【特別企画】

「VALORANT」部門決勝レポート。ルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパス「なめくじブラザーズ」が連覇!【第3回 NASEF JAPAN全日本高校eスポーツ選手権】

【第3回 NASEF JAPAN全日本高校eスポーツ選手権 VALORANT部門 決勝大会】
12月14日 開催
会場:東京都港区「RED° TOKYO TOWER」

 サードウェーブが特別協賛する高校生eスポーツ大会「第3回 NASEF JAPAN全日本高校eスポーツ選手権」において、「VALORANT」部門の決勝大会が12月14日に開催された。

 「NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権」は、eスポーツを通じて仲間と共に成長することを目的とした、高校生のためのeスポーツ選手権。「VALORANT」部門では、全国152校、250チームが参加した。

 今回行なわれた準決勝・決勝では、予選を勝ち上がってきた4チームが激突。仙台デザイン&テクノロジー専門学校 高等課程「TECH」、S高等学校「Hide or Push」、バンタンゲームアカデミー高等部 福岡校「ban仲ボスノウズX」、ルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパス「なめくじブラザーズ」が優勝を争った。

 前大会から高校生「VALORANT」シーンでは、個人技だけでなくチームでの高度な連携がみられることも少なくない。本大会でも、個人技では劣るチームがチーム力で決勝に進むなど、より戦略性の重要さが際立つ形となった。本稿では、そんな本大会のオンライン配信の模様をお届けする。

MCを務めるOooDa氏
実況・解説の河野海樹さん(左)、yueさん(右)
アナリストのRetloffさん
選手宣誓をする各チームの代表
【【VALORANT 部門】第3回 NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権 全国決勝】

準決勝ではギリギリの熱戦も

 準決勝はBO1(1試合先取)で行なわれ、第一試合ではバンタンゲームアカデミー高等部 福岡校「ban仲ボスノウズX」とルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパス「なめくじブラザーズ」が、第二試合では仙台デザイン&テクノロジー専門学校 高等課程「TECH」と、S高等学校「Hide or Push」がそれぞれ決勝進出を争った。

トーナメント表

 第一試合は、チームでの連携を活かして予選を勝ち上がってきたバンタンゲームアカデミー高等部 福岡校「ban仲ボスノウズX」と、前回優勝校であり、優勝候補筆頭のルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパス「なめくじブラザーズ」の対決。前大会優勝メンバーも所属し、高い個人技を有している「なめくじブラザーズ」に対し、「ban仲ボスノウズX」の連携がどう活きるかが注目だ。

「ban仲ボスノウズX」の選手。左からつかさくん選手、Andreモク練習中選手、RumiNS選手、K1ruA選手、Z1N 渦選手
「なめくじブラザーズ」の選手。左からecstasy選手、Hyacine選手、Nachtmusik選手、misiranu選手、サラマンドラの踊り子選手
初戦のマップは最新マップ「カロード」が選択。チーム構成は「なめくじブラザーズ」が攻撃的な2デュエリスト構成を選択。対する「ban仲ボスノウズX」はテクニカルな2コントローラー構成をとった

 試合は1ラウンド目から大会初出場のHyacine選手の活躍もあり、「なめくじブラザーズ」が3ラウンドを連取。対する「ban仲ボスノウズX」も一気になだれ込む動きからRumiNS選手が3キルを獲得して取り返す。続く5ラウンド目では、「なめくじブラザーズ」が敵を陽動する動きから有利を作り敵をかく乱。このラウンドを取りきり、流れを掴む。対する「ban仲ボスノウズX」も高いリテイク精度で食らいつき差を開かせず、前半を7-5で折り返した。

 試合は後半戦、攻撃的な構成を採る「なめくじブラザーズ」が守備側に回るが、高い個人技を活かしてリードを保ち続ける。対する「ban仲ボスノウズX」は、K1ruA選手が撃ち合いの強さを活かし4キルを獲得するなど、差をつけられないよう奮闘する。試合は10-8で迎えた19ラウンド、資金を節約するエコラウンドを選択した「なめくじブラザーズ」が武器差を覆し勝利。続く20ラウンドも連取して王手をかける。「ban仲ボスノウズX」は最後まで食らいつくが、最終的には撃ち合いを制して「なめくじブラザーズ」が勝利。接戦をものにして決勝へと進んだ。

「なめくじブラザーズ」は9ラウンド目に情報戦に勝利し、有利なポジションをとったHyacine選手が見事なエイムでキルをとるなど、好プレーで最後まで流れを渡さなかった。

 続く準決勝第二試合では、1・2年生で構成されたメンバーの仲が良く、チームプレイで予選を勝ち上がってきた仙台デザイン&テクノロジー専門学校 高等課程「TECH」と、独特のプレイをするチームメイトが揃ったS高等学校「Hide or Push」が対戦した。

「TECH」の選手。左からMiyr選手、Raincarnat10選手、八術流選手、7me選手、runa選手、ian選手
「Hide or Push」の選手。左から、liyu選手、大魔獣選手、Local bakery選手、HoP tatara選手、久遠の愛情選手
第二試合のマップは「アビス」。「TECH」はマップ把握能力が低いながらも、柔軟性のある構成をピック。「Hide or Push」も同じような構成だが、よりテクニカルなエージェントをピックした

 試合は序盤から「Hide or Push」がリードを広げる展開に。味方のスキルに合わせて動くことで人数差を作り、撃ち合いを優位に進めていく動きをみせラウンドを連取。前半ラストでは大魔獣選手がこの日初のエースを獲得するなど個人技も見せ、前半を10-2で折り返す。

 不利な状況で後半を迎えた「TECH」は諦めることなく食らいつく。後半戦最初のピストルラウンドを制して資金面での有利を作ると、そこからラウンドを連取。対する「Hide or Push」もエコラウンドを制し11-5とするが、それでも「TECH」は粘り続け、10-11にまでスコアを縮める。22ラウンド目には7me選手が撃ち勝ち同点に。続くラウンドでは仲間のアドバイスを受けたian選手が1vs2の状況を制して逆転するまさかの展開に。

 逆に追い詰められた「Hide or Push」も負けておらず、続くラウンドで勝利し試合は先に2ラウンド差をつけた方が勝利となるオーバータイムへ突入。緊張の25ラウンド目は「Hide or Push」が久遠の愛情選手の個人技でスペースを開けたことをきっかけに勝利すると、続くラウンドでもスキルを有効に使用してラウンドを獲得。ギリギリの熱戦を制した「Hide or Push」が決勝へと進んだ。

オーバータイムでは2ラウンド共に「Hide or Push」の久遠の愛情選手が活躍。彼のキルを起点に有利を広げ、ギリギリの試合を制した

決勝戦。「なめくじブラザーズ」が勝利し連覇を達成!

 決勝を争うルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパス「なめくじブラザーズ」とS高等学校「Hide or Push」。連覇を狙う「なめくじブラザーズ」に対し、準決勝で熱戦を制した「Hide or Push」は初の決勝となる。なお、決勝戦はBO3(2本先取)で行なわれた。

決勝戦一試合目のマップはテレポートが特徴の「バインド」。両チームとも2デュエリスト構成でぶつかった

 試合では、準決勝での勢いもあってか、「Hide or Push」が4ラウンドを先取。対する「なめくじブラザーズ」も5ラウンド目に的確なリアクションでラウンドを取り、その後も連取。前半戦はどちらのチームもリードを譲らず、6-6で折り返す形となった。

 攻守が入れ替わった後半戦では、「Hide or Push」がスピード感ある攻めで連取しリードをつくる。しかし、続くラウンドで「なめくじブラザーズ」がテレポートを使用した強気な守りでラウンドを取り、一気に勢いづいていく。続くラウンドも立て続けに取得し追いついた「なめくじブラザーズ」は、17ラウンド目に相手のスキルに対し的確に対応し逆転。その後はHyacine選手が強気に撃ち合いを制し大量のキルを獲得するなど活躍。21ラウンド目には1vs1の状況でHyacine選手が設置されたスパイクを解除し、13-8で「なめくじブラザーズ」が勝利。「なめくじブラザーズ」が連覇に王手をかけた。

決勝戦第一試合では「なめくじブラザーズ」Hyacine選手が爆発。合計30キルを獲得し、チームの勝利に大きく貢献した

 続く第二試合では、「なめくじブラザーズ」の揺さぶりに対し、後のない「Hide or Push」がどう対応し、プレッシャーに負けずに強気な動きができるかが重要となる。

第二試合のマップは準決勝でも使用された「カロード」。「なめくじブラザーズ」は勢いに乗っているHyacine選手が「チェンバー」をピック。対する「Hide or Push」は2デュエリスト構成で強気に挑む

 試合は序盤から、「なめくじブラザーズ」の面々が躍動。1ラウンド目からスピーディーな展開でキルを奪っていき、資金差を作ると、相手の動きを読みながら撃ち合いを制していきラウンドを立て続けに獲得する。5ラウンド目には「オーメン」同士の1vs1をmisiranu選手が制し、5-0とリードを広げる。

 「Hide or Push」はタイムアウトを使用して立て直しを図り、1ラウンドを取り返すが、「なめくじブラザーズ」はリードを活かした強気な動きを続け、ラウンド勝利を重ねていく。それでも「Hide or Push」は食らいつき、エコラウンドでありながらラッシュの動きを決めてラウンドを獲得。前半戦を10-2で折り返し、逆転を狙う形となった。

第二試合は序盤から前回大会優勝チームに所属していたmisiranu選手の「オーメン」が活躍。相手がスキルに隠れようとする動きを読み、撃ち合いを制するなど好プレーを見せた

 試合を大きく左右する重要な後半初戦。攻めに回った「Hide or Push」はどうしても欲しいラウンドとなる。しかし、「なめくじブラザーズ」は強気な姿勢をそのままに、高い個人技と接敵した味方への素早い対応でこのラウンドを獲得した。続くラウンドも武器の性能差を押し付ける形で勝利し、優勝まであと1ラウンドに迫った。

 マッチポイントを迎えた15ラウンド目。「なめくじブラザーズ」がキルで生まれた人数有利の状況で一気になだれ込み、相手チームを飲み込んでいく。最後はecstasy選手が決めきり、13-2でルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパス「なめくじブラザーズ」が勝利。勢いそのままに連覇を決めた。

ラッシュを決めるまでの緩急をつけた動きや、相手の対策に対する対応力。そして撃ち合いが始まった際の強さなど、高い連携力と個人技を兼ね備えた「なめくじブラザーズ」が連覇を果たした
優勝を果たしトロフィーを掲げる「なめくじブラザーズ」の選手たち
ベストプレーヤー賞を獲得したルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパス「なめくじブラザーズ」のHyacine選手

 試合後のインタビューでは、チームリーダーNachtmusik選手が「この3年間『VALORANT』に打ち込んできた。最後に優勝できてとても嬉しい」と語り、サラマンドラの踊り子選手は「喧嘩することもあったが、最後は仲よくプレイできてよかった」と話した。また、ベストプレーヤー賞を獲得したHyacine選手は「自分は1年生なので、3連覇を目指したい」と目標を語った。

優勝した「なめくじブラザーズ」の選手達

 NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権は来年の開催も決定。種目については今後発表されるとのことだ。前回と比べてもレベルが上がっている「VALORANT」高校生シーンだけに、次回大会で種目になれば、より高度なプレイを見ることができるだろう。また、今回の出場を最後に卒業する選手の中には、eスポーツに携わる仕事を夢見る選手もいた。彼らの今後の活躍にも期待したい。