【特別企画】

「SANABI」NEOWIZによる新たなパズルアドベンチャー「Chasing the End」日本語デモレポート

引き込まれるストーリーに期待! 廃墟化したソウル、そして極秘プロジェクトの謎

【Chasing the End】

発売日 未定

価格 未定

 ローグライクアクションゲームの「Skul: The Hero Slayer」やサイバーパンクなアクションアドベンチャー「SANABI」など、良質なタイトルを続々とリリースしてきたNEOWIZ。同社が、開発会社のジノゲームズとパブリッシング契約を結び近日リリース予定のタイトルが、横スクロールパズルアクションの「Chasing the End」である。

 すでに韓国版のデモ版がSteamで配信されていたが、5月23日より日本語版もプレイ可能になった。ゲーム全体としては、序幕から始まり1章から7章までの章立てに分かれてステージが構成されている。そのうち、デモ版でプレイ出来るのは、冒頭の序幕と1章まで。

 デモ版はゲーム体験としてはわずかではあるが、特にそのストーリーに大きな魅力を感じることができた。今回は、デモ版に触れてわかった本作の魅力とポイントについてレビューしていく。

小惑星が半年後に地球に衝突! 生き残りを賭けて極秘プロジェクトの謎を追いかける

 本作は、半年後に小惑星が地球に衝突することが確定しており、人類が滅亡に向かっているという世界観になっている。そうした影響からか、ゲームの舞台となるソウル・梨泰院もそのほとんどが荒廃し、あちらこちらで争いが起きているような状況だ。プレイヤーはここで、主人公のソ・ラヨンとなり、この世界を冒険していくことになる。

 まずゲームを始めて印象に残るのが、そのグラフィックの美しさだ。いわゆる写実的な3Dの映像ではなく、ドット絵がベースになっているのだが、それが最新のテクノロジーと組み合わされることで、懐かしいというよりも新しい雰囲気の作品に仕上げられている。近年のインディー作品ではしばしば見かける手法ではあるものの、どこか心惹かれるものがあるから不思議だ。

アパートの1室からゲームはスタートする。ドット絵風のグラフィックに加えて、美しいライティングなどが組み合わさっており、懐かしさとあわせて新鮮さも感じられる

 先ほどデモで遊べるのは序章と1章と紹介したが、ゲーム自体は序章の前にオープニング的なシーンが体験できるようになっている。といっても派手なムービーが流れたり、あるいは特別な演出があるわけではない。絶望的な状況に精神が追い込まれたラヨンがアパートの一室から出ていくところから始まるという、静かなスタートになっている。

 実はゲームをプレイする前に、どんな作品なのかまったくわからず遊び始めたのだが、何ができて何ができないのかわかるような作りになっているところに感心させられた。たとえば、アパートにはドアが開いた状態になっており、部屋の中が見えるところもあるのだが、そうした場所には移動することはできない。

 このゲームでは、基本的に右方向に移動していくことで物語が進行していくのだが、実際に移動できるのは上下左右の2次元的な動きのみだ。それを冒頭で気付かせることで、「なるほど、そういうルールのゲームなのね」と思わせるような作りになっている。

中を覗きたくなるような場所が作られているが、奥行き方向には移動できないことに気付かされる

 ちなみに、タイトルメニューの「設定」では、選べる項目がふたつだけ用意されている。ひとつは「言語」でもうひとつが「ワードフィルター」だ。このワードフィルターとは暴言などを伏せ字にするというもの。

 たとえば、オープニングでアパートの大家と軽い言い争いになる場面がある。そのときのセリフに暴言が含まれており、フィルターがオンの状態では「XXXX」というように伏せ字で表示されるのだ。それだとかえってなんと言ってるのか気になってしまうという人は、あらかじめ「ワードフィルター」をオフにしておくことをオススメする。

左が「ワードフィルター」オンの状態で、左がオフ。それほど大きな違いは無いが、ゲームを遊ぶ前に好みで切り替えておくといいだろう

「序章」は基本操作が学べるチュートリアル的な内容

 大家とのやりとりのあと、アパートを出ると「序章」がスタートする。こちらは、基本的な動作を学んでいくことができる、いわゆるチュートリアル的な内容のステージだ。主人公は、左右に移動できるほか、ジャンプである程度の高さの高台に飛び乗ったり、あるいはしゃがんで障害物を避けながら移動したりといったアクションができる。

 また、はしごなどの何かしらのインタラクションができる場所では、「取る」や「下りる」、「開ける」など、何かしらのアクションができることを知らせるアナウンスが表示される。これらを駆使しながら、画面の右方向に向かって移動していく。

屋外に出た後は、コントローラーの左右で移動ができるようになる
何もないと見過ごしがちだが、アナウンスが表示されるので下に移動できることがわかる
扉を開けるなどインタラクションの種類も豊富だ

 この「序章」でも、ステージの途中で印象的な場面が挟まれている。それは、自らの命を絶つために飛び出したラヨンだったが、美しい夕日を目の前にして怖じ気付いてしまうシーンだ。廃墟のような場面が多い作品であるが、こうした自然の力や、ネオンサインが輝いているようなシーンが入り交じり、アート的な「映える」場面がいくつも出てくるところが本作の魅力のひとつである。

一枚絵ではなく、アニメーションでシーンが切り替わっていく

 寸前のところで自殺を思いとどまったラヨンだったが、その瞬間、すぐ近くから銃声が聞こえてくる。そこでは、傷付いた兵士が何者かと命のやりとりを行っている場面だった。争いで生き延びた兵士に助けを求められたラヨンは、彼との会話の中で驚くべき情報を耳にすることになる。

自らの死を断念した瞬間、兵士を助けることになる

 半年後に地球が滅亡するという状況だが、その兵士がいうには政府が極秘裏に避難場所を宇宙に作っているというのだ。その鍵となるのが、兵士が所有していた「ドロシー」と呼ばれるアイテムである。この「ドロシー」は、避難場所を作るために必要なアイテムだ。兵士は死に際にラヨンに「ドロシー」を託し、代わりに集結地まで持って行ってほしいと懇願される。ここから、ラヨンの新たな冒険へと出かけていくことになる。

 このように、各章にはこの世界で出会ったキャラクターたちの会話が挟まれている。最初は人類が滅亡してしまうといった程度の情報も、その雲が少しずつではあるが、晴れていくようだ。そのため、どうしても続きが気になって、先を目指したくなってしまう。

兵士から死に際に重要なアイテムを託される

様々なギミックを活用したパズル要素

 亡骸となってしまった兵士と別れたラヨンが、次に訪れたのは霧が立ちこめるうっそうとした公園のような場所だ。ここから1章に入り、徐々にパズル的な要素が盛り込まれていくようになる。たとえば、ステージの最初の場面では、高台を乗り越えることで先に進める場所が登場する。

 ラヨンはジャンプができるが、それも限界があるため、近くに放置されていたカゴ車を引っぱってくることで、足場として利用する。まだ最序盤なのでパズル自体は非常に簡単だが、おそらくこの先パズルの難易度が上がっていき、利用出来るギミックの種類も増えていくと予想できる。

近くにあったカゴ車を動かすことで、足場として利用することができる

 カゴ車に続いて登場するギミックが、電源ユニットである。電源ユニットのスイッチを押すことで扉が開いたり、あるいは水たまりの放電を止めたりといったことができるようになる。このように、ひとつのギミックで複数の使い道ができるものもあり、どのように動かせばいいのか頭を悩ませるポイントにもなっている。

カゴ車を動かして高台に登り、電源を入れることで奥の扉が開く

 このパズルが登場する1章では、最初はカゴ車を動かして上に乗るというシンプルなものだったが、途中からエレベーターを利用するなど、上下の移動を加えた複雑なものも登場する。また、ひとつのアクションをした後で、少し元の場所に戻ってアクションを行うといった要素も増えていく。

 パズルの難易度は、あくまで個人的にだが、ちょうどよく感じた。パズルで散々頭を悩ませて、完全に行き詰まってしまったと思ったときに、ふとした瞬間に閃いて解けたことがあり、そのときの爽快感が素晴らしくてついつい夢中になって遊んでしまった。

エレベーターのようなギミックも登場。左右だけではなく、上下の移動も増えていく

 また、単にパズル的要素が増えるだけでなく、1章からは主人公がすぐに死んでしまうような場面もいくつか登場する。具体的な例をあげると、電気が流れている水たまりに入ったときや、高台から落ちたときなどだ。しかし、そうして失敗した場合でもすぐ直前からリスタートできる。そのためプレイ中はほとんどストレスを感じることなく、シームレスに探索を続けていくことができた。

誤って感電死しても、すぐに直前からやり直すことができる

 1章のラストでは、壁に挟まれて動けなくなっている人物を救出し、一緒に梨泰院に向かうというところで終わりとなる。デモ版がプレイ出来るのはここまでなのだが、ストーリーの多くはまだまだ謎に包まれた状態になっており、この先主人公にどのような運命が待ち受けているのかも気になって仕方がない。

 パズル要素を含んだアドベンチャーゲームとしての出来映えも、少なくとも今回プレイした範囲では素晴らしく感じた。シンプルながらアート風のグラフィックも心惹かれるものがある。ゲーム性として一番近いと感じたのは「LIMBO」だが、本作ではよりストーリー面が重視されているという印象だ。久々にパズルアドベンチャーに挑戦してみたいという人は、まずはこのデモ版をプレイして本作の魅力に触れてみてほしい。

壁に挟まった人を助けて、一緒に梨泰院を目指すというところでデモ版は終了となった