インタビュー

アプリ版「V.D.」配信記念・開発者インタビュー

快適なタッチ操作にこだわり! アプリ版開発の苦労点とは?

10月27日 配信

ダウンロード:無料

利用料金:無料

ビジネスモデル:アイテム課金制

 10月27日より配信が開始されたタクティカルバトルRPG「V.D.-バニッシュメント・デイ-」のAndroid/iOS版。弊誌では配信開始にあわせてアプリ版のレビュー記事を掲載しているが、今回はそれに付随して、本作プロデューサーの土田俊郎氏をはじめとする開発元、ジークラフトのスタッフにインタビューを行なった。上記レビュー記事とあわせてご覧いただきたい。

【「V.D. -Vanishment Day- バニッシュメント・デイ」PV】

年内にはストーリーは佳境へ。今後の構想もチラリ

ジークラフト「V.D.」プロデューサーの土田俊郎氏
ディレクターの赤木亮介氏
プランナーの濱田真衣氏

――ブラウザ版「V.D.」のサービス開始からそろそろ1年となりますが、現在までの経過はどのような感じなのでしょうか。

赤木氏: ゲーム内イベントを数多く実施してきまして、また、ストーリーイベントというものもいくつかやらせていただき、話の内容が「V.D.」の核心に近づいてきているものになってきたかな、というところです。このあとにもいくつかストーリーイベントを実施し、「V.D.」本編へとリンクさせていけるようにしたいと考えています。

――ここまでたどり着く際に色々な苦労点もあったと思うのですが、そのあたりについてもお聞かせください。

赤木氏: 最初はユーザーさんがどういったものを求められているのか、という部分を満たすために、常に試行錯誤している状態で、ゲーム内イベントの仕組みを色々と考えながらやらせていただきました。ある程度の形ができてからは、プランナーの濱田にメインとなって動かしてもらっています。

――ユーザーの反応はどうでしたか?

赤木氏: DMMのユーザーさんは、これまで自分が運営していたタイトルと比較するとタイプが違っているのかな、というのはありました。とくに「キャラクター愛」というのは強く感じたところで、「俺こそがこのゲームを攻略するんだ!」というユーザーさんよりは、みんなで和気あいあいとされているユーザーさんの方が多いのかな、といった雰囲気はありました。ユーザーさんと共に進めていくイベントがあったり、このゲームを「みんなで盛り上げていこう」というのが感じられる、フレンドリーなユーザーさんが多いな、という印象を受けましたね。

 ゲーム自体が殺伐とした世界観なので、最初は「ハードコアで行こう」と考えてもいたのですが、それよりも「少しアットホームな感じにしてもいいのではないか」と思うようになり、丸くなったな、というのはあります。

――先ほど物語が核心に、というようなお話もされていましたが、全体の構想として現在はどのような状況なのでしょうか?

赤木氏: まず、お話が結着していくストーリー展開、「日本を取り戻すんだ」という話の流れがあるのですが、それが半分よりは進んでいて、年内には佳境を迎える展開になるといったところです。今でもかなりピンチになっていたりはするんですけれど(笑)、さらにその後の展開が用意されている状態で、ちょうどスマホ版が出るぐらいのあたりで、非常に気になる部分に差し掛かっているだろう、という感じです。

 ブラウザ版のサービス開始当初は、シナリオもまだ序盤のところまでしか公開できておらず、クリアしたユーザーさんから続きを求める声も多かったのですが、アプリ版の場合は、先ほどの「気になる部分」までは一気に遊べますし、それに付随するゲーム内イベントのストーリーも楽しんでもらえるかと思います。

――アプリ版から始める人は待たなくていいぶんラッキーですね(笑)。

赤木氏: ゲーム内イベントに出てくるキャラクターの中には本編に出てくる者もいて、そこで本編での出来事が少し見えてきたりすることもあるのですが、そこまでまだプレイしていないユーザーさんだと、それを見て本編が気になってくると。
 そこで本編も進めてみる……といった、ブラウザ版「V.D.」当初から目論んでいた「ストーリーを中心に楽しむ遊び方」のイメージが、このスマホ版でようやくできるようになってきたというところでしょうか。

――アプリ版「V.D.」を出すことになった経緯とはどのようなものなのでしょうか?

赤木氏: ブラウザ版を出す当初から、アプリ版も一緒にやりたいねということでお話をいただいてはいました。ただ、ブラウザ版をリリースしたあとに先ほどお話をしたような試行錯誤などもあり、そちらに注力していた関係でアプリ版がこのタイミングになった、という感じです。

土田氏: 当初想定していたよりはやや時間がかかった感はありますが、そのぶんアプリ版をプレイされる方は最初から充実したコンテンツをお楽しみいただけるかと思います。結果的にではあるんですけど(笑)。

――つまり、最初からアプリ版のリリースも視野に入っていたわけですね。

土田氏: はい。アプリ版も出すことで、「V.D.」をより多くの人にお楽しみいただければなと。もともと、ユーザーインターフェイス(以下、UI)の部分についてはスマホアプリとして遊びごたえのあるゲームを作りたい、という部分を狙ってやってきましたので、アプリ版はちゃんとそこにフィットしたものになったかなとは思います。

――アプリ版として作る際に苦労された部分とかもあると思いますが、そのあたりはいかがでしたか?

赤木氏: やはり触り心地は大事かと思っていましたので、インターフェース部分には特に気を使い、修正を重ねてきました。情報量が多いゲームなので、表示するもの、しないものの精査であったり、画面をタッチした際に指がじゃまにならないかなど、ブラウザ版とは違うものを考えなくてはならなかった。そこで苦労したというのはありますね。

ジークラフト社内の様子も見せていただくことができた。お昼時でほとんどのスタッフが外出していたが、机の上はほぼすっきりしている

――TGS2015版を拝見したときに、スマホ版とブラウザ版で違いがないところに驚きました。

赤木氏: それは、アプリ版にブラウザ版を合わせていった結果になります。徐々にブラウザ版をアプリ版の状態へと変えていった、ということです。

土田氏: どちらでも違和感なく遊べるようにしていったわけですね。うちはコンソール出身のプランナーが多く、盛り込みたがる傾向があるんです。例えば「V.D.」は1回の戦闘に出られるキャラクター数が結構多いのですが、そうすると部隊編成が結構細かくなる。

 それでもブラウザ版ならマウス操作で大丈夫なんですけど、それをスマホのタッチUIにしてみると触り心地に難がある場合もあったりして、そういう部分を直していきました。もともとの情報量の多さが、ゲームの面白さや手応えの部分に関連してはいるんですけど、UI的に言えばそこが苦労のしどころになっていました。

――ゲームバランス的な部分では差異があったりするのでしょうか?

赤木氏: とくに差があるようなことはなく、ブラウザ版、アプリ版どちらをプレイしても同じように遊べる形にしています。

――アプリ版といえば持ち運びの手軽さなどが特徴の1つとしてあると思いますが、例えばユーザー同士が持ち寄って何かをする、といった企画などもあったのでしょうか?

赤木氏: 案としては色々なものがありましたが、実装する段階で取捨選択をしていった結果、現在のような形に落ち着きました。もちろん、今後、運営が続いていく上で新たに追加される仕様というのは出てくるかと思います。

土田氏: メインのストーリーがあって、それを軸にキャラクターや戦術がどんどん足されていくという部分は変えないので、それを踏まえてどんなバリエーションが考えられるか、というところかと思います。まずは、もともと考えていた構想の部分を実現して、それをブラウザ版およびアプリ版のユーザーさんに等しく楽しんでいただければ、というのがありますね。ブラウザ版と、アプリ版のユーザーさんの遊び方の傾向がまったく違ってくるようであれば、改めて考える必要があるのかもしれません。

――アプリ版ならではのこの部分に注目してほしい、といったものはありますか?

赤木氏: 戦闘のタッチ感でしょうか。マウスで逐一指定をしていた部分が、指でスッと触れるだけで攻撃目標を指定できるなど、制作側ではなくDMMのスタッフが触っていても「操作している感」が出ていると好評でした。

――そのような操作感は最初から狙って作られているのでしょうか?

土田氏: マウス操作によくあるドラッグ&ドロップ的な動作というのは、スマホにおいてできなくはないものの、あまり適している操作ではないんですね。でも、PC版だとドラッグ&ドロップはたくさん使っていたので、それをスワイプやタッチ操作に置き換えていった結果が、今の話にも出た、戦闘を含めた操作感につながっているのかなと思います。

 部隊の編成についても、ブラウザ版ではドラッグ&ドロップの操作が多かったところも、アプリ版ではタッチ系のUIに変えていったりとかして、現在の形になったというところです。

――他にアプリ版ならではの機能があれば教えて下さい。

土田氏: アプリ版ならではと言えば、中断機能というものもあります。戦闘に関してかなり凝ったものを作ったこともあり、例えば強敵を出すと、歯応えのあるゲームが好きなユーザーさんにはとても喜ばれるんです。すると戦闘時間はその分長くなってしまうのですが、それでもブラウザ版であればじっくりと家でできる。

 でも、スマホだと電車の移動中とかちょっとした時間で遊ぶこともあって、必ずしも長時間ゲームと向き合える状況とは限らない。そういうときのために中断機能を用意して、いつゲームを終えても、そのときのままに戻れるようにしたんです。ずっと中断状態を保ってくれるわけではないのですが、しばらくの間であれば、つぎのアプリ起動時には前回の状態で再開ができます。これによって、アプリ版でも長いバトルをしっかりと楽しんでもらえるようになっているかと思います。

――しばらくの間、ということですが、具体的にはどのぐらいでしょうか?

土田氏: 30分とか1時間ということはないのですが……例えば、朝出勤時にプレイされて、帰りがすごく遅くならないような方であればまず大丈夫です(笑)。

――中断コマンドというものができたということですか?

土田氏: いえ、中断すると自動でセーブされて、次回にそこから復帰するといったものになります。また、アプリを終了させたとしても、つぎのアプリ起動時にはきちんと終了したところから再開されます。

――ブラウザ版「V.D.」で過去のゲーム内イベントに登場した特別なキャラクターなどについては、アプリ版でこの先出会えることはありますか?

赤木氏: 過去に実施したイベントと同様のものをやることは難しいので、どこかに再登場の機会を設けたいと思っています。それが何かのゲーム内イベントであるのか、ログインスカウトであるのかなどについては色々な形があるかと思いますが、いずれにしても入手のタイミングを作るつもりです。

――アプリ版がリリースされたあとは、ブラウザ版とアプリ版を同じ形で運営していくことになるのでしょうか?

赤木氏: そうなります。ブラウザ版とアプリ版を分けるということは現状では考えていません。まずは、どちらのユーザーさんにも同じものを楽しんでいただければと。ただ、将来的に別々のゲーム内イベントを実施する、という可能性は無きにしもあらず、というところです。

――「V.D.」は物語の核心に向かってストーリーが進んでいくということでしたが、それ以外にも、今後何か予定されている展開などはあるのでしょうか?

赤木氏: 10月1日に新たに「覚醒」というシステムが加わりましたので、今後は覚醒ができるキャラクターをどんどん増やしていく予定です。それにともなって、キャラクターに付随したストーリーも追加されていく、といった内容を考えています。また、次回のイベントからはアプリ版のユーザーさんも参加されるものになると思いますが、そこで登場するキャラクターをイベントごとにつなげていったり、キャラクターの関係性も深めていければ、といった感じです。

濱田氏: イベントの形に関しても、ブラウザ版でこれまで楽しまれてきたユーザーさんは遊び方もだいぶ同じようなものになってきたかと思うのですが、以降については違う遊び方も加えていく予定で、そのための準備も進めています。と言っても戦闘のシステムを変えるようなことはできませんので、戦闘については従来通りですが、敵を倒したその先に、これまでと違ったものを用意する、という感じにしていきます。

――具体的にはどのようなことを予定されているのでしょうか?

濱田氏: 現状のイベントですと敵を倒してポイントを集めるという遊び方が主流だったのですが、今後はその貯めたポイントを利用して、例えば何かのガチャを回せるであるとか、有用なアイテムと交換する、といったことができる形を考えています。

土田氏: 今までのイベントですと、ポイントを規定量まで貯め、例えば1万ポイントならこのアイテムが、2万ポイントならこのキャラクターがもらえるといった具合に、とにかく貯めるものをやっていたんですね。もちろん、ストーリーや敵キャラクターなどは新規に用意するわけですが、恒常的にそういうイベントをやってきたわけです。それが、今後はポイントを貯めることでできることが増えてきたりとか、敵を倒してポイントではなく何らかのアイテムを集めるなど、そういったバリエーションが出てくるのかなと。

――敵を倒した先に色々な目標が出てくるというわけですね。

赤木氏: 今のイベントは一方的に決まった報酬をもらえるという形なんですけど、今後はそれをユーザーさんが選択できるようにしていくということです。それによって、もっと自由度を広げられればということを考えています。

――先ほどのストーリーが核心に向かう話からも、いずれストーリーは完結すると思うのですが、それ以降のゲーム展開はどういったものを考えておられるのでしょうか?

土田氏: メインストーリーについては決着を迎えないといけないとは考えています。ただ、エンディングを迎えた人はやることが無くなってしまうというわけではなく、新たなメインストーリーに移行するのか、別の遊び方を提供していくのかなど、いずれにしても新しい遊びの軸を作っていくということになるのですが、エンディングについてはまだ少し先の話となります。ただ、着々と次の準備を進めているということもお伝えしておきます。

――最後にユーザーさんにお伝えしたいことがあればお願いします。

土田氏: 約1年「V.D.」を運営し、コンテンツにもボリュームが出てきて、当初ユーザーさんに遊んでいただきたいと考えていたものが、かなり実現できてきたかなというところです。

 その一方で、ユーザーさんが遊んでいて、例えば難易度についてもユーザーさんの好みに変えて予定していたものを変更したりですとか、そういった部分も含めて遊び心地のいいものができあがっていると思うので、忙しくてブラウザ版には手を出せなかった方も、アプリ版はぜひ1度、手にとっていただきたいところです。また、ブラウザ版をお楽しみいただいている方には、今後も色々なことが起こりますので、まだまだご期待いただければなというところです。

赤木氏: これまで1年運営をさせていただいて、ユーザーさんとともに「V.D.」を育てていき、自分たちもまた育っていったという思いでいます。ブラウザ版のユーザーさんとはこれからも一緒に育っていきたいですし、そのノウハウを生かしてアプリ版のユーザーさんにも楽しんでいただければ幸いです。

 戦闘は従来のポチポチゲーではなく、戦術や経験を踏まえた上での事前準備等で工夫をすれば色々な楽しみ方ができ、そういうことができるバトルやクエスト、イベントを仕掛けていますので、それらにチャレンジをするという気持ちで遊んでいただければ、もっと楽しめるんじゃないかなと思っています。

濱田氏: イベントに関しては次回がアプリ版がリリースされてからの1発目となりますが、こちらはキャラクターのレベルが1の部隊でも気軽に挑戦できるような形にしています。また、イベントをプレイすると本編に登場するキャラクターの意外な一面も見ることができて楽しいかなと思いますので、ぜひみなさんも遊んでみてください。

土田氏: イベントの捕捉ですが、こちらは本編を進めていなくても問題なく参加できるようにシナリオなども作っていますので、自分がプレイしたいときに本編でもイベントでも好きなように遊んでいただければというところです。やりたいようにやってもらえればと。

――本日はありがとうございました。

(安田俊亮/泊 裕一郎)