【特別企画】
「LoL」部門決勝レポート。圧倒的な個人技と連携でN高等学校「N1」が王座奪還!【第3回 NASEF JAPAN全日本高校eスポーツ選手権】
2025年12月15日 14:41
- 【第3回 NASEF JAPAN全日本高校eスポーツ選手権 リーグ・オブ・レジェンド部門 決勝大会】
- 12月13日 開催
- 会場:東京都港区「RED° TOKYO TOWER」
サードウェーブが特別協賛する高校生eスポーツ大会「第3回 NASEF JAPAN全日本高校eスポーツ選手権」において、「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)」部門の決勝大会が12月13日に開催された。
「NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権」は、eスポーツを通じて仲間と共に成長することを目的とした、高校生のためのeスポーツ選手権大会。第3回となる今回は、「LoL」部門で全国82校、141チームが参加した。
「LoL」部門では、12月13日に準決勝・決勝が行なわれ、専修学校クラーク高等学院 札幌大通校の「ラグナロクEX」、ルネサンス豊田高等学校名古屋eスポーツキャンパスの「封魔龍ヴァル=ゼクス」、専門学校アートカレッジ神戸の「ACKA」、N高等学校の「N1」がそれぞれ優勝を争った。
年々レベルが上がっていく高校生「LoL」シーン。今回は国内競技シーン「LJL」に参加している選手も出場していることもあって、高いレベルの個人技とチームの連携・戦略をみることができた。本稿では、そんな本大会のオンライン配信の模様をお届けする。
それぞれの強みを活かした2チームが準決勝を制する
準決勝はBO1(1試合先取)。第一試合ではN高等学校の「N1」と専門学校アートカレッジ神戸の「ACKA」が、第2試合では専修学校クラーク高等学院 札幌大通校の「ラグナロクEX」とルネサンス豊田高等学校名古屋eスポーツキャンパスの「封魔龍ヴァル=ゼクス」がそれぞれ争った。
第一試合に登場したN高等学校「N1」は、前大会準優勝チーム。過去には高校生「LoL」シーンで優勝経験もある強豪チームで、「LJL」に出場しているkkkkkkkkk(ケーナイン)選手がトップレーナーを務めている。対する専門学校アートカレッジ神戸の「ACKA」は、チームの仲が良く、5人全員で連携を取ることに長けたチームで、連携を活かしてケーナイン選手をどう抑えるかが注目された。
試合は、序盤からボットレーンでキルを取り合う展開でスタート。ジャングルの介入もあり、「ACKA」が僅かながらに有利を築く。その後、ミッドレーンに「ACKA」Tamtam選手が介入しキルを獲得し、序盤の流れを掴んだかと思いきや、ほぼ同時にトップで「N1」ケーナイン選手もキルを獲得。その後、「N1」がヴォイドグラブ前で集団戦に勝利し、有利な状況で中盤戦を迎える形となった。
試合はその後、「N1」が育ったケーナイン選手のジャックスを中心に試合を組み立てていき有利をどんどん広げていく。対する「ACKA」もゴールド差を埋めるべく、チャンスを伺うが、「N1」は隙を見せない的確な動きで勝ち切り、最後は誰も倒されずにエースを獲得。そのままネクサスを破壊し「N1」が決勝へと駒を進めた。
続く準決勝2試合目に登場した専修学校クラーク高等学院 札幌大通校の「ラグナロクEX」は同校対決を制して準決勝に勝ち進んできたチームで、攻撃的なプレイが特徴的だ。対するルネサンス豊田高等学校名古屋eスポーツキャンパスの「封魔龍ヴァル=ゼクス」は、独特なチャンピオンをピックするユニークな戦術を得意とするチームで、相手に対応を迫ってくる。
試合は最序盤こそ静かな展開となったが、10分前後で集団戦が2度発生。どちらの集団戦も「封魔龍ヴァル=ゼクス」が集団戦の形をコントロールし、強力なAOE(範囲攻撃)を活かして連取した。
「封魔龍ヴァル=ゼクス」は2度の集団戦で得た有利をどんどん広げていき、所謂「スノーボール」の状態に。一方の「ラグナロクEX」もViVi選手がアタカンをスティールするなど食らいつくが、最後まで有利を手放さなかった「封魔龍ヴァル=ゼクス」がバロンとエルダードラゴンを獲得。そのままネクサスを破壊し、決勝へと進んだ。
決勝戦「N1」がハイレベルなプレイで魅せ王座に輝く
決勝で争うN高等学校「N1」とルネサンス豊田高等学校名古屋eスポーツキャンパスの「封魔龍ヴァル=ゼクス」。準決勝でも圧倒的なパフォーマンスを見せた「N1」ケーナイン選手を、「封魔龍ヴァル=ゼクス」が抑え込めるかが重要となる。なお、決勝戦はBO3(2本先取)で行なわれた。
決勝1試合目は、「N1」が序盤からボットでキルを取った後、「封魔龍ヴァル=ゼクス」の面々にジャングル内で襲われたケーナイン選手のオラフがデスしながらも2キルを獲得。これによりオラフが爆発的に育ってしまう。
「封魔龍ヴァル=ゼクス」もボットで一瞬の隙をついてキルを取り、Tokamau選手のジンクスがシャットダウンゴールドを獲得する。しかし、サイドレーンで暴れるオラフを止めることができず、集団戦でもオラフが合流し勝利。そのまま猛攻を仕掛けた「N1」が一気にネクサスを破壊し優勝へ大手をかけた。
2試合目では、1試合目の展開を踏まえたうえで高度なBan/Pickが繰り広げられた。追い詰められた「封魔龍ヴァル=ゼクス」が1試合目に活躍した「オラフ」をバンしたうえで、ボットレーンで勝ちに行く構成を選択。トップにはレーン戦ではなく集団戦を重視した「マルファイト」をピックした。
対する「N1」は、ケーナイン選手がキャリー力の高い最新チャンピオン「ザーヘン」をピック。さらにミッドにアサシンチャンピオン「ゼド」を置いたうえで、ボットレーンにはセーフティーに試合を運びやすい「ジグス」を置き、トップレーンキャリー構成の形となった。
試合では、開始直後から「封魔龍ヴァル=ゼクス」が強気に相手のジャングルに入っていく「インベード」の動きを展開。これが見事に決まり、キャリー役の「ミス・フォーチュン」が1キル目を獲得。対する「N1」はミッドでガンクを決め、ゼドがレーン戦での有利を得た。両チームとも、優位に立ったチャンピオンがその後も相手をキルし、一進一退の攻防が繰り広げられた。
戦況が大きく動いたのは中盤15分。リフトヘラルド前で集団戦を「N1」が仕掛ける。Fake選手の使用する「アリスター」が囮になるような動きをみせることで陣形を崩し、この集団戦を0デス4キルで勝利。優勝へ大きく近づく集団戦を制した。
集団戦の直後、「封魔龍ヴァル=ゼクス」はトップを1人でプッシュするケーナイン選手を4人で強襲。これに対しケーナイン選手は「ザーヘン」のスキルを的確に使用し、デスしながらも時間を稼ぐことに成功。この間に「N1」はタワー3本とドラゴンを獲得し、キルだけでなくオブジェクトでも有利を築いた。
劣勢となった「封魔龍ヴァル=ゼクス」は、アタカンを触っている「N1」に対し、「スウェイン」を使用するMoku選手が敵の背後にテレポート。孤立したように見えるスウェインに対し、「N1」の面々はスキルを使用するが、Moku選手はこれをフラッシュで回避し、さらにスネア効果を持つスキルを複数人にヒットさせる。この見事なプレイに味方も合わせてキルを獲得。遅れて合流したゼドとザーヘンにキルは取られてしまうものの、「封魔龍ヴァル=ゼクス」がアタカンを獲得。有利なトレードに成功し、逆転を狙う。
試合を決めたのはその直後。ジャングル内での突発的な集団戦が発生。「封魔龍ヴァル=ゼクス」が「N1」の孤立したチャンピオンを発見して仕掛けるが、「N1」はこれに瞬時に反応。ケーナイン選手、tochiking選手の両キャリーが暴れまわり、エースを獲得。その後、ネクサスまで到達した「N1」に対し、復活した「封魔龍ヴァル=ゼクス」はなんとかキルを取ろうとするが、「ジグス」のオブジェクト破壊力もあって「N1」がギリギリでネクサスを破壊。安定したマクロの動き、豊富なゲームプラン、そして高い個人技を終始みせた「N1」が勝利し、王座に輝いた。
試合後のインタビューでは、UNO選手が「4日間のゲーミングハウスでの練習もあって、いい試合をすることができた」と語り、Fake選手は「決勝では緊張し手が震えていたが、チームメイトのおかげで勝つことができた」と思いを語った。また、ベストプレーヤー賞を獲得したケーナイン選手は今後の目標について聞かれ「LJLでの優勝を目標にしたい」と話した。
本大会で筆者が感じたのは、どのチームもボイスチャット(VC)でのやり取りが盛んだったことだ。BAN/PICKでは、時にコーチを交え相手チームの弱点や、自分たちのウィンコンディションを確認しながらチャンピオンをピックしており、ゲームへの高い理解を感じられた。また、インゲームでも集団戦の当たり方、オブジェクトを獲得するかなどを話し合っており、その内容もレベルが高かった。なにより、強豪相手でも最後まで諦めず、声を掛け合う姿勢には感銘を受けた。
本大会でも、高校生とは思えないほど素晴らしいプレイを魅せてくれた選手達。今後「LoL」競技シーンに挑戦したり、eスポーツに携わる学生も多いだろう。そうでなくても、ゲームを通じてライバル達としのぎを削った経験は、かけがえのないものになるはずだ。日本の将来を担う彼らの、今後の活躍には期待したい。
NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権は来年の開催も決定。種目については今後発表されるとのことだ。国内「LoL」競技シーンは、2025年に大きな改革があり、今後の発展のためにも新たなプレーヤーの発掘が不可欠。それだけに、高校生の若き才能には期待したい。
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