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【特別企画】新型ゲームコンソール「Apple TV」を徹底的に遊び倒す!!

ゲームするなら「Nimbus」は必携。「Rayman」や「Beat Sports」など良作も発見

10月30日発売



価格:18,400円(税別)より

 Appleが10月30日より発売を開始した新型のセットトップボックス「Apple TV」。“TVを新しい次元に引き上げる”と同社が意気込む小さな黒い端末は、Appleが得意とする音楽や映像の視聴端末としてだけではなく、A8と呼ばれるiPhone 6に搭載されたものと同等の64ビットのパワフルなチップを搭載し、タップ/スワイプ及び音声認識にも対応した新型コントローラー「Siri Remote」を標準装備、さらにtvOS向けのネイティブアプリが動作するようになり、かつ専用のApp Storeも用意されたことで、名実共にゲームコンソールとしても機能するようになった。

 歴代のApple TVがこれまで提供してきた音楽、映像、情報端末としての機能については、僚誌AV Watchのレポートをはじめ、様々なメディアでレポートされているので、本稿では、そのあたりの情報はあえてバッサリ削り、“ゲームプラットフォームとしてのApple TV”に特化してレポートをお届けしたい。

【Apple TV遊び倒しキット】
「Apple TV 64GB」、「Nimbus Wireless Controller」、「HDMI to HDMI Cable」、「Remote Loop」

【Apple TV開封の儀】
Appleプロダクトらしく、随所に所有欲をくすぐるギミックが凝らされている
iPhone 5s、iPhone 6と比較。Siri Remoteは、iPhone 5sをスリムにしたぐらいのサイズだ

“ゲームプラットフォームとしてのApple TV”は何がどのように遊べるのか?

Apple TVのホーム画面
すべての操作はSiri Remoteで行なう

 まず、“ゲームプラットフォームとしてのApple TV”の基本機能についてだが、Apple TVは、tvOSと呼ばれる、iOSと似て非なるApple独自のOSで動作するセットトップボックスとなっている。別売のHDMIケーブルでTVに接続し、同梱のリモコンSiri Remoteで操作する。アカウントは既存のApple IDがそのまま使用でき、詳しくは後述するが、iOS/tvOSでマルチプラットフォーム展開しているタイトルなら、いずれかの端末で購入していれば、別のOSでもそのまま無料でダウンロードできる。

 ゲームプレイの基本的なインターフェイスとなるのは、Siri Remoteだ。tvOS専用のApp Storeで提供されるすべてのゲームアプリは、Appleが定めるガイドラインに従い、Siri Remoteだけで遊べるようになっている。標準的な持ち方である片手、縦持ちを基本に、レースゲームなどは両手、横持ちで、Siri Remoteをハンドル代わりにして左右に傾けて遊ぶ。あるいはしっかり利き手に握り込み、ラケット代わりに振り回すこともできる。

 縦持ち、横持ちに関わらず、操作の基本となるのは、iOSアプリと同様にタップ/スワイプ操作となるが、Apple TVでは、これをSiri Remoteで行なう形となる。Siri Remoteの上部エリアが丸ごとタッチパッドになっており、親指をスライドさせることで、カーソルを操作したり、キャラクターをその方向に走らせたりできる。

 アクションは、タップ操作もしくは、タッチパッド全体を押し込むクリックで行なえる。クリックはタッチパッド中央をグッと押し込む感じで、スライド操作でキャラクターを操作しながら実行するのは結構難しい。このため、ほとんどのゲームではタップ操作でアクションが行なえるようになっている。

 Siri Remoteの操作感は、Appleのデバイスだけに、iPhoneのタッチ操作や、Macのスライドパッド操作と同等に非常に滑らかで満足のいくクオリティだ。ただ、ゲームに限って言えば、縦持ちの場合、親指1本での操作となり、横持ちでもそもそも使えるボタン数が限られる上、十字キーがないなど、物理的な制限が多い。このため、ゲームパッドで遊ぶコンソールゲームや、両手で遊べるモバイルゲームと同じ事はできない。こればかりは最先端のSiri Remoteといえども、ハードの制約上致し方ないところだ。

 ただ、ゲームコンソールなんだから、リッチなゲームも遊びたいよ! という当然のニーズに応えるために、周辺機器も用意されている。ひとつはiOS向けにゲームコントローラーを提供しているSteelSeriesからApple TVに特化したMfi対応コントローラー「Nimbus」、もう1つはSiri Remoteをうっかりぶん投げてTVに突き刺さらないようにするためのストラップ「Remote Loop」だ。

MFi対応デバイスはすべて対応している

 ゲームコントローラーについては、「Nimbus」以外でも、AppleのMFi認証を受けたiOS用ゲームコントローラーはすべて使うことができる。ただ、比較対象として使った姉妹モデル「Stratus」では、絶えずわずかなラグを感じたため、デザインや持ちやすさ以前の問題で、「Nimbus」が優れていると感じた。

 正直、「Nimbus」の8,400円(税別)というPS4やXbox Oneコントローラーを上回る価格設定はちょっと高いなという気もするが、登録も簡単で、ラグも感じず、充電もライトニングケーブルで行なえるなど、使い勝手の良さは群を抜いている。Apple TVでゲームをやるなら「Nimbus」はマストアイテムと言っていい。

【Nimbus Controller】
Apple TVと同時発売されたゲームコントローラー「Nimbus Controller」。電源を入れれば即座に認識され、Apple TVのホーム画面から音楽や映像の視聴操作をはじめ、すべての操作をNimbusで行なうことができる。ゲーマーはSiri Remoteよりこちらの方が使いやすいと感じるかもしれない

【「Nimbus」と「Stratus」を比較する】
SteelSeriesの姉妹モデルとなるMFi対応コントローラー「Stratus」と比較。大枠の外観は似ているが細部にはかなり違いがあり、持ちやすさやボタンの扱いやすさを含め、全体的にパワーアップしている。ライトニングケーブルで充電できるのも嬉しいところ。「Nimbus」はMFiデバイスとしてiOSにも対応しているので、これから買うなら文句なしに「Nimbus」がオススメだ

【Remote Loop】
「Remote Loop」はSiri Remote専用ストラップ。ライトニングコネクタに接続する仕様になっている。iPhoneをはじめ他のライトニングコネクタ採用デバイスでは、左右突起を引っかけるギミックがないため使えないのが残念だ

 次に肝心のゲームについて。Apple TVで遊べるゲームは大別して2種類ある。1つはtvOS向けApp Storeから入手できるゲームアプリ。もうひとつはAirPlay対応端末をストリーミングでプレイする方法だ。

 メインとなるのは、もちろんゲームアプリのほうだが、AirPlayを介してiPhoneのゲームをそのままTV画面に映し出してプレイできるのは、実際にやってみると想像以上のインパクトがある。

 ただし、AirPlayではストリーミング状態でのプレイとなり、コンマ数秒のラグが常時発生するため、レースやアクション、FPSといったコンマ数秒を争うゲームを遊ぶのには向いていない。据え置き型ゲームコンソール風に遊ぶためにMFi対応のゲームコントローラーで遊ぼうとすると二重にラグが発生するため、いよいよ正常なゲームプレイが難しくなる。

 実際にプレイした感じでは、「キャンディクラッシュ」や「ディズニーツムツム」などのそれほどシビアな操作を要求されないパズルゲームなら、大画面による迫力あるゲームプレイが快適に楽しめる。「太鼓の達人」あたりでもうラグが致命的で、レースゲームの類いはほぼゲームにならない。AirPlayに関しては、無理に遊ぶよりは、映像と音をTVに出せるメリットを活かしてパーティー時のビューアーとして活用するのが楽しいかもしれない、といった印象だ。

【AirPlayでiOSゲームを遊ぶ】
「チェインクロニクル」(セガゲームス)を46型TVに出力してみた。iPhone 6 Plusと比較していかに大きいかがわかる。サウンドも大迫力だ
iOSアプリのベストセラータイトルを幾つか走らせてみたが、RPGやパズルゲームなどはAirPlayでもゲームになるが、「太鼓の達人」や「アスファルト8」のようなコンマ数秒の反応が試されるゲームはラグの影響で正常なプレイが厳しい。「星のドラゴンクエスト」のような縦持ち専用タイトルとも相性が悪い

ゲームばかりガッツリ入れてみた後のホーム画面

 さて、本題となるゲームアプリについて。Apple TVは初回起動時は、Apple製アプリしか入っていないため、ゲームについてはApp Storeに接続してアプリをダウンロードする必要がある。10月30日時点で登録されているゲームアプリは30弱ほど。これを多いとみるか少ないとみるかは微妙なところだが、Apple TV向けにアプリを提供するためには、「tvOSでも配信する」のチェックボックスをオンにすればいいという単純な話では無く、Appleが定めたSiri Remoteインターフェイスにキッチリ対応させる必要がある。それを踏まえて考えれば、まずまずの数字と言っていいかもしれない。

 まず最初にiPhoneで使っているApple IDを登録し、App Storeの「おすすめ」の項目で目に入ったゲームアプリを手当たり次第、どんどんインストールしていった。都合24個ほどのゲームアプリをインストールしたが、そのうちiOSとの共通アプリは21ほど。残る1つがtvOS専用アプリ(「Beat Sports」)、2つがiOSでは日本未配信タイトル(「Rayman Adventure」、「Spin Sports」)ということになる。共通アプリは無料ダウンロードできるため、ちょっと得した気分になれる。ただし、大半は無料アプリで、高くても1,200円(「Beat Sports」)ほどと、今のところお財布に優しいゲームプラットフォームだ。

【ゲームアプリはApp Storeから入手】
今回は「おすすめ」に表示されているゲームを片っ端からインストールしてみた

tvOS版「アスファルト8」では、新しいコースをプレイする度にダウンロードが挿入される。これはiOS版にはないギミックだ

 ひととおりダウンロード作業が終了した後、ひとまずどれぐらいストレージを使ったか確認しようとしたところ、全部合わせてもわずか数GB程度しか使っていないことがわかった。これはアプリのサイズが最大でも200MB以下に制限されているためで、アプリサイズは、tvOS版のほうが小さくなっており、「Transistor」のように場合によっては1/10以下にまでサイズを小さくしているタイトルもあった。減った分のデータはどこに消えたのかというと、消えたわけではなくゲームプレイ直前にその都度ダウンロードする形を取る。このため、Apple TVではゲーム起動直後に多少待たされたり、レースゲームなどは新しいコースを始める度にダウンロードが挟まれることになる。

 一見、ゲーマーにとってはイラッとさせられる仕様だが、PS4やXbox Oneといったゲームコンソールでも、初回起動の前にインストールが必須で、場合によってはインストール直後にかなり大きなアップデートが入ることも少なくない。スマホゲームでも、起動時のローディングが結構長かったり、定期的に強制アップデートが掛かってしばらく起動できなかったりするから、実は大して変わらないのではないかと思うし、むしろ、Apple TVはストレージの残量をほぼ気にすることなく、ホーム画面にたっぷりゲームを並べられる分だけ、今の時代に合っているような気もする。

 ただ、ひとつ確実に言えそうなのは、今回Apple TVは64GBモデルを使ったものの、ストレージを意識しなくてもガンガン遊べる仕様になっているため、32GBモデルでも十分ではないかいうことだ。この点、使い方によって大きなサイズのモデルが推奨されるiPhoneやiPadとは、デバイスとしての設計がまったく異なる印象だ。

【tvOSアプリはストレージに優しい設計】
ガッツリ入れた後、冷静になってストレージ使用量をチェックしたところ、すべて200MB以下で、数GBしか使っていなかった。たとえば「オーシャンホーン」はtvOS版は189MBだが、iOS版は351MB。「Transistor」に到っては162MBしか使っていないが、iOS版は1.84GB。1/10以下のサイズになっている

(中村聖司)