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eスポーツを「学びの入り口」に! NASEF JAPANメディア向けの発表会を開催

正会員・地方支部制度を始動、2030年に1,500校加盟を目指す

【NASEF JAPANプレス発表会】
4月24日 発表
会場:金沢工業大学 虎ノ門キャンパス

 NASEF JAPAN(ナセフジャパン)は24日、メディア向けの発表会を開催し、活動基本方針とともに新たな施策や同組織の2026年度活動計画などを発表した。

 NASEFは「North America Scholastic Esports Federation」(北米教育eスポーツ連盟)の略称であり、NASEF JAPANは、特定非営利活動法人国際教育eスポーツ連盟ネットワーク日本本部となる。NASEF JAPANは、これまでも高校生を対象に「NASEF JAPAN全日本高校eスポーツ選手権」といったeスポーツ大会の開催や、全国の高校に対するeスポーツ部創設の推進などを進めてきた。

 設立から6年目となる本年からは、新たに全国の企業や団体などを対象とした「正会員制度」及び「地方支部制度」を実施し、全国展開を本格始動する。本稿ではNASEF JAPANの取り組みなどについて、発表会での様子などをレポートしていきたい。

NASEF JAPANロゴ
発表会場の様子
正会員団体の関係者らの多くが来場

2026年度は全国展開を始動。2030年までに1,500校の加盟を目指す

 冒頭は、NASEF JAPANの柿原正郎理事長が登壇し、少子化、地方の若者流出、不登校の増加、国際競争力の低下といった課題に対し、オリンピックでの若者の活躍を例に挙げ、若者の可能性を信じて応援することがNASEF JAPANの使命であると述べた。

 少子化については現状、深刻なIT人材不足が発生している点を指摘。調査によると2030年には最大で79万人もの人材が不足する予測もあるという。これに対して、eスポーツを通じて「自ら考える力」や「仲間と共同する力」、「挑戦し続ける力」、「デジタルを活用する力」、「多様性を認め合う力」といった非認知能力を育む学びの入り口を作ると説明した。

NASEF JAPANの柿原正郎理事長
IT人材の不足などを指摘
現在のNASEF JAPAN加盟校数は672校だが、全国5,000校の13%とまだまだ少ないという

 NASEF JAPANの現在の状況としては、現在、全国の高校の約13%にあたる672校が加盟しており、これはラグビー部や空手部がある高校数よりも多い規模であると実績を提示。また、同組織が開催する「全日本高校eスポーツ選手権」については、こうした競技としてのeスポーツ大会を8年連続で開催しており(NASEF JAPAN設立前の頃を含む)、昨年度はスポーツ庁の後援を受けるまでに成長したという。

 こうした実績を踏まえて、2026年度には活動を全国展開し持続可能なものにするための新たな新制度として、「正会員制度」と「地方支部制度」を開始すると発表した。新制度の詳細については後述するが、2030年に向けた目標として、正会員数100、地方支部は47都道府県、加盟高校1,500校、選手権参加5,000チームという具体的な数値を掲げた。

2026年度は全国展開に向けて始動
2030年までの目標として加盟1,500校、正会員100企業/団体を目指す
正会員は現在28企業/団体が参画

 具体的な「正会員制度」などについては、NASEF JAPANの大浦豊弘専務理事が登壇し、2026年度活動計画として詳細について発表した。

 新たな正会員制度については、企業及び団体を対象とし、学校法人は対象外とする。年会費は30万円で、産業界と教育界をつなぎ、正会員同士の提案や化学反応を促進する場を作るのが目的としており、地方支部のあり方も正会員と共に作り上げるとしている。そのほか、教育を通じた社会貢献、若年層との接点づくり、人材育成、地域活性化などのテーマを掲げており、大浦氏は「具体的な話が聞きたい企業は是非、気軽に問い合わせをしてほしい」と連絡先のメールアドレスをアピールした。

 2026年度のNASEF JAPANの活動は「競技」、「教育」、「国際交流」、「調査研究」の4本柱で進める方針だという。「競技」はこれまでと同様に、高校eスポーツ部の活性化と普及促進、「教育」はゲームを入り口とした人材育成、「国際交流」については、ゲームを共通言語とした海外との交流機会の創出を挙げ、「調査研究」として、大学などとのネットワークを広げ、教授陣らと協力してeスポーツの教育効果を科学的に調査、発信するといった活動も行なっていくという。

NASEF JAPANの大浦豊弘専務理事
全国展開して進める活動の4本柱を紹介

 また、新たに3つの分科会を設置。eスポーツ部の顧問の先生の声を反映させ、教育的価値を重視した大会設計を行なう「競技分科会」、教育現場で活用できる教材開発や、全国22名のフェロー教員(積極的に活動してくれている教員たち)による実践事例の共有を行なう「教育分科会」、さらには正会員たちの企画提案や、連携、交流、地方支部設立に向けた議論を行なうための「正会員分科会」の3つを設置し、さらなる活発な活動を推進するとしている。

 今後のスケジュールとしては、6月初旬に「第4回全日本高校eスポーツ選手権」のプレス発表を行なうほか、6月下旬には教育関係者を対象とした「eスポーツ×教育サミット」の開催を予定しており、前述のフェロー教員による先進事例の紹介など、教育関係者向けの具体的な施策発表を行なう予定になっている。

 大浦氏は「eスポーツを日本の文化として定着させ、それを入口に優秀な人材を育てることで、日本を元気にしたい」とビジョンを語り、こうした活動の普及にはメディアの存在が不可欠として、メディアに対しても協力を求める形で登壇を締めくくった。

新たに3つの分科会を設置して活動を推進する
正会員についての詳細。問い合わせについてはメールにて対応

eスポーツを「教育的価値のある入口」として広めたい

 質疑応答では、全国に支部を作るという話に関連して、現在最も部活動が行なわれておらず、今後手入れが必要な都道府県はどこかという質問が出ると、具体的な都道府県名を挙げるのは難しいが、九州や島根県などの西日本地区は活動が活発になってきているため、今後は高校数が多くポテンシャルのある東北、北陸、北海道といった北のエリアの盛り上げに力を入れていくという方針を示した。

 また中高一貫校なども含めた中学校も「予備軍」として対象にするべきではないかという質問については、すでに小学生向けにの「Minecraft」を通じた教育コンテンツの提供やサポートを開始しており、中学校への展開も次のステップとして動いているが、その一方でそこまで手が回っていないというリソース不足についても言及しており、今後の課題とした。

 現在のNASEF加盟校が670校で、2030年までの目標加盟校が1,500校とのことで、4年間で加盟校数を倍増させるための具体的な施策はあるかについて尋ねると、これまでも同組織の業務の一環として、未加盟の学校に連絡して、eスポーツ部の設立と加盟の提案といった啓蒙活動は続けており、今後もそれは継続するが、近年は文部科学省の「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」などのプログラムにより、すでに高性能PCを保有している高校だけでも1,500校を超えている。しかし、その多くはまだeスポーツに取り組んでいないため、これらの学校に対し、eスポーツを単なる遊びではなく「教育的価値のある入口」として伝えることで、加盟校を増やしていく計画であるとした。

 なお、これについては後の囲み取材でも触れられており、「DXハイスクール」のプログラムを全ての学校が受けられるわけではないため、PCを保有する高校の数が増えているのは事実だが、そもそもゲーミングPCのような高性能なPCが導入できているかは別問題であり、これだけで解決する問題ではないという点も課題の1つとして考えているようだ。

 また、保護者の理解を深めるためにどのような取り組みを行うのかという点については、保護者の「ゲームばかりして何になるのか」という認識をどう変化していくのか、という課題についてもコメント。いわゆる「ファミコンばかりやってないで勉強しなさい」問題であるが、これについても、eスポーツの教育効果を認知、理解してもらうための啓蒙が必要であると述べた。

 また、具体的な話として、例えばオフラインで行なわれる大会において、今までは試合が終わった後は、スッと両チームの選手が奥に下がっていたが、一度正面に出てきてもらって、握手をしてもらう「礼に始まり礼に終わる」習慣を付けることで、ポジティブなイメージを植えつけるほか、保護者が応援している姿をメディアなどで発信するなど、少年野球のような「大人がサポートして応援する文化」を可視化していく方向性などを推進しているとした。

質疑応答は柿原正郎理事長、大浦豊弘専務理事の両名が対応した
NASEF JAPANの両名と来場した正会員代表らによる記念撮影

 その後は、柿原理事長への囲み取材が行なわれた。学習塾などのマーケットにアプローチする計画はあるかという質問に対して、現時点では具体的なアクションは起こせていないという。というのも、まだeスポーツ教育を塾のサービスとして継続させるためのビジネスモデル(採算性)の構築が難しいようで、プログラミング教育ほど普及していないのが現状だとした。もちろんマーケットとしては大きいため、今後検討の余地があると考えているという。

 「高性能PCの価格高騰に対して、デバイスの確保をどう支援していくのか」という質問に対して、柿原理事長は「国の予算を活用できる学校は限られており、ハードウェアがボトルネックになる可能性がある」と言及。そのため「PCだけにこだわらず、モバイルやNintendo Switch、コンソールゲームなど、生徒がすでに持っているデバイスでアクセスできる教育コンテンツの可能性も探っていきたい」とした。

 ほかにも「大学入試において、eスポーツの実績が評価される実例はあるか」という質問には、少しずつ増えてきていると回答。例えば、茨城大学や東京理科大学などで、eスポーツの実績や活動を評価の対象とした「総合型選抜(旧AO入試)」での合格事例があるので、今後はこうした成功事例をストーリーとして発信していくことも重要だとコメントした

 さらに近年、何かと話題になるプロのeスポーツ選手の素行や振る舞いの問題について聞かれると、これについては非常に深刻な問題と捉えており、教育との接点が不可欠だとコメント。実例として、スケートボードを挙げ、以前はヤンチャな子供たちの遊びだったが、オリンピックなどに出る選手たちがテレビ越しに丁寧な対応を見せることで、競技のイメージごとクリーンに変えたように、挨拶や礼儀を重んじる姿勢をNASEF JAPANとして応援し、見える形にしていくことで、eスポーツの社会的評価を高めていきたいとした。

NASEF JAPAN正会員の代表者たちが集結。会場でコメントを発表

 現段階で、NASEF JAPANの正会員には28企業/団体が参画しているが、そのうち20近い正会員の代表者も来場し、それぞれがeスポーツに対する想いを語った。正会員にはサードウェーブやロジクール、NTTe-Sports、eスタジアム、e-Space Academia、島根県eスポーツ連合などeスポーツに関連した企業や団体のほか、新たな建設業のカタチを目指すというCIVIL CREATEといった企業の姿も見られ、かなり多種多様な企業、団体が参画しており、いずれもeスポーツやゲームによる教育活動などへの興味や関心、期待などを抱いて参画している様子が確認できた。

【各参加者の発言】
正会員28企業/団体のうち19社の正会員の代表者が来場
サードウェーブの取締役 社長執行役員 最高執行責任者、永井正樹氏、「eスポーツ×教育の理念に共感し、デジタル環境整備を通じた地方創生と若者の学びを支援する」
NTTe-Sportsの代表取締役社長、原田元晴氏、「自治体と連携したデジタル人材育成や、ネットワーク構築による部活動の環境サポートを推進する」
ロジクールの代表取締役社長、笠原健司氏、「高性能なデバイス提供を通じて若者の潜在能力を引き出し、eスポーツによる成長と可能性を広げる」
eスタジアムの代表取締役社長兼CEO、加藤寛之氏、「鉄道グループとしての地域密着の強みを活かし、eスポーツを通じた地方創生を全国へ展開する」
e-Space Academiaの前田宏平代表、「不登校や引きこもりなどの課題に対し、eスポーツを学びと安心できる「居場所」として提供する」
エイムネクストの代表取締役、清威人氏、「コンサルティングの知見を用い、地域住民や行政と連携して都市部との教育格差解消に取り組む」
木村情報技術の経営戦略室兼イノベーション本部eスポーツユニットのゼネラルマネージャー、野津一徳氏、「自社のDXソリューションとeスポーツを掛け合わせ、多くの若者が挑戦できる場面をサポートする」
熊本日日新聞社の業務局ビジネス本部、ソリューションビジネス部 部長、上田良志氏、「地元新聞社として熊本eスポーツ協会を運営し、地域に根ざした人材育成と社会貢献を目指す」
COCRI合同会社のChief Implementation Officer、見浦浩徳氏、「教育現場での経験を活かし、デジタルを起点に多世代が交流し新たな価値を創出する拠点作りを行う」
シグマソフトサービスのライフサイクルマネジメントグループリーダー、福嶋清徹氏、「IT導入支援のノウハウと全国拠点を活用し、ナセフの地方支部立ち上げや開拓に協力する」
CIVIL CREATEの川西敦士社長、「マインクラフトを通じた教育活動により、建設業界の魅力発信や将来の人材確保・育成に繋げる」
一般社団法人島根県eスポーツ連合 代表理事の影山晃広氏、「NASEFや他企業からの支援を糧に、島根におけるeスポーツ活動の発展に一層尽力する」
eスポーツ高等学院を手掛けるディー・エヌ・ケーのプロデューサーである深澤文伸氏、「不登校の生徒に居場所を提供し、eスポーツを通じて社会で活躍できるデジタル人材を育てる」
DRIMAGEJAPANの代表取締役社長、中西啓太氏、「自社ゲームが持つ判断力やチームワークを養う教育的価値を活かし、新たな教材開発を模索する」
パーパスジャパンの代表取締役、酒井修一氏、「旅行会社としてeスポーツに伴う国内外の移動や交流事業、教育ツアーの側面から活動を支える」
ハイホーのコンシューマー営業部 営業本部長の重本高志氏、「通信回線事業の専門性を活かして、eスポーツが教育文化として定着・普及する流れを後押しする」
楽天グループ株式会社 地域創生事業 ヴァイスジェネラルマネージャーの立場定氏、「自社サービスと知見を地域創生事業に結集し、若者の育成と地域の課題解決を同時に推進する」
LANNERの代表取締役、倉林亜希子氏は、「一般社団法人群馬県eスポーツ連合の事務局も担っており、地元メディアから独立した知見を活かし、地域と連携した子供たちの学びの場を創出する」
Re.roadの代表取締役社長、金井佑輔氏、「イベント企画や裏方の仕事を通じ、社会課題の解決とそれを担う次世代の人材開発に貢献する」

NASEF JAPANが担う未来の役割、eスポーツの教育的価値を高める「調査研究」などに期待

 今回、NASEF JAPANの2026年度の活動方針などのプレス発表会の様子をレポートした。教育現場におけるeスポーツの課題がまだまだ山のようにあるということが、発表や報告を見ていると伝わってくる。そのため、個人的に興味深かったのは大学などとの連携による「調査研究」だ。

 登壇中に柿原理事長も触れていたが「ゲームばかりしていないで勉強しなさい、とは言われるが、野球やピアノについては、同じような言われ方をしない」というのは確かにその通りで、その要因になっているのは、明らかに両親側の理解の不足から来るものだ。一方でゲームも、そのやり方やゲームの種類によっては、教育的に悪影響になることもあるため、大学などの研究機関において、こうした調査や研究がもっと進められ、確たるエビデンスがしっかりと揃ってくることで、ゲームという物に対する考え方や意識の変化がさらに進むことは、今後のゲーム業界にとっても非常に重要な要素と言える。

 実際のところ、現在プロとして活動するプレーヤーや、若手の選手たちの声を聞いていると、幼少期は親と一緒にゲームを遊んでいたというエピソードが必ずと言っていいほど聞かれるし、一緒に遊んでいなくても親の理解があり、ゲームに対してあまり厳しいことを言われずに比較的自由にゲームをプレイさせてもらっていたという声が多い。

 それが全てではないことは理解しているが、大学などの調査や研究などからゲームへの意識が変化し、さらにゲームの取捨選択など、親の理解が進むことで、ゲームがさらに教育に対するプラスの効果を発揮する可能性や、文化としてさらに成熟する可能性は無限に広がっているのだ。

 そんな子供たちの無限の可能性を狭めることなく、限りなく広げていける可能性を秘めているのが、NASEF JAPANの役割の1つであることは間違いなく、そのためにも今後の同組織のさらなる躍進を期待したいところだ。