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【必見! エンタメ特報】感情と記憶の全肯定! 映画「インサイド・ヘッド」
大人、感涙必至! 少女の心の揺らぎを繊細に追う傑作ピクサー作品
(2015/7/18 00:00)
感情や記憶など、頭の中の動きを具現化したら……。7月18日に公開のピクサー映画作品「インサイド・ヘッド」は、そんな「もしも」に挑戦した作品だ。
本作で描かれるのは、11歳の少女ライリーと、その頭の中の感情たち。頭の中には司令部があって、ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリという5人の“感情”たちが指示を出すことで、ライリーの感情表現が変わっていく。
感情たちの性格はわかりやすく、見た目と名前通りヨロコビは超ポジティブ、カナシミは超ネガディブ、イカリは怒りや闘争心を剥き出し、ムカムカはイラつきや嫉妬心を持ち、ビビリは恐怖に怯えてばかり、といった感じ。
映画はライリーが誕生した瞬間、ヨロコビも同時に生まれたところからスタートする。ライリーが喜びを感じる度に「喜び」の記憶が溜まり、悲しいなら「悲しみ」の記憶が溜まる。中でも大事な記憶は特別な場所に置かれて、「おふざけの島」や「友達の島」、「家族の島」といった人格の“島”の形成に大きく作用する。そうした脳内の構造も説明されながら、ライリーの11歳までの成長が一気に描かれる。
ライリーは両親の寵愛を一身に受け、ふざけあい、喜び合い、明るく元気に育っていく。ライリーが幸せを感じる度に頭の中の構造が豊かになっていって、この冒頭でライリーがいかに幸せに育ってきたかが視覚的にも伝わってくる。感情という第3の保護者の立場でライリーを見守りながら、「良い子に育ったね……」と本当に思えるので、このシーンでいきなり泣けてしまう。
監督を務めるピート・ドクターの過去監督作「カールじいさんの空飛ぶ家」でも、カールとその妻となるエリーとの出会いと成長、幸せな結婚生活、そして悔いを残した形での死別という、胸を締め付けるような悲しいストーリーを冒頭のモンタージュ映像で描いていた。そこから始まるのが「カールじいさんの空飛ぶ家」の力強いところなのだが、監督の「冒頭泣かせ」が本作でも炸裂しているのは面白い共通点と言える。
映画はライリーの生活と感情同士の掛け合いが同時に進み、感情たちの会話はそのままライリーの思考となっている。感情たちはそれこそキャラクターが立っているので、ボケたりかわしたりとコメディ要素が満載。そのため表現として見た目はコミカルなのだが、引いた視点で見ると、ライリーの細やかな感情の揺らぎが、その掛け合いの中に凝縮されていることがわかる。本作が優れているのは、ファンタジックでありながら、内容はとても現実的だという点だ。
ストーリーの主軸となるのは、そんなライリーに訪れる試練だ。ライリーはカナダに近いミネソタの田舎町でのびのびと育ってきたのだが、父親の新規事業のために都会のサンフランシスコに引っ越してくることになる。しかし引っ越しの荷物は届かないし、新居は狭くて汚いし、不安は募るばかり。
極めつけは、それでも頑張ろうと奮起した学校初日の自己紹介。ライリーは自己紹介の途中で泣き出してしまい、学校に馴染むことに失敗してしまう。ライリーへのダメージは大きく、同時にヨロコビとカナシミはある事故によって司令部を放り出されてしまう。
ヨロコビとカナシミを失い、歯車が狂ったライリーは何もかもが上手く行かず、これまで形成されてきた人格の島がどんどんと崩壊、精神面での危機に瀕してしまう。ヨロコビとカナシミは、ライリーを救うためにも、頭の中の未知の世界を冒険し、一刻も早く司令部への帰還を目指すこととなる。
本作のもう1つの優れている点は、この頭の中の構造表現だ。司令部を飛び出すと記憶の倉庫のような場所があるのだが、そこで捨てる記憶、残しておく記憶を選別する職員がいたりする。また巨大ポテトフライが山積みになっているような空想世界のエリア、トラウマ級の恐怖を押し込めた潜在意識の牢屋、そして不必要となった記憶を消すための墓場もあって、脳内の構造が緻密かつわかりやすく表現されて、これらの地を巡る冒険が時に楽しく、時にスリリングに描かれる。
脳の機能で最も切ないのは、「忘れる」ことだ。ヨロコビたちにとってはどの記憶も大事な思い出だが、記憶の取捨選択は必ず起こっていく。一方で、一時は大事にしていた空想や思い出と「決別」し、それを糧として新たな世界を構築していくことを成長と呼ぶ。本作でもそういった「決別」は起こるのだが、ただ悲しいだけでなく、それはライリーの確かな成長にも繋がっていることがわかるため、より泣ける「決別」になっている。詳しくは語らないが、この部分は本作最大のメッセージとなっているので注目していただきたい。
ライリーの人格の危機をベースとして、感情たちの掛け合いや脳内の冒険は子供の視点からも賑やかで楽しいと思うし、大人が見れば自身の成長過程に照らし合わせて感涙必至という大仕掛けが待っている。感情と記憶を全肯定で視覚化した「インサイド・ヘッド」は、おもちゃが命を持っていたら……という「トイ・ストーリー」以来の発明だと少なくとも筆者は思っているので、ぜひ劇場でご覧いただきたい!
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