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ブラウザ「V.D.」、土田俊郎プロデューサー&下村陽子氏インタビュー
「フロントミッション」以来のタッグが贈る「濃い目」戦略バトルゲーム
(2014/12/16 16:00)
DMMゲームズは、ブラウザ用タクティカルバトルRPG「V.D.-バニッシュメント・デイ-」のサービスを12月16日より開始する。
本作では突如として日本が世界から孤立してしまい、少年少女が除々に日本を開放していくというストーリーが展開される。プロデューサーは「フロントミッション」などで知られる土田俊郎氏が務めており、音楽には同じ「フロントミッション」で参加した下村陽子氏が起用されている。
ゲーム画面には少年少女のキャラクターに加え、土田氏らしい機械も数々登場する。今回DMMゲームズという新たな場での挑戦となるが、サービス開始にあたって土田氏と下村氏にインタビューを行ない、本作制作のきっかけからポイントまで伺ってきたので、こちらをお送りする。
DMMゲームズへの持ち込みで実現。本作で「ジークラフト」が再始動!
――まず伺いたいのですが、お2人が一緒のチームになるのは「フロントミッション」以来ですか?
土田俊郎氏: そうなります。もう10ウン年ぶりですよ。
――どのような経緯で実現したのでしょう?
土田氏: これはDMMゲームズの岡宮プロデューサー(「艦これ」などをプロデュースした岡宮道生氏のこと)が繋いでくれた縁ですね。本作について岡宮さんと話をしていたら、「音楽は考えていることがある」と言っていて。それが下村さんでした。
――音楽が下村さんだと聞いた時はいかがでした?
土田氏: それはもう「うれしいです!」となりました。
下村陽子氏: ほんとですか~?(笑)
私は岡宮さんから、「ぴったりの仕事がある」と言われて。あとで土田さんのゲームだと知って、土田さんが嫌がったらどうしようと思っていたのですが(笑)。私が(スクウェア・エニックスを)退社して以来会ってないから、すごい久しぶりですよね。
――では改めて、本作の制作のきっかけを教えてください。
土田氏: もともと知り合いから「日本が隔離された状況で、少年少女が日本を解放していくストーリー」というテーマで何か作らないかと提案されていたものがありまして。その企画書を岡宮プロデューサーに持っていったところ、「いいじゃないか」となって企画が動き始めました。
――今回、グリーを退職された後、ゲーム制作にあたってジークラフトも再始動されてますよね。
土田氏: 岡宮さんにゲーム会社を立ち上げることも考えていると話していたら、「ではこのゲームでやろう」と背中を押してくれました(笑)。
グリーを辞めた後はしばらくゆっくりしていたのですが、企画書は書いていました。それで企画を持ち込んだり、知り合いと会って話していく中で、一緒にやろうかと言ってくれる人がいて。それだったら会社を作って、ゲーム作りを仕事としてやれたらこんなにうれしいことはないなと。会社を作る流れに“なっていった”感じですね。
――「ジークラフト」という会社名も再度使われています。
土田氏: そう。なので「ジークラフト2」なんです(笑)。会社に集まってくれた人は何らかの仕事で一緒になった人たちなのですが、「“ジークラフト”という名前は印象がいいよね」という意見にみんな賛同してくれて、そのまま使いました。今は7、8名のチームで動いています。
今回プログラムの部分で入ってくれている会社は、前々職の知り合いが多いんです。なので、昔一緒に仕事をした仲間でやっている感じが今作にはありますね。
キャラクター集めと戦略が一体となるバトルシステム
――「V.D.」のポイントを教えて下さい。
土田氏: 自分がゲーム内容を見るということで期待をいただいていると思うので、ストーリーとバトルを一体となって楽しむようなものになっています。
今回はキャラクターをスカウトして集めていくというのがポイントになっていて、キャラクターを集めることで戦略が変化する感じがいいなと考えています。キャラクターにはそれぞれジョブがあって、攻撃系のアサルト、スナイパー、ヘビーガンナーと、回復役のメディック、バフやデバフをかけるエンジニアがいます。
スナイパーは後方から敵を狙い撃つタイプだったり、ヘビーガンナーは盾役となって前線で戦います。このジョブを1つの軸としてキャラクター集めをしてほしいです。
また加えて、キャラクターごとに能力を持っていて、スナイパーの中には攻撃時に貫通攻撃や敵のステータスを落とす攻撃をするキャラクターがいたり、ヘビーガンナーだけど後列に行くと防御力を上げるスキルを発動したりと、ジョブの特徴とキャラクターの能力の両面で戦略を立てていくことができます。
成長すると新しい技を覚えることもあって、さらに戦略が広がっていきます。
――戦略がポイントになるんですね。
土田氏: ゲームが進むと「増援」という機能も加わります。これは戦闘中に増援部隊が到着して、戦っているチームに追加の人員を放り込めるものです。
その時にチームを入れ替えることで、例えば増援部隊にメディックを多めに置いて消耗戦を狙いに行ったりなど、自分なりの作戦がさらに奥深く遂行できます。キャラクター集めと戦術シミュレーションが一体となって楽しめるゲームシステムがそれなりにできたと思うので、ぜひ遊んでもらいたいですね。
――そのバトルは、「GO」ボタンで進むようになっていますね。
土田氏: ヒットしている「艦隊これくしょん -艦これ-」を見ていて、プレーヤーが1つ1つ行動を決めていくのではなくて、ある程度自動で進むようにもしないといけないなと思って作ったのが「GO」ボタンです。ただ、「GO」ボタンを押す時はじっくり考える、というのはやりたいなと。「GO」を本当に押していいかのかどうか……いや、やっぱりやめとこうかなという(笑)。
――戦術面での特徴的として「離脱」というのもあります。
土田氏: 本作では、体力ゲージがなくなるとしばらく出撃ができなくなる「ダウン」という要素があります。本作はスキルも含めてキャラクター愛が大事な要素だと思っているので、攻めるか、撤退させるかというところで悩んでほしい。
「離脱」は確実にキャラクターを守る手段になっていますが、離脱すれば当然戦力が減ります。バトルは運の要素が強くなっているので、「こっちのキャラクターに攻撃が来れば体力が持つけど……!」というドキドキ感を楽しんでもらえたら。
またキャラクターのボイス収録時にお願いしたのは、離脱時に一言言わせることです。キャラクターによっては「まだまだやれるって!」と抵抗してみたり、「すみません」と謝ってみたりして、キャラクターの個性が出ている部分です。
――「ダウン」についてですが、CBT段階では部隊からいなくなる「ロスト」というシステムでした。なぜ変更になったのでしょう?
土田氏: 思い入れを持って手に入れて、育てているキャラクターが失われることが心配でバトルを楽しめない、というユーザーからのご指摘を受けて、悩んだ末にこのようにしました。
バトルでは攻めるか、撤退させるかで悩んでほしいという意図があります。「ダウン」への変更と合わせて、バトルで戦闘不能になった場合には経験値が入らないようにしました。これは育成上では痛手になりますので、「離脱」させるかどうかで悩むという要素を感じてもらえると思います。
――話を戻しますが、キャラクターごとにもストーリーが用意されているそうですね。
土田氏: ストーリーを進めることで次々に新しいキャラクターが話に登場してきます。もちろんキャラクターの機能で集めるのもいいのですが、それぞれのキャラクターの背景に思い入れを感じ、そのキャラクターを欲しいと思ってもらえると嬉しいですね。
ストーリー上登場するだけだった人物もゲームが進行することで一緒に戦ってくれたり、敵だった人物もクエストをクリアすることで味方にできるようになったりします。
キャラクターは100人以上いて、“捨てキャラ”はいないようにしていますし、キャラクターのランクごとの差は抑えています。無課金でもそれなりに遊べることが成功につながるので、そこは大事にしようと岡宮プロデューサーと話はしています。
――ちなみにキャラクター設定やストーリーはどなたが考えているのですか?
土田氏: シナリオを書いているのは、割りと長い付き合いになりますが、米坂典彦さんです。僕の作品でも「アークザラッド」など何本か書いてくれている方ですね。
それとキャラクターは100人以上いるので、設定決めはスタッフ総出です。「5キャラずつは絶対やって下さい」、「来週レコーディングなので締め切りは今日です」などと言いながら(笑)。その辺は思った以上に大変でした。
――先ほど「艦これ」の話がチラリと出ましたが、本作には「中破ver.」のように服が破れる演出は入っていませんね。
土田氏: 積極的に入れていないというわけではないのですが、たしかに入っていません。お客さんからの要望が多ければ、考えないといけない部分ではありますね。
「重くて暗くて濃ゆくて臭い曲」が土田氏のお気に入り
――音楽を担当されている下村さんですが、「V.D.」はどんな印象ですか?
下村氏: キャラクターを見せてもらった時は、かわいらしいですし、土田さんも軟派になったなと正直思いましたが(笑)、ストーリー自体はやはり重いので、作曲にあたってその感じは大事にした方がいいのかなと。
――土田さんは上がってきた曲を実際に聞いて、いかがでした?
土田氏: 今回は大丈夫というはわかっていたので、サンプル曲を渡すこともせず、お任せしました。下村さんからは「後半盛り上がり過ぎましたか?」と心配することもあったのですが、「いやこの方がいいです」と。本当NGはなかったですね。
下村氏: ただ1曲、コミカルな曲だったのですが「ハッピー」という曲がまるごとボツになりました。「楽しい曲ってあまり使いどころがないんですよね」と言われて。やっぱりそういうゲームだったのかと(笑)。
土田氏: 会話の中で軽妙なやりとりがないわけではないのですが、曲がパタパタ変わるのもよくないということで、使いどころが難しくなってしまいました。
下村氏: 結局もう1曲作り、「ハッピー」は「不安」という曲に変わりました(笑)。ゲーム内容推して知るべしですね。
土田氏: バトルだけでも現時点で4曲作っていただいて、状況によって曲調が変わります。僕のお気に入りなのですが、中でもかなり濃いシチュエーションでないと鳴らない曲というのもあります。
下村氏: 重くて暗くて濃ゆくて臭い曲ですよね。
土田氏: もう泣きがかなり入っている(笑)。提案いただいた時に、「メロディアスになりすぎたのですがゲームに合いますか?」と聞かれましたが、「いや、この曲が鳴らないといけないバトルを作ります」と。
下村氏: 土田さんがどんどん「いいです、大丈夫です」と仰られるので、調子に乗って「もっとやっていいかな」となっていって。
土田氏: むしろその方が良かったんです。攻めてもらった方が、今回は合っていたんですね。
――では最後にメッセージをお願いします。
下村氏: 久しぶりに土田さんとご一緒させていただきました。熱くて重くて、泣きもあってちょっとノリの良い、格好良い路線の曲になっています。ゲームを楽しんで、合わせて音楽も楽しんでもらえると嬉しいです。
土田氏: 今回は、バトルを中心としたゲームができたと思います。キャラ集めとバトルが絡んでいるゲームとなっていて、加えてキャラクターの個性を立てるためにボイスを入れています。
音楽も「このボスだからこそ鳴る」ものもあるなど、音を聴きながらだと何倍も楽しめるゲームになっているので、じっくり遊んでいただけたらと思います。
――ありがとうございました。
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