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「メトロ 2039」先行映像レビュー

ロシアのウクライナ侵攻がゲームのプロジェクトそのものをを大きく変えた

【METRO 2039】
今冬 発売予定
価格:未定

 4A GamesとDeepはロシアを舞台としたダークなサバイバルアクションシューティング「メトロ」シリーズ最新作、「メトロ 2039」の先行映像を公開した。本映像では「First Look」としてゲームの要素の断片的な提示、そして開発者が本作に込めた思いが示された。

 4A Gamesはウクライナ・キーウの開発会社だ。ウクライナは今もロシアからの侵略を受けており、その紛争は現在でも続いている。「メトロ 2039」はまさにこの戦いのさなか開発が進められている。現実の戦争に直面し、「メトロ 2039」はプロジェクトそのものが変わったという。

 本稿では「メトロ」シリーズのコンセプトを振り返ると共に、映像から得られた情報や、最新作「メトロ 2039」への期待を語っていきたい。

【[日本語] Xbox First Look: METRO 2039 | 4A Games + Deep Silver】

恐ろしい思想教育に支配された世界・モスクワ

 先行映像はインパクトのあるシーンからスタートする。「闇から抜け出し、清き国になる覚悟はあるか?」こちらを問い詰めるような言葉とさかんに繰り返される「目覚めよ」という言葉。

 戦闘スーツに身を包み銃を構えている兵士は幻聴のような「目覚めよ」という声の主を探しながら深い霧に包まれた森の中をさまよう。ガリガリと音を立てる放射能探知機。男は「メトロ」シリーズを象徴する装備と言えるガスマスクを身につける。

夢ともうつつともつかない世界を歩く1人の男

 男の目の前にはクレヨンで描かれた子供の絵がある。その絵に手を伸ばそうとするとおびただしい鎖が男の体を包み込み、地面に引きずり込む。男は鎖に絡みつかれ、手足をつながれ身動きできない。

 苦しみもがく男の前に、子供達が学校の教室で絵を描いている光景が広がる。子供達は感情のこもらない声で「敵は一掃するのみ」と繰り返し、こちらを見る。その顔は目も口もないのっぺらぼうだ。

恐ろしいプロパガンダ教育によって敵への憎しみを植え付けられる子供達

 夢ともうつつともわからない世界から、男は立ち上がり、暗闇の広がる地下への道を進む。そこは破壊しつくされ、怪物立ちが地上を闊歩するモスクワだ。そして本作のタイトルである「メトロ 2039」の文字が浮かび上がる……。

物語の舞台は再びモスクワであることが提示される

ロシアのウクライナ侵攻が、ゲームのテーマを変えた

 「メトロ 2039」はドミトリー・グルホフスキーの小説「メトロ2033」を原作とするゲームの最新作。本シリーズは核戦争により放射能で汚染され、荒廃したモスクワが舞台となる。モスクワは地上ではガスマスクのフィルターを通さなければ、呼吸することすらできないほどに荒廃しており、人々は地下鉄の駅を生活圏として命をつないでいる。しかしその駅すら様々な勢力の支配で変質しており、限られた資源を奪い合いながら、生き抜いている。

3人の開発者がゲーム制作の背景を語った

 「メトロ 2039」の舞台は地下での過酷な生活を余儀なくされるモスクワとなる。「メトロ」シリーズは小説を原作とした「メトロ2033」から大きくその展開を広げた。これまではアルチョムという青年を主人公に、3作目の「メトロエクソダス」ではモスクワを離れ、シベリア鉄道でユーラシア大陸を東に向かうというストーリーが展開した。

 「メトロ 2039」は舞台を再びモスクワに戻すこととなる。「メトロ2033」から6年が経過した現在、各勢力が争っていたモスクワは、新たな指導者Hunterが率いる、Novoreichという勢力によって統一される。人々はプロパガンダで嘘と恐怖を植え付けられ、敵を憎む教育によって支配されている。

新たな支配者によってモスクワは統一されている

 「メトロ」シリーズは小説のイメージを膨らませたゲームであり、「メトロ 2039」はせかいかんをどういつとし開発者達は、シリーズはこれまで絶望的な状況に置かれた人々が生き抜こうとする戦いを描いていており、そのテーマは「戦争の抑止」だと語った。しかし開発者達の環境そのものがロシアの侵略により激変した。その中で作品のテーマそのものが「沈黙の代償と、暴政の恐怖、そして自由への対価」へと変わったという。「メトロ 2039」では主人公「ストレンジャー」を通じ、このテーマに直面する。

 「メトロ 2039」はストーリー重視のシングルプレイ。放射能で地下に閉じ込められたモスクワという「人間の最も醜い部分がむき出しになる場所」で物語は進行する。この作品の方向性はロシアの侵略によるウクライナに住む開発チームの生活が一変したことが強く影響している。ロシアからの攻撃を常に受ける中でゲームは開発されて行ったとのことだ。

戦争に直面した開発者達は作品そのものの方向性を変えたという

 その中で貫かれた開発の方針は「実在感のある世界」。ディテール、雰囲気にこだわり、「真のメトロ体験」を目指して制作が進められている。自社エンジンでその世界を描写していく。ゲームの中で部屋に入ると、まるで現実にそこに立っているような感覚。そこに誰がどう暮らしており、どうしていなくなったのか。机にこぼれたお茶、やりかけのゲーム、空の銃を握ったまま息絶えた死体など、一切の台詞無しに「凍った時間」を実感できるという。没入感を高め、“本物の世界”を実感させる作品となるとのことだ。

 そして物語の中心となるのが「人間そのもの」。その背景の1つには本作の着想となった「メトロ 2033」を執筆した小説家ドミトリー・グルホフスキーは、ロシアのキーウ侵攻を批判していたが、ロシアから亡命したということも関係してくるという。「メトロ 2039」では自由と真実という共通の価値観の物語を作り上げていったとのことだ。

オリジナルエンジンでゲームを開発、ゲーム世界の描写に注力している
今までそこに人がいたかのような雰囲気が感じられる、没入感の高い“本物の世界”を実感させる作品となるという

 今回の体験によって得た「沈黙の代償と、暴政の恐怖、そして自由への対価」をゲームをプレイすることでプレーヤーがその意味を考えていく。そしてどんな決断をするのか、それを問う作品となるとのことだ。

 最後に公開された映像は「メトロ 2039」の最新映像。恐ろしい怪物に追われ仲間に助けられるという、シリーズでおなじみのシーンが最新グラフィックスで表現される。ファンならばこの世界を早く飛び込みたいと思わせる映像だった。

地上を探索する主人公に襲いかかるミュータント、間一髪"駅"にたどり着き、主人公はその命をつなぐ。シリーズ1作目から続く本作のイメージが、最新グラフィックスで表現される

 筆者は第1作目の「メトロ2033」からシリーズをプレイしている。今でも「メトロ2033」の衝撃を覚えている。生きるために、危険を覚悟して隣の駅まで移動するため、暗闇胃の中に足を踏み入れる怖さ。視界の効かない闇の中を蠢くミュータント。そして駅とそこを支配する勢力でルールが大きく異なる世界。さらにガスマスクがないと死んでしまう外の世界にすら足を踏み出さなくてはいけない。空気を浄化するエアフィルターは絶望的に少なく、常に残量を気にしての探索となる。移動すらきつく、たどり着く駅すら安息の地ではない。この暗さに筆者はしびれた。

 この閉鎖された状況から踏み出すシリーズ3作目「メトロ エクソダス」も好きだが、どこまで行っても危険が伴う、暗闇を手探りで進むような圧迫感は1作目の「メトロ2033」が特に強かったと感じた。今回、最後に公開されたゲームプレイ映像は「メトロ2033」での閉鎖空間での生き残りの感触がして、期待値が上がった。そして"実際の戦場"となってしまったキーウに拠点を持った4A Gamesは「メトロ 2039」にどのような想いを託しているかも気になるところだ。大いに期待したい。