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【特別企画】“ガンダムの艦船”にフォーカス、「コスモフリートスペシャル」の魅力に迫る!
将来歴史に残る、何時間も遊んでもらえる商品を目指す、開発者の思い
(2014/11/1 00:00)
メガハウスは8月の「ネェル・アーガマ」を皮切りに、「機動戦士ガンダム」シリーズに登場する“艦船”をテーマにした「コスモフリートスペシャル」という完成品シリーズを展開している。11月1日には「機動戦士Vガンダム」に登場する「リーンホースJr.」、そして12月には「機動戦士ガンダムUC」の「ラー・カイラム」が発売予定だ。
「機動戦士ガンダム」シリーズの商品展開は、MS(モビルスーツ)が中心で、バリエーションも豊富だが、艦船はプラモデルを含め、あまり商品化されない。MSの母艦となり、キャラクター達の“家”であり、様々なドラマの舞台となる船にフォーカスが当たっていないのは個人的に気になっている部分でもあった。このシリーズに開発者はどういった想いを持ち製作を行なっているのかその話とこだわりを聞いてみたいと思ったのだ。
今回、メガハウスで「コスモフリートスペシャル」を担当するメガハウス ライフホビー事業部シニアエキスパート高倉康二氏にインタビューを行なった。話を聞いてみるとシリーズの魅力に加え、高倉氏のモチーフへの熱い想い、“ユーザーに遊んでもらう”という、商品へのこだわりなどとても面白い話を聞くことができた。
リーンホースJr.、ラー・カイラム……眺めて、遊んで、飾れる商品を!
「コスモフリートスペシャル」は、全長約16cmの彩色済み完成品モデルである。以前高倉氏は「コスモフリートコレクション」という「機動戦士ガンダム」シリーズに登場する艦船をモチーフとした全長約7cmのブラインドボックス形式の商品を担当しており、今回はその倍以上の大きさで、再び艦船というモチーフに挑んでいる。7cmのモデルではできなかった、様々な想いを「コスモフリートスペシャル」では込めているという。
8月に発売された「ネェル・アーガマ」は、「機動戦士ガンダムUC」での設定画を基に立体化を行なっている。ネェル・アーガマは実は「機動戦士ガンダムZZ」でも活躍した船であり、ガンダムファンにとっては馴染み深い船だ。白い船体や、“木馬”を思わせる艦橋、大きく左右に伸びた翼など、「機動戦士ガンダム」のホワイトベースを思わせるシルエットとなっている。
MSが発進できるカタパルトが前に3つ、後ろに1つついていて、MSの積極的な運用をするための船だというのがわかる。さらに中央カタパルトの裏にはハイパーメガ粒子砲という“必殺技”まで搭載しており、単純にデザインとして強そうだ。昨今の設定画を基にしているのもあって、表面のスジ彫りは細かく繊細で見ているだけで楽しい。
“立体物”の楽しさは、様々な角度からデザインを楽しめるところにある。エンジンのデザインなどはMSのバックパックと同じようなデザインに見えるが、スケールが大きく違うことを考えてみたり、ガンダムやプラモデルの知識を色々刺激されるのが面白い。
11月1日発売の「リーンホースJr.」は、ネェル・アーガマとは全く違うデザインだ。巨大な槍のような「ビーム・ラム(ビーム・シールド)」を中心にエンジンや艦橋など船の部品をくっつけたような、ユニークなシルエットをしている。「リーンホース」、「ガウンランド」、さらに「スクイード1」という3つの艦船を合わせた船であり、劇中の後半のエピソードで、ファンからの評価の高い、人気が高い。
リーンホースJr.の最大の特徴であるビームラムは、パーツ付け替えによりビーム・シールドを展開したパーツを装着可能。船体に取りつけられた6つのメガ粒子砲は全て旋回できる。面白く感じたのは、ネェル・アーガマと比べると船体の表現が全然違うという点だ。ネェル・アーガマが装甲の合わせ目がスジ彫りで細かく表現されているのに対し、リーンホースJr.は表面はのっぺりしている。
これは2010年代のアニメメカであるネェル・アーガマと、それほどディテールが描き込まれなかった1990年代のリーンホースJr.の作品での表現の違いを出していると感じた。シリーズとしての統一感を優先せず、あえて原作の味を重視し、表面の処理までテイストを変えているところに高倉氏のこだわりを感じた。
「コスモフリートスペシャル」の大きな特徴が、“同スケールのMSフィギュアの付属”だ。ネェル・アーガマにはユニコーンガンダムや、ジェガン、リゼル。リーンホースJr.にはV2ガンダムと、ガンブラスター、ホワイトアークが付属する。特にネェル・アーガマに付属のMSフィギュアは6mmほどで、とても小さい。
しかしこの“同スケールのMSフィギュア”は高倉氏のやりたかったことだという。コスモフリートコレクションでは、商品そのものが小さかったため同スケールのフィギュアは物理的にできなかった。代わりに代表的なMSのミニフィギュアをつけたのだが、スケールが違うため一緒に遊べない。
「コスモフリートスペシャル」は格納庫のハッチも差し替えで開閉を再現しているため、“基地遊び”というべき、MSフィギュアを船に乗せ、発進シーンを再現できる。“MSと対比することで船の大きさを感じて欲しい”、そして“プレイバリューを持たせたい”という思いを込めた付属品なのだ。
もう1つシリーズとしてのこだわりは、底部にある。以前の「コスモフリートコレクション」では飾り付けの関係で、底部に穴を開けて台座と接続させていた。せっかくのモールドがなくなり、本来、穴のないところにスタンドパーツ用の接合部分を作らなくてはならないところがとても心残りだったという。
「コスモフリートスペシャル」は船体に合わせた台座を用意し、さらに追加の接続パーツをつけることで、穴を刺すタイプの台座に対応している。宇宙を飛ぶ船艦は、浮いた形でのディスプレイがしたくなる。追加パーツにより、船体そのものは原作に忠実な造形と、遊びやすさを両立しているのだ。
さらに今回は、12月下旬発売の「ラー・カイラム」の商品見本も見ることができた。ホワイトベースを思わせるカラーリングだが、シルエットそのものはサラミスなどのオーソドックスな“宇宙戦艦”を思わせるデザインだ。左右のカタパルトはアーガマっぽく、船体下部についている大きな放熱板はリーンホースJr.へ繋がると感じられる。ネェル・アーガマの後、リーンホースJrの前に作られた船だけに、3つ並べると艦船の進化も感じられて面白い。
こちらも「機動戦士ガンダムUC」で登場する船だが、「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」でブライトやアムロが乗っていた船として思い入れを持つ人も多いだろう。高倉氏自身もラー・カイラムは、「コスモフリートコレクション」で出したときに好評だったため、大きくなったサイズで、より細かく手を入れられるのが嬉しかったという。こちらも楽しみだ。
MSに比べ脚光を浴びることが少ない艦船だが、「ガンダム」シリーズに関しては、資料が少なくて苦労をするということはなく、デザインも含め多くの資料が版権元(サンライズ)側から提供されるとのことだ。資料には艦内での生活施設や、ブリッジの細かい設定など商品では活かしきれない設定も多く、それらの設定を感じさせるにはどうするか、といった事も考え開発を進めている。サイズと値段を頭に入れながらもできるだけギミックも盛り込めるように努力しているという。次ページでは、より深く高倉氏の制作のこだわりを掘り下げていきたい。