【特別企画】

タイトーが街に“遊園地”を展開? 「プライズ頼り」脱却を目指す新戦略

ゲームセンター以外の施設に力を入れる理由とは

【新業態に関するメディア向け説明会】

9月2日 開催

 タイトーといえば、何の会社をイメージするだろうか。「スペースインベーダー」や「バブルボブル」などのゲームだろうか。それとも、「タイトーステーション」の名前で知られるゲームセンターだろうか。どれも正しいが、一方で、タイトーがアスレチック施設や子ども向け施設などの新業態にチャレンジしていることをご存知だろうか。

 今回、タイトーはこの新業態に関するメディア向け説明会を東京・新宿にあるEXBAR TOKYO plusで開催した。今回の説明会では、同社がここ最近取り組んでいる、ゲームセンター以外の新しい遊びの場として注力している新事業の特徴や、先日稼働が開始されたオンラインメダルについての紹介が行われた。こちらの記事では、その模様をレポートする。

40代の認知度は高いも、10代にはあまり知られていないタイトー

 最初にタイトー 総務管理本部長の児玉晃一氏より、同社の認知度とイメージについて調査した結果が報告された。昨年12月に、タイトーという企業の知名度がどれぐらいあるのか外部調査会社を利用してアンケートを実施した結果、社名とロゴマークが入ったものを見て、知っていると答えたのは全体の57%であることがわかった。

 そのうち、45歳から49歳までが最も多く、78.5%という結果が出ている。しかも、この45歳から49歳までの年齢層は、男性に絞ると90%を超えている認知度となっていた。

 だが、その一方で10代は38%と低くなり、女性も含めると25%となってしまっていたことも判明。プリクラなどのサービスを提供している同社にとっては、少々残念な結果が出ている。

タイトー 総務管理本部長の児玉晃一氏
タイトーの認知度アンケートでは45歳から49歳の年代が78.5%と最も高かった

 また、タイトーがどんな企業なのかイメージを調査したところ、約6割がゲームメーカーであると答えている。残りの3割はゲームセンターと、1割がキャラクターグッズメーカーと回答していた。

 実は、タイトー自身は、現在もNintendo Switch向けゲームやアミューズメント施設向けゲームなども開発しているのだが、同社の売上で半数以上を占めるのはゲームセンター関連の事業だ。それに続くのが、キャラクターグッズ関連を扱うマーチャンダイジング事業である。こちらの事業は、クレーンゲームの中に入っているフィギュアやぬいぐるみなどの制作を指している。このふたつの柱があって、ゲーム開発はそれに続く3番目の事業である。

 このように、若干世間の認識と実績にギャップがあるが、企業として目指しているミッションは、あらゆる世代の遊びが好きな人たちに対して、エンターテインメント体験・空間を通じて笑顔や新たな驚きや人とのつながりを提供するということである。それを実現するために、「フィジカルエンターテイメント」をキーワードとし、新たなリアルでのエンタメ空間を提供する様々な新業態に取り組んできた。

 児玉氏は、コロナ渦の中で新業態の展開が遅くなった部分もあったが、ようやく出揃ってきたことから今回の説明会を実施することになったと、その経緯を語っていた。

推し活とインバウンド需要によるクレーンゲームの人気がゲームセンターを牽引

 続いて、コーポレート・コミュニケーション課広報担当の川口健士氏より、タイトーを取り巻く現状と、現在取り組んでいる新業態、オンラインメダルゲームの状況について紹介が行われた。

コーポレート・コミュニケーション課広報担当の川口健士氏

 ゲームセンターの店舗数は、ここ10年で8,000店ほど減少している。その一方で、売上については2011年から減少しているものの、2015年より復調傾向にある。なかでもプライズゲームの割合は徐々に存在感を増しており、コロナ渦の影響で一時期落ち込んだものの、2021年の売上そのものは過去最高の3,000億円に達している。

 プライズゲームが好調な理由は、インバウンド需要と推し活にあると川口氏は説明する。同社が昨年10月に実施したアンケートでは、10代から30代の男女では45.2%が特定のキャラクターや人物のグッズ集めている「推し活」をしていることがわかった。こちらは世代別では、10代では3人にふたり以上という高い割合となっている。また、インバウンドに関しては、新宿の店舗を見ただけでも過去最高の訪日客が更新されている状況だ。

アミューズメント業界は回復傾向にある
推し活の割合を示したグラフ(出典元:タイトー)

 このクレーンゲームなどのプライズゲームの需要を受け、今年8月には、ローソンの600店舗以上にクレーンゲーム機の設置を開始した。今まで雑誌が置かれていたようなコーナーに、小型の筐体が導入されている。このように、クレーンゲームに触れる機会は以前よりもかなり身近になってきているのだ。

コンビニでクレーンゲームが遊べる時代に!?

子ども向け、謎解き、アスレチックなども展開

 プライズ人気が高いこと自体はいいことでもあるが、はたしてそれに頼ってばかりでいいのだろうか? というところから、タイトーでは新業態・新たな施設の開発と展開に力を入れている。

 先ほどの児玉氏が「フィジカルエンターテイメント」というキーワードについて触れていたが、同社では、コロナ渦前からフィジカルエンターテイメントなどの新業態に注力してきた。このフィジカルエンターテイメントとは、オフラインで実体験をともなうエンターテイメントのことをさしている。

 それを実践するために、ゲームセンターではない様々なエンタメ施設を国内で15店舗ほど展開している。具体的には後述するが、2021年からは毎年新たに3店舗をオープンするなど、出店のスピードも上げてきた。さらに今年も秋から年末にかけて、新たな出店の計画を進めているところだ。以下では、新業態となる店舗の紹介が行なわれた。

ターゲットが異なる様々なエンタメ施設を展開している

 デジタル×フィジカルがコンセプトの「らくがキッズ」では、0歳から12歳までの子どもと保護者を対象にした施設を展開。自社システムの「ラクガキシステム」を導入し、自分が描いたキャラクターを体を動かすことでレベルアップや進化させることができるという遊びが楽しめる。「らくがきウォッチ」を腕に巻いて持ち帰ることができるなど、子どもが好きな要素が詰め込まれた施設となっている。

【あそんで!そだてる!らくがキッズ 海老名ビナウォークにオープン】

 ホラー×脱出ゲーム・謎解きがコンセプトの「地獄のタイトーステーション くらやみ遊園地」は、10代~20代の男女をターゲットにした施設だ。7月には5店舗目となる札幌店がオープン。写真映えするデザインと脱出ゲームや謎解き要素で何度もチャレンジしたくなるような仕掛けが盛り込まれているのが特徴となっている。

【【くらやみ遊園地 】丑の刻地下病院 怨 PV】

 9月14日にオープン5周年を迎えるスポーツ・アスレチック×エンターテインメントがコンセプトの屋内型スポーツ・アスレチック施設が、「ノボルト(NOBOLT)」だ。ボルダリングはスピードクライミングなど、本格的なスポーツも楽しむことができるのが特徴である。ちなみにスピードクライミングについては、練習場を提供しておりJr.選手も輩出している。

【NOBOLT PV【2019年9月14日グランドオープン!】】

 スポーツ×エンタメがコンセプトの施設が「BOOTVERSE」だ。こちらは、10代から20代の学生グループとファミリー層などZ世代をターゲットにしており、タイトーのオリジナルIPを活用した15種類のアトラクションを楽しむことができる。

 アトラクションとしては、野球のようにボールを投げる「スペースインベーダー ストライク」や、ボクシングをテーマにしたパンチングマシンの「ソニックブラストサバイバル RUSH&FALL」、パルクールをテーマにした「ニンジャウォーリアーズ エクストリームステージ」などが用意されており、過去の人気ゲームを知っている人も知らない世代でも楽しく遊べるものが取り揃えられている。

【新感覚パーティースポーツ施設 BOOTVERSE(ブートバース)PV】

 デジタル(XR・イマ―シブ)×フィジカルがコンセプトの施設が、「X-STATION」だ。ターゲットは10代から20代の男女で、「フロア丸ごと!没入体験」ををテーマにしたVRやARのアトラクションが楽しめるようになっている。こちらは、新たに本各謎解きアトラクションが登場するなど、新しいコンテンツもどんどん登場している。

【アッ!と驚くアソビ空間「X-STATION」がタイトーステーション池袋西口店にオープン】

 今回のイベントの会場にもなった「クラフトビール&ゲームバーEXBAR TOKYO Plus」は、クラフトビール×ゲームをコンセプトにした施設だ。グループで来店する一般層やインバウンド客などをターゲットにしており、クラフトビールを片手に店内に設置されたダーツやアナログゲーム、ビデオゲームなどで遊べるようになっているところが特徴だ。

アナログゲームからビデオゲームまで、様々なゲームが取り揃えられている
料金の支払いはガソリンスタンド方式。別途プリペイドカードを購入し、好きな種類を好きな量だけコップに注ぐと、その分だけカードから残高が引かれる。豊富な種類のビールが飲めるところも特徴だ

プライズ好調の波はオンラインにも。新たにメダルゲームを導入

 ずらりと紹介してきたフィジカルエンターテイメントな施設とは別に、オンラインでゲームを遊べるようにするという取り組みにも挑戦している。これ自体はフィジカルエンターテイメントではないものの、将来的にこうしたものが遊べる施設を作るということも考えられることから、同社では力を入れている分野だ。

 2017年よりサービスが開始されたのが、「タイクレ」ことタイトーオンラインクレーンだ。こちらは、PCやスマホでいつでもどこでも遊べるオンライン上のクレーンゲームである。ユーザー登録数は、2024年8月時点で、390万人を突破しているなど、かなりの人気コンテンツとなっている。

 そこに、今年の7月29日に新たに追加されたのがオンラインメダルゲームだ。こちらは、転がるビー玉の順位を予想するレースゲームの「マーブルレース」と、デジタルスロット「バブルンスロット」の2種類のコンテンツが用意されている。

390万人以上のユーザーが楽しんでいる「タイクレ」

 では、なぜ390万人以上が登録している人気コンテンツに、オンラインメダルゲームという新たな要素を追加することにしたのだろうか? これは、オンラインクレーンの人気商品において、待ち時間が発生するという課題への対応策として導入されたものとなる。

 その目玉の一つの「マーブルレース」は、巨大な玉転がしマシンに色とりどりの球を走らせ、どの色の球が1位になるかを予想するレースゲーム。映像は実際に球を転がす様子の中継となっており、途中経過のナレーションも入る。

 完全デジタルではなく、リアルに作り上げたマシンを使用するところがユニークだ。マシンは24時間、一定サイクルで稼働し続けているという。

 オンラインメダルゲームは人気クレーンゲームの待ち時間に遊べることが意識されているほか、オンラインクレーンで欲しい景品がないときでも遊べるゲームの選択肢という役割も担っている。またメダルゲームを利用することで、オンラインクレーンで使えるチケットがもらえるという特典も用意されているのが特徴だ。

 オンラインゲームセンターの可能性として、実際のメダルゲーム機とは異なり人数制限がないというメリットがある。それに加えて、同時に多人数でのプレイも行えるため、待ち時間もなく快適にプレイすることができる。リアルな店舗でゲームを楽しむのがゲームセンターというイメージが強いが、今後はオンライン上でもこうした遊びが広がっていくのかもしれない。

 余談だが、今回の説明会は2部制で行われており、後半は店舗内のビールを楽しみながらオンラインメダルゲームの「マーブルレース」やオンラインクレーンに挑戦できるようになっていた。「マーブルレース」は、映像自体は単純にビー玉が転がっていくというシンプルなものなのだが、なぜか競馬を見ているようなワクワクするコンテンツになっていた。

会場となったクラフトビール&ゲームバーEXBAR TOKYO Plusで、ビールを片手にオンラインメダルゲームのプレイを鑑賞!?

 その理由は、マシンがCGではなく、神奈川県秦野に実際に設置されている物理的なマシンを、カメラでリアルタイムで映し出しているからだろう。実際に遊んでみるとビー玉が転がっている間も、F1のレース中継のような実況が流れており、白熱したバトルの模様が楽しめるようになっているのだ。

ノートPCで「マーブルレース」に挑戦。いくつかBET方法が用意されていたが、今回は1着当てを選んでみた
様々な障害物を乗り越えてゴールしたビー玉たちを見て、なぜか感動してしまった

 今回の説明会を通して、タイトーが様々な世代に向けて新たな事業に積極的に挑戦していることがわかった。タイトーが今後、どうような戦略で各世代の知名度を上げていくのかに注目だ。