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むせかえるようなロシア臭がたまらない「Metro Exodus」プレビュー
「S.T.A.L.K.E.R.」の遺伝子を感じさせるオープンワールド風アポカリプスシューター
2018年6月15日 14:07
E3 2018では、「The Last of Us Part II」や「The Elder Scrolls VI」、「DEAD OR ALIVE 6」など、久々のカムバックを遂げたタイトルが多く、オッサンゲーマーにとっては楽しい年だった。やはり、続編はもうない、あるいはまだ時間が掛かると思われていた作品の新作が発表されるのは嬉しいもので、“新作の発表をじっくり待つ”というのもこの業界の楽しみ方のひとつだ。
今回取り上げる「Metro Exodus」もそういったタイトルのひとつだ。シリーズ第2弾「Metro: Last Light」が2013年にリリースされてから、実に6年も経過している。この間、もともとIPを持っていたTHQの倒産や、Deep Silverへのパブリッシャーの変更、プラットフォームの境目だったことから既存IPのHD化からスタートしたことなどから、新作の噂が出ては消えるということを数年繰り返していたが、ようやくE3 2017で正式発表。今年のE3ではついに2019年2月発売と発表され、初のプレイアブルも実施されたので、インプレッションをお届けしたい。日本での取り扱いは未発表だが、過去のシリーズの例から言えばスパイク・チュンソフトからの発売になる可能性が濃厚だ。
ベースとなっているシリーズ第1弾「Metro 2033」は、20世紀後半に起こった核戦争により汚染されたモスクワを舞台にしたドミトリー・グルホフスキー原作のSF小説「Metro 2033」のゲーム化作品で、「Metro Exodus」は「Metro Last Light」に続くシリーズ第3弾となる。原作小説は「Metro 2033」、「Metro 2034」、「Metro 2035」と続いており、ゲーム版は「Metro 2033」、「Metro Last Light」、「Metro Exodus」と少しずつ名前を変えながら、「Metro」の基本構造はそのままに、SFゲームとしての想像の翼をより大きく広げている印象だ。
デベロッパーの4A Gamesはウクライナ キエフを拠点としたデベロッパーで、「S.T.A.L.K.E.R.」の開発元として知られるGSC Game Worldを前身としている。このため2017年の発表直後から、GSCの代表作である「S.T.A.L.K.E.R.」っぽさを指摘されていたが、実際プレイしてみると、確かに「S.T.A.L.K.E.R.」の影響が強くなっている。
2007年にリリースされた「S.T.A.L.K.E.R.」は、当時としては画期的なオープンワールドスタイルを採用し、その中で自分の判断で自由にゲームを進めていけるサンドボックスゲームだった。この部分を「Metro Exodus」に大胆に取り入れ、「Fallout」のようなオープンワールド風の遊び心地を獲得している。
“風”と書いたのは、「Metro Exodus」は「Grand Theft Auto」や「Fallout」のように完全なオープンワールドでなく、「Metro Exodus」は列車でロシアを旅しながら、幾つかの広大なフィールドを旅するゲームになっているためだ。
「Metro Exodus」は、2036年、前作「Metro Last Light」の後のストーリーになっており、主人公のアルチョムら一行達は、列車オーロラ号に乗り込み、凍結した広大なロシアの大地を東進していく。ロード画面には「Metro Exodus」で旅する路線図と目的地らしい記述がロシア語で描かれており、若干例が古くて恐縮だが、「銀河鉄道999」において星野鉄郎が幾つかの星を巡りながら旅を続けたように、「Metro Exodus」も幾つかの地点で停止しながら、トラブルを解決したり、人びとの悩み事を聞いたり、敵対的組織のいきなりの襲撃から身を守ったりしていくようだ。
ちなみにトレーラーやスクリーンショットでは、“冬のロシア”が強調されているが、よく見ると気づくように季節は冬に限定していない。列車で旅を続けることで季節が変わっていくようで、ロシアならではの四季が堪能できるようだ。
今回のデモプレイでは、オーロラ号がロシアの荒野を疾走するシーンからはじまり、大きな橋に差し掛かるところで障害物により停止させられてしまう。アルチョムは指揮官から指令を受け、列車を降りて周囲を探索する任務に就くことになる。与えられたアナログマップに、だいたいの赴くべき場所は書き示されるが、すぐ行くか、周囲の散策から始めるかはプレーヤーの自由だ。正直に告白すると、筆者は“当然”周囲の散策から始め、それだけで50分の試遊時間をほぼ使い切ってしまい、目的地でのイベントシーンを危うく見逃すところだった。逆に言えばそれぐらいのオープンワールド感はある。
周辺から話を進めると、周囲には核戦争で破壊された当時の状況のまま、鉄道やトラック、船、家屋などが点在し、内部を散策すると素材が獲得できる。素材を使って武器を改造したり、アイテムを作成したりでき、このあたりの設計は「Fallout」をはじめとする他のアポカリプスゲームと同じだ。極めて限られた素材でやりくりしていかなければならないため、戦闘はスニークアクションが基本となる。
デモでの目的地は、湖の北側にある教会のような施設。アルチョムは湖に接舷されたボートを使って赴く。ここはまさにE3 2018トレーラーでずっと喚いている謎の指導者がいる拠点で、見張り役に歓迎されたと思いきや、謎の指導者の演説が終わると同時にボートごと施設内に閉じ込められてしまう。万事休すかと思いきや、子供の呼び声に促されるままに施設の最上階に駆け上がると、囚われている母子がいて、脱出の手助けをしてくれる。
アルチョムは銃を手にしているため、最初は銃での突破を目指したが、すぐ弾が足りなくなり、やはりスニークアクションで倒しながら素材を回収しながら進むのがセオリーだ。ただ、スニークアクションの部分は、まだゲームとして作り込みが甘く、バグも散見され、その醍醐味を十分堪能するには至らなかった。ここの評価については先送りとしたい。
それにしてもプレイしていて感動したのは、E3 2018トレーラーでも実感できると思うが、ひとつひとつのオブジェクトの描き込み、一部屋一部屋の描き込み、そして風景全体としての完成度が半端ではないところだ。長い長い営みを感じさせる濃厚な生活臭や、その地の文化、住人の好みまでも濃厚に感じさせてくれる。
このゲームの最大のライバルとなるのは「Fallout 4」になると思われるが、全体の量はさすがに完全オープンワールドの「Fallout 4」に軍配が上がると思われるが、個々の質で言えば「Metro Exodus」のほうが上だ。しかも日本人にとってより馴染みの薄い、スラブ圏独特のカルチャーは極めて新鮮で、むせかえるようなロシア臭がたまらない。
圧倒的な没入感と、浸りきることの楽しさからあともう少し、あともう少しと遊び続け、気づいたら30人ほどが入れる試遊エリアには筆者しか残っていなかった。担当者に肩を叩かれなければ、すべてをかなぐり捨てて遊び続けたであろうことは想像に難くない。このゲーム、「Fallout 4」や「The Last of Us」のようなポストアポカリプスゲームのファンにとっては最高の贈り物だ。