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音を体で味わうことを思い出させてくれるゲーミングスピーカー「G560」インプレッション

音と光で、戦場の迫力や、爆音、恐怖感などを演出! これはシビれるぞ!!

5月15日発売

価格:27,250円(税別)

 ロジクールは、ゲーミングブランド「ロジクールG」シリーズにおいて、ブランド初となるゲーミングスピーカー「G560」を本日5月15日より発売開始した。参考価格は27,250円(税別)。「G560」は、ゲーミングキーボード「G512」(参考記事)と同タイミングでリリースされる春のラインナップの1つだが、新カテゴリーという点が非常にユニークだ。こちらも発売に先駆けて体験する機会を得たのでインプレッションをお届けしたい。

【ロジクールGのG560 LIGHTSYNCパソコン ゲーミングスピーカー】

新進気鋭のゲーミングカテゴリ「ゲーミングスピーカー」とは?

ロジクールにおいても「ゲーミングサウンド≒ゲーミングヘッドセット」だった
ロジクールのゲーミングヘッドセットの代表作「G933」
ロジクールのPC向けスピーカーシステム「Z625」。「G560」にはこのテクノロジーが受け継がれている
2015年にAVerMediaより登場したゲーミングスピーカー「バリスタ GS315」
2016年に登場したクリエイティブのサウンドバータイプのゲーミングスピーカー「Sound BlasterX Katana」

 ゲーミングギアのカテゴリにおいて、サウンドといえばゲーミングヘッドセットを意味してきた。これは私が勝手に言っている話ではなく、ロジクール(Logitech)自身が「ロジクールG」シリーズにおいて実践してきたことだ。大型のオーディオドライバーによる迫力あるサラウンドサウンド、防音性、通気性に優れたイヤーカップ、雑音をシャットアウトするノイズキャンセリングマイクによって、音からプレイングを進化させる。エントリーモデルのG231から、ミドルレンジのG433、そしてハイエンドのG933と豊富なラインナップでゲーミングヘッドセットをアピールしてきたのは何よりロジクール自身だし、他のゲーミングデバイスメーカーも同じ状況だった。

 ただ、ゲーミングデバイスメーカーが推進してきた“ゲームサウンド≒ゲーミングヘッドセット”戦略の問題点は、それだけでゲーミングシーンをすべてカバーできるわけではないということだ。

 プロゲーマーは今も昔も、騒音のシャットアウトと、フェアプレイの観点から、ヘッドセット(もしくはイヤーマフ)とイヤフォンを併用しているし、カジュアルなゲーマーはスピーカーから音を出したいという人も多いだろうし、そもそも髪型が崩れるから使いたくないというゲームファンもいるだろう。

 ニーズはあるのはわかっていたにも関わらず、これまでゲーミンググレードのスピーカーが登場しなかった理由は「何をもってゲーミングとするか」が、業界の中で明確な答えがなかったためだ。実際、ロジクール自体は、マウスやキーボードと並んで、PC向け、現在はBluetooth対応のスピーカーは主力商品のひとつだ。

 ハイエンドモデルとなるPC向けスピーカー「Z625」の紹介文にも「この2.1スピーカーシステムは、ゲーミンググレードのオーディオを実現し、映画や音楽での究極のサウンド体験を提供します」とある。ゲーマーに売りたい気満々で、だったらいっそのこと「ロジクールG」ブランドで売れば良い気もするが、そうしないのは「何をもってゲーミングとするか」という視点が欠けているからだ。

 このようにゲーミングスピーカーの評価ポイントは「何をもってゲーミングとするか」だといえる。近年ではようやく各社よりゲーミングスピーカーが発売され、一定の認知を獲得したが、「何をもってゲーミングとするか」はメーカーによってバラバラだ。

 比較的早い段階でゲーミングスピーカーをリリースしたAVerMediaは、音そのものをゲームに最適化。ツィーターを備えた2本のサテライトスピーカーに、低音域をカバーするサブウーファー、そしてゲーム中でも調整できるコントロールボックスを備え、フルパワー時には剣戟の音や銃撃音といった高音域や爆発音や振動といった低音域がクリアに聞こえるようになり、小音量でも高音質で楽しめる「アサシンモード」を搭載するなど、音の面からゲーミングシーンをサポートした。

 ゲーミングデバイスの老舗であるRazerやクリエイティブのゲーミングスピーカーは、オーソドックスな2.0chスタイルのゲーミングスピーカーに加えて、サウンドバータイプも用意。PCモニターの手前という、ゲーマーの喉元に置くことで、迫力あるサラウンドサウンドが楽しめるだけでなく、Bluetoothや光接続にも対応し、スマートフォンやゲーム機などもサポートする。

 そして今回紹介する「G560」は、ゲーミングスピーカーとしては後発というだけあって、ゲーミングスピーカーらしい機能が満載となっている。

ゲームを深化させる「G560」の「LIGHTSYNC」。唯一の難点は設定の煩雑さ

「LIGHTSYNC」使用イメージ
サテライトスピーカーには正面から見える形でLEDライトが取り付けられている
背面には、間接照明のような形でより強力なLEDライトが取り付けられている

 「G560」の最大の特徴はなんといっても「LIGHTSYNC」だ。LIGHTSYNCは、「ロジクールG」が各ギアで推進してきたRGBライトをパワーアップさせた機能で、スピーカーに設置されたLEDライトを、様々なパターンで光らせたり、ギア間でRGBイルミネーションを同期させたりできるだけでなく、“ゲーム自体”とライティングを同期させることができる機能だ。

 この「LIGHTSYNC」、実はすでに実装されている機能だが、筆者自身は評価時に試した程度で、実際のゲームプレイではまったく使っていない。理由はゲームプレイ中はギアのライティングを見ないし、そもそも目に入らないからだ。マウスは手で完全に塞がれるし、ヘッドセットは視界に入らないし、せいぜいキーボードぐらいだが、ロジクールのキーボードライティングは大人しめなので、それほどインパクトはない、というのが正直な所だ。

 ところが「G560」の「LIGHTSYNC」は従来のイメージを完全に覆すほどのインパクトがある。2基のサテライトスピーカーに取り付けられたLEDライトは、背面と下部の空洞内部の2カ所に広範囲に取り付けられており、光量が強く、壁際に設置すると間接照明のような感じで壁際に2つ新たに明かりが取り付けられたような感じになる。空洞内部のLEDは直接目に入り、この2組の光源で、ゲームを外から演出してくれる。

 この「LIGHTSYNC」が凄いのは、実質的にすべてのタイトルに対応しているところだ。新旧、ジャンル、言語を問わず、すべてのタイトルで「LIGHTSYNC」と同期させてゲームを楽しむことができる。ただ、Logicool Gaming Software(LGS)の設定が非常にわかりにくい。マニュアルもないため手探りでやるしかないが、従来のゲーミングギアと同様に「LIGHTSYNC」はデフォルトではオフになっており、ゲームを起動する前に設定しなければ、「G560」で「LIGHTSYNC」を楽しむことはできない。

こちらがLGSの「G560」設定画面。ただ、「LIGHTSYNC」の設定はここではない
「LIGHTSYNC」は、各ギアの先頭にあるアプレット設定画面から行なう
まず行なうべきは、プロファイラのスキャンとプロファイルの登録だ
こちらはAudio Visualizerの設定画面。音に反応してくれるのでどのゲームでも利用できる
こちらはScreen Samplerの設定画面。画面を4分割してその色合いをLEDに拡張するというスタイルだが、比較的クォータービューのゲームだと馴染みやすいかという印象
ゲームと同期させない場合は、従来のギアの設定同様、この電球アイコンから光らせ方を設定するだけでいい

 具体的に説明していこう。「LIGHTSYNC」でゲームを同期させてプレイするには3つの方法が用意されている。LGSのアプレットから直接設定する方法、Audio Visualizerからプロファイルを設定する方法、最後がScreen Samplerからプロファイルを設定する方法だ。

 Audio VisualizerもScreen Samplerもアプレット(小型アプリケーション)なので、結局アプレットを指定する形になるわけだが、これがわかりにくい。わかりにくい理由は、LGSのアプレット機能は、旧ロジクールG時代のゲーミングキーボードG510(2010年発売)のモノクロLCD向けに時計やタイマーなどを表示させるアプレットのUIをそのまま引き継いでいるためで、そもそもの発想が、「対応ゲームの『LIGHTSYNC』をどう設定するか」ではなく、「LEDバックライトを有効にするためのアプレットを起動する」というスタイルになっている。

 ちなみにアプレットに用意されているゲームは、「Assetto Corsa」、「Counter-Strike: Global Offensive」、「Dota 2」、「Fortnite」など数タイトルのみで、一見、これらのタイトルでしか「LIGHTSYNC」が利用できないように思うかも知れないが、そうではない。アプレットがないタイトルでも、次の手としてAudio VisualizerとScreen Samplerから「LIGHTSYNC」を設定する方法が残されている。

 Audio Visualizerは、ゲームの音に合わせて「LIGHTSYNC」させるアプレットで、Screen Samplerは映像に合わせて「LIGHTSYNC」させるアプレットだ。それぞれ「新しいゲーム用のスキャン」というボタンが用意されており、5月時点で638のプロファイルの中からすでにインストールされているゲームを自動的に検知し、プロファイルを加えてくれる。

 このスキャンでほとんどのタイトルがサルベージされると思うが、「Dead by Daylight」のように新規タイトルは含まれないため、その場合は「デフォルトプロファイル」を選択すればいい。よくわからないのは、「ゲームのアプレットはあるが、プロファイルはない」というパターンで、その場合も「デフォルトプロファイル」を選択すればいいようだ。

 「LIGHTSYNC」についてまとめておくと、ゲームを起動する前にLGSを起動し、プレイしたいゲームのプロファイルを選択した状態でアプレットを起動する、これだけだ。

 今回筆者は、「Counter-Strike: Global Offensive」や「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」などプロファイルが用意されているタイトル、「Fortnite」、「Dead by Daylight」、「ハースストーン」のようにプロファイルが用意されておらず、デフォルトプロファイルでプレイしたタイトルの両方を試してみたが、どちらも非常に満足できる内容だった。

 プロファイルの有無の違いは、正直な所、プロファイルの作り込みに比べたら大した違いはなく、好みのレベルと言って良い。たとえば、「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」では、プロファイルでプレイすれば、輸送機や水中など、シーンを理解して、輸送機なら航空機の尾灯や翼端灯をシミュレーションしてくれたり、水中で泳いでいるときは水色のゆらめきになったり、まさに光でゲームの演出を拡張してくれる感じが楽しい。ただ、デフォルトプロファイルでも、銃撃やエアードロップの爆音など、大きな音に対して、光って反応してくれてこれはこれで楽しい。あれこれ設定をいじりなら試してみるといいと思う。

 ちなみに個人的にプレイしていて1番相性が良いと思ったのは、「Dead by Daylight」のようなホラーゲームだ。現時点でオリジナルのプロファイルが存在せず、デフォルトプロファイルのみの使用となるが、これが抜群に良かった。

 「Dead by Daylight」は、スキルチェックやハッチのオープン、生存者/殺人鬼の各種パーク使用時の効果音、そして何と言っても殺人鬼が近寄ってきたときの“心音”などなど、サウンドエフェクトが決定的に重要なゲームだが、そのひとつひとつで音色に応じて細かく色を変えながら光る。殺人鬼が近づくにつれて大きくなる“心音”は、心音に合わせて明滅し、ホラー感を最大限に引き立ててくれる。ぜひ試してみて欲しい。

 おそらく「G560」の「LIGHTSYNC」は、好みが分かれると思う。モニターに顔をくっつけるようにプレイする没入スタイルのプレーヤーは、確実に鬱陶しいと思うだろうし、「CS:GO」や「PUBG」のように競技性の高いタイトルでは、光ったところで勝利に近づくわけではないため、なくていいと感じるかもしれない。

 ただ、先述した「PUBG」や「Dead by Daylight」での演出や、「ハースストーン」において、マナコスト10のミニオンをどーんと出した時に合わせてデッカく光ってくれるのは、“出したった感”たっぷりであり、個人的には今後も常用して、自分だけこっそり演出を拡張して楽しもうとほくそ笑んでいる。この「LIGHTSYNC」が、ゲームシーンにおいてスタンダードになることはないだろうし、LANパーティーなどのBYOCイベント等でも音が出る関係でメジャー化することはないと思うが、ゲームに新しい楽しみ方を与えてくれるデバイスであることは間違いない。ゲーマーの密かな楽しみとして静かな盛り上がりを見せるかもしれない。

家庭用としてはややパワフル過ぎる「G560」。君はどう使いこなすか!?

コンパクトなサテライトスピーカーと比較すると、いかにウーファーが大きいかがわかる
イコライザーのオススメ設定は「Drop the Bass」。これでウーファーの大暴れを多少沈めることができる
2.1ch環境ながらDTX:Xにも対応

 音についても言及しておこう。「G560」はモニターの両サイドにちょこんと置けるコンパクトサイズとは裏腹に、極めてパワフルなゲーミングスピーカーだ。定格出力で120W、最大出力で240W。Logicool Gブランドアンバサダーの岸大河氏が、G560のプレスリリースに「ウーファーからダウンファイアリングされる低音の圧力は凄まじく、240Wのパワーはとてつもない。Windowsの音量は10前後で十分な程だ」といきなりWindowsのボリュームパラメータの具体的な数字を持ち出しているが、これは岸氏流の警告だ。筆者はG933のボリュームは70前後、ノートPCのボリュームは60前後で使っているが、この感覚でG560を使うとまず間違いなくご近所と騒音トラブルに発展する。それぐらいパワフルだ。ちなみに筆者は8で使っている。

 パワフルな“元凶”はサブウーファーだ。ウーファーだけで定格60W(最大120W)もあり、このビリビリ、ズンズン、ドカンドカン来る重低音は、普段ゲーミングヘッドセットでPCゲームをプレイしていたゲーマーが久しく忘れていた感覚で、体全体で音を味わう感覚を呼び覚ましてくれて非常に楽しい。ただ、この振動は、隣の部屋からでも100%響くほどで、集合住宅や家族と暮らしているようなゲーマーは“振動対策”が必要だと思う。あれこれいじってみた限りでは、イコライザで「Drop the Bass」を選択し、ボリュームを8ぐらいまで下げて運用したらほどよい感じになったが、この猛獣を飼い慣らすような感覚も久々で飽きさせない。

 サラウンドについては、5.1、7.1chのバーチャルサラウンドに対応するほか、DTSの最新サラウンドフォーマット「DTS:X」にも対応しており、ゲームのみならず映画の視聴にもバッチリ対応する。接続はUSBに加えて、3.5mm、Bluetoothに対応。PCのみならず、ゲーム機やスマートデバイスの接続にも対応している。

 音のクオリティについては、ロジクールが一般向けとして販売しているPCスピーカー「Z625」をベースにしており、サブウーファーのパワーに引きずられて、やや低音域が強すぎるような印象があるが、音質は上々だ。モニター内蔵スピーカーや、数Wレベルの簡易PCスピーカーから置き換えると、その次元の違いに驚くはずだ。

 「G560」はゲーミングスピーカーとしては現状最高ランクの製品で、ライバルは他のゲーミングスピーカーというよりは、「G933」、「G633」のような自社のゲーミングヘッドセットになりそうだ。音の広がりや迫力の面では「G560」が圧倒的に上で、音の定位については耳にダイレクトに伝わる「G933/633」のほうがより明確な気がする。音質についてはどちらも必要十分で、サブウーファーが実現する圧倒的な重低音をどう評価するかで、どちらに軍配が上がるか変わってくるだろう。

 筆者は今後、「G933」と「G560」を併用する形になるが、基本的に「G560」でプレイしながら、競技性の高いタイトルや、ボイスチャットが必要なケースだけ「G933」に切り替えるというスタイルでプレイしようと考えている。個人的には、やっぱりゲームシーンにスピーカーは必要不可欠で、「G560」はそう考えるカジュアルゲーマーに最適な1台と言えそうだ。

DiCE池袋なら「G560」を事前に大音響で体験が可能!

取材に協力していただいたディスクシティエンタテインメントのテクニカルチーフ橋本尚吾氏(右)と、RAD所属のストリーマーのみみっち氏(左)
ようやく設定が完了し、「PUBG」に挑むみみっち氏
ライトを落とすと、スピーカーのLEDライトだけでかなり明るくなる

 最後に、この手の製品を購入する上で一番大事なのは“自ら体験して自身の耳で確かめる”ということだが、ヘッドセット以上に体験のハードルが高いのがスピーカーだ。しかも、27,250円という価格は、試しに買ってみるというレベルではないため、ぜひ事前にトライしたいところだ。

 そこで体験できる場所や機会がないかロジクールに聞いたところ、1カ所だけあるという。ロジクールが提携しているネットカフェ「DiCE池袋店」だ。かつてビジネスホテルとして使われていたビルの2階から10階を改装してネットカフェ化したというユニークな店舗で、10平米ほどの個室がズラリと並ぶ姿は壮観だ。その何十とある個室の中で3つだけ、ロジクール提携ルームがあり、ロジクールGの最新デバイスを使ってPCゲームを楽しむことができる。

 ものは試しということで筆者もお邪魔させていただいた。案内してくれたのは、DiCEを運営するディスクシティエンタテインメントのテクニカルチーフ橋本尚吾氏と、DiCE池袋を拠点に活動しているRAD所属のストリーマーのみみっち氏。

 710、711、712の3つの部屋が「ロジクールGルーム」ということで、710で「PUBG」をプレイ。筆者が訪れたのは「G560」を今日設置したばかりという状況で、先述したように「LIGHTSYNC」は最初の設定が難しいため、初期設定にかなり時間を使ってしまったが、無事「PUBG」までこぎ着けることができた。

 この個室の特徴は、カラオケルームとしても使えるように防音仕様になっているため、ボリュームをいくらでも上げられるところ。この取材でもっとも驚いたのは、音がもたらす迫力だ。みみっち氏は3度プレイして0キルでフィニッシュという、ストリーマーらしからぬ残念な結果に終わったが、「『PUBG』ってこんなに恐いゲームでしたっけ?(笑)」とコメント。実際、筆者も後ろから観ていて、ドドドドという銃撃音にいちいちビビってしまい、冷静に評価するどころではなかった。この部屋ならゲーミングスピーカーを思う存分体験できそうだ。「G560」が気になったゲームファンは、購入前に1度試してみてはいかがだろうか。

【DiCE池袋店】