「鉄拳6」世界大会「鉄拳6GLOBAL CHAMPIONSHIP FINAL」開催
PS3/Xbox 360ともに韓国勢に栄冠


3月8日 開催

会場:国際フォーラム


株式会社HORIをはじめとした物販ブースが会場の外に設けられていた
家庭用の大会ということで、コントローラーの持込が許可されていたのが特徴。セットアップに時間がかかる反面、自分の使い慣れたコントローラーでのプレイができたのはナイスな環境だったといえるだろう

 株式会社バンダイナムコゲームスは、3月7日に東京・国際フォーラムにて「鉄拳6」世界大会「鉄拳6GLOBAL CHAMPIONSHIP FINAL」を開催した。入場は無料。「鉄拳6」の家庭用であるプレイステーション 3、Xbox 360版の初めての世界大会ということで、事前応募+当日参加のプレーヤーによって、世界一の「鉄拳」プレーヤーの座が争われた。

  当日のスケジュールは、以下のような流れ。

・10:00 「JAPAN ROUND」開始
・12:50 映画「TEKKEN-鉄拳-」公開記念特別トークショー
・13:50 「JAPAN ROUND」決勝トーナメント
・15:00 「GLOBAL CHAMPIONSHIP FINAL」開始
・17:45 「GLOBAL CHAMPIONSHIP FINAL」決勝トーナメント

 「JAPAN ROUND」が世界大会の日本予選、「GLOBAL CHAMPIONSHIP FINAL」が日本予選を勝ち抜いた、日本代表も含めての世界大会、と言う流れだ。大会はPS3版とXbox 360版とで完全に別々のトーナメントとして行なわれ、予選には事前応募に当選したそれぞれ200名もの選手達が詰め掛けた。

 ルールは、予選から3本設定の2本先取が勝者となり、コントローラーの持ち込みが許可されていたのが家庭用の大会ならではを感じさせて興味深かった。大会会場の外でブースを出展していた株式会社HORIの「リアルアーケード Pro.3 SA」や同「EX」が多いのかと思ったが、有線接続の「鉄拳6 対応 リアルアーケードPRO.3」はもちろん、「鉄拳6コレクターズBOX」に同梱されている「ワイヤレスファイティングスティック」もちらほら見られ、「鉄拳6」に合わせてスティックコントローラーを購入したプレーヤーも多かったようだ。

 「ファイティングスティック」シリーズでは「V3」、「EX2」も見かけたし、Xbox 360トーナメントではMadcatzの「アーケード ファイト スティック トーナメント エディション for Xbox 360」を使っているプレーヤーも何度か目にすることがあった。また、もちろんスティックコントローラーだけではなく、コントロールパッドを選択するプレーヤーもちらほらいた(『GLOBAL CHAMPIONSHIP FINAL』に出場していた選手の中には、Xbox 360トーナメントでPS2コントローラーアダプタを使ってDUAL SHOCK2でプレイしている人もいた)。海外勢の中にはハンドメイドのスティックコントローラーを使っているプレーヤーもおり、なかなか興味深かった。




■ 総勢200人が詰め掛けた、「JAPAN ROUND」予選大会

「鉄拳」シリーズを統括する中谷 始氏の挨拶で大会がスタートした

 まずイベントが開会すると、開会の挨拶として、バンダイナムコゲームズの上席執行役員、中谷 始氏が登壇し、鉄拳シリーズがリリースされてから15周年になること、その歴史の中でも今回は初めてのオフィシャルな世界大会であることなどを述べ、その上で「熱い勝負を期待している」と選手達に激励の言葉を贈った。その後株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントの久夛良木 健氏、マイクロソフト株式会社の泉水 敬氏らのビデオメッセージが上映された後、早速日本予選大会が開始された。

こうすけ氏(ボブ)対ノブ氏(アーマーキング)の試合が実況されていた

 予選大会の実況は、鉄拳番長こと判藤氏と、「闘劇」での実況などでも活躍しているつのきょう氏の2人。いずれもプレーヤーにとってはお馴染みの2人組だ。

 肝心の試合の方だが、12試合が同時に行なわれるという進行形式、かつ中央モニターでディスプレイできるのは4戦まで(実況が入ると1戦のみ)であったため、あまり多くの試合は把握できなかったのだが、その中でもいくつか印象に残った選手達をピックアップしていきたい。

 まず最初にモニタに映し出された試合は、Xbox 360版Cブロックで行なわれた第1試合。こうすけ氏(ボブ)対ノブ氏(アーマーキング)の試合。

 両者ともに「鉄拳TAGトーナメント」の頃からのプレーヤーで、古参の実力派。ノブ氏は過去同シリーズの大会でも数々の実績を残しており、今大会でも優勝候補の一角と思われていた。対するこうすけ氏の方も過去多くの大会に参加しているが、いつも惜しいところで出場権を逃すという、ある種の名物プレーヤーとなっている。試合が始まってみると、終始こうすけ氏のペースで進み、結果は3-0でこうすけ氏の勝利。ノブ氏は実力を出し切らせてもらえなかった印象が強かった。

 ちなみにこうすけ氏はその後、3回戦でこちらも優勝候補の一角と目されていたジロー氏も撃破するが、4回戦でオウジクス氏に敗れ、いつの間にか姿を消していた。荒らすだけ荒らして決勝トーナメントには上がってこない辺り、いつも通りの仕事をきっちりこなしたと言えるかもしれない。

 ドラグノフ使いのノビ氏も目を引いた存在。ガードさせて有利になる中段攻撃、ロシアンフック・アサルトを軸に果敢な攻めを展開しながらも、決して防御が疎かにならない、地力の高さも伺わせ、力強い印象を受けた。

 他にもレイ使いのranca氏のトリッキーな動きや、H!DE氏が操るレイヴンの華麗なコンボなど、とても予選と片付けてしまうには惜しい内容の目白押しで、プレーヤーにとっては贅沢な予選であったと言えるだろう。

 その他ペク使いのmiya氏やジュリア使いのKEN氏なども有力候補であったが、惜しくも予選で敗退している。この辺りの番狂わせは、もはやこの手の大会では恒例となっている感すらある。ただし、この番狂わせは単なるハプニングだけではなく、キャラ別対策もしっかりしており、ここぞというところできっちり確定反撃を入れたり、出の早い連携技でもしゃがめるところできちんとしゃがんで割り込みを入れられるプレーヤーの多さ=レベルの高さの証明と言えるだろう。




■ ステージイベント 映画「TEKKEN-鉄拳-」公開記念特別トークショー

 ブロック決勝が終わった後、12:50からは映画「TEKKEN-鉄拳-」公開記念特別トークショーが行なわれ、特別ゲストとして映画「TEKKEN-鉄拳-」にて主役の風間仁を演じる、主演のジョン・フー氏と、女優の山本モナさんが登壇した。

 司会者の「鉄拳シリーズをプレイしたことがあるか?」という質問に対して、ジョン・フー氏は「鉄拳5DRをプレイしたことがあり、リアルな格闘での戦術も再現されており、すばらしいゲームだと思う」とコメント。ファンにとっては嬉しい一言だったのではないだろうか。

 その後はジョン・フー氏と山本モナさんの鉄拳対決が行なわれ、役柄と同じ風間仁を操るジョン・フー氏を山本モナさんのクリスティが2-1で下し、山本モナさんの勝利となった。

 試合後は頭を抱えて悔しがっていたジョン・フー氏であったが、お二方ともに動きの面では全くの初心者という風ではなく、プレイしたことがある、と述べていた言葉に偽りはないことを証明できたのではないだろうか。ジョン・フー氏は映画で使われていたというプロテクターを両腕にセットし、軽いアクションシーンも披露してくれた。

ジョン・フー氏はフォトセッションでもハイキックを見せてくれた「鉄拳6」を実際に購入してプレイしているという山本モナさん




■ そして迎えた「JAPAN ROUND」決勝トーナメント

 トークショーが終わると試合が再開、「JAPAN ROUND」の決勝トーナメントが行なわれた。

PS3版(左)とXbox 360版(右)の「JAPAN ROUND」の決勝トーナメント表

決勝トーナメントの途中からはステージ上でのプレイとなった

 ここでモニターに映し出されたのはH!DE氏とranca氏の試合。rance氏はトリッキーな動きをしつつも、巧みに壁との位置を調整するなど、ステージ把握能力の高いプレーヤーだと感じた。しかし試合は思い切りのいい下段攻撃を要所でうまく決めたH!DE氏の勝利。2回戦に進出した。

 2回戦で印象に残ったのは、カズヤ使いの暇人総長氏。風神拳を綺麗に決めていく、これぞ「鉄拳」の醍醐味とも言える、三島使いのお手本のようなプレイスタイルで、風神拳の精度もさることながら、相手のジャブをしゃがんでかわし、その隙にダブルアッパーを決めるなど、反応速度などの基本性能も高いことを伺わせた。

 準決勝からはそれまで鉄拳番長とともに実況をつとめていたつのきょう氏がここで降壇し、代わりに鉄拳シリーズのプロデューサー、原田氏が解説に加わった。

 世界大会の出場権は、各機種での準優勝者までとなっていたため、準決勝となる3回戦を勝ち抜くと獲得できることになる。しかし前述した暇人総長氏は、ここでフェン使いの第一人者、ユウ氏と当たってしまう。観ているプレーヤーも、この2人を2人とも世界と戦わせてあげたかったと思ったに違いないのだが、そこは非情な勝負の世界。この試合はユウ氏が制し、PS3版での世界大会出場権を獲得した。

 こうして「JAPAN ROUND」決勝まであがってきたのは、PS3版がユウ氏とゼウガル氏(ボブ)、Xbox 360版がノビ氏とにんにん氏(ヨシミツ)の4名。

 予選としてはここまでで終了であるのだが、1位と2位では賞品が異なるため、そのまま続けて決勝戦が行なわれた。

 まず行なわれたのはXbox 360版の決勝で、ノビ氏対にんにん氏。ヨシミツでここまであがって来ている時点でかなり異色の存在であるが、試合内容も相手の上段攻撃にうまく隼をあわせるなど、ノビ氏を大いに苦しめた。しかし最終的には、何度もあわや、という場面を見せながら、粘り強く逆転したノビ氏が3-2で勝利。勝負強さを見せ付ける内容であった。

 対するPS3版はユウ氏のフェンと、ゼウガル氏のボブの対決。ここではユウ氏が貫禄を見せつけ、終始ゼウガル氏を圧倒し、3タテで勝利した。

 「JAPAN ROUND」を振り返ると、日本代表者には特典としてチームエンブレムの「白虎」が贈られるということもあってか、試合をしているプレーヤーの側で、チームメンバーと思しきプレーヤー達が助言や応援をしている姿が目立った。このようなプレーヤー間の交流も格闘ゲームの醍醐味であると思うので、機会があれば、ぜひ団体戦での世界大会も見てみたいなと思わされてしまった。

 その後優勝したユウ氏とノビ氏には、「JAPAN ROUND」の優勝賞品として、賞金10万円と記念盾が、準優勝者のゼウガル氏とにんにん氏には記念盾が贈られ、大会は一旦の閉幕となった。

Xbox 360版の決勝戦はノビ氏対にんにん氏で争われたPS3版の決勝戦はゼウガル氏対ユウ氏で争われた
Xbox 360版はドラグノフ使いのノビ氏が勝利PS3版はフェン使いのユウ氏に栄冠が




■ 全世界から強豪16名が集結!! 「GLOBAL CHAMPIONSHIP FINAL」決勝トーナメント

「GLOBAL CHAMPIONSHIP FINAL」決勝トーナメントは、鵜之澤 伸バンダイナムコゲームス社長の挨拶でスタートした

 さて、いよいよ世界大会、「GLOBAL CHAMPIONSHIP FINAL」の決勝トーナメントである。

 出場選手はアジア代表のJDCR氏(ヘイハチ)、SHIN氏(アーマーキング)、NIN氏(スティーブ)、boradoldol氏(ペク)の4名、欧州代表のGeN1us氏(ポール)、STEVE88氏(スティーブ)、lucho_83cor氏(ジャック6)、Michael氏(ドラグノフ)の4名、北米代表のChetChetty氏(ポール)、aris氏(ドラグノフ)、MrNAPS氏(ブライアン)、insanelee氏(ブルース)の4名、総勢12名に、日本代表の4名を加えた16名にて行なわれた。

Xbox 360版の出場選手PS3版の出場選手
豊かなヒゲを蓄え、サンダルで登場したドラグノフ使いのaris氏。その実力も確かなものだった
GeN1us氏のポール。敗者トーナメントでaris氏と対戦し勝利したが、JDCR氏と再び当たり、敗戦となった

 試合のルールは予選と異なり、ダブルエリミネーション方式で行なわれた。簡単に説明すると、トーナメント方式ではあるものの、負けたプレーヤーは敗者側トーナメントに進出し、そこで勝ち上がって行くことでまだ優勝へのチャンスがある、というもの。決勝戦は敗者側トーナメントを勝ち上がって来たプレーヤーと、勝者側トーナメントを勝ち上がってきたプレーヤーの2名で行なわれ、ここで勝者側のプレーヤーが勝てば文句なしの優勝、敗者側のプレーヤーが勝てば、双方1敗同士で再戦ということになる。要するに2回負けたら敗退で、1回までならまだチャンスがある、という方式だ。また、ここからは先に3戦プレイし、2戦勝利で勝ち抜けというルールも追加されたのだが、序盤は伝達ミスからか、3戦勝利で試合が進行していたのは気になったところだ。

 注目はやはり過去に国内で行なわれたアーケード版の大会、「闘劇」にて、唯一海外勢として優勝経験のあるNIN氏。他、ルックス的な意味で豊かなヒゲを蓄えたaris氏なども注目された。

 個人的な注目選手は、国内ではあまり見ない、ポールで勝ち上がってきた欧州代表のGeN1us氏(ジーニアスと発音)と、ChetChetty氏。これは筆者の使用キャラクターがポールであったから、という本当に個人的な理由からである。そのうち比較的多く試合を観戦できたのはGeN1us氏の方。疾風崩撃や疾風鉄騎をキャンセルしてからの選択肢が豊富で、これを軸に、思い切りのいい竜王霹靂掌などで体力を奪っていくプレイスタイルで、力強い、いいプレーヤーだと感じた。

 NIN氏に関していうと、これはNIN氏に限った事ではなく、韓国プレーヤー全体を通じて感じたことなのだが、かつて韓国プレーヤーは風神拳など大技をうまく当てるのに特化したスタイルであり、細かい確定反撃を入れたり、フレームの優劣をうまく使って技を当てるようなことはそれほど得意でない、という印象があったのだが、今回見たプレーヤーはみなすべからく高い精度で確定反撃を決めており、フレームの使い方も上手であるように見えた。これには日韓の交流が盛んになったことや、オンライン対戦が可能になったことで、いろんな文化が混じり合い、高めあった結果なのかもしれないと感じさせられた。

 他にはlucho_83cor氏も唯一のデカキャラでの参戦ということで、個人的には注目していた選手。昔からジャック使いには試合巧者が多いが、その例に漏れず、lucho_83cor氏も試合運びのうまいプレーヤーで、追い詰められてから力を発揮するタイプだと感じられた。ジャックだからと安定コンボで妥協せず、よりダメージ効率の高いものを選択していた辺り、よく調べていて、考えられているなと感じた。

トーナメント1回戦は、8試合が同時に行なわれたため、そのうち4試合分がチョイスされてメインモニターに表示。さらに実況で1試合が大写しになった2回戦目も同様のスタイルで映像が映し出されていた。この時点で敗者トーナメントも同時進行となり、すべての試合が観覧できなかったのはレベルが高い試合が多かっただけに残念
ノビ氏はNIN氏との直接対決で敗れ、敗者トーナメントへ。その後、boradoldol氏と敗者側決勝で当たり、惜しくも敗れた
Xbox 360版側のトーナメント表PS3版側のトーナメント表



■ 決勝戦に勝ち進んだのは日本代表1名と、韓国代表の3名!

決勝トーナメントに進出した4人。左から、ユウ氏、JDCR氏、boradoldol氏、NIN氏

 そんな中、決勝まで駒を進めてきたのは、PS3版がユウ氏(勝者側)、JDCR氏(敗者側)。Xbox 360版がNIN氏(勝者側)、boradoldol氏(敗者側)の4名。

 日本代表の中では、ノビ氏のドラグノフが善戦し、勝者側トーナメントを勝ち進んでいたが、準決勝でNIN氏に1敗目を喫すると、続けて敗者側トーナメントで1度は勝っているboradoldol氏にも敗北してしまい、あえなく敗退となってしまったのは残念だった。

 この時点で4人中3人が韓国人プレーヤーという、日本勢としてはなんとも苦い経過となってしまったが、逆に1人決勝に残ったユウ氏の試合に注目が集まる展開となる。

 先に行なわれたのはXbox 360版での決勝戦、NIN氏対boradoldol氏の試合。この時点でXbox 360版での優勝は、韓国プレーヤーというのは確定していたが、そこはそれ、両者1歩も引かない熱い試合が繰り広げられた。

 まず最初の試合は先にboradoldol氏が2本先取する。そこから勢いに乗ったboradoldol氏のペクが、ペクラッシュからの連係を巧みに使ってさらにNIN氏を追い詰める。しかし試合が決まったかと思われた残り体力1ドット近い状態から、NIN氏が浮かせ技を決めると、そこから壁まで運び、壁際の攻めで一気に逆転を決める。続くラウンドもboradoldol氏のペースに見えたが、またも残りひと削りというところでNIN氏が逆転。あわや逆3タテか、と思われた場面であったが、最後は一進一退の攻防をboradoldol氏が制し、1試合目をモノにした。

 ところが続く2試合目以降は常時NIN氏のペース。2試合目、3試合目を一気に3-1、3-1で押し切ると、そのまま無敗で優勝の座についた。

 続けてPS3版の決勝戦。唯一残った日本代表のユウ氏と、韓国代表のJDCR氏の試合。ユウ氏はそれまで豪快でありながら単調にならず、終始安定した立ち回りを見せていたが、ここへ来て初めてピンチに立たされる。JDCR氏は韓国プレーヤーということもあり、風神拳の当て方が非常に上手いプレーヤー。これを警戒してか、ユウ氏はコンボ始動技の里合転腿を使用し、背向け状態からしゃがみ下がりで相手の上段攻撃をかわしつつ、リーチの短い技の空振りを狙う、という選択肢を取っていたのだが、それに対してJDCR氏はリーチの長い中段攻撃である鬼神拳を狙ってくる。本来ならばかなりリスクの低い行動であるはずのここに、大きなリスクを背負わされてしまったことで、ユウ氏は動きづらくなってしまったのではなかろうか。

 1試合目を1-3でJDCR氏に先取されると、続く2試合目は粘って取り返すものの、3試合目を3タテで取られ、まず1敗を喫してしまった。

 ここでユウ氏、JDCR氏ともに1敗同士となるので、再戦で決着をつけることになる。しかし、悪い流れを変えることはできず、そのまま1試合目を3タテで取られると、最後の試合は1、2ラウンド目共に惜しいところまで追い詰めたものの、逆転で連取されてしまい、結果的には再度の3タテでJDCR氏が勝利し、優勝の座に輝いた。

 私見になるが、韓国の三島プレーヤーというと、かつてのチャン・イクス氏のイメージが強烈過ぎて、素早いバックダッシュから相手の技の空振りに風神拳を当てる、いわゆるスカ風の上手いプレーヤーを想像してしまうのだが、JDCR氏はそのテイストを持っているのは当然としても、かなり前に出て自分から仕掛けてくるのが印象的なプレーヤーであった。特にこの試合での無双鉄槌のヒット率は異常そのもので、よもやヒット確認ができているのではないか、と疑われるほどの精度だった。

 大会終了後は表彰式が行なわれ、原田氏から優勝者へ賞品の世界一周旅行とトロフィーが、同じく準優勝者にはホームシアターキットとトロフィーが贈られた。結果として、日本勢としては準優勝が最高順位になってしまったが、初のオフィシャルな世界大会としては悪くない結果だったのではないだろうか。格闘ゲームプレーヤーにとって、ライバルがいるのは必ずしも悪いことではない。素人目から見ても、結果がどちらに転んでもおかしくない試合内容だったと思うし、それだけ実力は拮抗していたと言えるだろう。

1戦目こそ追い込まれたが、逆転勝利してから流れをつかんだNIN氏がXbox 360版のチャンピオンに輝いた
最初の対戦ではJDCR氏に勝利していたユウ氏だったが、決勝戦では2回連続で敗戦となった

 ひとつ気になった点としては、本大会は家庭用での大会ということもあり、モニタには液晶テレビが使用されていた点。筆者が見知ったアーケード版プレーヤーに声を掛けて確認したところ、やはり液晶テレビの遅延が気になるとの声はあった。アーケード版で日々切磋琢磨しているプレーヤーにとっては、違和感を拭うことはできなかったであろうし、普段とは異なる感覚でのプレイを余儀なくされたことは想像に難くない。

 ただ、それは条件として相手も同様。単純に、このルールではこの結果だった、ということで、それはそれとして受け止めて欲しいものだと思う。アーケード版での大会であれば、また違った結果になるかもしれないし、その時は招待選手として韓国プレーヤーが呼ばれる可能性も低くないだろう。その時こそ、本来の力を出し切るつもりで、雪辱を晴らしてもらいたい。

 最後に総評として、鉄拳シリーズプロデューサーの原田氏からは、「15年間大会を見続けているが、本当にいい大会だった。できれば毎年やりたい勢いだ」、「日本がもうちょっと頑張って欲しかった、また場を作ってあげたい」など、次回の企画を匂わせるような発言もあった。筆者としても、数ある格闘ゲームの中で、“世界”という舞台を意識させてくれるものは数少ないので、可能であれば、またぜひ開催していただきたいものだと願う。

 正直に言ってしまえば、本作から遠ざかって久しい筆者が、大会のレポート記事など書けるものか不安に思っていたのだが、最後には非常にいいものを見せていただいたという心地よい高揚感を持って、会場を後にさせていただいた。素晴しい試合を提供してくれた、全てのプレーヤー、運営関係者に感謝の意を表したい。


(C)1994-2009 NBGI

(2010年 3月 8日)

[Reported by 米澤大祐]