【特別企画】

ファミコン版「マッハライダー」が発売40周年。超高速でコースを疾走! シューティングの要素も融合したレースゲーム

【マッハライダー】
1985年11月21日 発売

 1985年11月21日に任天堂が発売したファミリーコンピュータ用ソフト「マッハライダー」が、本日で40周年を迎えた。

 本作は、主人公にあたるマッハライダーを十字キーとアクセル、マシンガン発射ボタンで操作するレースゲーム。敵の車や一部の障害物は、ただ避けるだけでなく、マシンガンを撃って破壊することが可能で、レースにシューティングの要素も盛り込んでいるのが本作の最大の特徴だ。

 以下、本作ならではの面白さを、筆者が夢中になって遊んでいた当時の記憶を頼りに振り返ってみた。

【『マッハライダー』(ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online)】
※Nintendo Switch Online版で撮影(以下同)

目にも止まらぬ、圧倒的なスピード感に絶句

 筆者が本作の存在を初めて知ったのは、確かマンガ雑誌「コミックボンボン」のファミコンコーナーに掲載された新作情報だった。記事によるとスピードがとても速く、しかもライダーはマシンガンを撃って敵を倒すこともできるのだという。

 過去に自身が遊んだレースゲームは、そのほとんどが操作するのはフォーミュラ、またはスポーツカーだった。一方、記事に掲載された本作の写真を見ると、マシンは今までに見たことがないデザインのバイク型で、背景なども含めて未来の世界を想起させるビジュアルは斬新だった。一時期よく遊んでいた「F1レース」は、ギアがロー、ハイの2速だけだったが、本作には4速まであることも、子供心に相当なスピードが出ることを予感させ、すぐに「遊んでみたい!」と思った。

 学校が冬休みになった頃に、本作を購入した友人に早速遊ばせてもらうと、想像をはるかに超えるスピードにまず驚かされた。4速にギアを上げたときのスピードはまさに「マッハ」で、以前に遊んだ「F1レース」とは比較にならないほど速く、慣れるまでにかなりの時間を要した。ライダーのマシンにはブレーキが付いていない(!)が、猛スピードで急カーブに突っ込んだまま、華麗にコーナリングができるのもすごい迫力だった。

4速までギアを上げると、ライダーがもの凄いスピードでコースを疾走する
超高速のまま進入し、障害物を避けつつコーナーリングするスリル感も抜群だった

 筆者はレースゲームがあまり得意ではなかったが、こと本作に関してはライダーはマシンガンが撃てることもあり、行く手を阻む敵の車をはじめ、ドラム缶などの障害物を片っ端から破壊するだけでも十分に楽しめた。

 敵の車は、横から体当たりを仕掛けてコース外に押し出し、路肩にあるドラム缶にぶつけて倒すこともできる。体当たりで倒したときも、思わず「ザマーミロ!」と叫びたくなるほど快感で、しかもマシンガンで倒した場合よりも高得点がもらえるが、反動でライダーの挙動が不安定になるリスクが生じる。体当たりした敵にばかり気を取られ、勢い余ってほかの障害物にぶつかりクラッシュするミスを何度も犯したが、それでも目障りな敵を消し去るべく、無理を承知で肉弾戦を挑むのが実に面白かった。

マシンガンを撃ち、敵や障害物を破壊できるのも快感だった
敵の車は、横から体当たりして路肩のドラム缶などにぶつけて倒すことも可能だ

 マシンガンでは破壊できず、ぶつかると即クラッシュする岩のほか、踏むと激しくスリップするオイル、水たまり、鋲の各障害物も厄介な存在だった。スリップ中は、逆ハンドルを切れば素早く体勢を立て直すことができるが、ゲームの展開自体が速過ぎるあまり「スリップしたら逆ハンドル」と頭の中ではわかっていても反応が間に合わず、毎回あっという間にクラッシュしてしまう。

 特定の位置では、路面が真っ白(おそらく、アイスバーン状態を表現したものと思われる)になり、ライダーがスリップしやすくなるのも実に嫌らしかった。さらにステージによっては、正面から超高速でボンバーボールが飛んで来ることもあり、たとえ車が出現しない場面でも息を継ぐヒマがない。

 ライダーがクラッシュすると、派手な爆発音とともに全身バラバラになり、直後に飛び散ったパーツが元の位置に戻ってからリスタートする一連の演出も実にユニークで、初めて見たときの衝撃は今なお脳裏に焼き付いて離れない。

水たまりやオイル、鋲を踏むとライダーは大きくスリップしてしまう
真っ白のコース上では、減速せずにカーブに突っ込むとスリップし、クラッシュしたライダーはご覧のとおり粉々に……
超高速で飛んで来るボンバーボールは、サイズが小さいこともあり狙い撃つのがとても難しい

とにかく難しかった「ファイティングコース」。敵の車の手強さにも衝撃

 本作には「ファイティングコース」「エンデュランスコース」「ソロコース」の3種類のゲームモードがある。

 「ファイティングコース」には制限時間がなく、何分掛かってもゴール地点まで完走すればステージクリアとなる。いわゆる残機制で、クラッシュするごとにストックが減り、ストックがゼロになるとゲームオーバーとなる(※ステージ1のみ、残機ではなくエネルギー制になっている)。「エンデュランスコース」と「ソロコース」は、制限時間内に既定の距離を走破するとステージクリアとなるルールで、何回クラッシュしてもゲームオーバーにはならない。前者には敵の車が登場するが、後者には車が一切出現しない。

 友人宅に大人数で集まったときには、主に「ファイティングコース」を1プレイ交代で遊んでいた。「ファイティングコース」は、どのステージも距離が総じて短く、残機制ゆえミスが続くとすぐにゲームが終わるので回転が速い、つまり順番がすぐに回ってくるからだ。事実、筆者も本コースが最も難しい印象を率直に受け、ほかの友人たちも本コースをスイスイとクリアできる腕の持ち主は、当時誰もいなかったと記憶している。

 筆者が友人からカセットを借りて1人で遊ぶときは、走行距離が長くてじっくり楽しめる「エンデュランスコース」を最も多くプレイしていた。「ソロコース」も嫌いだったわけではないが、当時からレースよりもシューティングゲームが好きだった筆者は、敵の車が出現する「エンデュランスコース」のほうが戦っている感が得られたので、こちらを好んでチョイスしていた。

【3種類のゲームモード】
残機制のファイティングコースは、ライダーのストックがゼロになった瞬間、即ゲームオーバーとなる
エンデュランスコースは、制限時間内に一定の距離を走破すればステージクリアとなる
ソロコースは敵の車が一切出現しない、ドライビングテクニック重視のモードだ

 本作に登場する敵の車はピンク、緑、赤、青、紫、黒の全6種類。色ごとに出現、行動パターンがそれぞれ異なり、中でも耐久力が非常に高く、体当たりしてもなかなか遠くに弾けない、紫と黒の車がとにかく手強かった(※紫はマシンガンを5発、黒は6発当てないと倒せない)。

 とりわけ紫の車は、ライダーが4速のトップスピードで走っていても、後方から猛スピードでいとも簡単に追い越すので、最初に見たときは背筋が凍り付くほどの恐怖を覚えた。プレイ中は毎回、前方から出現する車や障害物を目で追うのが精一杯だった筆者は、バックミラーを確認する余裕など皆無に等しく、いつの間にか紫の敵に体当たりされて体勢を崩し、クラッシュにつながるミスをいったい何度繰り返したことだろうか……。

後方から出現して猛スピードでライダーを追い抜く、紫の車の出現は衝撃だった
黒の車は耐久力が高く、なかなか倒せないため行動範囲をどうしても狭められてしまう

数々の裏技と「未知のBGM」にも狂喜した思い出

 ファミコンブーム期には古今東西、ありとあらゆるタイトルに裏技が隠されていたが、本作もそのご多分に漏れず、いくつもの裏技があった。

 最初に自力で気付いたのが、マシンガンで同じ種類の車を10体連続で倒すとファンファーレが鳴り、ボーナス得点が追加される裏技だった。隠しボーナスよりもさらに嬉しかったのが、ファミコン雑誌を通じて知った、黒のドラム缶を12個破壊してクリアすると、次のステージからマシンガンの弾数が無制限になる裏技だった。

 マシンガンは、撃つたびに画面上部に表示されたゲージが減り、残量がゼロになると弾切れになってしまうため、常時連射するわけにはいかない(※クラッシュするとゲージは初期状態に戻る)が、この裏技を成功させると発射ボタンを押しっ放しにしたまま、運転にほぼ専念できる特大のメリットがあった。ただし、パワーアップの効果は一度クラッシュしただけで消滅してしまうので、次のコースの序盤早々でうっかりミスしたときはたまらなく悔しかった。

黒のドラム缶を12個破壊すると、次のステージからライダーの色が赤くなり、マシンガンが撃ち放題になる

 本作は「エキサイトバイク」などと同様に、プレイヤーがコースを自由に設計して遊べるデザイン機能を搭載している。バグではあるが、本機能を利用して、いとも簡単に大量得点が稼げる裏技(※)にも大きな衝撃を受けた。

 筆者がこの裏技を知ったきっかけは、確か1986年の春休み頃、テレビ東京系列で放送されたファミコンの特集番組だった。後に「ファミマガ」こと「ファミコンマガジン」に掲載された記事を見て、早速マネしたらバッチリ再現できたことでも本作は思い出深い。

※筆者追記:この裏技を使用すると、ステージクリア後にフリーズしてゲームが続行不可能となる。ご家庭で試す際は、くれぐれもご注意を!

黒のドラム缶を12個破壊すると、ライダーの色が赤くなり、マシンガンが撃ち放題になる
筆者の思い出の裏技。写真のようにデザインしたコースをクリアすると、どういうわけか大量得点が獲得できる

 軽快なリズムを奏でる、本作のBGMも筆者はすぐに気に入った。

 本作を最初に遊んだときから、どのモードでも、どのステージを走ってもBGMはすべて同じだと思っていたある日のこと。エンデュランスコースだったかソロコースだったか、その日はなぜか絶好調で、自身のベストスコアと到達ステージ数を大幅に更新したところ、途中から今までまったく聞いたことがないメロディが突然流れ「エッ、何だこの曲は!?」とまたまたびっくりさせられた。

 まったくもって偶然の出来事だったが、まさかこんな曲が用意されていたとは……。スピード感とサイバーパンクなビジュアルとが織り成す、本作独特の世界観をさらに際立たせるそのメロディには、発見した喜びも相まって、全身が震えるほど感動した思い出も今なお忘れることができない。

先のステージに進むとBGMが変わる演出も実に心憎い

 本作は、現在もNintendo Switch Onlineで配信されており、本サービスに加入すればいつでもプレイできる。

 さらにスマホアプリの「Nintendo Music」では、今月から新たに本作の曲が配信されており、前述した先のステージに進むと流れるメロディ(※トラックの名称は「BGM2」)もバッチリ聴ける。本曲の存在を知らない、あるいはまだ聴いたことがない人は、ぜひこちらもにも耳を傾けていただきたい。