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「PUBG」で紅白戦!?、交流イベント「PUBG 東京VS上海対抗戦」を「LFS 池袋 esports Arena」で開催

4月21日開催



会場:LFS 池袋 esports Arena

 ベンキュージャパンとサードウェーブは、PC用バトルロイヤルシューター「PUBG(PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS)」を使った日本と上海の交流イベント「PUBG 東京VS上海対抗戦」を、「LFS(ルフス) 池袋 esports Arena」で開催した。

 この戦いでは日本のチーム40名(SQUAD×10チーム)、上海も同様の40名、合計で80名、20のチームが“紅白戦”を繰り広げた。「PUBG」は本来“生き残り”を賭けて戦うルールだ。しかし今回は日本側が白い服、中国側が赤い服を着て対戦する。最大100人のプレーヤーが集う「PUBG」を使っての大規模な国際対戦を行なおうというのである。

100台のPCが稼動できる「LFS 池袋 esports Arena」だからこそ実現できた大会だ
日本のプレーヤーは初めて挑戦するレギュレーション
上海の会場とも繋がっており、選手の紹介が行なわれた

 実はこのルールは中国側ではプレーヤー間で行なわれていたルールだという。中国ではネットカフェでのコミュニティが盛んでネットカフェ対ネットカフェ、都市対都市でこのルールでの戦いが繰り広げられているという。ユーザー間の盛り上がりに応えて、ベンキューが中国での「都市交流戦」をバックアップし、好評を博した。さらに中国と韓国でも行なっており、この戦いをぜひ日本でも、というところでベンキューとサードウェーブにより、「LFS 池袋 esports Arena」を使ったイベントが企画されたのだ。

 「LFS 池袋 esports Arena」は最大100台の最新ゲーミングPCで対戦・イベントを行なうことができる4月15日にオープンしたばかりの施設である。この施設を運用するE5 esports Worksはこれまで様々なゲームイベントに携わったスタッフの経験が活かされており、最新ビデオカードを搭載した消費電力の高いPCが100台動いても大丈夫な電源、トラブルに強い回線、プレーヤー達に影響を与えない実況席、さらに防音された対戦スペースなども装備している。

 40名のプレーヤーが集い、戦いを繰り広げるのにぴったりの空間なのである。サードウェーブがこの施設をオープンしなければこのイベントは開催できなかっただろう。「LFS 池袋 esports Arena」のポテンシャルを発揮し、優れたゲームイベント会場としてアピールするのにぴったりのイベントと言える。

 今回、日本側はプロチームを目指し対戦が行なわれている「PUBG」のリーグ戦「PJS αリーグ Phase 2」の上位チーム「USG_Hyster1cJam」、「SunSister Suicider's」、「JUPITER NOVA」の3チームに加え、4月15日に予選が行なわれた“Special DONCUP”の成績優秀者「Nsp」、「AGM Japan Gaming W!NPS」、「HANAGUMI STRELITZIA」の3チーム。

 コミュニティ大会より招待された「PUBGRU Redcell」、「Astro9」、「世界の名作劇場」の3チーム、そして4人のストリーマーNigongo氏、Rapiacta氏、CiNVe氏、ブンブン丸氏が参加した。

 中国側はプロチーム「HBQ」、「RLGL」、「iFTY」の3チームが参加。これにアマチュアチーム6チームと4人のストリーマー。中国側はコンパニオンも参加し、ギャラリーも会場にいたようでかなり盛り上がっている様子だった。

 日本側プレーヤーはこういった試合は初めての経験となる。まず怖いのは日本人同士の誤射だ。そしてリソースの確保。仲間が多いと言うことは安全に物資が確保できる側面もあるが、仲間内での取り合いに繋がりかねない。どこの場所に降り、どう動くか、連携はどのように取ったら良いのか、そういったノウハウのない戦いは、プレーヤー達を戸惑わせた。

 一方で「お祭り」気分も大きかった。「PUBG」はたった1人、もしくは4人1組のSQUADしか生き残れない過酷なルールだ。周りの人達は全て敵。その戦いは緊張感の高いものになる。しかし今回は会場全員が「味方」である。自分達がどこにいるか知らせるのもありだし、盛り上がるのも大いにありだ。普段やらない戦いというのもプレーヤー達には楽しみな要素だ。最初は戸惑いが多かったものの、徐々に楽しい雰囲気になっていくのを感じ取ることができた。

実況・司会のShoboSuke氏
解説のabara氏
USG_Hyster1cJam
SunSister Suicider's
JUPITER NOVA
PUBGRU Redcell
Astro9
世界の名作劇場
Nsp
HANAGUMI STRELITZIA
AGM Japan Gaming W!NPS
CiNVe氏
Rapiacta氏
Nigongo氏
ブンブン丸氏

初めての形式にプロチームを中心に対応! 初の交流戦は日本側の勝利に

 戦いは3回戦行なわれた。選手紹介の後ブリーフィングタイムとなり、各チームのリーダーがステージ上で他のチームとどう動くかの打ち合わせを行なったが、最初の時は多くの選手がステージに集まりどう動くか話し合った。

試合前は多くの人がステージに集まり打ち合わせを行なった
山にたくさんの選手が集まる普段の「PUBG」では見られない光景だ

 司会を務めたShoboSuke氏は50対50の大規模戦などを開催したこともあり、そこで得た知見をアドバイスとして会場でアナウンスしたのだが、結局のところ選手達はやはり自分のチームでの打ち合わせが中心となった。やはりまず「一度戦ってみよう」という気持ちが大きかったようだ。

 今回筆者はメディアとして40名のプレーヤー達が座る席を歩き回って後ろから観戦していた。こういう形なため試合を俯瞰では見られず、日本プレーヤーと同じ目線での観戦となった。このためちょっとどちらが有利に戦っているか、というのは見えにくかった。

 第1戦は最初は全くお互いの遭遇はなく、各人は物資を調達、装備を調えていった。様々なプレーヤーを見て回ったが、びっくりするほど遭遇がないように見えた。そんな中、1人が味方を誤射、「味方だったー、撃っちゃったー」と会場で叫び、撃たれたプレーヤーに謝罪した。

 撃たれたプレーヤーはチームメンバーでしか蘇生できない。誤射してしまったチームは、「撃たれた人ここです、チームの人達助けてあげてください」と何度も叫び、他のチームメンバーが駆けつけ、倒れたプレーヤーを蘇生するのを見守った。こういった光景が「PUBG」で見れるのはこの大会くらいだろう。

 そんな中複数のチームが高い山に陣取った。そうなったとき、「俺達もじゃあ山に行こう」と、会場のプレーヤーは固まった動きを見せた。いくつかのチームは敵がいるという知らせを受けてそちらに向かったのだが、連携がとれていなかったようで各個撃破されてしまっていた。

 そして「決定的な瞬間」が訪れた。中国チームは日本チームを包囲するように動き、周りを囲い込んだのだ。これは“運”の要素も絡んだ。動いていく安全地帯が、中国チームに有利な方向に移動し、日本チームは移動を余儀なくされたのだ。結果、日本チームは遮蔽物の少ない地形で、中国側からの攻撃を受ける羽目になった。結果としては日本側の惨敗と言える。会場は重いムードに包まれた。「彼らはこの戦いに慣れている、こちらは経験がない」と言うつぶやきが、あちこちから漏れた。

慣れないルールのためか、包囲されて殲滅される結果に
1戦目以上に熱のはいいた打ち合わせが行なわれた
日本チームが勝利した瞬間、壮絶な同士討ちが始まった

 しかし、ここでへこたれないのがプロチームである。「PJS αリーグ Phase 2」の上位チームをはじめ、今回の大会にはいくつものプロチームが参加していた。彼らはすでに複数のタイトルで上位者に入る、ゲームタイトルからは独立したプロチームであり、歴戦の戦士である。そして彼らは今回のような「交流戦」でも手を抜かない、「負けるのはイヤだ」という強い意識をみなぎらせ、打ち合わせを行なっていた。

 試合の後で選手達から聞いたのだが、彼らは短時間で独特の「攻略法」を考え、対処していったのだ。まずプレーヤー達は海岸地帯を背中に広く長く位置取りをする。これにより中国チームが一方向からしか攻め込めないようにする。さらにチームの“分散”を計った。4人のSQUADを2人にわけ、他のチームと行動させるようにしたのだ。ゲーム内では自分のチームメンバーの位置しか表示されない。こうすることで他のチームの動きもわかるのだ。

 結果として彼らの即席の対処法は、見事この戦いにマッチし、中国チームに対して勝利を収め、1勝1敗となった。これに一番安堵したのは司会のShoboSuke氏と、解説のabara氏だ。彼らはいかに日本チームががんばったか、この新しい戦いに対応したかを語っていたが、日本チーム内ではそれどころではなかったのである。

 中国チームの最後の1人が倒れた瞬間、壮絶なチーム内での抗争が始まっていたのだ。どのSQUADが1位になるか。隣で戦っていた人同士が銃を向け合うものすごい光景が展開した。「PUBG」プレーヤーとしての本能を覚醒させた彼らの戦いは短かったが、ものすごかった。実は中国チームが倒される前に同士討ちを始めたチームもいるのではないかと別方向でも盛り上がった。2戦目の勝利が会場の雰囲気を大きく変えていた。

海を背に防衛戦を展開、迎え撃つ形で勝利した
最後は円陣を組んで気合いを入れる

 そして3戦目である。1勝した会場の雰囲気は明らかにゆるくなっていて、打ち合わせもあまり行なわれず「2戦目と同じ感じで行こう」という形になった。「日本チームが勝ったら武器を使わずに戦う『パンチバトル』をしよう」という提案も出て、正直「ちょっとゆるすぎるんじゃないの?」と思ってしまった。

 3戦目はサーバーの変更も行なわれた。2戦目までは中国のサーバーである「アジアサーバー」を使って行なわれていたのだが、日本からは接続が悪く、強い回線を持っている「LFS 池袋 esports Arena」でも、ラグでプレーヤーが移動したり、ひどい場合ではリロードができないといった症状まで出ていたのである。3戦目は「韓国サーバー」が使用された。試合開始時「軽い」という声があちこちから聞かれた。国際大会ではどのサーバーを使うかもこれからのテーマになりそうだ。

 3戦目ではさらに洗練された日本チームの戦い方が見られた。2戦目から選手達の意識にあったのは「いつも通りSQUADで戦う」ということだったという。まとめて戦ったり、全体で戦うという意識ではなく、やはり4人単位で行動し、連携し、その場の判断で戦う。そういういつもの戦い方をしながら各チームが動いていく。

 今回も狭まるバリアを背に、敵に囲まれない戦いを行なっていった。3戦目はさらに「有利な建物」を意識し、各拠点を占拠しながら中国チームを迎え撃つ準備をしていたという。中国チームの一部は海から奇襲するという作戦に出て、日本チームの背面を狙うという戦い方も行なったが、日本チームはこれに対処し、見事勝利した。40人のチームのうち、30人近くが生き残るというかなりの好成績で日本チームが勝利した。

 そして生き残り戦である。パンチのみというはずだったのに「いいだろ、撃っちゃえ撃っちゃえ」という声が上がったり、車で他のプレーヤーをひき殺す人が現われたり、ものすごいカオスな戦いとなった。最後は1対1で激しく動いての戦いになったが、1人が崖に落ちてしまい、戦いは決した。「日本だけこんなに盛り上がって中国チームはどう思ったのかな」という声も聞かれたが、普段できない「PUBG」大会としては、とても面白い戦いだった。

3戦目は拠点の確保を意識して見事勝利
車でのぶつかり合いからフライパンの殴り合いでの決着

 大会はかなりの長丁場だったが、欲を言えばもう少し日中の交流があって欲しかったところだ。これはお互いの打ち合わせ不足だったと思うが、可能なら通訳をはさみ、短い間でもお互いの戦いを検討したり、感想を言い合う場があればもう少し「交流戦」の雰囲気が出たと思う。

MVPはUSG_Hyster1cJam

 とはいえ、日本側の運営そのものは非常に良かった。今回、上位チームはわざと招待チームと混ざるように配置されていて、憧れであるプロチームと並んで対戦できるという楽しさを味わうことができるように工夫されていた。司会、解説者のコメントのうまさ、選手達の働きかけも手慣れており、好感を持った。

 強く印象に残ったのはプロチーム達である。きちんとマネージャーがついており、細かく働きかけをしている。今回は「交流戦」というお祭りだったが、それでもプロチームの存在感はやはり大きかった。今回は「SunSister Suicider's」のマネージャー氏と話をすることができたのだが、プロチームという者はどうあるべきかなどの話もすることができ、現在の日本できちんとeスポーツが盛り上がり、定着するか、その期待は大きくなった。

 やはり「LFS 池袋 esports Arena」という“場”ができた意味合いは大きい。eスポーツが盛り上がるためには必要な施設であり、ようやく1つめ、というところではある。まだまだこれからという所でもあると思うが、この施設を拠点にさらなるeスポーツの発展に期待したいところだ。