【特別企画】

リボルバーカノン起動! 「サクラ大戦25周年オーケストラコンサート」レポート

日髙のり子さんが「御旗のもとに」、「ボヤージュ」を熱唱!

【サクラ大戦25周年オーケストラコンサート ~田中公平作家生活40+1周年記念~】

7月28日開催

会場:Bunkamuraオーチャードホール

 セガのドラマチックアドベンチャーゲーム「サクラ大戦」の25周年と、作曲家田中公平氏の作家生活40周年を記念した一夜限りのライブコンサート「サクラ大戦25周年オーケストラコンサート ~田中公平作家生活40+1周年記念~」が7月28日、東京渋谷のBunkamuraオーチャードホールにて開催された。

 2020年に作家生活が40周年を迎えた田中公平氏。本来はコンサートも昨年開催される予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期となり、今年7月28日に真宮寺さくらの誕生日に合わせて改めて執り行われた。

【コロナ禍での開催】
入り口では検温が実施された
グッズ販売は人気だった
オリジナルTシャツ
指揮者とコンサートマスターがヒジを付き合わせる

 田中氏によれば、「サクラ大戦」シリーズで書いた楽曲は、インストゥルメンタルで1,500曲、声楽曲が600曲にも達するという。初代「サクラ大戦」(1996年)からサウンドトラックが複数枚での提供になるほど、毎作大量の楽曲を制作してきた田中氏だが、25年で「サクラ大戦」だけで2,000曲を超える楽曲を提供している計算になる。ご存じのように、「ワンピース」をはじめ、アニメにも精力的に楽曲を提供しており、その総数は想像も付かない。

 そうした中で、この記念コンサートに田中氏はどの楽曲を選んだのか、というのが1つの聴き所となった。セットリストは一部のみ事前公開され、出演者には、「新サクラ大戦 the Stage」より、新花組の5人に、「サクラ大戦3」でエリカ・フォンティーヌ役を務めた日髙のり子さん。メディア向けにも事前にセットリストは非公開で、出演者から選曲を推測しながらコンサートを楽しませていただいた。セットリストは以下の通り。

【サクラ大戦25周年オーケストラコンサートセットリスト】
M1 新サクラ大戦 BGMのメドレー
M2 巴里の恋人たち
M3 巴里華撃団、デビュー!
M4 道化
M5 希望の門 → リボルバーカノン起動
M6 ネオンの照らす街 → リトルリップ・シアター
M7 コーヒー・ブレイク
M8 紐育華撃団、レディー・ゴー!!
M9 恋する紐育
M10 地上の戦士(最終決戦バージョン)
M11 サクラ色協奏曲
M12 サクラ大戦 劇場版 エンディング
M13 未来(ボヤージュ)
M14 素晴らしき舞台
M15 花咲く乙女~夢のつづき
M16 新たなる
M17 檄!帝国華撃団<新章>
M18 新サクラ大戦 ラスボスのテーマ

~アンコール~
M19 御旗のもとに
~アンコール2~
M20 誠花よ 夢よ 咲き誇れ → つばさ~ラストバージョン

 ちなみに日髙さんは、田中氏と同期ということで、声優生活41周年目を迎え、掛け合いもピッタリ。日髙さんは、コンサートでは声楽曲も担当しながらMCも務め、「サクラ大戦3」のリリースから20年が経過しているにもかかわらず、現役そのままのつやっつやのエリカボイスで来場者を驚かせた。華撃団の隊員を代表して、ピンク色のワンピースに、真っ赤な靴でエリカをアピール。

【出演者】
MCからピアノ、ボーカルまで務めた田中公平氏
エリカ・フォンティーヌ役としてお馴染みの日髙のり子さん
指揮者は宮松重紀氏
第1部でピアノを担当したピアニート公爵(森下唯)
岩瀬立飛(ドラム)
エリック・ミヤシロ(トランペット)
東京フィルハーモニー交響楽団(オーケストラ )

 コンサートは、インストゥルメンタル中心の第1部と、声楽曲中心の第2部の2部構成で行なわれた。第1部は「新サクラ大戦」からの若いファンにも入りやすいように、「新サクラ大戦」のオープニング曲をアレンジした「序曲」、そして「勝利のポーズ」から幕を開けたが、田中氏によれば「『サクラ大戦』のコンサートというと帝都組が中心で、巴里組と紐育組が忘れ去られている」ということで、「サクラ大戦3」から4曲(巴里の恋人たち、巴里華撃団デビュー!、道化、希望の門 リボルバーカノン起動)、「サクラ大戦V」から6曲(ネオンの照らす街、リトルリップ・シアター、コーヒーブレイク、紐育歌劇団 レディー・ゴー!!、恋する紐育、地上の戦士)を立て続けに演奏。巴里組、紐育組ファンには嬉しいサプライズとなった。

田中氏と日髙さんの掛け合いも楽しかった

 「サクラ大戦3」の4曲は、本邦初演奏。作曲者本人の選曲に対してこういうと失礼だが、この上なく渋いチョイスだと思った。エリカのテーマ「祈り」や、移動パート「シャノワール」、アイキャッチ「花の巴里」あたりのゲーム内で繰り返し聞いている曲を選びたくなるところだが、ここは田中氏のこだわりを感じた。

 中でも「巴里華撃団デビュー!」は、「サクラ大戦3」バトルパートのテーマとしてもっとも多く耳にすることになる同作を象徴する曲だ。「サクラ大戦」のバトルテーマは、主題歌に負けず劣らず名曲揃いだが、「巴里華撃団デビュー!」は、初代「サクラ大戦」の「がんばれ!帝国華撃団」や「サクラ大戦2」の「戦闘・1」が提示した圧倒的な太正浪漫感、あるいは歌謡曲感というものを良い意味で完全に払拭し、胸のすくようなパリの青空、瑞々しいプラタナスやマロニエを「サクラ大戦」に取り入れてくれたシリーズ屈指の名曲だ。オーケストラ演奏ではややピッチを落とし、原曲の繊細なメロディを余さず活かしつつ弦楽器をメインに美しいハーモニーを奏でた。

 そしてスタンディングオベーション級の拍手を巻き起こしたのが、「希望の門 リボルバーカノン起動」だ。「サクラ大戦3」のクライマックスで、巴里華撃団の最終兵器 リボルバーカノンを撃ち出すシーンで流される曲だが、「サクラ大戦」ファンなら誰もがご存じの通り、どちらかというと田中氏が得意中の得意とするアニメの主題歌のような田中節全開の勇壮な1曲。オーケストラとの相性もバッチリで、鳥肌たちっぱなしの名演奏だった。

 この名演奏には日髙さんも「エリカ、初めて出撃した日のこと思い出しちゃいました!」と完全エリカボイスで感激を露わにすると、田中氏は「本当にいくつまでそんな声出すんですか? 偉いね」と冷静にツッコみ、場内を沸かせた。田中氏は続けてリボルバーカノンの演出自体にも言及し、「凱旋門からリボルバーカノンが出るんだけど、初めて見たときに、よくこんなこと考えたなって。皆さんもビックリしたでしょう?」と20年越しのツッコみを行なうと、日髙さんも「私たちも相当飛ばされましたよね。ピューっと」と、「サクラ大戦4」でパリから帝都まで飛ばされたときのエピソードを持ち出してくるなど、濃いトークが繰り広げられた。

【東京フィルハーモニー交響楽団の演奏】

 続く「サクラ大戦V」の演奏は、ジャジーな紐育サウンドには欠かせないドラムに、ゲストドラマーの岩瀬立飛氏を招いて行なわれた。こちらも本邦初演奏のものばかりということで、貴重な演奏となった。

 先ほどまでは打って変わって華々しいトランペットやトロンボーン、そしてドラムをメインに、弦楽器がそれを支えるというジャズオーケストラスタイルで「ネオンの照らす街」を皮切りに、懐かしの「サクラV」の名曲たちが次々に演奏された。フルオケでのジャズ演奏という豪華な演出に加えて、ソロパートでのドラムやトランペットの個性や、「ここをバイオリンを使うのか」という演出のおもしろさ。田中氏が語るように「サクラ大戦V」のジャズサウンドがこれほどまとめて聴ける機会はなかなかなく、あと20曲ぐらい聴きたいなと思わせる元気いっぱいの名演奏だった。

 第1部の締めくくりは、再び帝都に戻り、過去にコンサートで演奏された「サクラ大戦BGMメドレー」を田中氏自身がピアノ協奏曲に編曲し直したという「サクラ色ピアノ協奏曲(コンチェルト)」が演奏された。

 協奏曲の構成は、「サクラ大戦」のバトルテーマ「がんばれ!帝国華撃団」のアレンジ「帝都のテーマ」(サクラ大戦2)を皮切りに、「帝劇・夜のテーマ」(サクラ大戦2)、「帝都のために…」(サクラ大戦)、「花咲く乙女(ピアノソロVer)」(サクラ大戦)、「勝利!」(サクラ大戦)という、安定感がありすぎる帝都定番の名曲ばかり。これでコンサート全体のバランスが整えられ、帝都、パリ、ニューヨークと3つのテーマを一度に楽しめる第1部となった。

 20分の休憩を挟んで再開された第2部は、アニメ「サクラ大戦 活動写真」の「エンディング」からスタート。「サクラ大戦」シリーズの楽曲で人気投票をするとどうしてもゲームの楽曲ばかりが上位に入りがちだが、実際にはパチスロ「サクラ大戦」の「花の戦士」などゲーム以外の楽曲にも名曲が多い。この「エンディング」もそのひとつ。演奏後壇上に姿を現した田中氏は「サクラはいいなあ、大神ぃ、見てるかー?」と加山雄一ボイスで日本中の大神一郎に語りかけると、場内から大きな拍手。日髙さんも「大神さん、聴いてますか?」とエリカボイスで応じた。

 そして本コンサートのハイライトとなる日髙のり子さんの歌唱となった。1曲目は「サクラ大戦3」のエンディングテーマ「未来(ボヤージュ)」。本来は巴里華撃団5人で歌う曲だが、今回は1人で、と思いきや田中氏自身がデュエットとして加わり、男女2人での歌唱となった。日髙さんは、歌い始めこそ、高音パートの伸びが足りずツラそうだったが、徐々に調子を上げ、終盤の「さあ 夢を作ろ」を繰り返すパートでは、伸び伸びとした声で全体をリード。さすがはレジェンドだと唸らせる歌唱だった。

 ここで一旦日髙さんは舞台から下がって休憩に入り、続いて田中氏によるソロとなった。田中氏といえば、作曲家、編曲家として知られるが、歌手として顔も備えている。今回はレニの「素晴らしき舞台」を、いずれもピアノパートを自身が演奏しながら歌唱。トークパートのおちゃらけた声からは想像も付かないような野太い伸びやかなボイスで朗々と歌い上げた。田中氏はアンコールでもソロで2曲(誠花よ 夢よ 咲き誇れ、つばさ~ラストバージョン)歌い、田中公平ステージを繰り広げた。

 さて、続いて「新サクラ大戦 the Stage」キャストの5人が登場。「花咲く乙女」(サクラ大戦)、「夢の続き」(サクラ大戦2)と、エンディングテーマメドレーを展開。トークタイムでは、田中氏の唐突なツッコミに戸惑いながらも、再演が決定していたライブコンサート「新サクラ大戦 the Stage ~桜歌之宴・彩~」の日程が9月25日、26日に決定したことを報告。コンサート終了後よりチケットの予約受付を開始するという手際の良さで、再演をアピールした。

 トーク後は「新サクラ大戦」のエンディングテーマ「新たなる」を熱唱。わざわざこのためにゲストトランペッターとしてエリック・ミヤシロ氏を招聘。新花組としても「新サクラ大戦 the Stage」でも毎回歌唱している定番曲で、エリック・ミヤシロ氏のトランペットと、スケールの大きなオーケストラによる演奏をバックに堂々と歌いきった。そして新花組最後の曲は、やはり「檄!帝国華撃団<新章>」。こちらも毎回採用される曲だが、天宮さくら役の関根優那さんをはじめ、声量や声の伸びが増し、確実に自分たちの曲にしているという成長が感じられる。9月の再演が非常に楽しみだ。

 そしていよいよラストは日髙さんの伝説の名曲「エリカおはようダンス」でフィナーレかと思いきや、田中氏から紹介されたのはまさかのインストゥルメンタル「ラスボスのテーマ」(新サクラ大戦)。ラスボスのテーマは、ゲーム内で聴く機会が限られるため、人気投票ではなかなか選出されないだろうし、メーカー主催のコンサートでも、その長さや難易度から敬遠されがちだが、ここが作曲者自らが選曲したコンサートのおもしろさだ。

 そしてようやく日髙さんが再登場。田中氏は「エリカさんといえば、絶対歌わないといけない曲が1曲ありますよね。もうわかりますよね?」と煽ると、思わず苦笑する日髙さん。田中氏が間髪入れず「おはようダンス」と宣言すると、日髙さんは「えっ?」と素で驚いたような表情を見せた。本当にやるのかと思いきや、田中さん風のジョークだったようで、慌ててマラカスを探し出す日髙さんに、「ないから、無理しなくていいから」と優しく声を掛けた。

 フィナーレを飾ったのは「サクラ大戦3」の主題歌「御旗のもとに」。意気込みを聴かれ日髙さんは、「今日は残り4人の気持ちも背負って、エリカ1人で頑張りますっ!」とエリカボイスで応じ、ステージ中央に向かった。

 「ボヤージュ」と比較すると出だしからしっかり声が出るようになり、ブランクを感じさせない圧巻の歌唱力で熱唱。往年の武道館ライブを彷彿とさせる身振り手振りも交えて最後まで謳いきった。サビの5人が歌唱するパートでは田中さんも加わり、終盤のわずかな伴奏のみでサビをエリカが独唱するパートでは、一際手拍子が大きくなり、会場全体が一体となって熱唱する日髙さんを応援。サクラファンの健在ぶりを感じさせるコンサートだった。

熱唱する日髙さん
大きな拍手が贈られた

 田中氏は今後の計画については明言しなかったが、コンサート中繰り返し「またやろうね」と、「サクラ大戦」コンサートは今後も続けていく意思を示していた。9月には「新サクラ大戦 the Stage ~桜歌之宴・彩~」も実施が発表されており、今後も様々な形で「サクラ大戦」のコンサートが実現することを期待したいところだ。

 なお、本コンサートは、一夜限りで再演はないが、8月2日までアーカイブがオンラインが可能となっている。うっかり聞き逃してしまったサクラファンや、日髙さんの歌声を久々に聴いてみたくなった方はチケット情報ページからぜひチケットを購入してコンサートを心ゆくまで楽しんで欲しい。

【フィナーレ】