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【特別企画】“ガンダムの艦船”にフォーカス、「コスモフリートスペシャル」の魅力に迫る!

高倉氏の取り組み。「きちんと意味を考え、自分の中で納得のいくものを目指す」

高倉氏の取り組み。「きちんと意味を考え、自分の中で納得のいくものを目指す」

メガハウス ライフホビー事業部シニアエキスパート高倉康二氏。言葉の端々から仕事に対する強いこだわりが感じられる
「コスモフリートスペシャル」はMSのミニフィギュアが付属。船とMSのスケールはばらばらだった
「コスモフリートスペシャル」は1度に5つの商品を展開、「機動戦士ガンダム」をモチーフとしたシリーズは現在第7弾まで続いている

 「コスモフリートスペシャル」の出発点は2005年から始まった「宇宙戦艦ヤマト」の「コスモフリートコレクション」となる。「コスモフリートコレクション」は全長7cmほどの完成品モデルで、ブラインドボックス形式で提供され、5種類のうち1つが入っている。“食玩ブーム”に合わせ、コレクション性の高い商品を目指してスタートした。そして独自性を出すために“艦船”をモチーフにすることにしたのだ。

 「艦船をモデルに、複数の種類が展開でき、なおかつ多くのユーザーに支持される作品としては、『宇宙戦艦ヤマト』だろうということでスタートしました」と高倉氏は語った。結果、「宇宙戦艦ヤマト」は売れ行き好調で、その後「機動戦士ガンダム」シリーズのへと展開を広げ、現在に至る。

 「ガンダム」では主役はあくまでMSであり、プラモデルも含め、艦船モデルの商品が少なかった。「コスモフリートコレクション」では、艦船と共に象徴となるMSのミニフィギュアをセットにした。このシリーズは再販も行なわれ、2013年まで続いた。そして、より大きく、こだわりを活かした商品として「コスモフリートスペシャル」がスタートしたのだ。

 前ページで触れているが「コスモフリートスペシャル」では商品サイズが倍になり、素材もより細かい表現が可能なものになったために、造形や各部のディテール表現がより作り込んだものとなっている。ちなみに「コスモフリートコレクション」では、ネェル・アーガマは通常のものに加え、劇中で大きな被害を受けた“ダメージバージョン”もあり、「コスモフリートスペシャル ネェル・アーガマ」は3回目の立体化になる。これまでのノウハウを活かした商品になっているという。

 また、「コスモフリートコレクション」ではリーンホースJr.の前身となる「リーンホース」を立体化している。リーンホースは劇中改修を受け、3つの戦艦をミックスしたリーンホースJr.となる。リーンホースJr.はその後半の印象的な活躍で人気が高いのだが、「まず商品化するなら、リーンホースだろう」という高倉氏の判断でシリーズにはリーンホースが加えられた。「コスモフリートスペシャル リーンホースJr.」はその時の思いを受けた形の、念願の商品化なのだという。

 「コスモフリートコレクション」は1度に5から6種類を混載できるところに面白さがある。ガンダムをモチーフにしたシリーズは第7弾まで続いた。その間多数の艦船がモチーフとなり、ネェル・アーガマのダメージバージョンやコミック「機動戦士クロスボーンガンダム」に登場した「マザーバンガード」といった戦艦も立体化している。

 この後、シリーズは1つ1つのモチーフに注力する「コスモフリートスペシャル」へと移行するが、コレクション性を重視し、多くのモチーフを扱った「コスモフリートコレクション」に関して、高倉氏は「これでMAXか、というと全然やりきれてない。まだ手がけてない魅力的な船はたくさんある。まだまだ凝れる部分、突き詰められるところはあると思いますね」と語った。

5つのサンライズ作品を混載した「コスモフリートコレクション グランメカニクス」
“スーパー戦隊”をモチーフとした「コスモフリートコレクション-EX スーパー戦隊 レンジャーメカニクス」

 「コスモフリートコレクション」はユニークな展開も行なわれた。「伝説巨神 イデオン」、「戦闘メカ ザブングル」、「最強ロボ ダイオージャ」といったサンライズ作品の艦船とロボをモチーフとした「コスモフリートコレクション グランメカニクス」、さらに特撮の“スーパー戦隊”をモチーフとした「コスモフリートコレクション-EX スーパー戦隊 レンジャーメカニクス」といった商品も発売された。

 「スーパー戦隊 レンジャーメカニクス」では、「電子戦隊デンジマン」の母艦であるデンジタイガーから戦闘機デンジファイターが発進する状態を再現でき、さらに合体変形で巨大ロボ・ダイデンジンになるギミックも搭載している。当時の“超合金(ポピニカ)”などでしか再現できなかったギミックを、全長10cmほどのサイズで再現しているのだ。各母艦とロボットは細かく彩色されており、そのクオリティはすさまじい。

 高倉氏は「スーパー戦隊 レンジャーメカニクス」では、「撮影用のプロップ(小道具)である」という意識で、このシリーズを製作したという。購買層は大人なんだという気持ちで高いクオリティを目指した。

 「資料なども借りてきて作るんですが、『バトルフィーバーJ』のバトルシャークの裏面がどうしてもわからなかった。何とか当時の玩具を探して裏を見たんですが、残念ながら明確なデザインはわからなかった。そこで『バトルフィーバーJ』を全話見直して、その場面をたよりに設計しました」と高倉氏は設計でのエピソードをあきらかにした。

 「こだわりと言うよりも、きちんと意味を考えて作っています。伝わらないかもしれないですが、できるだけ自分の中で納得のいくものを目指しています。ホビー商材ですが、キャラクター商品ではありますし、形として、将来、歴史に残っていくものなので、創り手側の責任ってあると思います。先の将来、我々の商品が買ったお客様達に「すごいね、コレ!」と言われてみたいです。

 高倉氏は、幼少時代に買ってもらった玩具はよくできていたとつくづく感じるという。キャラクターを理解し、おもちゃが好きな人がきちんと作っている、「子供達にこう遊んで欲しい」という思いが伝わってくる、その思いこそが高倉氏の原動力だ。

 「おもちゃを買って、箱を開け、遊んだり眺めて、気がついたら何時間もたっている。それって創り手側としては非常にうれしいことで、“その商品で楽しんでもらえている!!”という証なんだと思います。そういう商品を今後創っていきたいですね。だからこそ遊んでもらう要素って必要だと思うんです」と高倉氏は語った。

【スーパー戦隊 レンジャーメカニクス】
撮影用のプロップを意識したという完成度と、プレイバリューに注目

【コスモフリートスペシャル スーパー戦隊 レンジャーメカニクス2】
左が“席順”までこだわったバリブルーン

高倉氏の次回作となる「コスモフリートスペシャル レウルーラ」
同スケールのネオ・ジオング

 高倉氏が今後手がけるのが「コスモフリートスペシャル レウルーラ」だ。「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」と、「機動戦士ガンダムUC」に登場するジオン側の戦艦で、商品では同スケールの「ネオ・ジオング」が付属する。ネオ・ジオングは劇中でその大きさが強く印象に残るMA(モビルアーマー)であり、商品でも大きな存在感を放っている。目にできたのは試作品だが、造形の細かい力の入ったものになりそうだ。「世に出ているネオ・ジオングの商品の中で、1番小さなものとなりそうですね」と高倉氏は語った。

 「コスモフリートスペシャル」に関して高倉氏の“夢”としては、もうすこし価格帯を上げられるならば“発光ギミック”を盛り込んでみたいとのこと。大人の部屋にさりげなく飾り、集めたくなる商品を目指していきたいと高倉氏は語った。

 さらに高倉氏は“初挑戦”としてフィギュア分野も手がけていく。「ヤマトガールズコレクション」、「ガンダムガールズジェネレーション」という2つのシリーズで、比較的高い年齢層を意識した商品展開を行なっていく。ちなみに、男性モチーフのフィギュア「ヤマトガイズコレクション 宇宙戦艦ヤマト2199 沖田十三」は男性キャラクターというところもあり不安なところもあったが、発売したところ、イベントなどでもヤマトファンに非常に喜んでもらえたという。

 高倉氏は最後にファンに向けてのメッセージとして「『ヤマト』を皮切りに『ガンダム』へ続いていった「コスモフリート スペシャル」ですが、引き続き継続していければと思っています。ぜひ一度手にとっていただければありがたいと思います」と語った。今回話を聞いて、その強いこだわりに強く心を動かされた。今後の展開にも大いに期待したい。

【宇宙戦艦ヤマト2199~旅立ち編~】
「コスモフリートスペシャル 宇宙戦艦ヤマト2199~旅立ち編~」。2014年2月に発売され、9月に再販された。翼の展開を差し替えにしているのが注目ポイントだという。波動砲の方向を大きくするなど、高倉氏の思い入れがこもっている

(勝田哲也)