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【必見! エンタメ特報】「ワイルド・スピード ICE BREAK」

偉大な前作を超えられたのか!? ジェイソン・ステイサムの想定外の活躍っぷりに注目!

4月28日全国ロードショー

 「ワイルド・スピード ICE BREAK」、またしても最高のカーアクション映画だった。

 ご存じのように、前作「ワイルドスピード SKY MISSION」では、主人公のブライアン役のポール・ウォーカーが撮影中に交通事故で死去するというシリーズの存続に関わる大きなトラブルに見舞われたが、公開を半年以上遅らせた上で、実弟2人を代役にたててCG合成も駆使して残りのシーンを撮影。作品全体をポール・ウォーカー追悼としたことで、シリーズ最高のヒット作となっただけでなく、ハリウッド映画史上でも歴代6位というメガヒット作品となった。

 とりわけポール・ウォーカー追悼に捧げられたラストシーンは、シリーズ屈指の名シーンで、ウィズ・カリファの「See You Again」と共にブライアンの登場シーンを振り返るという内容は、多くの涙を誘った。筆者はエンドロールが終わって試写室が明るくなってからもしばらく立ち上がれないほど号泣してしまった。

 あれから2年、シリーズ最新作「ワイルド・スピード ICE BREAK」が4月28日よりいよいよ公開される。今回も試写会に参加する機会に恵まれたのでインプレッションをお届けしたい。なお、できるだけネタバレは避けたつもりだが、若干避け切れてない気もするというか、そもそも「ワイルドスピード」シリーズはオフィシャルトレーラー自体が、ガンガンネタバレをするフランチャイズなので、ネタバレを避けたい人は、トレーラーも見ずに映画館に行くことをオススメしておきたい。

【「ワイルド・スピード ICE BREAK」ロング版本予告】

 さて、今回観る前に心配だったのは、様々な意味でスペシャルだった前作を超えられるのかということと、果たしてブライアン不在でシリーズが成立するのか、そしてドミニクがファミリーを裏切るという筋立てでどのようにファミリーを描くのかということだったが、結論から言うといずれも杞憂だった。

 プロローグのキューバのシーンは、「ワイルド・スピード」の原点であるストリートレースと、きつね色に焼けたショートパンツの女性達、踊り出したくなるようなラップミュージック、そしてドミニクの天才的な走りという、お馴染みの光景が繰り広げられる。従兄弟を助けるために不利なレースに挑むドミニク。相手は性能の勝るクルマに乗り込んだ上、仲間を使ってワナにハメようとするが、ドミニクはキューバ定番のクラシックカーにニトロを積み込んで対抗する。秘密兵器のニトロで逆転を狙うドミニクだが、ボロボロのクラシックカー自体に火が付いてしまう。ドミニクは車内で炎に包まれながらも、アッと驚かせる大胆な方法でレースを走りきる、という展開。映画開始5分で興奮度MAXにさせるその手法は、さすが「ワイルド・スピード」という印象だ。

シリーズお馴染みのシーンが繰り広げられるキューバ

【「ワイルド・スピード ICE BREAK」白熱のキューバ・マイル・レース映像】

 ただ、今作が従来の「ワイルド・スピード」と決定的に違うのは、リーダーであるドミニクが“ファミリー”を裏切るということだ。ドミニクが 裏切った理由は比較的序盤に明らかになるが、その窮地をどうくぐり抜けるのかは最後の最後までわからない。つまり、この作品には意図的に描かれない部分が出てくる。その伏線は、意外にもキューバのシーンから張り巡らされていく。「ICE BREAK」は、単なる娯楽大作として楽しめるだけでなく、すべてのシーンに意味があり、伏線の回収や謎解きも見所のひとつということを覚えておいて欲しい。

ドミニク(ヴィン・ディーゼル)は、悪役サイファー(シャーリーズ・セロン)と行動を共にし、ファミリーを裏切る
ファミリーはあくまでドミニクを信じ、助けようと行動する

【「ワイルド・スピード ICE BREAK」予告映像】

 今回の舞台は、キューバを皮切りに、ベルリン、ニューヨーク、そして今回のサブタイトル「ICE BREAK」の由来となっているアイスランドを転戦していく。いずれもお馴染みのメンバーたちが総出演するが、ドミニクは途中から追う立場から追われる立場へと変わる。ベルリンでは鉄球を使った大仕掛けで、追っ手を壊滅に追い込み、ニューヨークではハッキングされたクルマによってマンハッタンの大通りが大混乱に陥る中、“ファミリー” たちは名車を手足のように操り、ドミニクを追い詰めていく。そしてラストシーンのアイスランドでは、クルマと原子力潜水艦が魚雷やミサイルを駆使して相争うという前代未聞のバトルが描かれる。どのシーンも主役はクルマであり、まさに「ワイルド・スピード」ならではの展開がたまらない。

【「ワイルド・スピード ICE BREAK」スーパーボウル映像】

 観ていて驚かされたのは、どこまでがCGでどこまでが実写なのかもはや判別が付かないところだ。冷静に考えてニューヨークのクルマが何百台も爆発炎上するシーンや、アイスランドでの潜水艦との氷上バトルはすべて実写であるはずがないから、ある程度はCGが使われていることは疑いの余地がないが、相変わらずエンドクレジットに100名を超えるスタントマンの名前が登場し、メイキング映像を見ても、かなりの内容を実写で撮っていることがわかる。カーカルチャーに深く根ざし、クルマを愛して止まない映画シリーズでありながら、相変わらずクルマが壊れまくる映画だ。

 とりわけ、スーパーカー好きのローマン(タイリース・ギブソン)がランボルギーニ ムルシエラゴを止めろというのにわざわざアイスランドに持ち込み、氷上スピンを繰り広げ目立つだけ目立った上で海に沈ませてしまうシーンは、本作随一の笑いどころだが、本当に沈んでいるようにしか見えない。実に贅沢な映画だ。

【「ワイルド・スピード ICE BREAK」特別メイキング映像①】
撮影風景を納めたメイキングシーン

 それはともかく、これらのバトルにおいて過去のシリーズとの大きな違いはなんといってもブライアンがいないことだ。今作ではシリーズを牽引してきたブライアンの走りも、6作目「EURO MISSION」や7作目「SKY MISSION」で展開された超人的なスーパーアクションも見ることができない。では、ブライアンの穴をどう埋めたのかというと、意外にも「SKY MISSION」で敵役として活躍したジェイソン・ステイサム演じるデッカード・ショウだ。

 「SKY MISSION」では、たった1人で病院にいた警備部隊を壊滅させ、単身乗り込んだ警察署においてもルーク・ホブス(ドウェイン・ジョンソン)と互角の戦いを見せ、さらに走りでもドミニクに勝るとも劣らない実力を持つという、シリーズ史上最強の敵だ。「SKY MISSION」のラストでは、大立ち回りを演じたホブスによって刑務所に投獄されるが、「ICE BREAK」では、ドミニクの対抗馬として脱獄させるのだ。脱獄に至るまでのホブスとの掛け合い、刑務所でのバトルも見所のひとつだ。

 これ以上はネタバレになるので、現時点では「デッカードが登場し、大活躍をする」とまでしか書けないが、ジェイソン・ステイサムはこの作品において新境地を生み出すことに成功している。シリーズにおいて今後デッカードが登場し続けるのかどうかはわからないが、どうもそうなりそうな気がしている。ブライアンの直接の代わりにはならないが、新タイプのダークヒーローが誕生したと言えそうだ。

ドミニクの逃亡に関連して投獄されたホブス(ドウェイン・ジョンソン)と、デッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)の掛け合いも見所のひとつ

【「ワイルド・スピード SKY MISSION」予告編】
今作で大活躍するデッカード・ショウの前作「SKY MISSION」での凶悪振りがわかるトレーラー

 そして“ファミリー”については、シリーズを通じて描かれてきたファミリーのドミニクに対する揺るぎのない信頼と、ファミリーの深い絆が描かれる。アイスランドのクライマックスシーンでは、ドミニクを加えたファミリー一丸となっての原子力潜水艦との氷上決戦となる。ファミリーのリーダーとして単騎で原子力潜水艦に挑むドミニクと、それをバックアップしようとするファミリー達。ドミニクの愛車ダッジ・チャージャーを氷上決戦用に改造したアイスチャージャーがどのようにして潜水艦に立ち向かうのか、ドミニクの危機をファミリーがどう救うのか、必見のラストシーンとなっている。

「SKY MISSION」の空中戦を上回るアクションが繰り広げられるアイスランドシーン

 最後に“前作を超えられたか”については、何を求めているかによって回答が違うと思う。ブライアンがいなくなったことにより、カーチェイスやレースの重みが減っているのは事実としてあるし、やはりメインキャスト唯一と言っていい正統派のヒーローが抜けた穴は大きいと言わざるを得ない。ちなみにブライアンはファミリーから抜けたものの、存在はしており、今作でもブライアンに言及するシーンが何度かあるため、何らかの形で再登場する可能性はゼロではなさそうだ。個人的には、今作で、ブライアンが姿を消し、デッカード・ショウというダークヒーローを迎え入れたことで、「ワイルド・スピード」はまた新しいフェーズに突入したと思っている。

 純粋にストリートレースにフォーカスし、方向性も出演者もバラバラだった“やんちゃ時代”の初期三部作、ドミニクとブライアンのコンビを確立させ、カーアクション映画としての方向性を明確化させた4作目、5作目。オールキャストのアクション大作としてハリウッドスタイルを確立させた6作目、7作目。その意味では8作目「ICE BREAK」は、6作目、7作目の延長線上にあるハリウッドスタイルの大作アクションであることは間違いないが、監督をはじめ多くのクルーが変わっているためか、いずれの過去作ともテイストの異なる作品に仕上がっている。ただ、結論としては、冒頭に書いたようにまたしても最高のカーアクション映画だった。クルマ好きはぜひ“ファミリー”と一緒に楽しんで欲しい。筆者も海外での評価がすこぶる高い4DX版で、ドミニクの走りを存分に“体感”したいと思っている。

【「ワイルド・スピード ICE BREAK」特別メイキング映像②ガレージ紹介】