【特別企画】

決断1つで物語が変化する「信念の天秤」を体験! タクティクスRPG「トライアングルストラテジー」先行プレイレポート

【トライアングルストラテジー】

2022年3月4日 発売予定

価格:
通常版 7,680円(税込)
Collector's PACK 16,500円(税込)

 プレーヤーの選択が物語を左右するゲームはこの世に山ほどあれど、本作ほど頭を捻り、不安や重い心を抱えたまま、重大な決断を何度も迫ってくる作品も珍しいだろう。今回プレイレビューしていく作品は、スクウェア・エニックスが2022年3月4日に発売を予定しているタクティクスRPG「トライアングルストラテジー」だ。

 本作は往年のタクティクスRPGを思わせるような歯ごたえのある戦略性の高いバトルに加えて、「HD-2D」を用いた最高峰のドット絵グラフィックスで描かれた重厚感のあるビターな物語の中で、「信念の天秤」という独自のシステムを用いた重大な選択で物語が数多くの分岐を繰り返していくという今までにない進化を遂げた作品となっている。今回は試遊版を少しプレイしただけだが、それでも本作が内包しているゲームとしての深い面白さ、そして恐ろしさの片鱗を味わう事ができたので早速レビューしていきたい。

「ドット絵」に「3DCG」の効果を加えたハイクオリティの「HD-2D」で描かれる幻想的な世界!
「信念の天秤」を用いた物語の分岐は本作の根幹とも言えるシステムだ
豊富なスキルに加えて高低差やキャラクターの向きによって戦況が大きく変化する戦略性の高いバトルシステム!
【『トライアングルストラテジー』発売日発表トレーラー】

戦乱の大地ノゼリアを舞台に描かれる英雄譚! 苦難、陰謀、そして何が正解かわからないストーリーに思わず引き込まれる……!

 まず初めに本作の世界観とストーリーについて軽く触れていこう。

 本作は3つの大国が争いを続ける大地「ノゼリア」を舞台に、その1国である「グリンブルク王国」の次期ウォルホート家当主「セレノア」を主人公として物語が繰り広げられる。この「ノゼリア」には過去に塩と鉄の利権を巡って「塩鉄大戦」という戦いが勃発した歴史があり、残り2つの国である宗教国家「聖ハイサイド大教国」が塩の利権を有し、武力国家「エスフロスト公国」が鉄の利権を有する……という状況になっている。1度戦いは終息し、互いに塩と鉄を売買する停戦協定が結ばれたが、それでも緊張感が残る世界となっているのだ。

 そして主人公「セレノア」が属する「グリンブルク王国」は、その両国の狭間に存在し、その立地を活かした交易で栄え、二国間との緊張を保っている。そんな中「エスフロスト公国」から「セレノア」の婚約者として「フレデリカ」が嫁ぐ所から本作の物語は始まり、様々な陰謀と再び巻き起こる戦乱に巻き込まれていくこととなる。

本作の主人公である「セレノア」。真面目で誰に対しても平等だが、世の状勢に対する経験はまだ未熟で青さが見え隠れする若き次期党首
セレノアの婚約者である「フレデリカ」。鉄の利権を有する「エスフロスト公国」から新たな縁としてウォルホート家に嫁ぐこととなった芯の強い女性だ
この縁談は政略結婚であるからか、お互いに挨拶が固めだ。これだけでもある程度世界観を察することができる
公開されている場面だけでもすでに重く苦しい展開が待ち受けていると想像できる。ファンタジーとリアリティーが上手く融合した現実味のある深いストーリーが楽しめるだろう

 そして英雄譚を彩るのは魅力的な数多くのキャラクターと相場が決まっている。「セレノア」や「フレデリカ」以外にも数多くの仲間たちがこの苦難の道を共にすることとなる。「グリンブルク王国」の第二王子にしてセレノアの親友でもある明るい青年「ロラン」、セレノアに使える執事兼軍師の「ベネディクト」や「フレデリカ」と共に侍女としてウォルホート家にやってきた「ジーラ」などの冷静かつ主人公たちを導いてくれる大人なキャラクター、そしてそれぞれの陰謀と思惑が渦巻く「聖ハイサイド大教国」と「エスフロスト公国」のキャラクターたちなど、個性的かつそれぞれにしっかり意思を感じるようなキャラクターが多数登場するのだ。このキャラクターの“意思“を感じるというのが本作では非常に重要な部分となってくる。

「ロラン」は1国の王子でありながら勝手にセレノアの婚約を見に来てしまうほど自由奔放で明るい性格の人柄のよう。だが心に暗い部分を秘めているみたいなのでシナリオの分岐次第では何かありそうな予感……
軍師としてセレノアに仕える「ベネディクト」。冷淡と思われてしまうが長年の経験で培った冷静かつ現実を見据えた知略でセレノアを支える
フレデリカの侍女として仕える「ジーラ」。戦いの無意味さを嘆くフレデリカに現実的な意見をぶつけるが、でもそのままでいいと言ってしまう所に大人の女性の包容力を感じる。最高だ
他にも数多くの仲間キャラクターや、敵国のキャラクターが登場。それぞれの意思が様々な場面でぶつかり合う

 重厚感ある物語が期待できる本作だが、ファンタジーの英雄譚となると様々な専門用語や設定が出てきて物語が頭に入って来ないというプレーヤーも少なくないと思われる。本作はそこに加えてヘビーな展開と数多のルート分岐、そして多くの魅力的なキャラクターが登場するので自身の現状を整理するのにも一苦労しそうと思ってしまうのも無理はない。

 しかし本作では、戦記物にマッチしている雰囲気のいいナレーションが現状の物語や状況を語り、さらにはストーリー中で話しているキャラクターの設定がいつでも見れるようになっている。序盤は特にキャラクターが多く登場するためこの機能は非常にありがたい。

各章の始まりでは世界情勢を地図を用いてナレーションが語ってくれる。世界の全体像や状況をとても掴みやすく、雰囲気もマッチしててとても素晴らしい仕上がりだ
物語中に「この人誰だっけ……?」が発生しないのは非常にありがたい。戦記物は状況やキャラクターが頭に入って来てからが面白いので最初のキャラ暗記のハードルを下げているのはとても大きい

「信念の天秤」が導く未来へと進め。プレーヤーの行動すべてが物語の分岐に大きく関わる決断の物語!

 次に本作の根幹を成す「信念の天秤」について取り上げたい。

 ストーリー中にセレノアたちは、物語を大きく分かつ分岐点に数多く遭遇する。その際に行なわれるのが「信念の天秤」を用いた運命の選択だ。これは仲間のキャラクターたちがその分岐点で2つある選択肢のどちらの道に進みたいかを投票して多数決を行ない、物語のルートを決定するという今までにないシステムとなっている。当然、各キャラクターにはそれぞれの意思があるため、意見が分かれるとプレーヤーの進みたいルートに進めないということになる。そこでプレーヤーはセレノアを操作して、仲間たちを“説得“することができる。この“説得“を用いて仲間の考えを変えさせて多数決の結果を変えることができれば、プレーヤーは進みたい物語をある程度自分で決断できるというシステムになっている。

説得して歩みたい選択肢に誘導しようとすることはできる
最終的な決議で多かった方の選択肢が選ばれ、ここで物語が大きく分岐
向かう場所、敵対する勢力などが全て変化するため、数多のストーリーを楽しめる

 もちろん説得は必ずしも成功するという訳ではない。説得の際に各キャラクターの思考に沿った選択肢を選ぶことができなければ、考えを変えてもらえず、簡単に物語をコントロールできないようになっているのだ。加えて、この説得のチャンスは各キャラクター1回しかないだけでなく、セレノアが物語中に選択してきた行動や言動によって蓄積される「信念」というパラメーターによっても結果が左右するため、常日頃の行動の1つ1つが決断に影響するという奥深いシステムとなっている。また町を探索することで得られる「情報」によって第3の選択肢が出現することもあるが、増えた選択肢が必ずしも説得に効果的という訳でもない。自分の意見を通したいのであれば、プレーヤーは仲間の気持ちを汲み取り、何が1番説得として響く言葉なのかを模索する必要があるのだ。

 この“説得“というシステムは否が応でも相手のことを考える必要があるため、物語への没入感をとんでもなく高めており、その結果、仮に自分の望む選択肢が選ばれなかったとしても「それが皆の考えなら……」とセレノアのように納得して進むしかないのだ。物語の分岐という大きな要素に新たなゲーム的要素が加わった「信念の天秤」は、プレーヤーの感情を大きく揺れ動かす画期的な要素となっている。

情報が足りていなかったり「信念」のパラメーターによっては選択できない選択肢が現われることもある
ストーリー中に出てくる何気ない選択肢でもセレノアの「信念」は変化する。どのような主人公になるかはプレーヤー次第だ

 そして上記でも登場したセレノアの「信念」というパラメーターは、何も「信念の天秤」にだけ影響を与える要素ではないのだ。

 この「信念」は「BENEFIT」・「MORAL」・「FREEDOM」の3つの価値観に基づいて蓄積されていき、発生するストーリーのイベントや物語の分岐、何よりも仲間ユニットの加入に影響を与える重要な要素となっている。そして、3つの価値観から予測できる通り、どのパラメーターが上がる選択をしても基本は正解でもないし間違いでもないという内容が多い。

 勧善懲悪ではない分、プレーヤーの考え方や生き方が直に影響を与えるのだ。セレノアの選択はプレーヤーの選択でもあるため、どの価値観に沿って物語が進むかは本当に未知数。その結果歩む道は紛れもなくそれぞれのプレーヤーのみが歩めるルートとなっているのが本作の魅力的な部分の1つと言える。当然セーブとロードを繰り返せばそれは好きなルートに進めるかもしれないが、せっかくなので最初の1週は自分の素直な気持ちで進めて、その結果どのような物語になるのかを味わってみたい。

誰が仲間になり誰が敵になるのか、その全てはプレーヤーの決断次第となっている!

知略を持って挑むタクティクスバトル! 鍵を握るのは位置・向き・地形

 ここまでストーリー内容の奥深さに触れてきたが、真に奥深いのはバトルシステムの方だと言っても過言ではないのが本作の恐ろしいところ。

 本作では、往年のタクティクスRPGを思わせるような高低差のあるフィールドで、自軍の仲間たちを駆使して敵軍を撃退するシミュレーションバトルを楽しむことができる。高低差によって生まれる有利不利や、各キャラクターが持つ豊富なアビリティで数多の戦略が取れることに加えて、敵の背後をとることで発動する「追撃」、味方のアビリティを活かして攻撃できる「連携」、さらにはマップ毎に用意されたギミックを活かした攻撃など、本作独自のシステムが数多く見受けられる。出撃させるキャラクターによっても戦略はガラリと変わるため、非常にやり応えのあるバトルとなっている。

敵の足止めや複数体に一気に大ダメージを与えられるなど、キャラクター毎にアビリティが豊富に用意されている
高い所からの遠距離攻撃でダメージが増加! 他の味方で道を塞ぎ安全に攻撃を行なおう
背後を取る事で「追撃」など位置や向きによって与えるダメージは大きく変化する。ただ敵もそれは同じなのでキャラの配置には注意が必要だ

 さらに、ストーリー分岐によって挑戦するステージや敵対する勢力等が大きく変化するのも本作の魅力だ。ストーリーが変化して全く違うステージでバトルすることもあれば、片方に助力する選択肢などを選んだ場合は、同じステージでも友軍ユニットや敵ユニットになるキャラクターが入れ替わったりなど、ストーリーの“決断“に重きを置いている本作とマッチした様々なバトルを楽しむことができるようになっている。

「信念の天秤」によって選んだ軍と協力し、選ばなかった方の敵国と戦うことも。同じステージでもガラリと攻略方法が変化したりもする

先行体験からすでに恐ろしさの片鱗が……。序盤からエグすぎるストーリー展開!

 今回の先行体験では、物語の盛り上がりどころである第8話をプレイしたのだが、この段階から既に本作の恐ろしさ味わうこととなった。

 この第8話は、配信中である本作の体験版の続きとなる。体験版では「エスフロスト公国」に捕虜として親友のロランを「差し出す」か「差し出さない」かを選ぶシーンがあるが、今回は「差し出す」ルートを選んだ先の物語を体験した。だが、その後の展開がかなりエグイ。ロランの処刑が決まってしまうことを皮切りに隣国の「ソルスレイ・エンデ軍」が進行を始めてしまい、元々混乱状態だった「エスフロスト公国」と板挟みになってしまうのだ。まさに最初に想像していた両国に挟まれているが故の地獄を体現してくる。

捕虜となった「ロラン」に処刑が言い渡される。言い方を変えてるだけで人質のような存在なので仕方ないのだが……

 そこでセレノアたちが打つ打開策が、「エスフロスト公国」と「ソルスレイ・エンデ軍」に助力を願い、両軍を自軍のウォルホート領に集める。そして、両軍が集った所で片方の軍を裏切り、もう片方の軍への手土産として戦果を挙げるというものだった。そして最終的にどちらの軍に味方するかを「信念の天秤」で決定するという怒涛の展開に……。

 もう正義も何もあったものじゃない作戦で筆者は心が大きく揺さぶられてしまった。もしこれが勧善懲悪の物語なら処刑されてしまうロランも助けに行くし、両軍とも殲滅する、もしくは実は片方がいい人たちで協力する……。みたいな展開になりそうなところをおびき寄せて片方を裏切るのだからとんでもないことである。しかも、どちらかの国とは協力することになるのだが、正直どちらもいい印象を持てないため「どっちについてもなぁ……」という苦悩を負うことになるのだ。正解はないが決断しなければいけないという、本作の厳しさを痛感できるエピソードである。

正直どちらの国のキャラクターも思惑が見え隠れしているので完全には信用できないし、完全に悪人顔なのでどちらを選ぶか難しい所だ……
今回は「ソルスレイ・エンデ軍」に着くことに。反対意見を持っている仲間の説得も上手く行ったことで無事ルートを確定することができた。やっぱ人質を取るような国と協力したくないし……

 バトルに入ると、今回裏切った「エスフロスト軍」が敵ユニットとして立ち塞がり、協力を決めた「ソルスレイ・エンデ軍」が友軍ユニットとして共に戦ってくれる。実際にバトルをしてみると、キャラクターができる選択肢の多さ、そしてフィールドギミック等の多種多様な戦略が取れることでかなり考え込んでゲームをプレイできた。また、難易度「ノーマル」であっても、考えなしに敵を攻撃するのではなく、ちゃんと「追撃」や「連携」を絡めて戦わないと敵ユニットを削り切れないという場面が多々発生する。加えて敵は数も多いし攻撃のダメージもかなり大きいため、味方ユニットも結構簡単に倒されてしまう。味方が1人倒されるとそこから攻め手が薄くなり、どんどんジリ貧になっていくので、1ターンも油断できない緊張感のあるバトルとなっている。

ボーナスが沢山入って大ダメージを狙える! と喜んで攻撃しに行ったら遠距離攻撃のユニットに狙い撃ちにされて味方が1人ダウン……。目先の欲に囚われるとこうなるようだ……
味方のアビリティで行動順を速めて友軍と敵を挟んで「追撃」でトドメを刺すなど、様々な戦略が重要となる

 本作の面白さ、そして(いい意味での)エグさは実際にプレイした方が強く感じ取れる。本作を少しでも気になった場合は、下記のURLから体験版をプレイしてみるといいだろう。ドット絵ならではの味や、そこから織りなされる感情を揺れ動かされるストーリー、そして尽きることのない数多の戦略性の片りんを味わうことができるはずだ。

□「トライアングルストラテジー」体験版配信ページ