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「Overwatch OPEN DIVISION JAPANシーズン3」グランドファイナルが開催
クリスマス決戦は優勝候補筆頭がまさかの敗北、新進気鋭のNaturals北海道が下克上を実現
2017年12月25日 07:00
Blizzard Entertainmentは12月24日、オンラインアクションシューティング「オーバーウォッチ」のPC版を使った国内トップリーグ「Overwatch OPEN DIVISION JAPANシーズン3」のグランドファイナルを東京テレビセンターにおいて開催した。決勝は、全シーズンに出場し、昨シーズンの覇者であるCYCLOPS athlete gamingと、初出場で決勝まで勝ち進んだダークホースNaturals北海道の1戦となり、Naturals北海道が4:2(BO7)のスコアでCYCLOPS athlete gamingを撃破し、初優勝を果たした。
CYCLOPS athlete gamingと言えば、「オーバーウォッチ」コミュニティでは知らぬものはいないぐらいの常勝軍団で、「Overwatch OPEN DIVISION JAPAN」では、シーズン1は3位、シーズン2で初優勝、そしてシーズン3でもオンライン予選を唯一6戦全勝でグランドファイナルに駒を進めている。Blizzardが主催する国別対抗戦「Overwatch World Cup」にも、3名の日本代表を送り込んでおり、日本最強のDPS(オフェンス)と言われるTA1YO選手を擁する。対戦相手のNaturals北海道も、直近のオンライン予選では3:0で退けている。
対するNaturals北海道は、今年設立されたばかりの新しいチームで、「Overwatch OPEN DIVISION JAPAN」はシーズン3が初参加となる。さばげー選手を主軸に経験者ばかりを集め、さらに韓国のプロゲーマー イムヨンビン氏をアドバイザーに迎えて、メキメキと頭角を現わしてきたチームだが、実績はまだ乏しい。
というわけで誰もがCYCLOPS athlete gamingの勝利を疑わなかった決勝だが、まさかが起こってしまった。オフライン大会ではこういう番狂わせがたびたび起こるからeスポーツ観戦はおもしろい。
観戦する度に思うことだが、「オーバーウォッチ」は、数あるFPSの中でも、もっとも高速で、もっともユニークで、そしてもっとも密度の戦いバトルが展開されるeスポーツタイトルだと思う。試合展開は、伝説のFPS「Quake」のストレイフジャンプを彷彿とさせるぐらい超高速だし、試合展開以前にキャラの動きを追うのにやっとである。リスポーンに制限がないため、同じキャラクターが何度も同じ戦場に出現するし、かと思えばヒーラーの奮闘により、ずっと最前線に留まり続ける不死身のタンクもいたりする。戦況に応じてたびたびピック(選択キャラクター)が変わり、ウルト(アルティメット)をメンバーが一斉に発動させることで文字通り一発逆転もありうる。トップレベルの試合を観戦する度に、Blizzardはとんでもないeスポーツタイトルを生み出したものだと思わされる。
予選リーグはすべてBO5だったが、本日の決勝のみBO7で行なわれた。ルールはコントロール、エスコート、アサルト、ハイブリッドの4種類。1ゲーム目のコントロールは、CYCLOPSの一方的な展開で勝利を収め、「やはり4:0か……」との想いを強くしたが、その直後、2ゲーム目のマップ「DORADO」からはNaturalsが優勢に戦いを進め、2マップ目の「Watchpoint: Gibraltar」でCYCLOPSのペイロード侵攻を凌ぎきり、エスコートを見事勝利。1:1として試合を振り出しに戻した。
3ゲーム目のアサルト、4ゲーム目のハイブリッドでは、Naturalsのさばげー選手のゼニヤッタが躍動し、破壊のオーブでダメージを与えながら、不和のオーブを戦場にまき散らし、心頭滅却を連発しながら戦場を駆け巡るという、スーパーサポートとして凄まじい活躍を見せた。そのさばげー選手の支援を受けながら、着実にキルを稼いでいたのがSKYFULL選手。開幕直後のヘッドショットキルを連発し、どのゲームでも見事な活躍を見せていた“日本最強のDPS”TA1YO選手に勝るとも劣らない活躍で、5連続キル、10連続キルを決め、DPSとしての役割を十二分に果たしていた。
気づけば3:1でNaturalsのマッチポイント。もう後がないCYCLOPSは、3ゲーム後のインターバルで頭を冷やし、冷静な試合運びでコントロールを再び勝利。ただ、リーダーのBATA選手によれば、これはコントロールを半ば捨てて、ほかで勝つという作戦だったという。
3:2で迎えた最終決戦となったエスコートでは、互いのペイロードを一歩たりとも動かさないという気迫のプレイで、代わる代わる猛攻撃を仕掛ける総力戦が展開された。ペイロードをゴールまで押し込めば勝ちがほぼ決まるエスコート。前線が壊滅した場合、逐次撃破の愚を割けるために残存部隊は一旦引いて戦力の集結を待つものだが、お互いに絶対に勝ちたいという気持ちからか、ペイロードの周囲では戦闘が終わらず、上杉謙信の車懸りの陣を見ているような気持ちになった。最終的に勝利への執念でやや勝ったNaturalsが初参加初優勝を決めた。
優勝の感想を聞かれて、リーダーのBATA選手が「超嬉しい」と咆哮すると、本大会でMVPの活躍を見せたさばげー選手は「格上のCYCLOPSに勝てて最高に嬉しい」とコメント。ほかの4人も「勝てるとは思わなかったが勝てて嬉しい」と笑顔を見せていた。
一躍日本トップチームとなったNaturals北海道は、来年のシーズン4ではディフェンディングチャンピオンとして、他の国内チームの挑戦を受ける立場になるだけでなく、日本を代表するトップチームとして、「Overwatch OPEN DIVISION」の上位リーグとなる「Overwatch Contenders」への参戦を目指すことになる。「Overwatch Contenders」は、2018年1月より正式スタートするプロリーグ「Overwatch League」の登竜門となり、「Overwatch Contenders」で活躍すれば「Overwatch League」に所属する12チームからスカウトされ、年に数億円を稼ぐプロゲーマーになれる可能性が生まれる。
繰り返しになるが2018年は、「オーバーウォッチ」のプロリーグ「Overwatch League」がついに開幕し、世界中のすべての「オーバーウォッチ」プレーヤーに、高額の賞金を稼ぐプロゲーマーへの道がひらかれる。その時、日本人プロゲーマーは出現するのか、その副産物として国別対抗戦「Overwatch World Cup」本戦トーナメントへの日本出場は実現するのか。ファンの1人として日本人「オーバーウォッチ」プレーヤーの活躍と、「オーバーウォッチ」コミュニティの活発化に期待したいところだ。