インタビュー
PS Vita「ファンタシースター ノヴァ」インタビュー
「ポータブル」シリーズの系譜を受け継いだ、物語とやり込みを楽しめる“新星”
(2014/11/15 00:00)
セガより11月27日に発売されるPlayStation Vita「ファンタシースター ノヴァ(以下、『PS NOVA』)」。携帯ゲーム機向けに発売される久しぶりのシリーズ作品であり、「NOVA(新星)」の名前を持つ新規タイトルだ。
一方、シリーズ全体では「ファンタシースターオンライン2」が現在も運営中で、そちらにもPS Vita版がある。それでは、「PS NOVA」はどんな“違いと面白さ”のあるタイトルなのかが気になるところだろう。そのあたりをプロデューサーの都築靖之氏にインタビューさせて頂いた。
なお、「PS NOVA」では11月13日より製品版にデータ引き継ぎが可能で、キャラクタークリエイトもできる「序盤体験版」が配信されている。このインタビューで興味を持った方は、そちらも忘れずにチェックして頂きたい。
「ポータブル」シリーズのように1人でもじっくりと楽しめるストーリー主体の“RPG”を
――よろしくお願い致します。まずは「PS NOVA」の開発がスタートした時期や経緯についてお聞きしていきたいのですが。開発はトライエースさんが手がけていますよね?
都築氏:はい。制作期間についてはおおまかにですが、だいたい2年以上はかかっていると思います。
「PS NOVA」を制作することになった経緯ですが、「ファンタシースター」シリーズは以前、携帯機ではPSPの「ファンタシースターポータブル2 インフィニティ」を最後に、次はWindows PCを中心にした「PSO2」にメインが切り替わっていったんですよね。
「PSO2」はPS Vita版のクライアントもありますが、あくまでオンライン専用ゲームです。そうなると、ユーザーさんの中には「オンラインゲームは敷居が高い」と感じる人もいらっしゃるわけです。携帯ゲーム機で「手軽に遊べる『ポータブル』シリーズのようなファンタシースターが遊びたい」という声も多く寄せられて。そこで、“オンラインゲームではない「ファンタシースター」”として「PS NOVA」が生まれることになりました。
その開発をトライエースさんにお願いしたのはなぜかというお話ですが、近年の「ファンタシースター」シリーズは酒井(智史氏)をはじめとした社内スタッフが開発を手がけていますが、彼らは今も「PSO2」の開発・運営を続けていて。それだけでもう手がいっぱいなんですよね。オンラインゲームを展開をし続けるのはすごく大変なんです。
そうなると、酒井たちのチームの手をそれほど借りずとも「PS NOVA」をしっかりと作れる開発会社さんにお願いしなければならない。トライエースさんは弊社で「End of Eternity」も手がけて頂きましたし、SFテイストのRPG作品もやられていますので。お声がけさせて頂きました。
――なるほど。よくよく考えてみると、SFテイストなRPG作品を手がけたという点で「ファンタシースター」シリーズと、トライエースさんの相性は良さそうだなと思えますし、SFの世界観作りに慣れていそうです。そうなると、「PS NOVA」のコンセプトは「ファンタシースターポータブル」シリーズから受け継いだ“自分のペースでじっくり遊べる”というものなんですね?
都築氏:そうですね。「PSO2」はやはりオンラインゲームですから、1人で遊ぶスタイルもサポートされてはいるものの、本来の遊び方とは少し違ってきますよね。
それに対して「PS NOVA」は1人でストーリーをじっくり楽しめるところが主体のRPGになっています。PCが中心にあるオンラインRPGではなく、コンシューマーのRPGですね。あと、オンラインではなく「近くにいる友達と一緒に遊ぶ」という楽しさは「PS NOVA」にもあります。アドホック通信による協力プレイですね。
――PS Vita版の「PSO2」もありますが、「ファンタシースターポータブル」シリーズの魅力をPS Vita版の「PSO2」に追加して、統合してしまおうという考えは出なかったのでしょうか?
都築氏:シリーズプロデューサーの酒井には「PSO2」はオンラインゲームとしてしっかりとした形でみなさんに楽しんでいただきたいという思いがあります。私の推測ですが、そこにコンセプトがブレるような要素は加えたくないという考えがあるのではないかと思います。
そういったこともあり、「PS NOVA」は新しいプロジェクトとして立ち上がりました。見せ方も変えて、新規のタイトルとして出していこうと。世界観は共通ですが、コンセプトを完全に変えた別のものですね。「PSO2」はオンラインゲーム、「PS NOVA」はスタンドアローンのコンシューマーゲームという棲み分けになります。
――世界観は共通ですが「PS NOVA」は別のとある場所の物語ですね。楽しみ方も大きく違うと。
都築氏:世界観をまたイチから作った別の作品にするとなると、やっぱりハードルが高いですよね。「ファンタシースター」シリーズのファンの方にも楽しんで頂きたいのは当然ですし、「PSO2」のプレーヤーさんにも「PS NOVA」に興味を持って頂きたいですし、その逆も……。そういった相乗効果で楽しんでもらいたいところもあって、プレーヤーさんが馴染みの深い「PSO2」の世界を踏襲することにしました。。
ただ、世界観が共通で別の物語を作るとなると難しいところもあって……。「PSO2」は今も現在進行形で広がっていますから。そっちの設定や物語にあまりに近い話を「PS NOVA」でもやると、後々に「PSO2」の進化の足かせになったり、矛盾が出てくるかもしれない。そこで「PS NOVA」は別の惑星で起きた、とある出来事というような位置づけになっています。
――世界観が共通とは言っても悪影響の出ない良い距離感の物語にしないといけなかったんですね。公式サイト等にある「PS NOVA」のストーリーを読むと、やはりトライエースさんのテイストというか、味が出ていて、「ファンタシースター」シリーズとしては新鮮さがありますね。
都築氏:そうですよね(笑)。差別化という点でもトライエースさんの色が出てもらって構わないというか、出してもらう必要があると考えていました。今回セガからはディレクターとして山下が担当たのですが、「『ファンタシースター』シリーズの本線とはちょっと違ったものにしたい」という意向が彼の中でも強かったです。そんな彼とトライエースさんが交わって作っていったら、こういう感じになりました(笑)。
――自分は「PS NOVA」のテイストも好きですよ(笑)。トライエースさん特有のファンタジー感というか、ケレン味が強いというか。味が濃い感じですね。個性的です。
都築氏:好みは別れてしまうかもしれないですけどね。「ファンタシースター」シリーズのいつもの雰囲気が好きという人からすると、ちょっと戸惑ってしまうかもしれません。でもそこは、意識して味の濃いものにしていて。
というのも、「テイストを変えていかないと『PSO2』の追加エピソードみたいに思われてしまうかもしれない」という怖さがあったんです。それなら先ほどの話のように「PSO2」の中でやればいいわけで。「PS NOVA」はそういうものではなくて、世界観を活かした別の遊びができる新シリーズなんです。
――良い距離感で、世界観を壊さないようにオリジナルの味わいにしないといけないというのは、難しい話ですね。
都築氏:中途半端に気を使うと作りづらいので、「惑星マキアの中で完結する物語にするから!」と、酒井や「PSO2」のシリーズディレクターの木村とも話しました。基本的な設定や世界観は、2人にも世界観設定の確認や協力を頂いていますが、なるべく本線に影響しないような物語にして。それこそ「PSO2」の将来に加わるかもしれないものにも影響しないような、そういう設定に仕上げています。
――なんとも難しそうな話ですが、でも、それこそトライエースさんなら、それもできそうに思えます。独自のものをしっかりと持っていそうというか。バランス感覚も上手くできそうな。
都築氏:そう思うのですが、それでもやはり難しさはありましたね。ディレクターの山下を含め、かなり苦労していました。「PSO2」からあまりにもかけ離れると「世界観を使ってるだけで全然違うゲームでしょ?」となってしまいますし、逆に近すぎるとやっぱり「これなら『PSO2』の中でやればいいじゃん」となってしまう。距離感はずっと苦労しましたね。