【特別企画】

「スーパーマリオブラザーズ」発売40周年! 1985年に確立された横スクロールアクションの系譜は、令和の世代にも受け継がれる

【スーパーマリオブラザーズ】
1985年9月13日 発売
価格:4,900円

 今から40年前の1985年9月13日、任天堂のファミリーコンピュータ用ゲームソフト「スーパーマリオブラザーズ」が発売された。

 本作は、横スクロールスタイルのアクションの“金字塔”と呼んで差し支えないタイトルで、その後の各社タイトルにも大きな影響を与え、ファミコンでは同様のアクションが多数発売された。

 それから11年後の1996年に3Dスタイルの「スーパーマリオ64」がリリースされ、2Dシリーズは終焉を迎えると思われたが、さらに10年が経過した2006年に「New スーパーマリオブラザーズ」として華麗な復活を遂げ、以降2023年発売の最新作「スーパーマリオブラザーズ ワンダー」までその系譜は脈々と受け継がれている。

 本稿では、その元祖である「スーパーマリオブラザーズ」とともに、時代を駆けてきた横スクロールアクションの「スーパーマリオ」シリーズの系譜を振り返ろう。

40周年を迎えた「スーパーマリオブラザーズ」。本稿の主な画像はNintendo Switch Onlineの「Nintendo Classics」で撮影している

横スクロールアクションで“冒険”を体感できた初代「スーパーマリオブラザーズ」

 筆者が本作に出会ったのはファミコンを入手したばかりの1985年のこと。ファミコンユーザーになったと同時に「Beep」や「ファミリーコンピュータMagazine」といったゲーム情報誌を購読し、ゲーム情報には比較的敏感になっていた頃だったが、同時にファミコンに限らないタイトルにも注目していたため、本作の存在はブームになる前後まで気付いていなかった。欲しいと思った頃には後の祭りで入手困難な状況にあったものの、学校帰りにたまたま立ち寄った渋谷のディスカウントショップで偶然入手することができたのだ。

筆者が学生時代に購入したゲームソフトの実物。メインビジュアルに登場しているキャラクターの絵柄は、マリオ以外は今とイメージが少し違うが、これだけで本当にワクワクさせられた

 持っているソフトが少なかったこともあり、購入後の本作に熱中したことは言うまでもない。マリオが活躍する舞台は「マリオブラザーズ」の下水道や、「レッキングクルー」のビル解体現場などから一転、ファンタジックな「キノコ王国」へと移り、横スクロールアクションとなったことで、右から左へと流れていく背景には“冒険”を感じることができた。

スーパーキノコを取ると身長が2倍になるスーパーマリオに変身。敵に1回だけ接触してもミスしなくなる
ファイアマリオになることで、ジャンプをしなくても攻撃が可能になった
宿敵のクッパ。8−4で待ち構えているもの以外は全てニセモノで、ファイアマリオで倒すと正体が分かる

 ジャンプアクション主体で、上から踏んだり下から敵を叩いたりする攻撃手段は「マリオブラザーズ」から継承している。その一方で、ボタンを押している長さやBボタンダッシュによってジャンプの高さや軌道が変わり、加えて「スーパーキノコ」や「ファイアフラワー」によるパワーアップ要素によってアクションにおける選択肢が大幅に広がった。

「スーパーマリオブラザーズ」をファミコンで遊ぶときのスタンス。ダッシュのBボタンを人差し指で、ジャンプのAボタンを中指で押すパターン。筆者はこちらだった(Switch用「ファミリーコンピュータ コントローラー」を使用)
もう一つは親指の先端でBボタンを押し、親指の腹や関節部分でAボタンを押すパターン。多くの人がこのどちらかのスタンスだったはず

 8ワールド×4コースのステージはかなりのボリュームがあるが、計3か所の「ワープゾーン」が発見されたことにより、ピーチ姫救出までの道のりは一気に短縮された。3-1など特定の場所でノコノコの甲羅を踏むことで行える「無限1UP」は多くのプレイヤーに希望を与えた。こうした意図したものと意図されない多数の「裏技」はプレイヤーを魅了し、当時のゲーム誌の誌面を賑わせ、その一部は現在も継承されている。

1−2と4−2にあるワープゾーン。2か所を経由することで、最終の8ワールドまで最短でたどり着ける
ノコノコなど甲羅を持った敵を利用した無限1UPのテクニック。マリオの数を増やしすぎると次にミスしたときにゲームオーバーになってしまうので、適度な数で終えるのがポイント
「キ○タマリオ」など、ゲーム進行にはまったく役に立たないのに心に残るテクニック(?)もあった

数々のシリーズ作が登場。受け継がれる横スクロール「スーパーマリオ」

 「スーパーマリオブラザーズ」はソフトはもちろん、ファミコン本体も品薄になるほどの社会現象となり、翌年6月には本作をやり込んだプレーヤーに向けた高難度の「スーパーマリオブラザーズ2」が発売。またアーケード版の「VSスーパーマリオブラザーズ」や、人気ラジオ番組「オールナイトニッポン」とタイアップした「オールナイトニッポン スーパーマリオブラザーズ」といった限定ソフトも発売されるなど、異例の人気を誇った。

ファミコンのディスクシステムで発売された超高難度の「スーパーマリオブラザーズ2」。取るとミスになる「毒キノコ」も登場。ジャンプが高く滑りやすいルイージの性質も設定された
ニッポン放送から発売された「オールナイトニッポン スーパーマリオブラザーズ」。一部のキャラクターが当時のラジオパーソナリティに変更されたレアアイテムだ。背景の絵柄やステージ構成の一部が「スーパーマリオ2」のものになっているのも特徴。画像は当時番組のリスナーだった筆者が有楽町のニッポン放送まで行って購入した私物

 1988年10月には北米から逆輸入された「スーパーマリオUSA」を挟み、グラフィックスやサウンドを一新したシリーズ第3弾「スーパーマリオブラザーズ3」が発売。無数のタイトルが発売され、飽和状態といって過言ではなかったファミコンに一石を投じた。

「スーパーマリオブラザーズ3」。シンプルなドット絵然とした前2作から一転、カートゥーンアニメのようなグラフィックスへと進化した

 マリオや敵キャラの表現が豊かになり、アクションも新たに追加。一定時間空を飛べるパワーアップ「しっぽマリオ」の登場によってコースは上下方向にも広がり、敵の種類やギミックも大幅に増えている。ワールドの背景も実に多彩で、砂漠や水中、空中、氷上、さらにはブロックや敵が大きくなったワールドも登場、それぞれのラストには空飛ぶ飛行船がコースとして登場するなど、プレイヤーの度肝を抜く進化を遂げた。

しっぽマリオのほか、タヌキマリオやカエルマリオなど、変身のパターンも大幅に増えている
ドッスンやカロン、テレサなど、その後のシリーズでも活躍する敵キャラが登場した
強制スクロールの飛行船ステージ。激しい攻撃の中を進んでいく

 特筆すべきはボードゲーム状のワールドマップが追加されたこと。マップ上で入手できるアイテムを取るために遠回りするもよし、クリアに必要なコースだけを攻略して最短ルートを極めるもよし、攻略の自由度は大きく広がった。

ワールドマップではアイテムを任意に使うことができ、パワーアップのほかに別のワールドにワープするための「笛」などもある

 こうして「スーパーマリオ」シリーズは任天堂の看板タイトルとなり、ハードウェアを引っ張るローンチタイトルとしての頭角を現していく。翌1989年4月には「スーパーマリオランド」がゲームボーイと同時発売。携帯機でもマリオの冒険を楽しめるようになったのだ。

ゲームボーイの「スーパーマリオランド」。キャラクターが小さく、プレイ感覚もファミコンのシリーズとは少し異なるが、外出先でプレイできたのが大きな魅力だ

 そして1990年11月、満を持して発売された次世代機「スーパーファミコン」とともに「スーパーマリオワールド」が登場。20世紀を代表する2Dアクションの傑作として語りぐさとなる。ハードウェアの性能向上により、これまで以上にカラフルで美しく描写された「恐竜ランド」には、マリオの良き相棒「ヨッシー」が登場した。

 このときの「ヨッシー」はマリオの乗り物的な存在に過ぎなかったが、同じスーパーファミコンで5年後に発売される「スーパーマリオ ヨッシーアイランド」では主人公キャラクターとなり、マリオファミリーの1人としての存在感を強めていく。

「スーパーマリオワールド」。「スーパーマリオ3」と比べても、映像の鮮やかさの違いは歴然。シリーズの楽曲を手がけてきた近藤浩治氏のサウンドも本作で極まった印象がある
ヨッシーも初登場。本作ではマリオの頼もしい相棒として活躍してくれる

 単に見た目だけでなく、コースのレベルデザインや演出も凝っていて、半透明描画で演出された「おばけ屋敷」や、拡縮回転処理を使ったコクッパやクッパとの戦いなどは、ファミコンでは不可能な表現で、しかもそれらをゲームデザインの一貫として導入し、プレイヤーを飽きさせないよう作り込んでいる。

主なパワーアップはマントマリオ。飛行からの滑空アクションにより、普段は行けないところに飛んでいける

 スーパーファミコンは発売から10年以上が経過する2003年頃まで生産され、マリオもその顔として関連タイトルが多数発売されたが、横スクロールアクションのナンバリング的なシリーズとしてはこの「スーパーマリオワールド」の1本に留まった。この時代は3Dへと移行しつつある頃で、スーパーファミコンのタイトルも「スターフォックス」などでその傾向が見られた。

 1996年6月に発売された「NINTENDO 64」では、当時待望だった3Dアクション「スーパーマリオ64」が同時発売され、ユーザーの心に深く刻まれる傑作として現在も語り継がれている。一方で、2Dの横スクロールアクションは、ゲームボーイアドバンスで過去作のリメイク版を収録した「スーパーマリオアドバンス」シリーズなどメインストリームから少し外れたところで細々と展開された。

ゲームボーイアドバンスで発売された「スーパーマリオアドバンス」(画像は弊誌ニュースより)

 据置機では3Dのマリオシリーズが台頭していた一方、携帯機はゲームボーイシリーズからニンテンドーDSシリーズへと移り変わり、一時期は生産が追いつかなくなるほどのヒットを飛ばしていた2006年に新たな動きが見えてくる。

 DSにおける「Touch! Generations」シリーズから発展した、ゲームとは違うガイドや教育などのソフトが次々とリリースされる中、2006年5月に「New スーパーマリオブラザーズ」が発売される。マリオが主役の横スクロールスタイルのアクションは、1992年10月に発売されたゲームボーイの「スーパーマリオランド2 6つの金貨」以来となる、実に14年ぶりのことだった。

「New スーパーマリオブラザーズ」。巨大マリオやマメマリオなどのパワーアップも追加。DSの2画面を使った演出もある(画像は弊誌ニュースより)

 2Dの横スクロールスタイルではあるもの、グラフィックスは3Dで描画されているので、キャラクターの動きはこれまで以上に豊かになり、立体的な動きをするものも登場した。またDSの無線通信機能を使った「マリオVSルイージ」や4人プレイのミニゲームなど、家族や友達同士など広いユーザーに向けたモードをソフト1本で遊べるようにした仕様も好印象だった。

 見た目はかなり進化していたものの、手触りは過去のシリーズとほとんど変わらずプレイできたため、新旧両世代の幅広いプレイヤーに支持され、直前に発売された新機種「ニンテンドーDS Lite」の大ヒットも手伝って、DSタイトルの単独での国内販売本数トップ(649万本)を記録するタイトルとなっている。

 「New スーパーマリオブラザーズ」は後にシリーズ化され、WiiやWii Uなどの据置機で続編が発売されるという逆転現象も発生し、2023年10月発売のNintendo Switchタイトル「スーパーマリオブラザーズ ワンダー」まで続いている。

令和の最新作「スーパーマリオブラザーズ ワンダー」。これもまた2Dシリーズとしては11年ぶりの発売となった。全てが現代のクオリティに進化し、オンラインでは最大12人同時プレイが可能になった(画像は弊誌レビュー記事より)

 そのほか、初代「スーパーマリオ」のスタイルを継承するちょっと変わり種のタイトルとしては、コースを自分で作れる「スーパーマリオメーカー」(2015年9月10日発売/Wii U)、プレイヤーが35人参加して初代「スーパーマリオ」のコースを使ったサバイバルレースを繰り広げる「SUPER MARIO BROS. 35」(2020年10月1日配信/Switch)などが挙げられる。

コースをエディットしてアップロードし、ほかのプレイヤーに遊んでもらえたWii Uの「スーパーマリオメーカー」。現在はSwitch版「スーパーマリオメーカー2」がプレイできる(画像は弊誌ニュースより)
「スーパーマリオ」発売35周年を記念し、2020年10月から2021年3月まで期間限定でプレイできた「SUPER MARIO BROS. 35」

 このような新作タイトルが成立するのは、シリーズ初代から続く普遍のゲームデザインがあるからこそのもの。出会いから40年が経過した筆者も、Bボタンダッシュを意識しながら進めるプレイスタイルは身体が覚えていて、どのタイトルを触っても40年前に味わった感覚とさほど変わらず楽しく遊べるのは、本当に素晴らしいと改めて実感した。このプレイフィールは今後のシリーズにも引き継がれていくことだろう。

 ……などと締めくくるつもりでいたが、つい先ほど配信された「Nintendo Direct 2025.9.12」でも「スーパーマリオ」40周年がフィーチャーされた。新作映画の制作やSwitch/Switch 2での新作発表など、実に盛りだくさんな内容であった。詳細は「スーパーマリオブラザーズ40周年」公式サイトや弊誌のニュース記事を見ていただくことにして、本日からの「スーパーマリオ」40周年イヤーをワイワイと楽しく迎えよう。