Electronic Entertainment Expo 2009現地レポート

Paradox/SOE/SouthPeakブースレポート
Paradox「HoI3」、「M&B: Warband」、SOE「DC Online Universe」など6タイトルを紹介

6月2~4日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center

 

 世界中から様々なゲームが集うE3。こういった場では大手企業の圧倒的な存在感の前に目が眩んでしまいそうだが、中堅どころのゲームスタジオにもキラリと光る良作、傑作がある。本稿ではそういった、なかなか話題に上りにくいパブリッシャーからの注目作品や、他のブースレポートでは紹介しきれなかったタイトルを中心にご紹介する。



■ Paradox Entertainmentの看板シリーズ最新作「Hearts of Iron 3」
 シリーズのウリをさらにスケールアップしてこの夏登場

E3に合わせて公開された最新ショットより。世界は14,000を超える州に分割された
諜報スクリーン。国力についての情報が事細かに分類されている

 スウェーデンはストックホルムに本拠を置くゲームスタジオParadox Entertainmentは、今回のE3ではウェストホールの一角、ミーティングルームが立ち並ぶコーナーの一室に小さくプライベートブースを構えていた。

 歴史・戦略ゲームの老舗である同社はここ数年、ゲームパブリッシャーとして活動の場を広げつつあるが、今回は自社開発作品をはじめ、傘下デベロッパーによる新作数タイトルについての情報を用意して、数多くのビジネスミーティングをこなしていたようだ。

 その中でひときわ存在感を放つ新作は、やはりParadox自身が開発するPC用ストラテジーゲーム「Hearts of Iron 3」だろう。2002年の初代作以来、熱心な歴史・戦略ゲーマーの心をわしづかみにし続けてきたシリーズの最新作は、1936年からの第二次世界大戦を世界のあらゆる国でプレイできる柔軟性と精緻なシミュレーションシステムをさらにグレードアップして、この夏にリリースされる予定だ。

 本作はすでに最終調整段階に入っており、いよいよ発売が近づいてきている。大きな特徴としては、前作に比べ、まず全世界を再現するマップの最小単位である「州(Province)」の数が大幅に増やされ、総数14,000以上となった。最小単位は日本で言う市・群くらいになっており、全世界がくまなく分割されているものだから、一目で眩暈がしそうなほどだ。

 そのほかにも本作の特徴点は、陸海空軍の連動作戦や、実在した将軍が多数登場すること、攻め込まれて瓦解した政府による地下抵抗運動を展開できるなど、様々面に言及されている。特に今作では都市空爆が致命的な効果を発揮するようになったことや、リアルな「兵站」の概念が導入され、戦争指導により深みが増したことなど、戦争の歴史的表現に大きな力がそそがれているようだ。

 本作はすべてのゲーマーが楽しむようなジャンルのタイトルではないが、歴史と戦略の深みを体験したいと願う、多くのストラテジーゲーマーにとって1つの決定的なタイトルであることは間違いないだろう。欧米では今夏の発売が予定されており、日本語版については不明だが、従来通りであればサイバーフロントによるローカライズが期待されそうである。


Paradoxの看板シリーズ最新作。この夏に予定されている発売を心待ちにしているファンも多いはずだ



■ トルコ発、比類なき合戦アクションRPG「Mount&Blade: Warband」

本作は迫力ある合戦を、重量感のあるアクションで楽しめるユニークな作品だ。最新バージョン「WarBand」では、グラフィックス強化、マルチプレイのサポートなど様々な改良が行なわれる

 Paradoxがこの夏を目途にリリースを予定している「Mount&Blade: Warband」は、トルコはアンカラのゲームスタジオ、TaleWorldsが開発するPC用の合戦アクションRPGの最新バージョンだ。

 本作のオリジナル「Mount&Blade」は、もともとアンカラに住まうトルコ人夫婦が細々と作り続けていたもので、特別な理由でもなければその存在を知る由もないタイトルだった。それが2008年初頭、ゲームのユニーク性がParadox Entertaimentに見いだされ、一気に開発が加速。昨年ついにパッケージ販売を果たし、今回のアップグレード版「WarBand」の開発につながったのである。

 オリジナル作の「Mount&Blade」は、プレーヤーが中世の騎士となって世界を駆け巡りながら、兵士を雇ったり、君主に使えたりしつつ、勢力の拡大を目指すゲームだ。圧巻なのは戦闘システム。基本的にはアクションゲームになっているのだが、武器のダメージ判定は「切っ先の運動エネルギー」で決まるというシステムを採用し、一撃、一撃の重さを体感できるほどの爽快感を持つ。騎乗して槍をつがえ、最高速で突っ込めば、どんな重装備の敵でも一撃必殺だ。

 それと同時に、本作の戦闘シーンは一種の合戦シミュレーターであり、配下の数十名~数百名の兵を繰り出し、命令を与えて戦わせるという側面もある。軍団が衝突する中、自らも前線を駆け巡り、一騎当千の活躍をする。非常に内容の濃い戦いを体験できるわけだ。

 そんな本作の新たなエディションとなる「Mount&Blade: Warband」では、TaleWorldsが独立系開発会社だったころの、ゲームシステムの荒い部分や、グラフィックスの不十分なところを徹底的に洗い直し、さまざまな面でパワーアップを遂げている。

 「Warband」における最大のポイントは、最大32名が参加できるマルチプレーヤーモードをサポートすることだ。槍持ち、弓をつがえ、馬を疾走させながら、大量のNPC兵士を交えた一大合戦をプレーヤー同士で楽しめるのである。対戦は野戦、攻城戦の両方をサポートする。RPGモードで成長させたキャラクターや軍団をそのまま使えるのかは明らかになってないが、いずれにしてもかなりハマってしまいそうな内容である。

 「Warband」のリリース時期ははっきりと明言されていないが、関係者の話を総合して、今年の夏が終わるまでには遊べる日がきそうだ。もっと早くなる可能性ももちろんある。これを機に、今まで「Mount&Blade」を知らなかった人も、1度挑戦されてみてはいかがだろうか。


【マルチプレーヤームービー】

E3に合わせて公開された最新ショットで「Mount&Blade: WarBand」の雰囲気をご紹介。大手の最新タイトルには及ばないものの、グラフィックスのディティルが増し、戦場の迫力がよく表現されている。この戦場をマルチプレーヤーモードで遊べるようになる日が楽しみだ



■ 東インド会社をテーマとする海戦&貿易ゲーム「East India Company」

東インド会社をテーマとする完全新作
デッキから眺める海戦シーン。なかなかの迫力だ

 Paradox Entertaimentの新IP、「East India Company」は、2007年にできたばかりのゲームスタジオ、フィンランドのNitro Gamesが開発するシミュレーションゲームだ。17世紀の海と経済を席巻した東インド会社をテーマとし、帆船同士の海戦と、インドとヨーロッパを結ぶ交易で収益を上げることがゲームの2本柱となっている。

 全くの新規タイトルであるため、ゲーム内容についてはまだ不明なことが多いが、画面写真やムービーを見る限り、なかなかのクオリティに仕上がっている。海戦は完全3Dで表現され、RTSのように上空視点で指示を出すことができ、あるいは甲板上のFPS視点で、一隻の船を直接コントロールすることも可能であるそうだ。

 艦隊のマネジメントも本作の重要な要素だ。有能な船長を雇い、艦隊の能力を底上げしたり、船舶をアップグレードすることはもちろん、港を支配下におき、施設を充実させて基地能力を強化したりといった経営的な側面もある。

 インドとヨーロッパを結ぶ交易路を開拓して利益を上げれば、他国の勢力との政治的な問題を解決する必要も出てくる。植民地を開拓したり、力づくで奪い取って勢力を拡大することもできるようだ。交易、外交、そして戦いを通じて、最終的には最も強力な交易会社になることがゲームの目的である。東インド会社という今までにないテーマは間違いなく、ストラテジーゲーマーの食指をそそるものだろう。

 本作の欧米版は6月28日の発売が予定されている。日本語版については今のところ不明だ。


【マルチプレーヤームービー】

「東インド会社」というキーワードにピンときたら、このタイトルに注目せざるを得ない。ストラテジー&アクションスタイルで展開する海戦と、スケール豊かな交易や外交。帆船時代のロマンを余すことなく楽しめそうである



■ SOEのアメコミヒーローMMORPG「DC Universe Online」
 アメコミならではの痛快アクションをひっさげて、2010年投入予定

SOEブースの様子
「DC Universe Online」のプレイアブル展示がされていた

 ソニーの北米における関連会社であるSony Online Entertainment(SOE)は、ウェストホールに中規模のブースを構え、多数のオンラインタイトルを出展していた。その中で目玉となっていたのは、長らくリリースが待たれている2本。アメコミヒーローとなって戦うMMORPG「DC Universe Online」と、FPSタイプのMMORPG「The Agency」だ。

 「Everquest」以来多数のMMOタイトルをリリースし続けてきたSOEだが、そのうちの多くがサービス終了などの憂き目に遭っており、満足できるような成功を手にできていない。そこで、通常のMMORPGとは全く異なるスタイルを持つ上記の2タイトルの登場が期待されているというわけだ。いずれのタイトルもプレイステーション 3とPCのマルチプラットフォームを予定している。

 しかし、「DC Universe Online」と、「The Agency」ともに、制作発表以来、ズルズルとリリース予定が伸びきっているのが現状だ。昨年のE3でも両タイトルは出展されていたため、SOEブースが全体的に去年と代わり映えしない内容であった。だからこそ今回はしっかりとリリース予定日が公表されるべきだったのだが、明らかになったのは「2010年」という数字だけである。

 さて、「DC Universe Online」については、今回、戦闘パートのプレイアブル出展が行なわれていた。ムービー出展にとどまっていた昨年に比べれば明らかな進歩と言える。ゲーム内容としては、さすがにアメコミヒーローを主題とするゲームだけあり、非常にコミカルで痛快なアクションを見ることができる。

 空を飛ぶ、レーザーを撃つ、くらいのことは当たり前。念力で岩を投げつけるキャラクターもいれば、素早くワープしながらソードアクションを展開するキャラクターや、巨大化した腕をたたきつけて複数の相手に一気にダメージを与えるという技も見られた。

 本作の操作体系はプレイステーション 3コントローラーとPCのマウス・キーボードに最適化されており、完全にアクションゲームの感覚でプレイできる。MMORPGとしての側面について今回は多く触れることができなかったが、2010年のリリースまでに、プレイステーション 3ならではのMMORPGに仕上がっていることを期待したい。


アメコミのスーパーヒーローならではの能力を駆使した、破天荒なバトルが展開。これまでにないMMO作品になりそうだが、まずは近いうちにリリース日が確定することを期待しておきたい



■ SOEが開発するFPSスタイルのMMORPG「The Agency」

「The Agency」の展示
戦闘は完全にFPS。戦闘をこなし、数々のミッションをクリアしていく

 SOEが多くのスペースを割いてプレイアブル出展していたもうひとつのタイトルが、FPSスタイルのMMORPGとして開発されている「The Agency」だ。本作はプレイステーション 3およびPCで2010年にリリースされるとアナウンスされており、おそらく「DC Universe Online」と同時期を目指しているものと思われる。

 本作は、プレーヤーが腕利きのスペシャルエージェントとなり、他のプレーヤーと協力してスパイミッションや戦闘ミッションを繰り広げていくオンラインゲームだ。会場でデモされていたプレイ画面では、ソロ用のFPSにも似た、カットシーン付きのイベントシーンがふんだんに登場していた。これまでのMMORPG観とは一線を画する作品という雰囲気がある。

 今回はプレイアブル出展されていたので、アクションシーンのプレイ感覚を確かめることができた。登場武器はアサルトライフル、マシンガン、ハンドガンなど、現代戦をテーマとしたFPSで登場するものが一通りそろえられている。プレイフィールは完全にFPSのもので、これがMMORPGだとは思えない出来だ。

 あくまで会場内で触った範囲の感想なので、実際のオンライン環境に移行した場合、どの程度快適に操作できるかはわからない。また、MMORPGとしての側面に触れることも、限られた時間では不可能だった。本作を評価するためにはより多くの情報が必要だろう。


まるでオフラインのFPSタイトルのような雰囲気を持ちながら、MMORPGとしての側面を持つ本作。これまでにないタイプのオンライン体験が楽しめそうだ。こちらも「DC Universe」と同じく、具体的なリリーススケジュールが出てくることを待ちたい



■ 「Kohan」のデベロッパーが開発するSF-FPS「Section 8」を体験プレイ

SouthPeak Gamesのブースでは、「Section 8」が大量にプレイアブル展示されていた
プレイ中の様子。操作系はオーソドックスなので、すぐになじめる

 最後に北米の中堅ゲームパブリッシャー、SouthPeak Gamesが出展していたタイトルに触れておこう。「Section 8」と題された、SF世界を舞台とする新作FPSである。本作は北米で今年8月にリリースが予定されており、対応プラットフォームはPCとXbox 360となっている。

 開発元のTimeGate Studiosは、PC用RTS「Kohan」シリーズや、FPS「F.E.A.R」の拡張パックなどを手掛けてきた小規模のデベロッパーだ。この夏に発売される「Section 8」は、同スタジオ初のオリジナルFPSタイトルであり、高価な「Unreal Engine 3」を使用していることからも、社運をかけたプロジェクトと言えそうだ。

 本作は、シングルプレーヤーキャンペーンとマルチプレーヤーモードを持つFPSで、対戦に関しては基本的に「Battlefield」スタイル。しかし、プレーヤー同士の役割分担を維持したまま、クラスシステムを持たないという点に特徴がある。プレーヤーは何を装備するかによって果たせる役割が大幅に変わるため、自分独自のキャラクター設計で個性を発揮できるようになっているわけだ。

 そしてもうひとつの面白い点は、プレーヤーが戦場に出現するとき、宇宙空間の母船から地上に射出されるという設定だ。プレーヤーは母船からの降下中、15,000フィートの上空から戦場を眺め、そのどこに着地するかを自由に決められる。操作を誤れば、とんでもない場所に降りてしまうこともある。

 日本では全く知名度の低いタイトルではあるが、プレイアブル出展された試遊台で少々触ってみた限り、銃の打撃感やクイックな操作感が印象に残った。北米で受け入れられ、一定の人気が出れば、日本向けにローカライズされるチャンスも出てきそうだ。


ゲームエンジンには「Unreal Engine 3」を用いており、グラフィックスはなかなかの出来。あとはゲーム性次第という感じだが、北米で成功することができれば、日本語版の登場も期待できるかもしれない。




(2009年 6月 6日)

[Reported by 佐藤カフジ ]