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「Fate/stay night」の世界をボードゲームで体験! 「Dominate Grail War -Fate/stay night on Board Game-」の先行体験レポート
2019年7月18日 11:00
- 8月3日 発売予定
- 価格:6,000円(税別)
ディライトワークスとアナログゲーム制作団体「BakaFire Party」は7月17日、「Fate/stay night」を題材とした初のボードゲーム「Dominate Grail War -Fate/stay night on Board Game-」のメディア向け先行体験会を開催した。「Dominate Grail War -Fate/stay night on Board Game-」は8月3日発売予定で、価格は6,000円(税別)。
本作品は世界中で大人気のスマートフォンRPG「Fate/Grand Order」を運営しているディライトワークスと、「桜降る代に決闘を」などの超人気ボードゲームを手掛けた「BakaFire Party」の協同によって生まれた作品だ。今回の体験会では本作品に登場する全9騎のサーヴァントや、ゲームギミックやグッズ情報等が判明し、実際にゲームをプレイすることができたので、早速その様子を皆様にお届けしよう。
最初にディライトワークスの高嶋氏によるゲームの概要紹介とルール説明から始まった。本作品は「Fate/stay night」の世界をボードゲームで再現するというコンセプトの元、「真名隠匿」と「バトルロイヤル」といった聖杯戦争らしさをボードゲームの駆け引き要素として上手く取り入れている。
プレーヤーは能力の異なる7人のマスターと9騎のサーヴァントから1人ずつを選択し、サーヴァントの真名を隠しながら2人のキャラクターの能力とカードを駆使して聖杯戦争に挑むことになる。また各キャラクターは原作である「Fate/stay night」での活躍に基づいた能力を有しており、原作には無い組み合わせも作ることも可能なため、組み合わせだけでも幅広い戦略性が生まれる。
さらに自分のサーヴァントの真名を公開することで発動する宝具カードの存在や、原作を知っているファンが思わずクスっとしてしまうような能力のカードが存在するなど、戦略性の中にファンサービスも見え隠れするのも魅力の1つだろう。
そして今回の発表会では既に公開されていたセイバー、アーチャー、ライダー以外の6騎全てのサーヴァントが公開され、「Fate/stay night」で活躍したサーヴァントがついに一堂に会することになる。加えて本作品と連動したアクリルキースタンドなどのグッズ発売や、各所で行われるイベント内容等の情報が公開された。
一通りルールやゲームについての紹介が終わった後、ゲームデザインを手掛けた「BakaFire Party」のBakaFire氏と高嶋氏によるトークセッションが始まった。
BakaFire氏はこのゲームを制作するに当たってこだわりポイントが4つあり、その1つは「聖杯戦争」という素晴らしい物語の舞台装置をどう表現するのかであると語った。「Fate/stay night」での聖杯戦争はマスターとサーヴァントが協力して、最後の1組になるまで戦うのだが、戦線の撤退やマスター同士の協力が行われるなど、ルールに縛りが少ない自由度の高いバトルロイヤルというのが特徴だった。
その戦いにおける自由度の高さをボードゲーム上では、2つの戦場のどちらで戦うのかという選択や、あえて戦いに参加せずに次の戦いに向けて準備をする、不利な相手や戦場を避ける、等といった聖杯戦争らしい駆け引きが行える事で見事に再現している。しかし戦わずに勝つことは不可能なゲームであるため、勝利の為に後が無いプレーヤー同士が戦場で出会うことが必然的に発生する。そこにドラマ性が生まれそれが非常に「聖杯戦争」らしいのだ。
2つ目のポイントはランダムに選ばれたマスターとサーヴァントの組み合わせによって生まれる新たな「if」ドラマ感だ。
本作品では「Fate/stay night」で見ることが出来なかったマスターとサーヴァントの組み合わせを楽しむことができるのだが、このルールの完成にはBakaFire氏の「Fate/stay night」に対するとある思いが起因している。過去に「Fate/stay night」を遊び終わった際にBakaFire氏は、その素晴らしい舞台設定やキャラクター設定から様々な無限の「if」を妄想できる作品であると感じたという。
それは「もしも遠坂凛が当初の目的通りセイバーを召喚することができていたら?」「衛宮士郎がセイバー以外と契約していたら生き残れたのか?」等といったマスターとサーヴァントの組み合わせを変えるだけで生まれる無限のドラマだ。本作品ではそんな「if」ドラマを妄想しながら遊べるのも魅力の1つであると語った。
3つ目のポイントは「真名隠匿」というゲーム性だ。ボードゲームの中には自分の正体を終盤まで隠すゲームや、正体を隠しきる事が目的のゲームが1つのジャンルとして存在する。そんな中で本作品はそれとは一線を画す「如何にカッコよく自分の正体を明かせるか」がポイントになるゲームだとBakaFire氏は語る。
BakaFire氏は「Fate/stay night」をプレイしていた当初、正体の分からないサーヴァント達の真名が常に気になり、段々と判明していくサーヴァントたちの正体に胸を躍らせたという。そしてそれがゲームを進める推進力の要因になったと感じ、本作品でもその感覚を味わえるようにしたと語った。
最初はお互いにサーヴァントの正体を隠すことによって「正体不明のサーヴァントを駆使するマスター」をプレーヤーは楽しむことができ、ゲームを有利に進めるために相手の行動を見て敵のサーヴァントを予測する必要がある為、プレーヤーはまさに聖杯戦争に参加したマスターのような感覚を本作品では体験できる。
さらに「Fate/stay night」を語る上では欠かせない各サーヴァントの宝具を本作品で使用する際にも、「真名隠匿」は非常に重要な意味を持つ。宝具は使用すればゲームを一気に有利にできるほど絶大な威力を誇るカードだが、発動するにはサーヴァントの真名を公開する必要があり、他プレーヤーにサーヴァントの真名がバレれば戦略を読まれやすくなる為、使用するタイミングは非常に重要になってくるのだ。
そんな必殺技と言える宝具の使用はそれだけでゲームにドラマ性を持たせ、使用する際は「自分のサーヴァントはコレだ!」というカタルシスをプレーヤーは味わうことができる。このように本作品での「真名隠匿」とは戦略性を高めるだけでなく、「Fate/stay night」という作品の世界観をプレーヤーが実際に体験する上で非常に重要なファクターになっているのだ。
4つ目のポイントは「BakaFireらしさ」である。BakaFire氏はゲームに対して如何に壮大さを感じることができるかを大事にしており、1ゲームプレイし終わった際に「凄いゲームの入り口に来てしまったぞ」と感じれるようなゲーム制作を心掛けていると語った。
本作品はマスターとサーヴァントの2人のキャラクターを用いてゲームをプレイすることになるのだが、これは1度プレイし終わった後に別キャラクターとの組み合わせで再び遊びたくなるようにする狙いがある。そうして別のキャラクターとの組み合わせで再び遊ぶことでゲームに対する考察が進み、新たなドラマと出会う切っ掛けにもなるのだ。
この何度も遊びたくなる中毒的な感覚がBakaFire氏が手掛けるボードゲームに共通している部分であり、それが「BakaFireらしさ」であると言える。
さらに本作品は12枚という少ない山札と必殺技である3枚の宝具カードを用いて戦うなど、どこかBakaFire氏の代表作である「桜降る代に決闘を」を彷彿とさせるゲームシステムをしているが、戦場と戦うタイミングを選べる点や、多人数プレーヤーとの情報戦が行える点など、様々な要素によって全く別のゲームとして完成している。
そしてその別のゲームとして完成させている要素こそが今度は「Fate/stay night」らしさとなっており、本作品は2つの「らしさ」が上手く噛み合ったボードゲームが「Dominate Grail War -Fate/stay night on Board Game-」なのである。
最後にBakaFire氏は「Fate/stay night」は自身の人生に影響を与えたゲームの1つであり、全力でゲーム制作を行ったので是非ゲームをプレイしてほしいと話し、トークセッションは終了した。
本作品に対する細部にまで行き届いたこだわりを、是非皆様には実際にゲームをプレイする事で感じて欲しい。ボードゲームファンと「Fate/stay night」ファンの両者が納得できる作品となっている事に間違いはないだろう。
その後、実際にゲームをプレイできる先行体験会が会場にて行なわれた。筆者も1人の「Fate/stay night」ファンとして楽しみにしていたので当然参加してみた。選んだマスターとサーヴァントはあらゆる意味で大人気キャラクターの「言峰綺礼」と、癖は強いがカードの使い方によって一気に攻め込める「真アサシン」のコンビ。
言峰綺礼はサーヴァントの真名が公開状態か非公開状態かで使用できる能力が変化するマスターであり、真アサシンは自身の真名を公開状態から非公開状態に戻せる宝具が存在するため相性はかなり良いと言える。「Fate/stay night」本編での両者の活躍や戦い方を思い返すと相性が良いのも不思議と納得がいく。このコンビはトークセッション内にてBakaFire氏より「最も邪道でトリッキーな戦いを得意とする」と評価されており、非常にプレイするのが楽しみなペアを引くことができた。
ゲームは戦闘準備と戦闘を行う4つのフェイズを1ラウンドの中で行い、それを8ラウンド行なった後でファイナルラウンドと呼ばれる最終決戦を2ラウンド行なう。その中で他プレーヤーとの戦闘やマスターとサーヴァントの能力を使用して戦果と呼ばれるポイントを稼ぎ、最終的に最も戦果を獲得したプレーヤーの勝利となるのだ。さらに聖杯戦争らしく8ラウンド目から途中脱落者が登場するため、どのタイミングで戦果を稼ぐかが非常に重要になってくる。
プレーヤーはまず最初に魔力を回復できる「魔術工房」、バトルエリアである「深山町」「新都」、戦闘を行わずに少量の戦果を得られる「偵察」の4つのエリアに移動することになる。そしてバトルエリアで鉢合わせたプレーヤー同士がサーヴァントやマスターの能力を駆使して戦闘を行なう事となる。戦闘はフィールド効果や令呪の使用、サーヴァントの宝具の使用など原作に因んだ多くの要素によって様々な駆け引きが生まれる。
そして戦闘終了後に勝利したプレーヤーやそれぞれの効果によって戦果が与えられ、次のラウンドへと移動するのだ。このラウンドの中でマスターとサーヴァントをどのように使い、戦果を獲得していくのか戦略を立てることがこのゲームの醍醐味と言えるだろう。
そして私がプレイした卓でもやはりBakaFire氏が語ったような新たなドラマが数多く生まれた。自分が生き残るために間桐桜を最下位に叩き落す衛宮史郎、パワープレイで他プレーヤーを圧倒するイリヤ&ランサーのコンビ、最後はセイバーの召喚に成功した遠坂凛が勝利するなど、その数は数えきれないほどだ。
その1つ1つのドラマに対してどうしてそうなったのか物語を妄想しながらプレイするのも楽しいだろう。加えて他プレーヤーの狙いや盤面の状況を読んでプレイする戦略ゲームとしての面白さもしっかり兼ね備えていると実際に体験できた。惜しくも私の言峰&真アサシンのコンビは途中敗退となってしまったが、真名を公開して宝具を使用した瞬間に感じるカタルシスは他ゲームでは味わえない面白さである。
総じて「Dominate Grail War -Fate/stay night on Board Game-」は「Fate/stay night」らしさをプレーヤーが味わいながらも、ボードゲームとしての完成度の高さから戦略ゲームとしても非常に楽しめる作品となっている。是非「Fate/stay night」ファンの皆様は1度ゲームをプレイし、冬木の聖杯戦争に参戦してみてはいかがだろうか。