【特別企画】
ウメハラ選手とMenaRD選手の死闘が残した格ゲーの未来。「Evo LEGENDS LIVE(獣道)」大会レポート
「今が全盛期」のウメハラ選手に挑んだMenaRD選手との10先の深淵
2026年4月30日 20:19
- 【Evo LEGENDS LIVE - DAIGO vs MENARD(獣道)】
- 4月29日 開催
- 会場:CLUB CITTA’(神奈川・川崎)
2026年4月29日、神奈川県川崎市「CLUB CITTA'」にて、格闘ゲームの“因縁”を賭けたガチンコバトルイベント「Evo LEGENDS LIVE - DAIGO vs MENARD(獣道)」が開催された。
「獣道」とは、REJECT所属のプロゲーマーであるウメハラ選手が主催する格闘ゲーム対決イベント。過去に4回開催されているが賞金はなく、実況を務めたアール氏の言葉を借りれば「格闘ゲーマーとしてのアイデンティティを賭けて」純粋に“どちらが強いか”を競い合う場だ。
今回のウメハラ選手とMenaRD選手の対決は、MenaRD選手が2025年2月13日にSNSで投稿した文章から始まった。この投稿でMenaRD選手は、ウメハラ選手に対して10先での対決を要望、端的に言えば挑戦状を叩きつけたのだ。
ウメハラさんへ
— WBG MenaRD🇩🇴(最強) (@_MenaRD__)February 13, 2025
こんにちは。お元気ですか?
今日はお伝えしたいことがあります。
ウメハラさんはストリートファイターで長いセットをやらせたら右に出る者はいない、史上最高の選手だと思っています。…
その後も何度か話題に挙がったが、実現することなく1年が経過し、2026年3月の「CAPCOM CUP 12」にてチーム戦における3先の直接対決が実現することとなった。ここではMenaRD選手が3-0で勝利し、前哨戦を制した形となったが、この時のインタビューでウメハラ選手は「10先なら勝つ」と明言しており、2人の因縁の対決はいつ実現するのか期待が高まっていたところ、ついに「獣道」の開催が決定したのだ。
開催に際してウメハラ選手の個人配信などもチェックしたが、今回はEVOからの声掛けで実現したようだ。さらにMenaRD選手の「獣道での対決が1番大事なんだ」という意気込みを聞かされ、ウメハラ選手のテンションも上がり「45歳にしてこんなに熱い勝負をやらせてもらえるなんて思っていなかった」と獣道に賭ける思いを熱く語っていた。
この辺りは公式インタビューなどをご覧いただければ「獣道」にかけるウメハラ選手とMenaRD選手の熱い思いが伝わってくるはずだ。本稿では、会場の雰囲気や対決の様子など「Evo LEGENDS LIVE - DAIGO vs MENARD(獣道)」のレポートをお届けしていく。
— 梅原大吾 (@daigothebeastJP)April 25, 2026
会場にはふ~ど選手の姿も。「獣道」で重要なポイント
筆者は開場の1時間ほど前に到着。流石にまだ人はまばらにしかいなかったが、ウメハラ選手の左腕とも評されるふ~ど選手の姿があるなど、イベントへの熱い思いが早くも伝わってくる。その後、開場直前に再度会場を訪れると、そこには溢れんばかりの人が会場前のスペースを埋め尽くしていた。
場内にはREJECTやEVO、アパレルブランド「無敵時間」の物販が展開されていたほか、MenaRD選手とウメハラ選手の軌跡を描いたボードや等身大パネル、2人が使用するアーケードコントローラーなどが展示されており、来場者たちのテンションをさらに高める。
今回のウメハラ選手とMenaRD選手の10先対決において興味深いのは、ウメハラ選手の勝利をときど選手が“確信”していたことだ。各所で勝敗予想が飛び交っており、ウメハラ選手の勝利を願うファンも多い中で、実際にウメハラ選手と「獣道」で拳を交えたときど選手がウメハラ選手の勝利を確信していたのだ。この辺りは実際に対戦した人にしか分からない「何か」があると考えると、どのような結果になるのか全く想像できない。
格闘ゲームにおいて、対戦相手の使用キャラクターに対して、自分のキャラクターでどう立ち回るかを「キャラクター対策(キャラ対)」と呼び、対戦相手のクセなどをチェックして個々の動きに対策することを「人対策」と呼ぶ。「獣道」ではキャラクター変更ができないので、対戦相手とキャラクターの関連性を含めた対策が必要となるが、10先に強いということは、この対策の精度が非常に高いことを意味する。
この10先の試合の中で、ウメハラ選手によるMenaRD選手への対策がどのようなものなのかは、今回の「獣道」で重要なポイントとなっていた。
1試合目は「餓狼伝説 CotW」。GO1選手がリベンジを果たす
イベントは当初の予定から大幅に遅れて、75分押しのスタートとなった。最初は「餓狼伝説 City of the Wolves(CotW)」からREJECT/三和電子所属のLaggia選手とDetonatioN FocusMe所属のGO1選手による一戦。Laggia選手は「SNK World Championship 2025」における「餓狼伝説 CotW」の優勝者であり、GO1選手は2位。そのリベンジを果たすために「獣道」で対決することとなった。
試合前のインタビューにおいて、Laggia選手はGO1選手について「『餓狼伝説 CotW』が発売されてからずっといい成績を収めているすごい選手」と敬意を表しつつ、SWC2025で一度リセットされてから勝った経緯について触れ「今日は同じフェアな条件から戦って勝って(実力を)証明したい」と意気込みを語った。そして「GO1選手は去年いくら稼いだんでしたっけ?自分は2億取ったんですけどね」と挑発し、会場を盛り上げた。
これに対してGO1選手は、Laggia選手を「日本最強のプレーヤー」と認め「賞金は……半分です」と総獲得額で負けた点を素直に認める。しかし「獲得した賞金額でも負けてるし、大会でも前(SWC2025)に負けたんですが、ゲームだけは負けたくない」と改めてのリベンジを誓った。
負けたプレーヤーのみキャラクター変更OK、7先で行なわれた試合は、GO1選手の使用するマルコ、Laggia選手の使用する牙刀による試合が展開。両者とも最後までキャラクターを変更することなく試合が行なわれた。序盤はGO1選手が優勢に進めながらもLaggia選手が粘りを見せる激闘を展開。最終的には6-6の同点からフルカウントフルラウンドの接戦の中でGO1選手が勝利し、リベンジを達成した。
試合後のインタビューにおいて、GO1選手はにこやかに「(Laggia選手に)伝えたいことはたくさんありましたので試合を通して伝えさせていただきました!」と声を上げる。続けて「SWC2025で負けているのもありますし、ここでしっかり勝って今後も活躍していきたいと思っていたので、今日勝てて非常に嬉しい」と喜びを語った。
2試合目は「鉄拳8」。チクリン選手とArslan Ash選手が激突
続く2戦目は「鉄拳8」でのTeam HiGUCHi Youing所属のチクリン選手、Twisted Minds所属のArslan Ash選手による対決だ。2人とも鉄拳シリーズのトッププレーヤーで、チクリン選手はEVO Japan 2024の「鉄拳8」部門で優勝実績があり、Arslan Ash選手はEVO 2024、EVO 2025、さらにはEVO France 2025の「鉄拳8」部門で優勝するなど、文句なしの実力を持つ2人だ。
試合開始前のインタビューにおいて、Arslan Ash選手は「チクリン選手は日本人プレイヤーの中でトップクラス」であり、自身とチクリン選手が「EVO JapanとTEKKEN World Tour 2019 Finalsの両方を優勝している唯一の2人だ」と語り、対戦する喜びを伝えた。
一方のチクリン選手は、自身が優勝したEVO Japan 2024にArslan Ash選手が出ていなかった点について触れ「自分の中でモヤモヤしているところがあった」と明かし、「ここを決勝というくらいの気持ちで戦って、しっかり勝って自信をつけたい」と決意を述べた。
「鉄拳8」の試合では、ステージはランダム、負けたプレーヤーのみキャラクター変更OK、7先のルールで行なわれ、チクリン選手は終始「ファイナルファンタジーXVI」からのコラボキャラクターであるクライヴ・ロズフィールドを選択。対するArslan Ash選手はザフィーナで試合をスタートするが、何戦か負けるたびにキャラクターをチェンジしていった。
Arslan Ash選手の最初のチェンジは、自身のメインキャラクターの1人であるニーナ・ウィリアムズで、次はアリサ・ボスコノビッチを選択。ここで一気に逆襲の4連勝を決めて、一気に捲るかと思われたが、ここでチクリン選手が意地を見せ連勝を止めて、6-4でリーチをかけた。すると、Arslan Ash選手はキャラクターをレオに変更して挑むも、ここでチクリン選手が勝利して試合に終止符を打つ。結果は7-4でチクリン選手の勝利となった。
試合後のインタビューにおいて、チクリン選手は「最近ずっと睡眠時間が短くなるぐらい不安だった」と胸中を吐露し、相手が普段使わないアリサやレオを出してきたことに面食らったものの、勝てて良かったと安堵の表情を見せた。なお、自身のメインキャラの1人であるリリではなく、終始クライヴを選んだ理由は「守りに徹した方が勝てるかなと思って防御力を磨く練習をしてきた」ためだと説明した。
10先の「スト6」。ウメハラ選手とMenaRD選手の勝負の行方は……
ここまで2試合が終わると、会場の空気が少し変化する。これまで格闘ゲームのトッププロたちによる「名勝負」を見届けてきたであろう観客たちだが、次に始まる試合は経緯も含めて重みが異なり、その結末を見に来ているのだ。
試合前のインタビューにおいて、MenaRD選手は「この試合は心からやりたかった試合。長い間活躍しているウメハラさんに感謝している」と深いリスペクトを表明した。格ゲー界の「ラスボス」であるウメハラ選手を倒せるか聞かれると「はい、倒せます」と断言した。
ウメハラ選手は「来月45(歳)だけど今日が全盛期だから。勝ったら誇っていいよ」とし、圧倒的な自信を持って挑戦を迎え撃つ姿勢を見せた。こうしていよいよ、REJECT所属のウメハラ選手と、Bandits Gaming共同オーナーであるMenaRD選手による「ストリートファイター6」10先がスタートした。
この試合ではキャラクターやカラーは変更できず、ステージはお互いが選択したステージを5試合ごとに入れ替えて、その際に座席も1P/2Pを交互に入れ替え、どちらかが10勝するまで繰り返す。外部と連絡が取れる携帯電話の使用禁止で、紙のメモのみ持ち込み可。また、原則は2分以内の再戦となっていたが、ステージで提示されたルールに記載のない「インターバル」もあったようだ。
試合はウメハラ選手の豪鬼が、MenaRD選手のブランカ相手に序盤は2連勝と好調な立ち回り。ところがその動きを見切ったかのように、続く3戦はMenaRD選手が3連勝を決めて、世界トッププレーヤーの実力を見せつける。ここからMenaRD選手に流れがあり、さらに2連勝したところでウメハラ選手がインターバルを宣言。手元のメモ帳をじっくりと読みふける。その後の3戦はメモの効果か怒涛の展開でウメハラ選手が3連勝し、スコアを5-5の同点まで追い上げた。
ところがそこから慎重な動きを見せるようになったMenaRD選手に対して、ウメハラ選手が追随できず、再びMenaRD選手の連勝が続き5-8と差を広げる。その後はウメハラ選手が一矢報いて6-8とするも、MenaRD選手の勢いは止まらず。ポジションチェンジなどを物ともせず、一気に勝負を決めて6-10でMenaRD選手が10先を制する結末となった。
試合終了後のインタビューにおいて、MenaRD選手は「どんな格闘ゲームプレーヤーでもウメハラ選手と10先をやる夢がある。それが現実になって嬉しい」と語り、対戦中にウメハラ選手の情熱やパワーを感じて感動したと述べた。
対するウメハラ選手は、MenaRD選手について「想定よりも強かった。今回は準備期間も長く、ベストのメンバーと練習してきたので、1ミリの言い訳の余地もなく負けた」と完敗を認める形となった。その一方で「本当に強いプレーヤーがこの世界に入ってきたんだなと対戦しながら感じた」とし、負けたことは残念ながら「清々しい気持ちもある」と、次世代の台頭を前向きに捉えるコメントで締めくくった。
最後は自身のユニフォームにサインを入れたものをMenaRD選手に贈呈。ユニフォームをもらったMenaRD選手は嬉しそうに掲げたあと、丁寧に畳んだところで終了となった。
今回の「獣道」において、試合後のインタビューの機会などは得られなかったが、試合後に司会のRyan Hart氏が投稿したMenaRD選手への個別インタビューには驚きのやり取りが残されていた。なんと、元々MenaRD選手は「獣道」のような特定の相手と10先をするシステムが大好きだったのだというのだ。
また、5-2でMenaRD選手が堅実なリードを保っていた場面で、その後の連敗について何が変わったのか?という質問に対して、MenaRD選手はウメハラ選手の防御がそれまでと全く異なっていたとコメント。具体的には「OD昇龍拳(無敵技)でかなり強引に割り込んでくるようになり、投げ抜けの頻度も大幅に増えた。つまり、リスクのある選択肢をあえて取り始めた」という。
その変化に対して、MenaRD選手は何を変えたのかを尋ねると「最初は、ただ私を釣ろうとしているだけで、1ゲームくらいは捨ててもいいと考えていた」とコメント。ところが「実際には私を揺さぶり、攻撃している最中に精神的に不快な状態にさせて、混乱させる戦略だった」とウメハラ選手の変化について語る。
そして「ウメハラ選手の行動パターンは非常に解読が困難だったが、私は遅らせ行動を増やし、シミーを狙うようにしたり、ジャンプがリスクになりすぎていたことに気づいたので、パリィで相手の強攻撃を読み、ドライブラッシュで反撃するスタイルに切り替えた」と具体的な対策についてコメントした。この辺りのMenaRD選手の一連の対策に対して、ウメハラ選手側がさらに被せる対策をしきれなかったということになるのだろう。
Ryan Hart氏は最後に「格闘ゲーム界のラスボスを倒した今、MenaRD選手の次なる目標は何ですか?」と聞くと、MenaRD選手は「正直なところ、今回の経験は本当に素晴らしく、もっとやりたいと思っている」とコメント。さらに「私は10先のような長期戦の形式や、特定のプレーヤーに向けて対策を練るプロセスが大好きなんです。ここ最近のストリートファイターで、これほど楽しめたのは久しぶりです。なので、これからも10本先取のような試合を続けていきたいですし、ぜひまた対戦したいですね」として締めくくっている。
このようなインタビュー内容から、MenaRD選手が10先の試合形式に対して相当な自信があったことが伺えるし、ウメハラ選手と同じように10先の攻略を楽しんでいたのがわかる。ウメハラ選手の「獣道」に関するドキュメントの中にあった「勝つために何でもやる」という点において、MenaRD選手が1枚上手だったということだろう。
A few questions with@_MenaRD__after the victory.
— Ryan Hart (@RyanJosephHart)April 29, 2026
1. What did you experience from Daigo at the 5-2 mark when he started turning things around?
2. How did you adapt to Daigo's changes?
3. What's next for MenaRD?#evolegendslive#kemonomichipic.twitter.com/H5TR7lstTN
会場の進行に改善の余地あり。今後の対戦にも期待
以上「獣道」のレポートをお届けしてきた。試合については、バトル途中の連敗からメモ効果で連勝して、スコアを5-5まで戻したあたりでウメハラ選手の10先のうまさの片鱗が見られた。ただし、その後の展開を考えると、より10先の戦い方を熟知し、対応できたのはMenaRD選手だったということになるだろう。
さて、会場の雰囲気は終始盛り上がり、常に熱気に包まれていた。特に最後の10先においては、どちらが勝っても負けても等しく激しい拍手を浴びせ、ウメハラ選手に対する応援の声も多く飛び交うなど、非常に熱く盛り上がり、来場者にとっては大満足の試合内容が楽しめるオフラインイベントとなっていたと思われる。
一方で、来場者への不備が多く感じられたのはちょっと残念な点だ。例えば開始時間が75分押した点についても、場内では一切のアナウンスはないまま。来場者たちは、そのまま座っていればいいのか、席を外してもいいのか分からず、今回のイベントが自由席だったこともあり、席を立つに立てずといった困惑した空気が感じられたので、この辺りはこまめなアナウンスがあってもよかったと感じた。
映像面についても、ステージ上のスクリーンには配信と同じ映像が表示されているのだが、ステージ上ではさらに両サイドに選手の画像が追加されている。この画像の位置が毎回左右逆のままで落ち着かなかったり、MenaRD選手とウメハラ選手の10先では最後の場所入れ替え直後の映像が、画面中央だけを拡大したような映像になってしまい、しばらく元に戻らないなどのおかしな動きを見せており、場内は実況のアール氏の声を頼りに状況を想像するしかできなかった。
さらには試合終了後、MenaRD選手の勝利画像が映し出されるはずが、スクリーンにはウメハラ選手の勝利画像が表示されてしまった。ほかにも、インタビュー後にイベント終了の案内がないまま選手がステージ上で待たされたり、来場者への終了のアナウンスもないなど、進行面で不備が見られるイベントとなってしまった。
この辺りは今後はより経験豊富なスタッフを入れるなど、改善してほしいところだ。また、今回は「獣道」の名を使ったEVO運営による「興行」の要素が強いイベントとなっていたため、ウメハラ選手主催の本来の「獣道」とは恐らく色々と勝手が異なるのだろうとも感じられた。この辺りの雰囲気の違いもウメハラ選手にとってはマイナスに作用した可能性も考えられる。
今回のウメハラ選手の敗北は、厳しい意見を投げかける人もおり、それは結果が全ての対戦ゲーム界隈において、当然のことかもしれない。しかし、個人的には今回の敗北という「因縁」を持って、今度はウメハラ選手がもう一度MenaRD選手に挑んでほしいと願っている。別に「獣道」でなくても構わない。世界大会でもどこでもいい。ウメハラ選手の格闘ゲーマーとしての意地をどこかで見せることができれば、それは格闘ゲームの新たな歴史を生み出すことになるはずだ。
そのような事が起こるかはわからないが、ウメハラ選手主催の「獣道」が再び復活し、MenaRD選手との再戦なんてことがもしあれば、再び盛り上がりを見せることは間違いない。まだまだウメハラ選手には頑張って格闘ゲーム業界をリードしてほしいと願う。
「今年はマジで本気」pic.twitter.com/2gR8nZlrua
— REJECT esports (@esports_REJECT)April 29, 2026



























































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