インタビュー

「FFXIV」プロデューサー吉田直樹氏「パッチ3.1」インタビュー

「零式」や「シールロック」など「3.0」コンテンツは「3.1」でどうなる?

10月22日 収録

会場:スクウェア・エニックス本社

 スクウェア・エニックスはPS4/PS3/Windows/Mac用MMORPG「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド(以下、『FFXIV』)の最新アップデート「パッチ3.1 光と闇の境界」を既報の通り、11月10日に実装する。6月23日の拡張パック発売から4カ月強といつもよりもリリースまでの期間が長かったぶん、かなりボリューム感のある内容充実のアップデートになっている。この記事が掲載される頃には、いよいよ数日後に迫ったアップデートに向けて期待度MAXになっている時期だろう。

 今回は「3.1」実装に向けて、「FFXIV」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏にインタビューする機会を得た。このインタビューは、広島からの「プロデューサーレターLIVE(以下、PLL)」前に収録した。PLLでどんな情報が飛び出すかは見るまでわからなかったので、インタビューでは敢えて「零式」や「シールロック」など、「3.0」コンテンツの今後の方向性など、コアプレーヤーが気になる部分を突っ込んで聞いてみた。

 先日広島から放送されたライブでも「3.1」の情報が大量に発表されている。それについてはこちらのレポートにまとめてあるので、ぜひご一読願いたい。

「FFXIV」開発チーム初の長期休暇で、今後何が変化するか!?

「FFXIV」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏
拡張パック後初のアップデートとなる「パッチ3.1 光と闇の境界」は11月10日に実装される

――いよいよ11月10日に「パッチ3.1 光と闇の境界」が実装されますね。

吉田氏: 本当だったら今週(10月19日週)か先週の火曜日(10月13日)辺りに「3.1」が出ていれば、たぶんいつものペースだったのですが……。いつものペースから約3~4週間ズレとは言え、プレーヤーの皆さんにはかなり長く感じられたと思います。本当にお待たせしました。この延びた時間は今後の「3.X」シリーズのパッチと、「4.0」で徐々にお返ししていこうと思っています。以降、「3.2」からはいつもの3カ月半周期で出していこうと思っています。

――開発チームに休みをあげたいとおっしゃっていましたが、休みは取れましたか?

吉田氏: 会社で設定されている夏期休暇とは別に、1週間程度の代休消化期間を設けました。「FFXIV」は計画性を相当大事にしているプロジェクトではあるのですが、「2.55」、「3.0」ではみんなテンションが上がりすぎて、詰め込めるだけ詰め込んだのはいいのですが、若干、燃え尽き症候群っぽくなっていたこともあり、少し休息できたことは、今後にとって大きかったと思います。

――吉田さんは休めましたか?

吉田氏: 僕はどちらかというと「3.X」シリーズと「4.0」の計画を作る時間にあてていましたが、4日くらい休めました。たっぷり「FFXIV」をプレイできて嬉しかったです(笑)。

――このお休み期間は「3.0」までの開発体制を見直すタイミングになったと思いますが、今後ここを変えていこうといった方針の変更はありますか?

吉田氏: 事前に、決められることはもっと早く決めておいて、直前になってバタバタしないようにワークフローをもう一段見直しました。「FFXIV」はストーリードリブンのMMORPGなので、シナリオが占める比重がかなり大きいです。例えばカットシーンの作り込みや、声優の方たちのアフレコもそうですが、ストーリーの上がりに影響を受けやすい状態だったので、カットシーンやVFX、サウンドなどの特定のセクションでは、パッチリリース直前にまとめて仕事をしなくてはならない。そこで今回、もっと早くシナリオをFIXさせて、より先のパッチのシーン製作に入れるよう、これまでとはかなり大きく変えました。

 パッチ「3.X」シリーズのプロットはもうすべて完成していますし、シナリオもテキストのレベルだと、かなり先まで仕上がっています。後はパッチ3.1までお時間をいただいたぶん、システム的な調整を多く入れています。例えば、これまでパーティを組んで行動している時に、メンバーがバラバラに行動しているとどこにいるか把握しづらかったと思います。「3.1」からはナビマップの端にそれぞれのプレーヤーがどの方向にいるかが表示されるようになったり、そういう細かい修正が凄まじく多いので、手触りや利便性がかなり上がったと思います。その分パッチノート朗読会が大変だなという感じですが、いつものパッチ以上のシステムの変更が入っているので、リリース間隔が延びた分便利になったと思います。

――今後の予定はもうすでにできているのですか?

吉田氏: そうですね。ロードマップはかなり完成していて、細かいスパンだと僕はもう「3.2」の作業や仕様確認をしているので、今は頭の中で「3.1」と「3.2」の仕様がゴチャゴチャになってますね(笑)。

――前回のインタビューの時に、8月頃にはビジュアルワークスと「4.0」の打ち合わせをしなければならないという話でしたが、もう終わったのですか?

吉田氏: はい。もう打ち合わせはとっくに終わっていて、予定通り字コンテも出しましたから。それを分解して、打ち合わせをし、既にアートの製作にも入っています。次はキャラの動きを決め、キャプチャーの準備もそろそろ始めるのかなという感じです。

――ではもう一部では「4.0」の製作に入っているのですね。

吉田氏: 最先端の担当者は取りかかっています(笑)。

新「アレキ」は「3.0」とは違う仕組みを検討。果たしてどうなる?

「機工城アレキサンダー零式」は続編で、何かしらの変化がありそうだ

――「3.1」の前に、「3.0」の調整についてお伺いします。まず「機工城アレキサンダー零式:起動編(以下、零式)」ですが、難易度に調整は入るのですか?

吉田氏: パッチ3.1リリース時は、特に何も対応していません。

――「零式」は必要DPSが高いため、パーティメンバーすべてが高いプレーヤースキルを要求されるバランスになっていることが議論を呼んでいますが、吉田さんは今のバランスについてどう考えられていますか?

吉田氏: 禁書装備が揃ってくれば、もう少し「零式3層」の突破者が増えるかなと思っていたのですが、確実に増えてはいるものの、想定数にはまだ届いていないです。今までの「大迷宮バハムート」は上手い人が6人いれば、残り2人が若干ミスをしてもクリアできる難易度に落ち着いていました。しかし、今回の「機工城アレキサンダー:起動編 零式」は8人全員がきっちり動けないとクリアできないという難易度になっているので、その点がしんどい部分だと思っています。ギミックには対処できても、ギミックに対処しつつ攻撃ローテーションを維持するのが難しい、逆にDPSが足りても誰かがギミックでミスをする、という部分です。

 プレーヤーの皆さんから「2.x」シリーズの時に「もっと難しいものが欲しい!」という声をいただいていたので、それにお応えする形で作ったものではあるのですが、パーティ全体の腕が必要とされるコンテンツだけに、落としどころが難しいと、改めて感じています。ただ、「アレキ零式」は、あくまで「ノーマル」あってのもので、ノーマルの難易度調整には非常に大きく手応えを感じています。

 今までレイドには触れたこともないという人もクリアしていただいており、10月中旬現在、総プレーヤー数の50%以上の人がクリアしてくださっているので、本当に良かったと思っています。その上で非常に難易度の高い零式があるのですが、その中間の難易度も欲しい!というお声も当然あり、パッチ3.2に向けて開発チーム内で議論をしている最中です。

――将来的には、中間の難易度も実装するということですか?

吉田氏: 悩ましいところですね……。あのレベルのレイドを作れるスタッフはそれほどたくさんいるわけではありません。「零式」の難易度そのものを、もっと落とした方がいいのではないか、という話ももちろんありますし、中間の難易度を作るべきかもしれないけれど、誰が作るんだい……という話もしています。本当は6層構成がいいよねとか……。1、2層は比較的クリアしやすくて、3、4層は頑張ればなんとかクリアできるけれど、5、6層は超難しいというふうに、層を増やしてもっと難易度に差を作れたらいいよね……などなど。ただ、いまの開発期間とレイド開発スタッフ数で、これ以上の層が作れるわけがない、というのもまた現実です。

 「3.2」でまた次の「アレキ」が始まりますので、そこに向けてどの方針でいくか、確定できたらまたお話ししたいと思います。もちろんフィードバックは拝見していますし、クリア率もしっかり確認しています。逆に「あの難易度でよかった、難易度を下げないで欲しい」という声もたくさんあります。今回はワールドファースト争いが長期間に及んだぶんだけ、ネット上でもそうですし、僕らも拝見していて盛り上がりました。また方針が決まったらお知らせしますが、いずれにせよ今のままということはないと思います。

――何らかの、今とは違う方向性が出てくるということですか。

吉田氏: そうですね。今のバランス配分のままなら、何かサポートシステムを検討するかもしれませんし、先ほど言った、零式そのものの難易度を落とすという方針になるかもしれないし、4層だけ極端に難しくして、3層までは突破しやすくするかもしれないです。まだ確定はしていないので言えないのですが、いずれにしても今のままではよくないだろうと思っています。

――人が少なめのワールドでは攻略パーティが組めなくて、ワールドを移転する人がいるようですね。

吉田氏: ワールド移転までしてパーティを探すというシチュエーションが、良いとは思っていないです。ワールドを移転してまでクリアしようとする人たちがいるのは、ある意味レイドに情熱を注いでいただいているので、ありがたいことなのですが、そこまでしないとダメなのかという状況になったのは反省点です。補助的な「レイドファインダー」を作れないかなあ、など色々思うところはあるのですが、これもやはり、まだ妄想の域を出ないくらいのネタですね。

――それは、全ワールドでマッチングするレイド用のCFですか?

吉田氏: パーティ募集のシステムは、ワールド内で完結するように設計されているので、パーティ募集全体をワールドレスにすることは、年単位の開発期間が必要になります。ですので、レイドファインダーという、パーティ募集とは別のものを作って、そこで参加条件を募集主が細かく決めて、同じデータセンター内から探すなど、レイドのみに特化すれば、なんとかならないか、というものです。僕の頭の中にある程度でしかないので、お話しすることすら悩むレベルなのですが。

――よりレイドパーティを組みやすくということを考えているのですね。

吉田氏: 今回の零式の難易度だと、同じプレーヤースキルレベルの人を8人揃えるという部分のハードルがそもそも高い。難易度を下げればそこまでしなくてもクリアできるので、パーティ募集がもっと増えると思います。もしレイドファインダーのようなものを入れたとしても、難易度を落とせばパーティ募集が増え、マッチング率は落ちると思うので、やはり全体を見て決断を下す必要があります。色々なケースを想定して、どれで行くかを協議中ではあります。それと並行してレイドの製作はもう始まっています。あのレベルのものを作るには、やはり6カ月くらいはかかってしまうので。

――アレキの次のボスがどんなものになるのかは、まだ話せませんか?

吉田氏: ぜんぜん無理です(笑)。

――「零式」でのジョブバランスについて、3種類のタンクの中では暗黒騎士と戦士が有利と一部で言われていますが、ナイトについて調整の予定はありますか?

吉田氏: ナイトの幾つかのアクションに微調整は入りますが、DPS強化方向にはならないと思います。

――それでは、どういった方向になるのですか?

吉田氏: TP枯渇関連などです。やはりナイトの優れたポイントは、硬さだと考えていて、その点では扱いやすく、他のタンクと比べても秀でています。これでDPSまで出せてしまうと、ジョブ性能が高くなりすぎなので、これ以上この点を大幅に強化することはバランスブレイクになると考えています。やはりコンテンツによる有利不利の方が大きいと思っており、「零式」だけを見て後追いでナイトの調整を入れると、またナイトだけが突出してしまいかねないので、慎重に考えています。

――「クレメンシー」など新技能があまり有効に活用されていないように見えるのですが。

吉田氏: ディヴァインヴェールなどもそうですが、有効な局面が足りないと感じていますので、今後のコンテンツでもご確認下さい。

――タンクのVITアクセサリーに価値がなくなっている状態についてはどうですか?

吉田氏: アクセサリーについては「3.2」からマテリアクラフトの仕様を大きく変えます。そもそもアクセ以外の左側には禁断のマテリアでメインパラメータを付けても、上限に達して意味を成さないのですが、メインパラメーターが1つしか付与されていないアクセサリーにだけは、禁断の効果が大きく発揮されていました。その部分に変更を行なう予定です。

 STR/VIT/DEX/INT/MND/PIEという主力パラメータの禁断ができない代わりに、クラフター装備を今までより基礎性能を上げます。サブパラメーターの禁断は従来通りですので、禁断はサブパラメーターの底上げに使う、という想定です。

 アクセサリーへの禁断を想定して、今まではどうしてもクラフター製アクセサリーの実装を1パッチ後追いにせざるを得ず、それをやっていてもなお禁断したアクセサリーが最強となってしまっていました。また、せっかくレイドをクリアしてレイドのアクセサリーがドロップしても、ドロップ装備の方が弱かったり、タンクへの禁断要求が他ジョブに比べて強かったりなど、複数の問題が発生していました。この仕様変更により、新レイド公開と同時に新式アクセサリーもリリースしていくつもりです。しかも今まで以上に基礎パラメータを強くできますので、それにサブパラメータを足してレイド早期攻略に挑む、というイメージになります。

――では、1番強いのはレイドのドロップアクセサリーということになるのですね。

吉田氏: そうなります。この仕様変更で、マテリアの価値が変わります。その代わり「3.2」からレイドドロップ装備やアラガントームストーンでの交換装備にもマテリア穴を付けようと思っているので、より自分でステータスの調整が効くようになります。ですからマテリアの価値は、むしろ今より上がるのではないかと思っています。「3.2」で全面的な修正をかけるので、「3.1」では申し訳ないですが新式アクセサリーは実装しないことになりました。今入れてしまうと、それが「3.2」のスタート時点に最強ということになってしまうため、多くの議論をして悩んだのですが、今お話しした結論に落ち着きました。

「シールロック」は現状維持。バランス調整は「ウルヴズジェイル2」で

PvEコンテンツ「シールロック」のバランス調整は据え置きに

――フロントラインの「シールロック」についてお伺いします。今は召喚士が非常に強く、参加者の数も突出していますが、このバランスについてはどう考えていますか?

吉田氏: レイド同様に非常に悩んだのですが、パッチ3.1では基本的に据え置きとしました。あの手軽さがあるから、シールロックをやっている人もたくさんいらっしゃいます。瞬間のバーストダメージは確かに大きく、他のジョブに比べ楽だという点において、散々議論はしたのでうが、様子を見るということになりました。

――パッチ3.1では現状のままですか?

吉田氏: はい。現状で変更するとすれば、リキャストタイムくらいしかなく、PvEとPvPで極端にルールを変えるのも本意ではありません。PvP時のリキャストタイムを伸ばしたとしても、でもそれは瞬間バーストダメージが変わるわけではなく、今まで30秒で撃てていたものが60秒に変わるだけだと、ストレスが増すだけとなり、調整としては良くないと考えた結果です。

――キャスターはダッシュが使い放題なので、そこで近接との差がついているためダッシュをMP依存にしてはどうかという意見もありますよね。

吉田氏: 確かに今召喚士は非常にお手軽ではあると思います。しかし、テクニカルであっても、近接で上手い人は相当強い状況です。これもすごく議論しました。召喚士はバーストダメージが癖になり、突出して突っ込んで餌になる人も非常に多いです。しかし、気軽にシールロックへ行ける大きな要素でもあるので、それを奪ってしまうと、結局どの陣営でも人が減ってしまいます。ストレスを増やしてまで、そこを抑える必要があるのかなということで、現状維持を選択しました。

――マッチングされたときに召喚師が多いと「よし!」と思ってしまうのが近接に申し訳なくて(笑)。

吉田氏: 近接で上手な人は、本当に強いので、僕はそちらのほうが安心なのですが(苦笑)。

――確かに、10キル以上しているような近接の方もいますね。

吉田氏: ここでこいつを落とせば勝てるという相手を、LBも含めて確実に落としてきますからね。近接をさらに強くすると、上手な人の勝ちっぷりが尋常ではなくなってしまうので。だからと言ってPvPだけ召喚士を弱体しても、PvEと操作感が変わりすぎてしまうだけだし。というわけで、結局は……。

――「3.1」ではフロントラインに対して調整は入らないということですね。

吉田氏: 今はもう「ウルヴズジェイル2」を作っているので、変更するのであれば、そちらのバランスで行ないます。3週間ほど議論したのですが、ウルヴズジェイル2でまた変わる可能性が高いため、ひとまず現状維持。ただ、ペットにリスクがなさすぎるのはさすがに……という話はしているので、そちらはウルヴズジェイル2の方で、今後何か考えるかもしれないです。

(中村聖司/石井聡)