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吉本興業がeスポーツ事業に進出!プロチーム運営や実況配信、イベント、大会の実施など多角的な活動を発表
2018年3月7日 21:55
吉本興業は3月7日、「吉本興業eスポーツ事業概要発表記者会見」を東京・渋谷にあるヨシモト∞ホールで開催した。この発表会では文字通り、お笑い芸人を多数抱えるあの吉本がeスポーツ事業に参入するということが発表された。
中村氏は吉本ならではのeスポーツ振興に期待
自ら「eスポーツを支援する企業を立ち上げている」というMCのロンドンブーツ1号2号の田村 淳氏がまず紹介したのは慶應義塾大学教授で、かつての日本eスポーツ協会において理事を務めていた中村伊知哉氏だ。
吉本興業の社外取締役でもある中村氏は、世界的に年32%という成長率でeスポーツ市場は拡大中で、プレーヤー数は1億人を数えると紹介。2022年のアジア競技大会ではeスポーツが正式種目に採用されることが決定しているような状況でありながら、日本は市場規模で世界の1/15、プレーヤー数で1/20と立ち後れた状態にあると述べた。
しかし、JeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合)が発足し、プロライセンスを発行することでeスポーツ大会における賞金の規制をクリアすることができるようになり、今後は日本でも本格的な大会が開かれてeスポーツが本格化することが期待できるという。この動きには国も注目しているといい、中村氏も在籍する知的財産戦略本部でも国家戦略として議論することが検討されているそうだ。
スポーツマネジメントも手がける吉本興業がeスポーツ事業に進出することで、在籍する6,000人の芸人がeスポーツの新しい観戦方法や楽しみ方を開発してくれるのではないかと期待を寄せた。
DeToNatorをはじめ、複数のプロゲーミングチームと協業
続いてステージへと登壇したのは、よしもとクリエイティブ・エージェンシー スポーツ事業センター センター長の星 久幸氏。
星氏は吉本興業のeスポーツ事業の概要を解説。吉本興業はマネージメントをはじめ、劇場運営、番組製作、スポーツビジネスなどさまざまな事業を展開しているが、これらのプラットフォームを最大限に活用しeスポーツに本格参入するという。
そしてeスポーツ事業の柱として最初に挙げたのは、プロチームの運営で、芸能プロダクションとしては初となるeスポーツのプロチームを発足、運営していくとのこと。複数のチームを設け、海外と日本でそれぞれ活動していくそうだ。
ひとつめのプロチームは「よしもとデトネーター」。このチームは「Dota2」部門のプロチームで、世界一を目指し、フィリピンを拠点に選手を育成していくという。この活動にはすでにフィリピンでもプロチームを運営している「DeToNator」と協業、3年から5年をかけて世界一を目指すのだそうだ。
ここで星氏に紹介されてステージへ登場したDeToNator代表の江尻 勝氏は、「よしもとデトネーター」が手がける「Dota2」は、大会における賞金総額が世界最高であることに触れ、今年もその額が30億円程度になると予想した。そこに対し、中長期的な取り組みを一緒にできる覚悟を吉本興業に感じたそうだ。日本ではおそらく初めての取り組みであり、実績を残すことで日本におけるeスポーツビジネスの仕組みや流れを作りたいとその抱負を語った。
会見最後の質疑応答での情報によれば、「よしもとデトネーター」の選手は新たに現地で選考され、吉本がプロ契約を結び、DeToNatorが運営することになるとのことだ。
2つめのチームは「よしもとエンカウント」。これは「Overwatch」を専門とする部門だそうで、日本人中心としたチームを編成。アジアを中心に戦っていくという。こちらはチーム「アキハバラ エンカウント」とタッグを組みまずは台湾リーグに参戦する予定とのこと。
そして3つめのチームが「よしもとリバレント」。日本人選手でチームを編成し、国内で「Shadowverse」で戦うそうだ。「Shadowverse」は吉本の芸人のあいだでも人気のタイトルで、今後、芸人のなかからプロが出てくることを期待していると星氏は語った。
4つめの「よしもとエクストラクター」もまた国内中心で活動するチームで、「ポッ拳」で戦う予定。これに協力するExtractorとはチームの立ち上げ以外に、ゲーム配信でも協業する計画もあるという。
吉本興業では、これら4つのチームを「よしもとゲーミング」として統括、運営していく方針だ。
イベント開催とゲーム配信も事業の軸に
吉本興業のeスポーツ事業は、プロチーム運営に留まらない。次に星氏が話題にしたのは配信事業とイベント事業だ。
今後各選手の活動収入のベースとなるのは「twitch」、「OPENREC.tv」、「Extractor.live」、「YouTube Gaming」など配信プラットフォームでのゲーム実況配信や広告収入のほか、「ニコニコ動画」、「Abema TV」などの番組出演費など。こうしたメディアでのタレント活動も行なっていくという。さらにゲーム実況に関してはeスポーツ事業の一環として、ゲーム実況に特化したタレントの育成にも注力し、さまざまなプラットフォームでの活躍を目指すとのことだ。
また、イベント事業では、吉本興業が運営している劇場や大型ショッピングモール、映画館などを会場に、eスポーツ初心者に向けた体験イベントや小規模大会、eスポーツファン向けの観戦イベントなど、さまざまなeスポーツイベントを展開していく予定だという。
吉本興業としては、プロチーム運営、配信事業、イベント事業という3つの柱を軸にしてeスポーツ事業を展開、日本におけるeスポーツの認知と競技人口の拡大、競技力の向上に寄与したい考えだ。
プロになるためコンビ解消を命じられた芸人も!?
星氏がひと通りの事業概要を説明し終えたところで、ステージにはゲーム好き芸人として、井上聡さん(次長課長)、藤田憲右さん(トータルテンボス)、菅良太郎さん(パンサー)、池田一真さん(しずる)の4人と、よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属となる3人のプロゲーマー、ジョビン選手、西澤祐太朗選手(裏切りマンキーコング)、小池龍馬選手が登場した。
3人がプロゲーマーになったきっかけだが、ジョビン選手はコンビを解散した後、プロゲーマーになることを宣言した4日後に吉本からプロ契約を打診されたとのこと。西澤選手は同棲していた彼女と別れる原因となったほどNintendo Switch用「スプラトゥーン2」をプレイしており、そこを買われてコンビを続けたままプロとしての契約に到ったという。
3人目の小池選手は、マケレレというコンビを組んでいたが、吉本の社員から「コンビを解消してくれ」と命じられ、ゲーマーとして専念することにしたそうだ。「コール オブ デューティー」シリーズを得意とする小池氏はなんと世界ランカーの腕前。ゲーム実況チャンネル「マケレレ小池のゲーム実況」も人気だという。
「プロゲーマーの実力を体験!!」としてこの後に行なわれたエキシビジョンでは「ストリートファイターⅤ アーケードエディション」でジョビン氏と、4人のゲーム好き芸人が対戦。ジョビン氏は4人を難なく撃破したのはもちろん、さらに目隠しをした状態で井上氏との試合に臨み、負けてはしまったものの大健闘。さらに体力の約7割を減らした状態から藤田氏を撃破するなど、その腕前を見せつけた。
4月以降にプロ選抜大会も実施
今回の記者会見では、eスポーツに関してもうひとつ大きな発表があった。今年の8月3日から5日までの3日間にアメリカ・ラスベガスで世界最大の格闘ゲーム大会「Evolution Championship Series 2018(EVO2018)」が開催される予定だが、吉本はEVO 2018で採用される競技タイトルを用いた招待選手選考イベント「よしもとGAMING プロ選抜大会」を開くとのこと。上位入賞者にはよしもとクリエイティブ・エージェンシーがプロ契約を結び、EVO 2018参戦のためのラスベガスまでの渡航費などを全額サポートするそうだ。
会場で配布された資料によると、この大会は東京・秋葉原の「e-sports SQUARE AKIHABARA」で4月以降に開催される予定となっている。詳細はYOSHIMOTO Gamingのページで後日発表されるそうなので、気になる人はぜひチェックしてみて欲しい。