【特別企画】

ポケモン×Honda「ホンダコライドンプロジェクト」取材会レポート

ホンダの技術を集約させ動きを徹底再現! こだわりが詰まったミライモビリティ

【ホンダコライドン】
展示期間:3月7日~3月9日
展示場所:Hondaウエルカムプラザ青山
(東京都港区南青山2-1-1 Honda青山ビル1階)
開館時間:10時〜18時 ※7日のみ13時〜18時

 本田技研工業(Honda)は、ポケモン監修のもと、Nintendo Switch用RPG「ポケットモンスター スカーレット」に登場するコライドンの形をしたミライモビリティを製作する「ホンダコライドンプロジェクト」を始動。本プロジェクトで製作中である「ホンダコライドン」をHondaウエルカムプラザ青山にて3月7日から3月9日にかけて展示する。

 ホンダコライドンは、コライドンの重さ、大きさともにほぼ実物大の形状再現を細部にまでこだわり実現。現在は実際に動いてる姿を公開する段階に至っていないが、今後はHonda独自のバランス制御技術を使って、ホンダコライドンの4足歩行および、ゲーム中にはない二輪での自立を可能とすべく開発を進めていくとしている。

 今回は一般展示に先駆けメディア向けの取材会が行なわれ、プロジェクトチームの推進責任者・坂本順一氏と開発責任者・萩原和也氏によるトークセッションにて、開発の経緯やこだわりのポイントなどを聞くことができた。取材会の様子について、会場内やホンダコライドンの写真を交えてお伝えしていきたい。

トヨタミライドンに感化。プロジェクト始動の経緯とは

 「ホンダコライドンプロジェクト」の始動について坂本氏は、2024年にトヨタ技術会によって「トヨタミライドン」が製作され、コンセプトとして掲げられた「大人の本気が子どもの夢になる」というメッセージに感化されたことがきっかけとコメント。同時にHonda社内でも感化されたメンバーが大勢。「次はHondaがコライドンを手掛けたい」という熱い想いが坂本氏の元へじわじわ集まってきたという。

 また、レースをDNAに活動するHondaにとって、赤、青、白の“トリコロールカラー”にはレースにかける情熱、冷静に理論に基づいた技術、レース(スポーツ)を楽しむ全ての人に、といったメッセージが込められ、これを大事しているとのこと。坂本氏はコライドンを見た瞬間に親和性を感じ、よりコライドンを手掛けることができたら嬉しいと思うようになったとした。

 この熱い想いをもって企画書を作成し、2024年の7月頃にポケモンへ提案。さらに社内でのプレゼンを経てプロジェクトがスタートしたのだという。Honda社内のプレゼンでは新車、量産車といった数々のラインナップの中での「ホンダコライドンプロジェクト」提案。その瞬間はかなり社内がざわついたというが、経営陣からは「面白そう、やってみよう」という一言で承認を得られたというエピソードなども語られた。

「ホンダコライドンプロジェクト」プロジェクトチーム推進責任者 坂本順一氏
企画書を持って提案したときは当たって砕けろという気持ちだったと語る坂本氏。Hondaは若手の企画を大事にしてくれる文化があるとし、提案が通る割合は50:50という気持ちだったという
Hondaが大事している“トリコロールカラー”のマシンも会場内に展示されていた。なるほど、確かにコライドンっぽさがある

「ポケモン」好き達による「ポケモン」ファンへ向けたこだわり設計。Honda技術もしっかり集約

 開発責任者の萩原氏からは、ホンダコライドンに使用されている技術や、開発陣のこだわりなどを聞くことができた。

 開発に携わっているメンバーについては自薦・他薦であっという間に埋まったとして、それぞれが「ポケモン」の大ファンだという。開発を進めるうえで最も大事にしたことは「ポケモン」ファンをがっかりせないこと。これを実現するために「ポケットモンスター スカーレット」を相当やり込み、コライドンの動きや表情を徹底的に研究したそうだ。

 萩原氏は寝る間も惜しんで夜な夜なゲームをプレイしていたため、子どもから「いつまでゲームやってるの?」と度々指摘されたそう。社外秘のプロジェクトとして進めていたため、家族とはいえ詳細を明かすことができず、「ポケモンが好きなんだよ」と誤魔化しながら日々を過ごしてきたとのこと。ようやくお披露目できるこの日を迎えとても嬉しいと笑いながら語った。

 ホンダコライドンのこだわりポイントとしては、ポケモン社からも強い想いがあったというカラーリングだと説明。Hondaの既存製品に使用しているものでは表現できず、新たな色を1から作成したという。

 また、玩具感や機械感を無くし、生き生きとしたバランスを目指したという顔、前足・後ろ足のテクスチャーなどは恐竜の剥製を研究して参考にしたとのこと。実際に近くで見てみると、量産型のバイクなどに施される一律なテンプレパターンではなく、絶妙なアンバランスさが生き物感を表現しているのがわかる。

 さらに、コライドンの触覚のような部分については動かした際に風になびくような質感を再現するため、軟質材のウレタンを使用するなど、とにかくゲーム内でのコライドンが縦横無尽に動く様子の再現を徹底しているそうだ。

「ホンダコライドンプロジェクト」プロジェクトチーム推進責任者 萩原和也氏氏
カラーリングやテクスチャーなど、こだわりが詰まった造形について説明。一部は開発メンバーの趣味の領域から発展したという技術なども用いられているという
機械ではなくまるで生き物のような生き生きとした表現など、随所にものすごいこだわりがみられる

 ホンダコライドンプロジェクトを始動するにあたって、Hondaの経営陣からは「Hondaらしいコライドンにしてほしい」という宿題をもらったとし、ゲーム内のコライドンを徹底再現するとともに、随所にHondaの技術が盛り込まれているのも大きな特徴だという。

 例えば、自立に関しては既に発表済みである最新技術の「ライディングアシスト」機能を転用していることや、四足歩行や手足の動きの再現には二足歩行のヒューマロイドロボット「ASIMO」の技術が活用されているそう。この辺りはトヨタミライドンとの差別化が期待される。

 こうなってくると動いている姿を早くみてみたいものだが、お披露目の具体的な時期については現時点では未定だという。ただし、夏前までにはなんとか走る姿を見せれるよう開発を進めたいとしており、「楽しみに待っていてほしい」と意気込みを聞くことができた。

自立を可能とさせる「ライディングアシスト」機能の転用元となる製品なども紹介
コライドンならでは四足歩行はASIMOの技術を活用しているそう。Honda独自の技術がふんだんに使用されている
レイアウト図といった貴重な資料もお披露目
残念ながら今回は動く姿をみることはできなかったが、四足歩行の実現を目指し作成されたCG図なども公開された
フォトセッションの1枚。こうしてみるとホンダコライドンの大きさがわかりやすい

 取材会の最後に行なわれた質疑応答にて、トヨタとのコラボの予定はあるかという質問に対しては、「ホンダコライドンとトヨタミライドンが並んでいる姿をみたい気持ちはすごくある」としつつも、現時点では予定はないという。

 また、可動時の時速については10〜15kmほどの速度を想定しているとし、子どもも安心して乗れるような設計で開発を進めているとのこと。公道での走行は法律など制限がある中では難しいかもしれないが、例えばテーマパークでの運用といった活用も考えられるとした。

 今回は静止状態での展示となるが、こだわりの詰まった外観や、開発メンバーのこだわりが随所に詰まった設計を間近で見れるのはかなり貴重な体験となる。ぜひ会場へ足を運んでみてほしい。

とにかくワクワクしっぱなしの取材会だった。今後が非常に楽しみだ
最後は開発メンバーの方たちをパシャリ。皆さんとても楽しそう