予定

PlayStation Vita用アプリケーション

 「DUST 514」自体の開発は大詰めに差し掛かっており、11月から12月にかけて日本語対応のクローズドβテスト実施を予定している。先般実施された海外のクローズドβテストに、日本のPSNアカウントからも参加できるようになる。クライアントもキッチリ日本語化されており、基本的な部分はほぼ完成状態だ。現在はフィードバックに基づき、ゲームバランスの調整に注力しているという。

 ビジネスモデルとしてはアイテム販売による収益化を予定しており、降下スーツをはじめとする便利な装備セットなどが有料アイテムとして提供される模様である。とはいえ「ISKよりもAURが優れるようなものにはしない」(エミルソン氏)と、多くのお金を使ったプレーヤーが圧倒的に有利なゲームにはしない方針のようだ。

 なお、PlayStation Vita向けには「DUST 514」の戦闘以外の要素を操作できる無料アプリケーションが提供される。キャラクターのスキル・装備の管理や、マーケットでの売買、その他コミュニティ関連機能が利用可能となっている。コミュニティ要素の強いゲームであるだけに幅広いシーンで便利に使えそうだ。

 最後に、取材に応えてくれた両氏からのメッセージをご紹介しよう。

 「日本の『EVE』プレーヤーのみなさんには、ぜひ公式フォーラムなどで積極的に発言したり、イベントに参加することをお願いしたいと思います。なぜなら、『EVE』においてはプレーヤーの皆さんと一緒に考えながら開発を進めていくことが何よりも大事だと考えているからです」(オーラフソン氏)

 「今後予定されているβテストに参加していただき、ぜひフィードバックを送ってください。また、両タイトルのローカライズが皆さんにとって満足いただけるものになることを願っています。私たちは日本のゲームをたくさん遊びながら成長したので、日本語の音声がとてもクールに聞こえます。ゲームをリリースしたら私も日本語クライアントを使いたいと思います(笑)」(エミルソン氏)


(2012年 9月 22日)

[Reported by 佐藤カフジ]