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「FFXIV: 蒼天のイシュガルド」正式サービス直前インタビュー

いよいよ「蒼天のイシュガルド」がスタート! 「2.x」と「3.x」で世界はどう変わる?

いよいよ「蒼天のイシュガルド」がスタート! 「2.x」と「3.x」で世界はどう変わる?

スクウェア・エニックスブース
E3初日の朝に実施されたスクウェア・エニックスのプレスカンファレンスでも「FFXIV」がアピールされていた
今年のE3では「蒼天のイシュガルド」の試遊を展開していたが、吉田氏はあまり好みの出展ではなかったようだ

――「蒼天のイシュガルド」のアーリーアクセスが、アメリカの時間だと、あと14時間後、E3最終日の深夜ですよね。スタート目前になりましたが、今の感想は?

吉田氏:現実感がないです(笑)。かなり準備はしてきましたが、正直、初速の流入速度は、予測をしていたとしても、必ずそれが現実になるわけではありません。日本では平日金曜の午後6時ですが、どのくらいの方が学校を休んだり、有休を取られているかはカウントできないので、どうしても予測とのブレが出てしまいます。その点はふたを開けてみるまでわかりません。それに応じて臨機応変に対応していくのが1番いい方法なので、その準備はしてあります。

――今回、E3に合わせて実施させていただいたインタビューを読まれた読者からは「高まってきた!」という独特の表現で、その期待感を示す方がいましたが、非常に期待度の高いエキスパンションだなと感じています。改めて「蒼天のイシュガルド」の魅力、一言で表現すると何だと思いますか?

吉田氏:ありがとうございます。PLLの最後でもお話ししましたが、「最新のファイナルファンタジー」というキーワードがそれに当たるかなと思います。RPG1本分のボリュームにしたつもりではあるので、「FF」ナンバリングの新作が来た、というぐらいの感じで受け取っていただけるとありがたいです。

――前回のインタビューの吉田さんの発言で印象的だったのは、「FFXIV」の拡張パッケージは、「FFXI」のそれとは違うというものです。両者の拡張パッケージは本質的に何が違うんでしょうか?

吉田氏:システムアップデートが行なわれ、新規マップのリソースは追加となりますが、その後のアップデートでそれらの新要素が徐々に解放されていくのが「FFXI」式だとすると、欧米のMMORPGタイトルのエキスパンションは、いきなり大量の新フィールド、新種族、新クラスがドバッと入ってくるので、ローンチしたときのようなテンションで遊べるというところでしょうか。いずれが良いか悪いかではなく、拡張といいつつ拡張という規模には留まらない欧米方式の拡張パッケージ。あとはその物量やメインストーリーのボリュームを、どれだけ他よりも出せるか、というのが今回のコンセプトでした。

 ドンと追加されたものに、さらにどんどん上乗せしていく。そこが明確な違いです。日本のMMORPGユーザーは「FFXI」のイメージが強いと思うので、今まで「FFXI」をプレイされていたり、「FFXI」を引退された方が、“拡張パッケージ”と聞いたときのイメージを変えて貰いたいなと思ったのです。逆に言うと、それぐらい「FFXI」の影響は偉大だと認識しています。

――「蒼天のイシュガルド」時代における「FFXIV」の遊び方、楽しみ方は、これまでとどう変わりますか?

吉田氏:やはりフライングマウントでしょうか。空島の探索という遊びもそうですし、3.xシリーズでは今までの「FFXIV」になかった方向の遊びを追加していきたいと考えています。そのための「拡張」です。リソースもシステムもパッチでの短い開発サイクルではなく、ある程度長期間掛けるからこそ実現できた「拡張」で、新しいコンテンツを作って行くということです。

――「蒼天のイシュガルド」を買おうかどうか迷っている方もいると思います。「蒼天のイシュガルド」を拡張することによって新エリアや新ジョブが遊べるというのはわかりやすい違いのひとつですが、それ以外に、2.0のままでは遊べないコンテンツというのは何がありますか?

吉田氏:単純にイシュガルド地方に行くことができないので、その点と、やはりフライングだと思います。あとは、インタビューでも海外ドラマに例えるのですが、「蒼天のイシュガルド」は言わば“シーズン2”ですので、パーティーを組んでみんなで遊ぶゲームですし、「3.0」を導入した方が、あまり大きな優越感を持たれるのもよくないですので、そこはあえて違いを最小限にして、新旧のプレーヤー同士がすぐ混ざるように工夫はしたつもりです。

――「3.0」が始まることで、「2.0」ベースの既存エリアに、何か変化は起きますか?

吉田氏:エリア的、構造的な変更は何もないです。ただ、今回描画エンジンの調整が入るので、見た目はこれまでと少し変わりますね。

――どう変わるのですか?

吉田氏:ちょっと夜が沈む感じになりますね。より雰囲気が出るというか……。

――それはDirectX 11版だけ変わるという話ではなく、PS3版、PS4版でもという話ですか?

吉田氏:はい、そうです。全ハードで変わります。

――なるほど、細かい話ですが、たとえば「2.0」のダンジョンには、まだハード化されていないものがありますが、それらは「3.x」でハードダンジョンが実装されることもありますか?

吉田氏:ハード化されていないダンジョンは、オーラム、ゼーヴェル、タムタラだと思いますが、それらはいずれも「旧FFXIV」のダンジョンです。「旧FFXIV」のダンジョンはハード化する予定はありません。これは以前もお話ししたことがありますが、「旧FFXIV」のダンジョンは、「新生FFXIV」のレギュレーションに則ってないんです。ゆえにハード化しようとするとかなりコストが掛かることと、ハード化してもおもしろくなりにくいことが理由です。

――なるほど。それでは「2.0」のダンジョン拡張については、基本はもう終わりですか。シリウスなどの高難易度ダンジョンのハード化もない?

吉田氏:シリウスなどのハード化は、まだやっていく余地があるかなと思っています。「2.0」エリアに行く用事がまったくなくなって、エリアが死んでしまうのも嫌ですので、既存要素をうまくコンテンツ化していくというのは今後もやっていくと思います。

――2.xシリーズはパッチ2.57まで続きましたが、3.0はいくつ刻む形になりますか?

吉田氏:ある程度はもう決まっていますが、まだそれはお話しする段階ではないかと(笑)。

――ふんわりヒントだけでもお願いできませんか。

吉田氏:次のエキスパンション「4.0」を作るタイミング次第です。ただ、今回と同じぐらいの時間は掛かるかなというイメージではいます。なんとなく2.xシリーズと似たようなサイクルになるのかなと思っていただいていいと思います。

 「4.0」もできるだけ早くお届けしたいのですが、コンテンツやボリュームが少ない拡張になってしまうのもちょっとなあという想いがあるので、そうなるとどうしても制作期間は掛かりますね。その制作期間中はメジャーアップデートで楽しんでいただくという形になります。あとは「蒼天のイシュガルド」をプレイした皆さんのフィードバックを見てから、次の方向性を決めたいという部分もあります。要素は減らしても「拡張のサイクルを短くして欲しい」のか、「やっぱりこれぐらいは欲しいよね」なのか、そこは皆さんの反応が見てみたいなというところですね。

――E3についてですが、今年のE3ではこれまで吉田さんが「やりたくない」と広言していたフリープレイを実施していましたが、実際にやってみていかがでしたか?

吉田氏:うーーーん。まだ、E3開催中で、USのスタッフとポストモーテムをやっていないので、今発言するのもどうかと思うのですが……好き嫌いでいえば、やはり僕はこのタイプの試遊はあまり好きではないです。良い悪いじゃなくて好きじゃない。エキサイトメントが出ないし、第三者がモニターを見ても「おおっ」とならない。既存のユーザーの方が黙々とプレイして新要素を知る場になってしまうので、従来のMMORPGにおけるPCを並べて単にハンズオンするというPR手法は今の時代に合わないと思います。

 やはり2.0側のコンテンツだったとしても、Tシャツをかけたバトルチャレンジを2/3で展開し、新要素をフリープレイできるPCを残り1/3で展開するなど、ミックスするのが今後は良さそうだと感じました。「FFXIV」はPLLもそうですが、色々なPR手法にチャレンジするタイトルでもありますので、今後も色々なトライをしていきたいと思います。

――その副作用として、フレアやホーリーの説明文から調整が行なわれていることが報告され日本のコミュニティでも盛り上がっていましたね。今回の既存アクション・魔法の調整の意図を聞かせていただけますか?

吉田氏:それは実際にプレイして頂き、レベル60のキャラクターが、どれぐらい強烈なダメージを出すのかを体験して頂かないとわかって頂けないところだと思います。だからこそパッチノートにも記載しませんでした。ただ、ホーリーやフレアの調整は、ざっと反応を見た限りでは、「妥当だなあ」とか「まあ仕方ないか、強すぎたもんね」というお声のほうがやや多いかなとは感じました。

――皆さんはフレアやホーリーの下方修正を覚悟していたところがあると?

吉田氏:フレアやホーリーについては、インスタンスダンジョン(ID)に行ったときのジョブ格差になりすぎてしまったと反省しています。口にしないまでも「黒魔や白魔がいないと、若干がっかり」感じられてしまうのは、やはり良くないと思っています。これがレベル60の火力になると、より一掃顕著になってしまうので、レベル60の火力を抑えるのではなく、気持ちいいダメージが出せる分、トータルダメージの調整をするということで、この2つの範囲魔法に変更させて頂きました。

――私はフランスのメディアイベントで体験しましたが、確かにレベル60のキャラは半端ないダメージで別ゲームのようでした。

吉田氏:そうですね、その分だけやはりレベル60の火力と合わせて、はじめて納得がいく調整が多いと思います。言葉ではどうしても素直には受け取っていただけません。もうすぐプレイできますので、ぜひその眼で確認してみていただければと思います。

 ジョブの特性、範囲に強いといった特性を丸ごと消す調整ではありません。僕らは敵の最小単位を“パック”と呼んでいて、このパック単位で敵を殲滅していくのは範囲特性だと考えています。しかし、今は黒魔道士のフレアや白魔道士のホーリーが強すぎるがゆえに、複数のパックをまとめて連れてきて殲滅するという戦い方が増えてきていて、おもしろさとはかけ離れ始めていたので、軌道修正したということです。

――朗読会では、ステータスの調整が発表されましたが、この調整の意図と、なぜこのタイミングになったのかを教えて下さい。

吉田氏:やはりレベル60を見越してのものです。今まで効果が薄すぎたものの効果拡大と、効果が強すぎたものの平均化。そして2.xの期間にプレーヤーの皆さんから頂いたフィードバックの反映、という2方向からの調整になります。

――2.0シリーズも、2年近くという長きに渡って続いたので、その間に調整しても良かったようにも思いますが。

吉田氏:有効パラメータをレベルキャップ開放と別のタイミングで行なうのは、すべてのバランスを崩してしまう可能性が高いのです。装備のパラメータ全再確認となり、2.xシリーズ中に見積もっていたバトルの数値上昇率もすべて見直しになっていしまいます。

 レベルキャップが60になるとレベル50は通過点になるため、レベル50でのキャップバランスは気にしなくてよくなくなります。あとは一部のパラメータのみに有用性が際立たないように、フィードバックいただいた部分をしっかり再計算した上で実装するためにも、時間が必要になるためです。

――それでは3.0以降では、各ジョブ毎に、基本セットとなる装備はガラッと変わってきそうですね。

吉田氏:MMORPGなので、コンテンツが追加されていき、プレーヤーの皆さんの遊び方によって、変えていく必要があることも多いです。また、変化を恐れすぎても新しい遊びを提供しにくくなってしまいますし、拡張パッケージごとに、ある程度の変化があると認識していただければと思います。

――今のベスト装備は、3.0が始まった瞬間にベストではなくなるわけですね。

吉田氏:はい。もちろん今のベストを維持しても、しっかりダメージや敵視が取れるようにしてありつつ、ベストオブベストではなくしてあります。長くゲームを続けるには、新しい「刺激」によって、モチベーションや体験がリフレッシュされる必要があると考えています。もちろん、その一方で、長い期間慣れ親しんだものが、「変わってしまう怖さ」も間違いなくあります。人生でも「変化」は期待感と共に怖さもありますが、変わらなければ、つまり一歩踏み出さなければ、今より楽しいことはなかなか得られないと思うので、変えていく必要があると思ったものは、慎重にではありますが、大胆に変えていきたいなと思っています。

 もちろん、僕たちはいたずらに「変化を起こしてやるぜ!」と思って変えているわけではなくて、頂いたフィードバックを数学的に精査した上で、これならば開発的にも、プレーヤーの皆さんとしても、最終的には納得がいくだろうというラインで、変化を作るようにしているつもりです。

(中村聖司)