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「Total War: Arena」ファーストインプレッション

まさに「World of Tanks」のシステムで「Total War」が遊べるゲームだった!

4月7日体験

台湾台北市で行なわれたプレーヤーギャザリングイベントでAPAC初の試遊会が行なわれた

 4月8日と9日に台湾台北市で開催された「Wargaming.net League APAC シーズン II ファイナル 2016 - 2017」では、プレーヤーギャザリングイベントも併催され、APAC FINALに向けての盛り上がりを作るために、ユーザー参加型のステージイベントや、「World of Warships」APACプロデューサー柳沼恒史氏によるトークショウ、会場ではWargamingの各タイトルの試遊や協賛メーカーのデモなどを楽しむことができた。

 中でも今回のギャザリングイベントの目玉となっていたのが、Wargaming Allianceタイトル第1弾としてCreative Assemblyと共同開発しているオンラインストラテジーゲーム「Total War: Arena」の試遊だ。今回、メディアにも短時間ながらプレイする機会が得られたのでファーストインプレッションをお届けしたい。

 なお、本テストでは、まだαテスト前ということで一切の写真撮影が禁止されていた。このため規定のスクリーンショットのみでの紹介となる点を御容赦いただきたいのと、読みやすいように適宜日本語訳した上で紹介しているが、公式の日本語訳と表現が一部異なる可能性があることをあらかじめご了承いただきたい。

「World of Tanks」のWargamingと、「Total War」のCreative Assemblyがタッグ

「Total War: Arena」試遊コーナーの入り口
2000年、まだ3Dグラフィックスすら珍しかった時代に、とてつもないユニット数が決戦を行なう「Shogun: Total War」は、世界のストラテジーゲーム界に衝撃を与えた
歴史シリーズの最新作となる「Total War: Attila」(2014年)。グラフィックスはしっかり15年分進化しているが、実は基本的なゲームデザインは変わっていない
そしてこれが「Total War: Arena」のスクリーンショット。実際に歩いてみるとそれなりの高低差があり、森に兵を隠したり、街道を更新したり、色んな事がやれそうな広大なマップだ

 「Total War」シリーズといえば、PCストラテジーゲームのジャンルにおいて知らぬものはいないと言い切れるぐらい有名なフランチャイズだ。2000年に登場して、日本の戦国時代をモチーフにしながら、従来の国産ゲームにはなかった、そのスケールの大きさに度肝を抜かされた「Shogun: Total War」を皮切りに、時代や対象地域を変えながら10作以上がリリースされている。英国に本拠を置くCreative Assemblyは実はセガゲームスの子会社でもあり、「Total War」シリーズと日本との接点は意外に多いのだが、提供プラットフォームがPCに限定されており、ローカライズもされていないことから、日本のゲームファンとはちょっと縁遠いフランチャイズといえる。

 「Total War: Arena」は、そうしたメインのシリーズとは別枠で、Free to Playとオンライン対戦に特化した「Total War」として長年水面下で開発が行なわれてきたタイトルで、公式サイトは2013年から存在し、Creative Assembly単体でのゲームショウへの出展やαテストなども行なわれている。2016年にWargamingとの提携が発表され、Wargamingが得意とするFree to Playに関するノウハウを注ぎ込む形で開発が進められている。

 ちなみに「Total War: Arena」は初期の時点から、「World of Tanks」との類似性が指摘されていたタイトルだが、今回、最新版を見てみて、それがグッと深化していることに驚いた。誤解を恐れずに言えば、「Total War」モードが新設された「World of Tanks」という感じだ。何しろ、画面構成は左右のユニット画面、マップ画面なども含めてほぼ同じで、テクニカルツリーやアップグレード、プレミアムアカウント等含めてすべてうり二つだからだ。

 ところで「World of Tanks」が世界でヒットした要因として、基本プレイ無料というビジネスモデルの斬新さ以前に、純粋に戦車ゲームとしてよくできていたことが挙げられると思う。それまでの戦車シミュレーションゲームはとにかく操作が難解で、射撃はおろか移動さえ一苦労で、ゲームと言うよりはまさに戦車シミュレーターだった。これに対して「World of Tanks」は、「バトルシティー」並の手軽さで世界中の戦車を操作可能で、マウス操作ひとつで誰でも手軽に戦車戦を堪能することができた。「Total War: Arena」の実機デモを見て、最初に感じたのはそれと同じ進化だ。

 「Total War」シリーズは、歴史シミュレーションゲームとしては名実共に世界最高峰に君臨するゲームだが、万人にとって手軽に遊べるデザインになっているとは言いがたい。内政や外交といった諸要素を抜きにして戦闘だけ見てみても、“国家間の総力戦”という壮大なスケールのバトルを、各ユニットの兵科特性を活かしながら、刻一刻と変化する戦況にリアルタイムで対応しながら勝利に導いていくのは簡単なことではない。「Total War: Arena」は、「Total War」シリーズ本来の総力戦の醍醐味を、「World of Tanks」ならではのカジュアルなシステムで誰でも手軽に楽しめるようにしたオンラインストラテジーゲームといった印象の仕上がりになっている。

 プレーヤーが操作するのはたった3部隊(300人)だ。「Total War」ファンからすれば驚くほど少ないが、「WoT」ファンからすれば戦車の3倍かよと思うかも知れない。いずれにしても、3部隊ずつ擁した10人のプレーヤー同士が激突するため3,000対3,000というそれなりの規模の決戦が楽しめることになる。

 各部隊の動きは重戦車以上にもっさりしている。正面への移動は比較的クイックに動き出すが、左右への展開、後退となると、まず始めに隊列を入れ替え、入れ替えが完了してからゆっくり動き出す。「WoT」ファンの視点からは、「動きがもっさりしていておもしろくないからクイックに変えるべき」と言いたくなるところだが、命令受諾から準備、遂行までのタイムラグこそが「Total War」であり、この間隙を突いた奇襲攻撃や、準備が整うまでのじりじり感など、ここにこそ同シリーズならではの無数のドラマが展開されるからだ。そういう意味では守るべき所はしっかり守っているという印象だ。

 それでは実際に「WoT」と「TWA」を比較しながら、ゲームシステムについてもう少し具体的に説明していきたい。「WoT」の国家と同様に、「TWA」にも3つの勢力、ギリシャ、ローマ、バーバリアンが存在し、それぞれ固有の司令官、テクニカルツリーを持っている。戦車の代わりに、兵士がいて、最初は槍兵、弓兵だけだが、騎兵、重装歩兵、投石機、バリスタなどに高Tierになるごとに枝分かれしていく。といっても「Total War」本来のテクニカルツリーと比較するとかなり簡略化されており、シンプルでわかりやすい。

 「TWA」には、いわゆる攻城戦は存在せず、野戦による部隊同士の決戦が描かれる。このため投石機やバリスタも

 そして「TWA」の大きな特徴となる司令官が存在する。司令官は最前線に立つリーダーとして、「WoT」の搭乗員以上の存在感で、司令官固有のバフ効果を部隊全体に与えてくれるありがたい存在だ。ローマにはかのジュリアス・シーザー、ギリシャにはレオニダス1世など、文字通りの英雄を司令官として選択することができる。

 司令官は300人の中の1人として最前線に立っているため、戦闘中に戦死する可能性もあるということだが、部隊のTierは、この司令官のレベルに依存し、この点だけがシステム的に「WoT」と大きく異なる。「WoT」が戦車ツリーを育てていくゲームだとすれば、「TWA」は司令官を育てていくゲームと言える。

【司令官】
中央に1人だけ異なる装備に身を包んでいるのがバーバリアンの司令官。

 各ユニットは、武器や防具など、「WoT」の戦車と同じように複数のアップグレード項目が用意されており、特定のアップグレードを終えることで、上位ユニットが解放できる仕組みだ。

 ユニットの性能は、ヘルス、アーマー、視界、近接攻撃、近接防御、遠距離攻撃、遠距離防御といったパラメータで表現される。「WoT」のように主砲の「貫通」というパラメータはないものの、その代わりに「モラル」というパラメータが新設される。これは「Total War」シリーズにもある要素で、フィジカルな耐久値がヘルスだとすれば、精神的な耐久値がモラルとなる。

 このモラルは、正規軍であるギリシャ兵は高めで、傭兵的なバーバリアン兵は低め、Tierが高くなるごとに徐々に高くなっていくという傾向はあるものの、不意を突かれたり、後方を突かれたりすると一気に下がるという点では共通しており、このモラルを以下に崩壊させるかが戦術を組み立てる上で重要となる。また、司令官にもこのモラルを一時的に高めたり、低下を防ぐスキルを持っているものがいて、「TWA」ではこのモラルが、「WoT」の貫通と並んでもっとも重要なパラメータとなるのは間違いなさそうだ。

【バーバリアン兵】

 このモラルの具体的な影響は、実際のゲームプレイでも体験することができた。街道上で槍兵同士が交戦中の状態で、街道側面の森の中から別のユーザーの歩兵が真横から攻撃を仕掛けた。すると敵の部隊は戦わずにして後方に逃げ出し、潰走状態となった。期せずしてこちらは全軍で追撃状態に入り、一気に敵の拠点まで到達して、そのまま占領勝ちを収めることができた。

 ランダムマッチの勝利条件は、「WoT」とまったく同じで、敵勢力の全滅か、敵拠点の制圧のいずれかを満たすこと。今回の試遊では、20台の試遊台が用意されていたものの、人数が足りない状態で対戦がスタートしてしまったため、これぞ、10対10の対戦!というほどのカタルシスを味わうまでには至らなかった。

 個人的には10対10の激突はもちろんのこと、チャリオットや重装歩兵など、古代ならではの兵科を使ってみたかったが、いずれも叶えられず、試遊イベントとしては若干食い足りなかったが、WargamingとCreative Assemblyの両社が「TWA」を通じて表現したいこと、そしてその魅力はしっかり感じることができた。

 重要なのは、ストラテジーゲームの復興を社是とするWargamingが、自身のノウハウをふんだんに注ぎ込んで、言わばライバルであるCreative Assemblyの「Total War」シリーズをFree to Playとして見事に開花させようとしている努力そのものに深い感銘を受けた。このままプロジェクトが順調に推移し、欧米はもちろん、日本でも日本語版でしっかり正式サービスが行なわれることを期待したい。なお、試遊会後に、クリエイターへのインタビューも行なわれたので後ほどお届けしたい。