インタビュー
PS3/Xbox 360「カプコン アーケード キャビネット」
高機能ランチャー、カジュアルモードなど充実の仕様!
(2013/2/20 00:00)
高機能ランチャー、カジュアルモードなど充実の仕様!
――単に移植作を並べるというわけではなく、画面やサウンドなどの各種設定が非常に細かくセッティングできますが、こうした過去の復刻版にはなかった要素、マニアにうれしいこだわりを今回取り入れられた理由をうかがいたいと思います。
片岡氏:今回の「CACC」は“キャビネット(ランチャー)”があってこそ活かされるというイメージがあったんです。まずゲーセン時代のありのままのゲームを出したかったというのが第1前提。次は何でフォローしようかと考えたとき、キャビネットまわりの多機能さ。「こんなに面白く遊べるんですよ!」というのが僕らの想いですよね。そこをどうしても伝えたかった。いままで喰わず嫌いだったとか、ゲームから離れていた人もいるかもしれないので、「このゲーム、最初からこんなに面白かったんだよ!」とお知らせしたかった。あとは、自分として「あったら嬉しいな!」と(笑)。いろいろと洗練されていって、現状に落ち着いたという感じです。
石澤氏:僕は途中からこのプロジェクトに参加したんですけど、片岡さんは僕の先輩でもあり、アーケードの企画マンなんですよね。いまはプロデューサーをされていますが、既に企画要素、自分が入れたい機能が相当量もりこまれていた。それをどう実現するかが僕の仕事でした。ユーザーとしての視点でも「今までのコレクションシリーズに、こんなのがあれば良かった」というのが入っていた。僕個人としては、「カジュアルモード」に力を入れさせてもらいました。
片岡氏:ぶっちゃけた話、最初は「カジュアルモード」って別にお金を取ろうとしていたんですよ。卑劣ですよねぇ、カプコン! って、それをやろうとしたのは僕ですけど(一同笑)。
――製品を購入した後、追加機能として別途購入になる予定だった?
片岡氏:最初、コアユーザーさんに対してオリジナルに手を加えることが“失礼”じゃないのかなと思っていたんです。ユーザーさんがまず欲しているのは、かつてスペック的な問題で移植レベルに限界があったものを極限まで上げること。それをいじっていいのか? というのがあったんです。そのうえでユーザーさんが「これは全然(難しすぎて)遊べないよ!」という話になったとき「こういった簡単なバージョンがあります。これは別途購入してくださいね」という提供を今風に組み立てようと思ったんですけど……いろいろな人に「酷い」と(一同笑)。
「それが、お前が先ほどまで熱弁していたユーザーへの想いか!」と言われたとき「反省します」と(笑)。そりゃそうですよね、熱く語っておきながらユーザーを無視するようなことをやってんだ! となって「いや、これはもうお金は要りません、最初から入れましょう」と。
――観念された?
片岡氏:観念して「僕の考えが間違っていました。お金はいいです。ユーザーさんのためにカジュアルモードをつけましょう」となりました(一同笑)。
――開発費などを考えると妥当かなと思う面もあるんですが……無料になっちゃったんですね。
石澤氏:片岡さんが周囲からの苦情に折れた面もあったんですけど(笑)、僕ら開発側からも(無料で)入れて欲しいという話をしていたんです。「最初からカジュアルモードを楽しんでいただけることは売りになる!」というスタンスだった。あと、せっかく力を入れたカジュアルモードに触れていただける機会が減るのが嫌、というのもありました。話が合致してよかったな、と思います。
片岡氏:僕が極悪プロデューサーになりかかったところ、悪のフォースを取り除いてもらった。危ないところに墜ちかけたもんね!(一同笑)。
――お金がからむ話ですから、相当もまれた案件と見ました。
片岡氏:もみましたねぇ! プロデューサーの仕事って、まさにそれじゃないですか。その部分と、ユーザーさんにちゃんと楽しんでいただくというかという葛藤があって。でも“面白さを伝えるのが1番大事”というのはいろいろな人に言われて、「そうだよな」と思ったので、今回こういった形で機能として入れさせていただきました。
――ランチャー機能などで、特にこだわった部分はありますか?
片岡氏:“音”にはこだわりましたよね。今回サウンドプレーヤーが入っています。ちゃんと曲を聴こうとすると、サントラが必要じゃないですか。落ち着いて曲だけを聞きたいな、という僕個人の要望もありましたし、購入して頂いた方にお聴かせしたかったんです。イコライザーは、僕らではなく開発会社さんの提案なんですよね。それがあったら、もっと凄いですよね! という話になって、サウンドプレーヤーにイコライザーつき! という形になりました。
――取材してる我々も“四十過ぎのおっさんゲーマー”なので、そういったお話をうかがうとついニヤニヤしてしまいます。記憶をさかのぼると、当時のゲームサウンドって“ゲームセンター内の雑踏と一緒”になっているんですよね。それがイコライザーをいろいろいじっていると「当時、俺はこの音に気づいてなかった!」というのがあって、それだけでもう「たまらん!」状態です。
片岡氏:「音だけでもちゃんとゲームが成り立っているんですよ」というのを聴いてもらいたかったし、なにより「懐かしんでもらいたい」じゃないですか。「懐かしいなぁ、でもこの曲をきいたあとにやられるんだよな」とか思い出す、自分タイムマシンのスイッチが入ります。ぜひぜひ音も聴いて楽しんでいただければ、と思います。
――プリセット項目だけでなく“セッティング”があるのが凄く良かったです。サウンド環境を整えておられるユーザーさんには、特に試していただきたいですね。
片岡氏:昔のゲームは音源は少ないですけどね(笑)。でも、その少なさがいいんじゃないかな、と思ったり。そうそう、あと先日配信しているPVの途中に“アレンジした曲”を流させてもらってます。「戦場の狼」なんですけど、今風に作るとあんな形になる。そういった形でいろいろと楽しんでいただけると思います。
――本作の移植度に関して、こだわりの部分を教えてください。また、制作上、どのような方法で移植されたのかといったあたりも教えていただけると幸いです。また、苦労した部分やタイトルなどがあれば教えてください。
石澤氏:基本はエミュレーションです。もちろん開発会社独自のものなんですが、基板からすべてROMデータを落としてます。開発会社さんのこだわりとしては、複数バージョンが存在する基板の対応でしたね。どれを選定するのか、一般に有名なのはどれかを選んでいただいたり。開発会社さんでも基板を独自に持っておられるんですが、足りないものは僕が走り回って基板を集めました。ROMデータを見ていただいて、今落とすべきは何だろうか? とこだわった部分はあります。
「どこまでこだわるんだろう?」とはたから見ていて恐ろしくなるくらいつっこんでいますので、大人の事情以外は、本当にそのまま! 再現することにしました。下手をすればバグまで。当時遊んだ世代が「こうだったよね」と本当に感じられるものは何か。そういう移植になっていると思います。
片岡氏:バグ技も残しておきたかったものね。
石澤氏:「これっていいんですか?」というのがバグチェックチームから報告が上がってくるんですけど、調べてみると原作にあったので「すみません、これは残してください」と。完全にストップする致命的なもの以外は残してあります。表示が一瞬おかしくなるとか、あるじゃないですか。今のゲームでは絶対に許されないけど「それはその時代の話なんですよ」と。
片岡氏:ひとつネタを披露すると、あるゲームのエンディング静止画が、製品版は壊れているんですよ。製品版はそういうものだったらしいです。「これ直しますか?」という問い合わせがこちらに来て「とりあえず壊れたままにしようか。原作がそうだったんだから」と思っていたんですけど、「1回それ、ちょっと組み立ててみよう」と開発会社にお願いしたんです。
組み立てたら、なんとそれは主人公の静止画だった。「おお! これは元に戻してあげましょうか!」と(一同笑)。当時のカプコンの意図としてこうしたかったのだけど、壊れてしまっていたので、これは生き返らせてあげよう、となりました。それが何のタイトルかな? というのは、わかる人にはわかっていただけるんじゃないかと思います。
――今やってわかるかどうか自信ないなぁ……。ちなみにそのあたりの仕様書などは社内に残っていたんでしょうか?
片岡氏:残っていたものもあれば、ROM解析でわかったものも結構あります。
――メーカーさんによっては、古い基板は処分されてしまったケースも多いので難しいですよね。
片岡氏:うち(カプコン)も苦労しましたよ!
石澤氏:他の会社さんと同様で、あまり残ってないんですよね。これはカットかもしれないんですけど……僕は元々アーケード畑でやっていた人間なので、どういうことかわからないけど「基板のことは僕に聞け」みたいな話になってて「あの基板どこにあるの?」とか聞かれるんです。
――たまに社内で自然とそういう役職になる人、いますよね。
石澤氏:機材管理は別にいるんですけど、それ以外でカオスな状態のものをなんとなく整理・管理してたのが僕だったので……。「CACC」に参加する前に「こういう基板を貸してくれ」という話があって、実際プロジェクトに入ったあとは「この基板ない?」、「あー、こっちの倉庫にあったよね。ちょっと連絡するわ」とか、ちょうど都合が良かった(笑)。
片岡氏:海外までやったもんね? あるかないかって。国内版と海外版は違いますから、そこも徹底再現したかった。海外版もちゃんと入っています。
――基板のバージョン違いまで補完してるケースは滅多にありませんよね。
片岡氏:ひとつだけバラすと「必殺無頼拳」にバージョンがふたつあって……。僕も知らなかったんですけど、今回移植されているのが攻撃ボタンを押してもプレーヤーの移動が効くバージョン。
――キックで動ける海外バージョンですよね。
片岡氏:ご存知でした? 元(国内版)ができないバージョンで「どっちにしようか?」って。今回は「こっちのほうが楽しいな」と判断して、移動キックバージョンが入っています。
――攻撃時に動けない国内版はメチャクチャ難しかったですからね……。
片岡氏:今回、カジュアルモードでプレイすると凄く楽しめると思います。ネーミングで有名なところでは、ダンの流派というか、技ですよね。
石澤氏:「ストリートファイターZERO2」の「必勝無頼拳」ですよね。
片岡氏:ダンが「無頼拳」の継承者(笑)。
――海外版といえば、国内版と仕様の違いについておうかがいできますでしょうか?
片岡氏:僕らが作ったときは、海外版は難易度がそもそも違っていた。あとは敵セットが違っていたり、わかっている部分ではプレーヤーキャラが違うタイトルもあります。「アレスの翼」では国内版の主人公が女だけど、海外は男なんですよね。国内版と海外版はセレクトで選べます。
――それは本体リージョンでデフォルトが連動する?
片岡氏:日本であれば国内版、海外であればUSA版だったり。もちろんオプション設定で変えられます。
石澤氏:これも今までのコレクションものでは初ですよね。違いで細かいところを言うと、当時海外ゲームは難しいのが当たり前という時代。難易度が極端に高いんですよ。まれに逆転しているものもあるんですけど。
片岡氏:日本は1プレイ100円ですけど、海外(北米)はクオーター(25セント)1枚なんですよね。つまり25円。そのぶん難易度が時間と共に急激に上がる。早くプレーヤーを倒さないとコイン投入してもらえないから。……その代わりにプレーヤーがOUTになったら難易度を(ピーク設定から)急激に落とすんですけどね。日本は難易度を徐々に上げていく。そうした違いはありますね。
――先ほどお話にあった「カジュアルモード」についておうかがしたいと思います。単純に優しくするのではなく、1画面あたりの敵の数を減らす、耐久力を下げる、ものによっては出現パターンを変更するなど、タイトルごとに最適化されたカジュアルモードの調整内容はどのように決定されていったのでしょうか? かなり大変だったと思うのですが……。
石澤氏:僕が入ったとき「カジュアルモード」をやることは決まっていました。開発会社の移植担当さんと話しあったとき、「結局、ゲームごとに変えないと面白さは伝わらないよね」となった。たとえば「1942」と「1943」は同じように敵質と弾数を変えればいいの? というわけにはいかないんですよね。
もうひとつのポイントは、最近のゲームを移植……CPS2タイトルであれば、僕らが現役で関わっていたタイトルだからプログラム内部がわかった状態でスタートできる。昔のタイトルはアセンブラで組まれていて、どこをどういじれば僕らが思ったとおりになるのか“解析”から始まる。まず解析ありきで、それをやりながら「今ならこういうゲームになるよね」という話し合いの結果が反映できるのは、どの部分か。
僕はゲームバランスの調整にずっと携わってきたので「すいません、ここは引けません」とか頭を下げてやってもらったり。逆に、開発会社さんのほうが(解析から)知っていることが多いので「ここをこうすると、こんなふうに面白くなりますよ」という提案を日々の会議や連絡で頂いたり。それをガンガンやった結果がカジュアルモードです。
それと同様に僕個人がこだわったのは「トレーニングモード」と「カジュアルモード」の設定オプションです。これまで格闘ゲームのトレーニングモードをこだわって作ってきたんですが、それと同じことを古いゲームでできないの? って。たまたま今言った「(カジュアルモードで)こういう修正をします」となったとき、おもむろに「それって選択式にできないの?」と聞いて、できたのがあの凄いメニューなんです。
――解析と平行だから、そんな簡単にはいかないですよね。
片岡氏:単純に難易度を下げたら「ほら、面白いでしょ?」ではなく、このゲームの面白さを伝えるために、こういうことをしました、というのがあの形になりました。難易度もそれぞれ違うので、自分にあったレベルというか、自分にあったセットをしてもらえれば1番面白いんじゃないかという企画のこだわり、ですよね。
僕個人が1つだけ気に入っていないのは「1943」のカジュアルモード。カジュアルモードは敵弾をくらうと勝手にメガクラッシュするんですよ。あれ、僕は「優しすぎる」と勝手に思ってるんですよ(笑)! たぶん。でも人それぞれで、必要な人もいるか……。
石澤氏:あれ、ソーシャルゲームからゲームの楽しさを知った最近のライトユーザーさんたちは欲しいんじゃないかと思うんですよ。1回ダメージを受けたらリセットしたいじゃないですか。周囲に平和な空間を作りたい。片岡さんとか、昔ガチでやられていた人たちは、その機能はいらないわけじゃないですか?
片岡氏:確かに。コンセプトとしては、なるべく、それぞれにあった難易度設定にしてあげたいという気持ちが込められています。
石澤氏:自分でオプションをオン/オフして、練習して少しずつオフにしていくことでオリジナルのアーケード版に近づいていく。最後は完全なアーケード版のハイスコアに挑戦してください、とできないかなと。そういう想いがあって、あんなムチャなものにしました(笑)。
片岡氏:あとは昔ガチだった人も、いきなり現役復帰とはいかないでしょうから。本格的にプレイする前に「カジュアルモード」、「トレーニングモード」で腕慣らし、ウォーミングアップをした後にアーケードモード、という流れも作りたかったんです。
――「昔とった杵柄」と挑んで、いきなり折れるのもたしかにつらいものがあります。
石澤氏:折れますよ、マジで! 「すいません、これカジュアルでやっていいかな?」と聞いて「いや、バグチェックだからオリジナルで!」って言われると折れますからね(笑)。
片岡氏:僕も、昔のゲームを(アーケードモードで)クリアしたことないもん! カジュアルモードでクリアした(笑)。ただ、「ガンスモーク」だけは、カジュアルモードでも最終ボスが倒せなくて、今腹立ててますから。「これ調整ないのかよ! 最後3匹でてくるのを1匹にできないか!」、「それはできません、ボスの数の問題じゃないですか!」と(笑)。
――そのあたりの、いじれる、いじれない。ゲームの面白さを伝えたいという“さじ加減”というか、振り下ろす鉈の位置はどうやって決められたんでしょうか?
石澤氏:できる、できないも含めてですけど、そうなった場合は僕が鉈を振り下ろしました。とは言うものの、基本的に「これはやめましょう」というのはなるべく少なくました。できるところはやって、触ってみて「コレはやめましょう」というのはあったんですけれども。1度でも組めば「せっかく作ったんだから、これをこうアレンジすればまだいいものにできませんか」という提案もできる。「ゲーム性が狂うからダメ」といったもの以外は、触ってみて、面白いものに昇華していく方向性でしたね。
片岡氏:僕はゲームが下手なほうなので、自分が「この程度だと難しいかな」、「これより簡単だったらいいな」とか基準があって、当てはまっていれば、ほぼOKにしていました。簡単すぎると作業になるから、本当に面白くないんです。それもいけないけど、難しすぎると攻略方法がわからなくて腹が立ってくる。1回やってダメは元々として、次にやったとき「こうなるんじゃないか」と考える元所があって、それを繰り返していくと倒せる攻略方法ですよね。そういった形はちゃんと組み立てられているんじゃないかと思います。
石澤氏:「ブラックドラゴン」であれば、ショップの買い物があるじゃないですか。あれは「カジュアルモード」だと値段が安くなっているんですが、誰でもクリアして欲しいというだけなら「アイテムをタダであげればいい」じゃないですか。でも、それってゲーム性がおかしくなりますよね。だから、そういう意味です。「ここはゲームとして絶対に守らなければいけない」というのは、ちゃんと残す。そこを「どのレベルなら遊べるのか」という調整をするのが、僕と開発会社さんとのやりとりでした。
――「ソンソン」でも、あと1個敵が多いか少ないかで違いますものね。アレンジモードをはじめて触ったとき「なるほどなぁ、これは1個単位で相当喧々囂々やったんだろうな」と……。このさじ加減って本当に微妙ですよね。ゲームがシンプルだから、なおさら。
片岡氏:本当にそれぞれ意見が違うんですよ。しかし、どこかで切らないといけないので、泣く泣くっていうのもありますし、「これは企画マンを信じよう!」というのもあります。
――これ確実に、今も納得していない人たちがそれぞれいますよね。
石澤氏:あります! だから最後は「オン・オフしろ!」って(笑)。昔、僕は「ZERO3」にも関わっていたんですけど、あれに「俺ISM」ってあったじゃないですか。それと同じです。そういうことでいいかな、と。
――それはスポッとはまった感じがしました。オリコン、俺ISMのコンセプトを思い出すと、今のお話がスッと腑に落ちる気がします。話は急に変わりますが……今回配信されるタイトルで「この1本、特に思い入れがある」といったものはございますか?
片岡氏:僕は「1943」。カプコン入社後、最初の仕事が「1943」のステージ1クリアだったんです。今から考えるとロケテスト前の難易度調整をやってたと思うんですけど、ゲームをあまりやらない人間が開発に入ってきたので「ちょっとゲームやれや」と。「クリアできたら報告にこい」と言われて「クリアしたご褒美にメシをおごってやるよ」となったら、真剣にやるしかないじゃないですか! でも9時から17時半までかけてクリアできなかったんですけど、「メシをおごってやる」って。
「クリアできなかったプレイし続けた事に感謝してくれたんだ!」と思ったら、メシ後に「21時まで残業ね」って言われたんですけど(一同笑)。「1943」の件は、僕みたいな素人がやったらどれくらいプレイできるのか、難しいのか否かの判断チェックになっていたんです。そんな事から「1943」に思い入れがあって、ずーっとやってましたよねぇ。そういったいきさつから好きになるのもおかしいんですけど(笑)。「こういったゲームで、こういうことをするのか!」と。僕は企画マンで入社したので、企画マンのなんたるかを教えてくれたのも「1943」でした。だから、このタイトルのなかでは1番ですねぇ。石澤くんはどう? この時代ではまだいなかったかもしれないけど……。
石澤氏:いや、僕らもそうですよ。僕は「ZERO2」が初めなんですけど、新人時代に“丁稚奉公”というシステムがあって、いろいろなところに入って修行していたんですね。で、(現在はアリカ社長の)西谷(亮)さんのところに行ったとき、ちょうど片岡さんが所属するチームが隣にいて、そのなかの宿題のひとつで「ハーピーの企画を考えろ」と。企画だけ作ってあとは「お願いします」だったんですけど、そこでも考え方を言葉ではなく周りの環境も含めて叩き込まれた。
片岡さんの時代は本当に昔の気質でやってて、僕らにもまだ綿々と続いていた時代なんですね。最近はもっとシステマチックになりましたが……。でも、片岡さんの「1943」話は初めて聞きましたよ(笑)。
片岡氏:15タイトルのなかから、想い入れが深いタイトルはない?
石澤氏:僕、本当は「○×(ごにょごにょ)」っていいたいんですけど……。
片岡氏:おい(一同笑)!
石澤氏:特にこだわった1番好きなタイトルは「サイドアーム」。次点で「ブラックドラゴン」。同梱に「ブラックドラゴン」を押したのは、そういう理由です。実は当時、僕はハイスコアラーをやってて「ゲーメスト」にハイスコア申請とかしていたんです。一応、大したものでもないですがハイスコア記録を持ってて。今はもう全然ダメですよ(笑)? 学生になってから ハイスコアをやってるんで、ゲームを触りだした時代……歳は(取材現場一同)変わらないですよ? 僕も40歳オーバーです。
――このインタビュー(するほうも受けるほうも)平均年齢、高っ!!
石澤氏:「サイドアーム」になぜこだわったかというと、ちょうどハイスコアにこだわりだした時代なんですよ。シューティングなのにいろいろな要素が入っていたじゃないです か。「サイドアーム」は僕の直属の上司だった(現在はクラフト&マイスター)の船水さんや、(現在はフリーのアートデザイナーの)「あきまん」こと安田さんが企画でやられていたタイトルというのは入社後に知ったんですが……プレーヤー当時はクリアはできたけど、どうプレイを突き詰めていけばいいのかを意識しだしたタイトルでした。
――「サイドアーム」は私も基板を持っていました。
片岡氏:カッコ良かったですもんね!
――カッコ良かったです! 当時、ロボットモチーフであれだけ気持ちよく撃てるゲームは希少でした。
片岡氏:僕が入社したときには、もう出ていたのかな? ポスターが格好よくて……そのイメージが常に頭の中にありますね。モビちゃんもまだ……最近ちょっと出なくなっちゃいましたけど(笑)。
――弥七もご無沙汰です。
片岡氏:それもこれも「CACC」で出るぞ! ということで(笑)。
石澤氏:「絶対合体!」って、ガーン!とくる(秀逸なキャッチコピー)じゃないですか(一同笑)。あの2人が関わっていたら、そういうことを言うなって感じ。
片岡氏:シューティングってほとんどシングルじゃないですか。あの当時、いかに2人で楽しくプレイしてもらうかという“ひとつの策”だったんだろうなと思います。
――当時「合体」って大胆でしたよね。
片岡氏:「1943」にもあったんですよ。“ぽい”のが。エネルギーをシェアしあうっていう。あれも重なるから合体(の一種)。
――(2人プレイ時)シェアなんて絶対に許しませんでしたけどね!
片岡氏:そうでした!(笑) 俺のエネルギーとるんじゃねえよ! 俺だって必死になってやってんだよ! みたいな喧嘩のもと。でも奪い合いは楽しかった。そういった意味では“継承”なんだろうなぁと思います。
石澤氏:「サイドアーム」が好きな理由をもうひとつ思い出したんですけど、いいですか? 僕、入社試験の集団面接で、当時僕らが入ったときは対戦格闘ブーム真っ盛りで、皆、好きなゲームはと聞かれると「ストII」って言うんですけど、なぜか僕だけ「サイドアーム!」って。人事担当の人が口ポカーンって開けてた(笑)。
――その時期って、業界的に「マニアの採用は避けよう」という風潮があったと思うんですが……ある意味とても危険な発言だったんじゃないでしょうか(汗)。
片岡氏:ありましたねぇ!
石澤氏:今考えれば(危なかった)。
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