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ゲーム音楽交響楽団JAGMOの春公演「剣士達の交響乱舞」が開幕
「ゼルダの伝説 BotW」、「ファイアーエムブレム」シリーズが鮮烈デビュー!
2017年3月25日 07:00
ゲーム音楽に特化したプロ交響楽団JAGMOの春の定期公演「剣士達の交響乱舞」が3月24日、東京文京区の文京シビックホールにて開幕した。会期は26日まで。
2017年で設立から3年目を迎えた今年最初の公演のテーマは「剣士」。「ゼルダの伝説」を筆頭に、「ファイアーエムブレム」、「モンスターハンター」、「大神」など剣士が活躍するタイトルばかりを集め、JAGMOならではのアレンジで全25タイトル約70曲が演奏された。「剣士達の交響乱舞」のセットリストは以下の通り。
「FINAL FANTASY」シリーズより(作曲:浜渦正志、植松伸夫 編曲:深澤恵梨香)
「閃光」「ビッグブリッヂの死闘」
「ゼルダの伝説」シリーズより(作曲:近藤浩治、片岡真央 編曲:深澤恵梨香)
「メインテーマ」(ゼルダの伝説)
「タイトル」、「大妖精の泉」、「コキリの森」、「ハイラル平原メインテーマ」、「迷いの森」「森の神殿」「ゲルドの谷」「風車小屋」「ボス戦闘」(ゼルダの伝説 時のオカリナ)
「メインテーマ」、「戦闘(フィールド)」、「ガーディアン戦」、「リトの村(昼)」(ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド)
「ファイアーエムブレム」シリーズより(作曲:辻横由佳、森下弘生、近藤嶺 編曲:深澤恵梨香)
「メインテーマ」(ファイアーエムブレム)
「遠征〜炎」、「貴様らが...姉さんの言葉を語るな!」、「『Ⅰ』〜為」(ファイアーエムブレム 覚醒)
「光射す彼方へ~颯」、「汝、光の同胞よ」、「汝、闇の同胞よ」、「すべての路の果てに~地」「いつかきた旅路~轟」「if~ひとり思う~」(ファイアーエムブレムif)
ほか、「ファイアーエムブレム ヒーローズ」、「ファイアーエムブレム Echoes」より
「モンスターハンター」シリーズより(作曲:甲田雅人、小宮山優子、牧野忠義、鈴木まり香、裏谷怜央、成田暁彦 編曲:深澤恵梨香、八木遼太郎)
「英雄の証」「咆哮~リオレウス」(モンスターハンター)
「炎国の王妃~テオ・テスカトル&ナナ・テスカトリ」(モンスターハンター2)
「闇に走る赤い残光~ナルガクルガ」「絶対零度」(モンスターハンターポータブル 2nd G)
「健啖の悪魔~イビルジョー」(モンスターハンター3)
「閃烈なる蒼光~ジンオウガ」(モンスターハンターポータブル 3rd)
「剛き紺藍~ブラキディオス」(モンスターハンター3G)
「灼熱の刃~ディノバルド」(モンスターハンタークロス)
「大神」より(作曲:近藤嶺、上田雅美、山口裕史、JUN 編曲:深澤恵梨香)
「タイトル」、「プロローグ」、「オイラのテーマ」、「神州平原」、「妖怪退治」、「ウシワカ演舞~ウシワカと遊ぶ」、「常闇ノ皇」、「Reset」、「太陽は昇る」
「キングダムハーツ」シリーズより(作曲:下村陽子 編曲:深澤恵梨香)
「Dearly Beloved」、「Night of Fate」、「Traverse Town」(キングダムハーツ)
「Roxas」、「Tension Rising」、「Old Friends, Old Rivals」、「Darkness of the Unknown」、「The 13th Struggle」(キングダムハーツII)
「Vector to the Heavens」(キングダムハーツ 358/2 Days)
「Birth by Sleep -A Link to the Future-」(キングダムハーツ バース バイ スリープ)
「アークザラッド」シリーズより(安藤まさひろ 編曲:八木遼太郎)
「アークザラッドのテーマ」、「戦闘 2」、「戦闘 6」、「セーブ&ロード」(アークザラッド)
「エルクのテーマ」、「LAST BATTLE」、「明日へ」(アークザラッド2)
「ワイルドアームズ」シリーズより(作曲:なるけみちこ 編曲:松崎国生)
「荒野の果てへ」、「街」(ワイルドアームズ)
「フィールド・彷徨」、「西風の吹く街」、「バトル・VSロードブレイザー」(ワイルドアームズ 2nd イグニッション)
本公演の目玉となったのは、NHKでの放送以来の演奏で、定期公演では初演奏となった「ゼルダの伝説」、「モンスターハンター」の両シリーズと、無数の剣士がキラ星のごとく登場する「ファイアーエムブレム」の初演奏。「ゼルダの伝説」は、ゲームのみならずサウンドもシリーズ最高傑作と呼び声高い「ゼルダの伝説 時のオカリナ」のみならず、現在世界中から絶賛されている最新作「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」をいち早く取り入れた。
一方、「モンスターハンター」はシリーズを象徴するメインテーマ「英雄の証」を皮切りに「咆哮〜リオレウス」から「灼熱の刃〜ディノバルド」までという、初代「モンハン」から「モンスターハンタークロス」まで7作品のバトルテーマが一気に聴けるというユニークな趣向でゲームファンを楽しませくれた。
「ゼルダの伝説 時のオカリナ」は、公演のトップバッターとして登場し、「メインテーマ」から、「タイトル」、「大妖精の泉」、「コキリの森」と名曲のバトンリレーで、観客を一気に「ゼルダ」の世界に引き込んでくれた。その後も、「ハイラル平原メインテーマ」、「迷いの森」、「風車小屋」と名曲が続いたが、出色の出来映えだったのが「風車小屋」だ。「迷いの森」と共に、野太いメロディラインで遊び手の心に強い印象を残している名オカリナ曲のひとつだが、「迷いの森」のアレンジが、原曲の雰囲気を活かしたフルート主体の優しい内容だったのに対し、「風車小屋」は、風車の回転をイメージした儚げなエレクトーン調のロンドという原曲の雰囲気を完全に吹き飛ばし、文字通りフルオーケストラによる壮大な“大舞踏曲”に仕上がっていた。曲と曲の合間に、謎が解けた時のジングルや宝箱を開けたときのジングルを取り入れるなど小技も利いており大満足の演奏だった。
初演奏となった「ゼルダの伝説 BotW」は、オーソドックスなアレンジのメインテーマから入り、「戦闘(フィールド)」、「ガーディアン戦」、「リトの村(昼)」と4曲を演奏。そのすべてが強い印象に残り、いずれも素晴らしい演奏だった。
久石譲氏の楽曲を彷彿とさせる、大自然を想起させる壮大なスケールのメインテーマは、和風の音を取り入れるために尺八を追加し、フルオーケストラでその魅力を余すところなく演奏していたし、フィールド戦闘は、接敵時のジングルから戦闘開始、戦闘中、その複数のバリエーションを1つの曲として見事に完全再現しており、脳内でボコブリン拠点戦が再現できるほどの臨場感だった。
ガーディアン戦は、初見で瞬殺され、それ以来、ガーディアンに捕捉されたことを示すレーザー光そのものより、同時に流れ出す不協和音ギリギリのあの曲が恐くなるという、あの感じがそのままフルオーケストラで再現されていて、聴きながら心拍数が上がる自分を発見してしまった。ある意味、JAGMO初のホラー曲の完成といっていいかもしれない。
「リトの村(昼)」は、これそのものが「ゼルダの伝説 風のタクト」の「竜の島」のオマージュであり、セルフアレンジで、「ゼルダ」ファンにとってはたまらない1曲となっているが、JAGMOのアレンジは「リトの村(昼)」原曲のイメージを活かしたオーケストラアレンジになっていて、もう15分ぐらい聴きたいぐらい聞き心地の良い仕上がりだった。ひとつ注文を付けるとすると、4曲だけでは全然足りないということだ。ぜひ次回公演では倍ぐらいに増やして再演して欲しい。
同じく初演奏となった「ファイアーエムブレム」シリーズは、良し悪しの両面が感じられた。まず良い部分については、現在進行形の「ファイアーエムブレム ヒーローズ」や、4月に発売される最新作「ファイアーエムブレム Echoes」といった最新の曲がオーケストラアレンジで聴けたこと。近作の「覚醒」や「if」の楽曲についてもたっぷり演奏され、とりわけ「if」屈指の名曲として知られる声楽曲「if~ひとり思う~」は、声楽パートをクラリネットが担当する形で、同作が描いた切なさや葛藤を美しく表現していた。プロデューサーの山本氏によれば、一時は蓮花さん自身の出演を計画していたということで、声楽パートを本人が務めるという夢は実現できなかったものの、これはこれでかなり聴き応えがあった。
逆に良くなかった部分は、メインテーマをアレンジし過ぎていてスッと入ってこなかったところだ。1パートずつそれぞれ異なる楽器がバトンリレーのような形で繋ぐアレンジの仕方は良かったが、導入部分のアレンジが歴代のメインテーマのイメージからかけ離れていたことと、ピッチが速すぎて消化不良に陥ってしまった感がある。ファンタジーRPGの王道中の王道のメインテーマなのだから、トランペットを前面に押し出した王道的なアレンジで良かったように思う。
そのほか、JAGMOがこだわっているオリジナルのメドレーでは、「ファイナルファンタジーXIII」の「閃光」と、「ファイナルファンタジーV」の「ビッグブリッヂの死闘」のメドレーが良かった。聴く前は「タイプの異なるその2曲をなぜくっつけたのか」とツッコミたいところだったが、予想を遙かに凌ぐまさかの“和楽器アレンジ”で度肝を抜かせてくれた。
この2曲は、以前も演奏をしている楽曲だが、この2曲だけのメドレーも、和楽器アレンジも初めて。まさか尺八が、あの疾走感のある「閃光」の主旋律を務めるとは誰も想像できなかったはずで、リピーターにとっては特に嬉しい誤算となったのではないだろうか。このようにJAGMOの定期公演は、再演される曲目もかなりリアレンジを施し、新鮮な気持ちで楽しめる工夫が凝らされている。ぜひゲームミュージックに興味のある方は、JAGMOの定期公演に参加してみてはいかがだろうか?