【特別企画】
「新サクラ大戦」4周年。数々の要素が一新され、初めて触れるに相応しい「サクラ大戦」!
2023年12月12日 00:00
- 【新サクラ大戦】
- 2019年12月12日 発売
セガが2019年12月12日に発売したプレイステーション 4用アクション・アドベンチャーゲーム「新サクラ大戦」が、本日で4周年を迎える。
本作は、同じくセガから発売された人気アドベンチャー「サクラ大戦」シリーズの最新作で第6作目にあたるタイトルだ。「サクラ大戦」といえば、セガサターンの名作ゲームソフトとして挙げられる一方で、作曲家・田中公平氏の手がけた劇中主題歌「檄!帝国華撃団(ゲキテイ)」が広く知られていることだろう。本シリーズは、1996年9月27日に第1作目がセガサターン向けに発売され、“大正ロマン”に“スチームパンク”をかけ合わせた架空の「帝都・東京」を舞台に、「降魔(こうま)」と呼ばれる魔物と戦う少女たちを描いている。
そんな「サクラ大戦」シリーズに筆者がしっかり触れ始めたのは、今作「新サクラ大戦」からだったりする。幼少期のころ、母親と夢中になって視聴していたアニメ版の記憶が根付いており、断片的に「ゲキテイ」のフレーズや、藤島康介先生の描く和装のメインヒロイン・真宮寺さくらのことを知っていた。
しかしながら、これまでゲーム本編を遊ぶ機会はなかった。それは単純な好みの問題で、幼少期のころは“近未来SF”のような世界観が好きだったからだ。だが、それも年齢を重ねていくとともに、アニメ・漫画・ゲームと、数々のサブカルチャー作品に触れる機会が増え、巡りめぐって「サクラ大戦」という作品に自分の中でスポットライトが当たったわけである。
そうして初めて触れた「新サクラ大戦」は、過去シリーズから大きく変化した要素があれば、伝統的な要素も残しつつ、これからシリーズに触れる新規ユーザーが遊ぶ「サクラ大戦」として、手堅く仕上がっていたのではと、今なら思うのだ。本稿ではプレイ当時の記憶や思い出を交えつつ、改めてその魅力を振り返ってみようと思う。
「BLEACH」の久保帯人先生が描き起こす、新しい花組ヒロインたち
「太正桜に浪漫の嵐!」。「新サクラ大戦」の次回予告で耳にするこの台詞は、シリーズを象徴するキャッチコピーの1つだ。自分でも知らずのうちにこのフレーズが刷り込まれていたようで、「大正」と耳にして思い出すのはいつも「サクラ大戦」のことだった。恐らく幼少期に見たアニメ版の次回予告を耳にして覚えていたのかもしれない。本稿執筆にあたり先ほどのフレーズについて調べてみると、ゲーム「サクラ大戦」、「サクラ大戦2 〜君、死にたもうことなかれ」に加え、TVアニメ「サクラ大戦」、「新サクラ大戦 the Animation」など、帝都・東京が舞台になるシリーズを中心に、次回予告・TVCMなどで採用されていたキャッチコピーのようである。
一世を風靡した人気漫画「鬼滅の刃」も、日本の“大正時代”をモチーフにしている作品だ。今の若い世代を含めても、世間一般的にはこちらの方が大正モチーフの作品として広く認知されていることだろう。思い返せば和装に身を包み、日本刀を引っ提げて敵を討ち払う主役の構図は、どちらも共通している。
近代化が進み、蒸気機関の発達や人々の暮らしが豊かになっていく中、伝統的な「和装」と武士の持つ「刀」の組み合わせによるアンバランス加減が、今の我々にはある種の浪漫として映るのだろうか。「新サクラ大戦」でも、この“和装と日本刀”を手にするメインヒロイン・天宮さくらが登場しており、引き続き大正の世界観を強く感じさせる一要素を担う。
今作では過去シリーズでキャラクターデザインを担当していた藤島康介先生、松原秀典先生から変わり、漫画「BLEACH」で知られる久保帯人先生がメインのキャラクターデザインを手がけた。今までゲーム、アニメと長らく続いてきたキャラクターデザインを一新するのは、「サクラ大戦」シリーズにとってもコアなファンにとっても、大きな挑戦になっていたと思うのだ。かつて「BLEACH」の連載を追っていた身として、久保先生を起用するとの発表を聞いた当時「過去作と比較してあまりにカッコ良すぎるのではないか?」と、感じたのが素直なところだった。
それでも実際にゲームが発売されてみると、久保先生の描くキャラクターは皆愛嬌があり、セガとしても作中でヒロインの見せ方にとにかくこだわっているのがわかった。表情豊かでドタバタコメディ的に動き回るヒロインたちには、従来の「サクラ大戦」シリーズらしさが十分備わっていたのではないかと考えている。とはいえ、それを強く認識できたのは「新サクラ大戦」をプレイし、PlayStation Portable用ソフト「サクラ大戦1&2」を遊んでからのことだ。
今作は「サクラ大戦V」から10年後の時間軸で、湯気が煙る太正世界の空気はほとんどそのまま。キャラクターデザインから始まり、数多くのものが一新されたのは事実だが、今作が「サクラ大戦」である事実もまた変わらない。
物語を読み進めるほど、真宮寺さくらと天宮さくらの姿が重なり、「サクラ大戦とはこんなゲームなのか」、「1作目はどんなタイトルだったのだろうか」と、昔見たアニメ版に思いを馳せていたのはもう4年前になる。久保先生の描き下ろした「帝国華撃団・花組」の面々は、シリーズかつての面影を残しつつ、太正桜に新しい嵐を吹き込んだ、絶妙なスパイスであったろう。なお、今作のディレクター・大坪鉄弥氏によれば、企画書段階の時点で久保先生へのオファーを決めていたようである。
良い意味で王道を貫く安心感。過去作に触れたくなるアツい展開の続くシナリオ
「新サクラ大戦」の大帝国劇場には、真宮寺さくらと旧花組の隊長・大神一郎が築きあげてきた、かつての華々しい栄光は既にない。部隊の戦力になる機体は旧式モデルを運用し、平時に公演している歌劇の評判もガタ落ちである。現在は、旧花組の隊員・神崎すみれが大帝国劇場の支配人であり、帝国華撃団総司令を務める。部隊としても劇団としても大きく再起を図るため、神崎は20歳の若さで元海軍特務艦艦長を務めていた神山を新生「帝国華撃団・花組」の隊長として任命した。そうして部隊長の役割を全うするため、神山は個性豊かな花組の部隊員たちとぶつかり合いながら、帝国華撃団・花組を復活させるために奔走していくことになる。
「サクラ大戦」シリーズは、アニメ作品のように1話ずつエピソードが区切られているのが特徴で、丁寧に「次回予告」まで差し込まれる。ゲームで次回予告が挿入される作品はこれまで触れたことがなく、とても新鮮な気分で楽しめた。何より「次のストーリーではどうなるんだろう?」と、単純にワクワクさせてくれる。画期的な手法だと思うのだが、物語がクライマックスに近づくほど、まだ終わりたくないという想いに駆られたのを覚えている。
物語ではヒロインたちと信頼関係を築いた後、花組を復活させるために「世界華撃団大戦」での優勝を目指す。そして、作中で降魔が襲撃してくるさまざまな事件の裏に迫っていくという、大きな3つの流れで構成されている。それぞれの話の中で今後にまつわる伏線もしっかり張られ、ゲーム1本を遊び切った時の満足感は大きかった。思い返すと様々な要素をかなり詰め込んでいるのだが、1周クリアにかかる時間はそれほど長くはなかったと思う。
また、ヒロインの覚醒や新機体の乗り換えイベント、敵として戦った他の華撃団たちとの共闘など、とにかく良い意味での王道を貫いており、たびたびアツイ気持ちになれたのが印象的だ。過去作の「サクラ大戦」シリーズに触れてみたくなった大きな魅力ともいえるだろう。
シリーズ恒例の時間制限式の選択肢「LIPS」システムは健在!
「サクラ大戦」シリーズは、主人公がヒロインたちと交流し、さまざまなイベントを発生させながらシナリオが進んでいく「アドベンチャーパート」、華撃団を操作して降魔と戦う「バトルパート」の2パートで構成されている。特に人気が高いのはアドベンチャーパートにおける、各イベントの選択肢などだろうか。シリーズ恒例の「LIPS」と呼ばれる時間制限付きの選択肢要素が、プレイヤーを大いに悩ませてくれる。
この要素は物語中に、プレイヤーの悩むような質問や場面シチュエーションが突然振られ、主人公は何をすべきなのかとその行動を決定するというもの。悩んでいる内にうっかり時間を切らして“無回答の選択肢”が選ばれてしまったりする。
選んだ選択によってキャラクターとの信頼度が変化し、最終的には信頼度の高いヒロインとエンディングを迎えるため、会話シーンは基本的に気が抜けない。シチュエーションにもよるが、制限時間はどれもバラけていて短い場合もある。今作においてもそんな「LIPS」システムは健在だ。
メインシナリオ自体が大きく変化するわけではないものの、周回プレイが自然と楽しめる要素になっており、ヒロインごとのエンディング回収、まだ試していない選択肢の回収と、目的別に遊べるのが好きだった。そして、複数ある選択肢の内1つは、大体悪ノリに走ったものである(これもシリーズの伝統)。比較的好青年の主人公・神山誠十郎が、ヒロイン入浴中の風呂場に足を踏み入れるなど、ラブコメ系作品でも見られる「お約束」展開まで用意されている。華撃団の隊長をどのように暴走させるかは、プレイヤー次第ということだ。
そして、「新サクラ大戦」では、バトルパートが過去作から打って変わって“アクションゲーム”に変化する。第1作目から前作の第5作目まで、ナンバリングタイトルはいずれも敵の全滅を目指すタクティカルなバトルシステムだったので、このあたりの変更については過去作ファンも驚いたのではないかと思う。ターン制で戦略を考えながらバトルを進めていくシリーズが、お馴染みのメカでゴリゴリ戦うアクションゲームに変化した。
さらに、前述した「LIPS」の選択肢も今作のバトルに影響を及ぼし、信頼度の高いキャラクターとは「絆ゲージ」がある程度溜まった状態からバトルをスタートさせられる。このゲージが高いほど、機体の能力値は向上し、戦闘を有利に進められる仕組みだ。
メインストーリーのエピソードごとに、僚機はその章でスポットの当たるヒロインに変わるため、当該ヒロインとの選択肢には、より慎重にならざるを得ない。また、戦闘中には操作する機体を神山からヒロイン側に切り替えることも可能。筆者はアクションゲームに関しては慣れていたので、今作のバトルは割とスムーズに遊ぶことができた。メカアクションなら何歳になっても大好物である。
バトルについてもう1つ。恐らく多くのファンにとって語り種になっているのが「合体攻撃」の演出だろう。合体攻撃は、主人公とヒロインによる特別な演出が挿入される必殺技のようなものだが、シリーズを重ねるごとに演出がパワーアップしつつ、“なんだか良くわからない方向性”に進化していった。
今作では対応ハードがPS4という事情もあり、合体攻撃の演出が美麗なアニメシーンによってさらに磨きがかかる。プレイヤーも戦闘中であることを完全に忘れてしまうほどカオスな演出に仕上がっているので、「サクラ大戦」シリーズに触れたことがないプレイヤーたちにも、ぜひチェックしてもらいたい。シリーズの新作が登場するたびにエスカレートしていく合体攻撃は、「サクラ大戦」がどんなゲームかを象徴するものの1つなのかもしれない(?)。
作中メカのカッコよさ。他の華撃団が所有する機体もイチオシ
2000年放映のアニメ版を視聴していた記憶は未だ脳裏に焼きついていて、メインヒロイン・真宮寺さくらが、桜色の霊子甲冑・光武に搭乗し、降魔と戦う姿を思い出すことができる。少女が乗るメカにしてはあまりに無骨なデザインの光武だが、湯気をパイプから排気し、左右平行に独立して動く、縦並びのツインモノアイと、何だか好奇心を刺激されるデザインだったのは幼いころに感じていた。しかし、あの当時はまだ小学生に上がった直後か、もしくは上がる直前の時期であり、光武自体をカッコいいとは思えなかったのだ。それが大人になった今では、あのフォルムで素早く戦う霊子甲冑に心惹かれるものがある。
「新サクラ大戦」になると作中の時代も進み、霊子甲冑から次世代のメカ「霊子戦闘機」が生まれている。メカデザインも洗練され、視覚的に新時代の戦闘兵器と実感が持てるビジュアルになった。霊子甲冑から霊子戦闘機への世代交代が行われても「2頭身」、「モノアイ」、「パイプからの排気」と、作中メカの魅力的なツボは抑えたままだ。
今作では、帝国華撃団以外の華撃団からも霊子戦闘機が複数登場し、それぞれ華撃団の特色が強めに反映されたデザインになっている。例えば、上海華撃団は武術を主体とした戦闘が得意なため、運用する機体の「王龍」は流線形でスタイリッシュなデザインだ。機体名称に“龍”が入っているように、尻尾を持ち、両腕には龍の爪を彷彿とさせる装飾まで施されている。パっと見の外見では視認しづらいが、可動域が広いようで、公式サイトでは片脚を腰の位置よりも上に上げたキックのポーズが確認できる。作中では格闘家のようなアクティブな動きが機体デザインと相まって、とてもカッコいい。
他にも倫敦(ロンドン)華撃団の機体「ブリドヴェン」は、騎士が身に纏う“西洋甲冑”がモチーフになっている。機体の装甲そのものが盾と言わんばかりに、厚みを感じさせながらも騎士らしい高貴さが伝わるフォルムだ。
そして、帝国華撃団の「無限」では各隊員の個性を反映させている。本が好きなクラリスの機体に「魔導書」がマウントされていたり、江戸っ子気質な初穂の機体は主兵装が「ハンマー」など、搭乗者がわかりやすいユニークなカスタマイズが施されていて面白い。過去シリーズと比べても機体バリエーションがかなり豊富なので、メカ好き・ロボ好きには刺さるものがあるとお伝えしておきたい。
「新サクラ大戦」における神山と帝国華撃団・花組の物語は、今作で一応完結を見せている。ただ、「サクラ大戦V」から今作の時間軸に至るまで、過去作のキャラクターが消息不明の状態になっており、数々の謎を残したままだ。後日談にあたるアニメ版では、この謎が解決されることなく、花組の新しい戦いを描いている。これから先、そういった謎に迫っていく新作が登場することを願うばかりだ。
(C)SEGA