「FFXIV: 新生エオルゼア」プロデューサー吉田直樹氏、UIアーティスト皆川裕史氏インタビュー(前編)

PS3版のグラフィックス仕様と独自UI「ゲームパッドモード」の全貌を聞いた


10月8日収録



 スクウェア・エニックスは10月11日、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」プロデューサー/ディレクターの吉田直樹氏が「第3回FFXIVプロデューサーレターLIVE」で約束したとおり、プレイステーション 3版のスクリーンショットを公開した。この間、PC版のαテストも10月下旬と告知され、2013年1月以降の正式サービス開始に向けて、着々と外堀が埋まってきた感がある。PS3版の情報については、ニュースにまとめているので、そちらも参照頂きたい。

 吉田氏には8月のGamescomでインタビューしたばかりだが、今回はPS3版の初披露ということで、吉田氏に加えて、UIアーティストの皆川裕史氏も交えて、「FFXIV」のインタビューとしては初となるPS3版に特化したインタビューを行なった。

 ちなみに皆川氏は、かつて「ファイナルファンタジーXII」のディレクターを務めた経験があり、同作を代表するシステム「ガンビットシステム」などの開発経験が、「FFXIV」のUI設計にどのような影響を及ぼしたのかについても質問を重ねてみた。

 また、今回PS3ユーザー向けに公開された新エリア、新ボスモンスターを含む各種イメージイラストや、PS3版のグラフィックス仕様の延長線上の質問として、「FFXIV」全体のグラフィックスについても話を伺った。今回は2人分ということでロングインタビューとなったため、前後編の2本立てでお届けしたい。インタビュー前編では、PS3版のグラフィックスの仕様や独自UIについて話を伺っている。



■ プレイステーション 3版発表の感想、PC版とのグラフィックスの違いについて

「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」プロデューサー/ディレクターの吉田直樹氏
「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」UIアーティストの皆川裕史氏

――今回はPS3版について集中的にお伺いしていきます。スクリーンショットが今回初公開になるわけですが、その発表の感想から聞かせていただけますか?

吉田氏: 長くお待ちいただいている方だと、まる3年お待たせしているものなので、「ようやく」という言葉がふさわしいのかなと。ようやくお約束に向かって一歩目を踏み出しましたというところですね。

――もともと現行版「FFXIV」の発表時からPS3版は存在していたわけですが、当時のPS3版と、今回のPS3版は当然色々と違うと思いますが、何が一番の違いでしょうか?

吉田氏: エンジンがそもそも違うので、全く違うとも言えるのですが、やはりユーザーインターフェイスでしょうか? 前にもお話ししましたが、ゲームパッドモードとマウス・キーボードモードを完全に分けてそれぞれにコストをかけて作っているところが、グラフィックス以上に違うところではないかと思います。

 エンジンは今までもお話したとおり、今回かなりフレキシブルに作ってあるので、そこは減ポリを極端にしたりせずに、前にテクスチャサイズとかミップマップのサイズは変えますというお話はしていますが、それ以外のアセットはほぼそのままで、後はグラフィックスオプションでやりくりすると言うところが、もう1点大きく違う所ではないかと思います。

――最初にPS3版のSSを見た時にちょっとした既視感を感じたんですね。何だろうと思って、いろいろと過去のSSを漁ってみたら、去年の10月の新生発表時に公開した「新生はこうなりますよ」というイメージショットに、ゲームパッドモードのメニューなんかがそっくりですよね。つまりあの当時からPS3版はある程度できていたんだなと思って驚いたんです。

皆川氏: 実は、あの画像を発表した際に、我々がクロスホットバーと呼んでいる今回のレイアウト、パッド向けのUIのデザインはすでに吉田に見せて、こういうアイデアがあると話をしていたのです。その当時からあまり変化していないですね。当時は、とにかくPC版でUIの足場固めをしましょうということで、マウス&キーボードUIの基本実装から作り始め、土台をしっかり作ってから、その次にパッドUIの設計に入りました。今回やっと具体的なものをお見せできるようになりました。

吉田氏: 当時は現行「FFXIV」のマウス・キーボードのUIが、特に海外のお客様からひどいという印象があったので、あの時点でこのクロスホットバーを出すと、「またよくわからないことをやってるよ」と言われてしまいそうだったので、敢えて出さなかったのは事実です。

――GamescomでUI入りの新しい画像を見た時に、新生の初期デザインはナシになったのかなと思っていたのですが、今回新しいものを見て、PS3版のUIだったんだなとわかって安心しました。PS3版について、まずはグラフィックスから伺っていきます。現在のPS3版の完成度は何パーセントくらいでしょうか?

吉田氏: 80%ぐらいですね。あとはもう最適化に向かって突っ走るだけのところまで来たので、残り20%かなという気がします。

――PC版とPS3版のグラフィックスの違いについて教えてください。

吉田氏: やはり解像度が一番違う部分でしょうね。

――解像度は縦720ピクセルですか?

吉田氏: いまは縦544ピクセルです。

皆川氏: 縦の解像度が544ピクセル、横の解像度が1,280ピクセルですね。

――なるほど。544を720に引き延ばして使っているわけですね。

皆川氏: 3D画面の描画バッファが544なんですね。その画像を縦に伸ばして表示用の画像として1,280×720でレンダリングしています。その上にUIのレイヤーを上書き描画をしています。

吉田氏: 要はアイコンをそのまま544ピクセルの解像度でレンダリングしてしまうと、ボケてしまうので、UIだけは最後に別で描画をかけるのです。

【PS3版(左)とPC版(右)のスクリーンショット】
左がPS3版で、右がPC版。PS3版は解像度が変則的な関係で若干眠い絵になっているが、パフォーマンスを重視した結果だという

――PS3版の解像度は、これで確定ですか?

皆川氏: 描画バッファの縦横の解像度比率をどうするかは吉田と、テクニカルディレクターの橋下らとみんなで、画面を動かしながら調整しているのですが、要は縦解像度を上げれば横線はより綺麗になるけれども、その代わりに樹木の縦のジャギりが目立ち始めるという具合で、トレードオフが悩ましい。どっちかなあとギリギリまで悩んで、まずは今回はこの解像度で出そうと。

吉田氏: 縦解像度にこだわると、確かに全体的な印象が良く効果が大きいです。特にPS3だと階段とか横の柵とかのチラチラした間がよく出るじゃないですか。あれを抑えるためには縦解像度を持った方がいいのです。しかし、MMORPGはカメラをかなり左右に振るゲームなので、そうなった時に横解像度が高い方がプレーヤーは操作しやすいはずなんです。僕はやはりゲーマーなので今はこちらをとってますが、この後さらに最適化が進んでパフォーマンスがもっともっと向上していった時に最終的にどっちを取るかはわからないですね。

――背景がちょっと眠いと感じるのは、そのあたりの解像度をいじった都合ですか?

皆川氏: そうですね。解像度の影響が一番大きいと思います。あとはキャラクター及び背景のテクスチャの解像度ですね。

吉田氏: テクスチャの解像度が実際に落ちると、こうなりますね。ただ好みによるような気はしますね。こっちの方が好きという人もいるでしょうし。

――ノーマルマップなどの処理は適用されるのですか?

吉田氏: もちろんです。

皆川氏: この画像でもノーマルやスペキュラーは適用されていますし、シェーダーに関してはPC版と同等のものです。

――ちなみに「FF」25周年記念イベントで新たに公開したスクリーンショットでは、被写界深度シミュレーションが適用されてて、ここまでやるのかと驚いたのですが、PS3版ではそうしたポストエフェクト処理はどうなりますか?

皆川氏: 被写界深度はイベントのカットシーン限定の処理です。イベントシーンの中では被写界深度であったり、ベクトルブラーをかけるというオプションがあります。通常のゲーム中は、グレアやエフェクトで爆発するというときなどにラジアルブラー系が適用されますが、被写界深度は切っています。

――なるほど、PC版限定ではなくてイベントシーン限定の処理なんですね。

皆川氏: はい、被写界深度とカメラブラーは、イベントシーン以外では、PC版、PS3版にかかわらずオフになります。これらの使いどころは、イベントシーンを効果的に見せる演出に限定しています。

吉田氏: あれ、常時ボケてたらやってられないです。疲れちゃって(笑)。

【被写界深度シミュレーション】
森リージョンに適用された被写界深度シミュレーション。手前にピントがあって、背景がボケるこの処理はイベントシーン限定だという

――ライティングやシャドーイング辺りはどうなるのでしょうか? PC版と同じですか?

吉田氏: PC版のどのラインをもって同じとするかによるのではないでしょうか? 先ほどからずっと繰り返しいってますけど描画エンジンはフレキシブルなので。

――というと、PS3版もフレキシブルにグラフィックスオプションをカスタマイズできるのですか?

吉田氏: いえ、PS3版は固定です。ただPC版の描画設定可能なレンジはものすごく広いので、PCと同じですかと聞かれると、ある意味同じですし、PCの表示をPS3と同じにすることが可能です。

――それではPS3版は、PC版のどのあたりですかという質問の方が答えやすそうですね。

吉田氏: そうなります。基本的には、PC版のミドルあたりに設定しています。

――PS3版のフレームレートは可変ですか?

吉田氏: 可変です。僕は、開発チームには上限30フレーム毎秒で、下限はどこまででもOK、という話をずっとしています。

――可変で上限30フレームというのは、割り切りましたね。

吉田氏: MMOですから60フレームで動いたところで、レースゲームや格闘ゲームでもないので。1フレを競うような何かがあるかっていうと何もないので。それよりもとにかくたくさんキャラクターを描画することが重要です。なので、フレームレートは上限30でいいという話をしています。

 目安としては3パーティー(24人のPC)、4体の中型モンスターがいる状態で30フレーム出るくらいで、それ以降キャラクター表示数が増えていくにつれフレームレートをどんどん落としてもいいと言う話をしています。ただ、この3パーティーは装備が全員ひとつすら同じ装備がない、つまりメモリ的な使い回しが効かない場合を指します。ちょっと説明が難しいですが。

――ちなみに将来的にPS3版をフルHD表示に対応させることはあり得るのでしょうか?

吉田氏: たぶんないとおもいます。メモリももちろんそうですし、MMORPGとして必要なパフォーマンスも出ないと思いますね。

皆川氏: 正直難しいと思います。フルHDにできても、新生「FFXIV」のゲーム性をちゃんと楽しめない、不適切な設定で割り切って遊んでもらうものになってしまうと思います。今は、最善と思う設定を定めて、そこに集中して開発するのがベストだと考えます。

吉田氏: もちろんやればできると思うのですが、キャラクターが全然表示できないとかになっちゃうものを、じゃあMMOの「FF」としてそれが正しいのかというと、そうじゃないと思っているので。フルHDを出すことにはあまりこだわりはないですね。

――ちなみに新生「FFXIV」のグラフィックスは、初期のイメージショットにはまだ到達していませんが、これは今後も目標であり続けているのか、すでに目標が変わっているので最後まで到達しないのか、そのどちらなのでしょう?

吉田氏: 今の「森」を見ているだけなら、到達しないんじゃないでしょうか(笑)

――方向性が変わったんですか?

吉田氏: うーん、とにかく今回採用しているディレクショナルライトもそうですが、フォトリアルのために採用したグラフィックスの各種仕様は、環境設定パラメータで、どうにでも見えてしまうというのが回答です。あの初公開のコンセプトスクリーンショットは、劇画調を強めましたが、今見ていただいている「森」にそのイメージは合いませんしね。

皆川氏: あの画像を公開した当時は、まだ新生の描画エンジンの特製が、最後までは詰められていない時期だったので、どちらかというと旧版のエンジンやシェーダーの特性に近い絵になっています。独特の雰囲気のほとんどは、黄昏時の特殊な時間帯によるもので、最新のエンジンでも夕暮れ時の平原では、地平線付近が金色に輝く、いわゆるマジックアワーな映像が出現したりします。描画はライティングとポストエフェクト処理で、同じモデルでもまったく異なるルックスになります。

【「FFXIV: 新生エオルゼア」初期イメージショット】
発表時にゲームファンに衝撃を与えたイメージショット。新エンジンではこうした絵作りは十分可能で、場合によってはこれを上回ることも可能だという

――私はこのイメージショットで一番好きなのは、空なんですよね。この空の自然なグラデーションや滑らかな雲は、MMORPGではなかなか実現できてない部分だと思います。

皆川氏: 新生「FFXIV」で、こういう空や雲は出せますよ。イメージショットは静止画ですが、時刻変化のシステムが動いている状態のグリダニアでは、明け方から昼にかけて森の中の木漏れ日の入り方がすごく綺麗な時間があるのですよ。静止画像で見るのとはぜんぜん違う、動いてこそ意味のある映像にするための膨大な調整が始まっています。時刻とシーンを山岳にしたら、最近のグリダニアの森とは違う雰囲気の画面になります。

吉田氏: そうですね。これ夕方に山リージョンを見たら、以前のショットとあんまり変わらないかもしれないですよ。

皆川氏: ええ、マップの環境設定を追い込むことで、似たような感じにすることができます。

吉田氏: とにかく新生「FFXIV」のエンジンでは、環境のパラメータひとつでぜんぜん絵が変わるんですよ。そもそもスカイビジビリティの焼き色に関しても、頂点に対してカラーを焼いた状態にさらにライトを当てるので、グリダニアに関しては青と緑を強くしているのですけど、山リージョンとかだと、たぶんもっと黒にしていくと思うので、こういう絵を作ろうと思えば作れます。今すでにBGチームエリア単位、ゲーム内時間単位にそれを設定していってるので、驚くほどエリアや時間で表現が変わりますね。

皆川氏: (SSを見ながら)このキャラクターは今屋外の光を強く受けていて、光の当たっていない面もそれなりに明るく出てますよね。同じキャラクターでも、屋外と屋内では、大きく見た目の陰影が変わります。胸元周辺に落ちてる影の落ち方とか、上からの光の減衰によるグラデーションを見ていただければわかると思いますが、周囲環境の光の影響を適切に反映するエンジンになっています。

 さっきお話したとおり描画システムは違いますが、イメージショットと同じ絵が作れるかというと、シーンを適切にセッティングすればほぼ同じ絵に近づけることは可能です。むしろ、もっと綺麗な映像をだせるんじゃないかと結構楽観視しています。

――まさにこの初期イメージショットに勝るとも劣らないような絵が実現されると。

吉田氏: そう思いますよ。

――それはとても楽しみですね。

皆川氏: 現行版の旧エンジンですら、エオルゼア崩壊に向かってビジュアルを詰めたとき、当初は考えられないクオリティの映像が、デザイナーの使いこなしで出るようになっています。同じように新エンジンのつかいこなしが進むと、驚くような映像が出せる用になると思います。



■ PS3版独自ユーザーインターフェイス「ゲームパッドモード」について

皆川氏は、自らPS3のゲームパッドを握って「ゲームパッドモード」について解説してくれた
使い方によっては片手でも遊べることをアピールする吉田氏。こちらもエンジン同様、非常にフレキシブルだ

――次にPS3版オリジナルとなる独自インターフェイス「ゲームパッドモード」について教えて下さい。

皆川氏: とにかく、PC版、つまりキーボードとマウスによる操作と、操作性に差がつかないように考えて作っています。このクロスホットバーで、キーボード・マウスプレーヤーと比べても遜色のない入力速度で多種のアクションの選択と決定が可能になります。

――キーボードはデジタル操作、ゲームパッドはアナログ操作ですが、両者で全く同じスピードで操作が可能になるというわけですか?

皆川氏: キーボードの場合、多数のキーに対して1キー1アクションを割り当てられます。今回のパッドUIも、ほぼそのイメージで操作できます。いわゆるシフト操作、L、Rキーを推しながら十字キーか4つのボタンを押すことで、選択と決定を同時実行します。

吉田氏: パッドって手癖がつくじゃないですか。昔のファミコンのゲームなんかだと、「ウィザードリィ」をやっていても、指が何歩歩いて、どこで魔法を唱えるとどうなると覚えていたのと同じように、使い込んでいくと自分好みにカスタマイズできるように作ったつもりです。

皆川氏: 現行「FFXIV」では、ターゲット選択して決定すると、ホットバーにホットバーにアンカーが移動し、そこから十字キーで使いたいアクションにカーソルを合わせてからもう一度決定というプロセスだったのです。

――「FFXI」のパッド操作でも、まさにそのプロセスを踏みますよね。

皆川氏: はい。このアクション選択のためのカーソル移動入力が決定的にキーボード&マウス操作と比較して不利なので、そこを変えました。今回はターゲットまでは同じです。その後に、例えば今画面に映っている一番右端のアクションを使いたい時には、R2を押しながら○ボタンを押すだけです。

――おー、たったの2アクションで!

皆川氏: 画面の一番左のアクション、オートアタックのオンオフ切り替えなんですけれども、これを選択する場合も、L2を押して、□ボタンを押せば、これで入力が終わり。普段は十字キーの左右を押して、フィールド上のターゲットをアンカーし、ターゲットを決めた瞬間にL2(R2)を押し込みながらアクションに対応するボタンを押下してアクション実行、が操作の基本になります。

――これはわかりやすい。「FFXI」をやっていた人はすぐに慣れますね。

皆川氏: はい。慣れると考えずにアクション実行できるようになります。

吉田氏: 他社さんで恐縮ですが、「モンスターハンター」でも、アイテムセレクトする時にはRボタンを押しながら……という操作がありますよね。基本的には「シフト押し」っていう考え方に近いと思います。

――という意味では、最近のジャパンスタンダードに則った形という感じですね。

吉田氏: そうですね。僕が皆川に言ったのは、ターゲットを選択する、つまり「誰に」は絶対に必要だと。例えば味方は上下キーですし、敵の誰にというのは左右キー。これはもう絶対に変えないでくれと。で、その後、ターゲットを決定した後で、「どのコマンドを使いますか?」というシーケンスが、マウス+キーボードとの差を生むので「コマンドを選択する」というシーケンスが嫌だと。それはやめてくれと。

――確かに「FFXI」のパッド操作は、マクロの左右移動をいかに速く正確に実行するかみたいなところがありますからね。ジョブによってはマクロパレットの上下移動まで。

皆川氏: 今回は、それこそやろうと思えば、クロスホットバーに登録できるアクションとして、マクロも登録できるし、エモートやアイテムも登録できます。例えば「自分に攻撃をしてきている一番近い敵をターゲットする」というテキストコマンドをマクロに書いて、続けて使いたいアクションを記述してマクロ登録したものをホットバーにおいておけば、殴られたら取りあえず緊急回避的にあるボタンを押すとターゲッティングとアクション実行が当時に発動する、とか。そういう組み方もできる。


【PS3版独自UI「クロスホットバー」】
画面中央下にある16個の枠が「クロスホットバー」。PS3版ではここに各種アクションを入れて使う形となる

――それはいいですね。4個1組のパレットが4つの計16スロットがありますが、これを切り替えて使うこともできるのですか?

吉田氏: これは8つが2つあるというイメージです。L2+十字キーとボタンで8つ。R2+十字キーとボタンで8つなんです。常に16個ある状態です。今回、わざと中央を4×2のブロックにほとんどアイコンをおいていないのは、今回PS3のスクリーンショットが初出しなので、16個アイコンを埋めるのはやめてくれという話をしたからです。「なんじゃこりゃ」ってなっちゃうかなと思ったので。

皆川氏: 「こんなに埋まるよ!」と大喜びで埋めるのは、ちょっとやめてくれと(笑)。

――でもGamescomでのPC版のスクリーンショットってアクションアイコンのズラズラ感が1つの売りだったじゃないですか。

吉田氏: あれはPC版だからですね。PCプレーヤーはそうじゃないと困ると考える人たちだからなのです。逆にPS3プレーヤーには初出しなので、「なんだかワカンネー。ごちゃごちゃしてやりたくねー、このゲーム」ってなっちゃうと嫌なので。

【PC版のUI】
こちらはPC版。たっぷり36個のスロットが用意されている

――とはいえ、実際に遊び始めたら16個は、アクションですぐ埋まりますよね?

吉田氏: どうでしょう。レベル15くらいまでは空きだらけでも大丈夫ですね。

皆川氏: 今実際にα版をテストプレイしているのですが、最初のパレットが埋まらないですね。まあクロスホットバーではなく、PC版ですが、1列12枠は埋まらずに普通にプレイできますよ。

――16個のパレットの操作の仕方、パレットの切り替え方を教えて貰えますか。

皆川氏: この左右8つずつ、16個の枠を「アクションセット」と呼んでいます。もう少し細かく動きを説明をすると、L2を押すとL2側の8つの枠がふわっと光ります。その状態で十字キー、もしくは○、×、□、△ボタンで、8つのアクションを実行します。L2を離すと、光っていた枠が消える。R2を押すと今度は右側の8枠が光ります。

 L2、R2の両方を押すと、真ん中の数字とマークが光って、アクションセットの切り替え操作状態になります。L2、R2両方を押したまま、先ほどと同様に十字キーか4つのボタンを押すと対応する1から8番のアクションセットに切り替わります。16個を1アクションセットとして×8つ分のセットが選べますので1つのクラスで最大128のアクションを登録できて、それがクラス個別にあります。

――これはもう文句は言わせないぞ的なボリュームですね。

吉田氏: ちょっと多すぎる数かなあ(笑)。

皆川氏: 多すぎると難しく感じるので、逆に絞った方がよくないかって話もあるのですが……。

吉田氏: 通常よく使うようなエモート、/waveや/bowなどもアクションとして全部填められるので、よく使うエモートアクションってせいぜい8個とか10個くらいじゃないですか。例えばすべてのクラスのパレット4はすべて共通エモートを入れておくとかにしておけば、どのクラスを使っていてもパレット4番にすればいつでもエモートになる。だからそんなにクラスやジョブが固有でも、「4パレットくらいあれば足りるんじゃないの?」って感じるのですが、とりあえずメモリ的に持てる限界まで一回持っておこうかという話をしているのでいまこういう状態です。

 あとはページ切り替えで、アクションセットの切り替えそのものもマクロにしてアクションとして入れられるので、例えば、□ボタンに「セット2に切り替え」と入れておいて、さらにセット2の□ボタンに「セット3に切り替え」というのを入れておいて、でもってセット3の□ボタンに「セット4に切り替え」と入れておけば、ゲームパッドを片手でもって、3つボタンだけで攻撃しながらパレットを切り変えながらプレイするということもできます。工夫次第でめちゃめちゃ色々な遊び方ができるんじゃないかなと。



■ PS3独自UIデザインの設計思想について。「PC版とPS3版で相互に不利益が発生しないように」

皆川氏はPS3版UIの設計思想についてPC版とPS3版で差が出ないようにすることを第一義に上げてくれた
チュートリアルにマクロ登録を入れるのは「説明過剰」という吉田氏。吉田氏の明確なポリシーの元で開発が行なわれていることを伺わせるエピソードだろう

――今回、UIに関して、「FFXII」ディレクターの皆川さんにお話を聞けるというので、個人的に「FFXII」は大好きな作品なので非常に楽しみにしてきました。すでに色々お話しをいただいてますが、新生「FFXIV」のUIデザインの設計思想についてお話しいただけますか?

皆川氏: 設計思想は、PC版はマウス&キーボードというグローバルスタンダードなMMOの操作方法に合わせる事が至上命題でした。もう1つがそれと遜色のないスピードでゲームパッドでもプレイできるUIにする。この2つだけですね。開発の前半は、とにかく土台となる前者をまずは作りましょうと。

 ゲームパッドとマウス&キーボードの操作性に差が出てしまうと、どうしても操作性が劣る側でも攻略可能なバランスに調整しなければならなくなります。これは先々の運用、サービスが長期間続くMMOでは致命的な問題になりますから、設計の要諦は2種の主要な操作デバイスで、バトル攻略上の差が生じないように、することです。

――ゲームパッドモードに関して吉田さんのオーダーはどんなものだったのでしょうか?

吉田氏: やっぱり、ダンジョンやコンテンツを攻略する時のことを想定しました。たとえば、いま現行版でもご好評いただいている蛮神系のバトルって、「FFXI」と比較してもアクション要素とかポジション取りが多くて、しかもそこが好評頂けている部分でもあるので、パッドで操作した時に、マウス・キーボードのダイレクトアクションに比べてPS3のプレーヤーがワンテンポ遅くなってしまうというのはNG。「PS3のプレーヤーをパーティーに入れるの嫌だよね」という状況になったら絶対にまずいと。なので、ハンディキャップにならないUIというのが至上命題でしたね。

――ゲームパッドモードに関しては「FFXI」という成功例があるわけですけど、その影響を受けたり、むしろちょっと邪魔かなと思ったりすることはあったのでしょうか?

皆川氏: いや、あまり意識はしなかったですね。「FFXI」はもちろん先行しているタイトルで、マクロがどう使われているかとか、いろいろな事例を実際にプレーヤーの方からも聞いてはいたのですが、一方で現行版「FFXIV」の初期サービス時に「FFXI」であったこれが欲しいというのに、すごく開発が振り回されている部分もあったのですね。

 「FFXI」と「FFXIV」は似ている部分は多いですが、違うゲームです。新生UIの設計時は、ゼロリセットして考えました。まずは我々がやろうとしているゲーム性に対して、PCとPS3で違いのない速度で入力できるものはどういうものだろうというところから考えて、そこに「FFXI」で好評だった機能を入れても矛盾のないものは取り込みましたが、基本の設計ではあまり意識をしていないです。あとは現行「FFXIV」の運営を通じて、たくさんの非常に良いフィードバックをいただけてるので、そちらをかなり重視しています。

――ちなみに「FFXI」をゲームパッドで遊んでいる方は結構多いと思いますが、「FFXI」準拠のキーアサインに変えたりはできるのですか?

皆川氏: 無理ですね。正直、いろいろと矛盾が出ると思うのです。「できるかも」とかいうとかえって無責任なので、現時点で「できない」が答えです。似た設定にすることはできると思いますが「FFXI」は通常では考えられないほど長い時間遊んできた方がいらっしゃいますから、「FFXI」準拠といって、無理矢理「FFXIV」で「FFXI」に似たUIを作っても、皆さんが満足の行くものにはならないと思います。先にも言いましたが、似ていますが、違うゲームですから。

吉田氏: やっぱり「FFXI」発売当時はMMORPGというものが、PCのゲームジャンルの中でもまだまだニッチなもので、それをわかりやすくするためにゲームコンソールUIに落とし込んだのが「FFXI」のUIだと思っています。発明だし、チャレンジも結果も素晴らしい。でも、今この時代は逆にコンソールのMMOがニッチな状態で、PCゲームの中でMMOは市民権を得たジャンルになったと思っています。

 じゃあ、いま世界市場を見た時にどっちのユーザー比率が多いのかというと、圧倒的にPCゲーマー、PCでMMOをプレイしてきた人の数の方が多い。たくさんの人を獲得しようと思ったら、マウス・キーボードのスタンダードを受け入れるしかない。なので、論理的に考えて、そのPCの所謂グローバルスタンダードなUIを採用するPC版新生「FFXIV」のマウス+キーボードは絶対条件です。そしてPS3版でもゲームパッドモードでもマウス+キーボードに比べ、不利なく遊べるようにという設計思想で作ると新生「FFXIV」のゲームパッドモードUIになる。無理に「FFXI」に合わせようとすると、今度は「FFXI」モードだと有利不利が発生するよというゲームになっちゃうと思うのです。

――難しいところですね。

吉田氏: はい。でもそれって、やっぱり論理破綻してると思うので。

――ちなみにPC版でもゲームパッドモードも選択できるということですが、どのように切り替えるのですか?

皆川氏: ゲーム開始時にキャラクターを作って、一番最初に操作方法を選んで頂きます。そこでゲームパッド操作モードか、マウス+キーボード操作モードなのか選択していただきます。選んだ操作モードによってハウツーで表示される画面やテキストも変わります。

――なるほど。途中で切り替えることは?

皆川氏: もちろん、できます。

――ゲームパッドモードのチュートリアルについて、もう少し詳しく教えてもらえますか?

皆川氏: マウス+キーボードに関してはずいぶん進んでいまして、最初の町を一通りクリアするところまでは、もう全部入っている状態です。パッドの方は今まさに操作の方を調整しているところなので、これからチュートリアルを作り始めますが殆ど同じ流れになると思います。

吉田氏: ゲームパッドモードのチュートリアルといっても基本的にはただ単に、チューチリアルウィジェット内の参考画面と文章が変わるだけなので、マウス+キーボードもゲームパッドもチュートリアルの流れは殆ど変わりません。ちなみに中村さんはどういったものを期待されていますか?

――とにかくUIが全然違うので、たとえばホットバーにマクロやアクションをどう入れるとか、PC版だとマウスでアイコンを動かすだけで直感的にできますが、PS3版だとそうも行きませんよね?

吉田氏: ああ、僕、「マクロのチュートリアルや、ドラック&ドロップなんかの説明はいらない」といってます。それは説明過多と思っていて今おっしゃったように、「ホットバーにドラッグ&ドロップできるのかな?」と考えること自体が、PCゲーマーというかゲーム慣れした人の発想なので、そこまでをインゲームのチュートリアルで出してしまうと「覚えることが多すぎだろこのゲーム」ってなっちゃうと思うんです。

 しかもそれをいつ出しますかという問題もある。PC版のドラック&ドロップは当然の機能としては最初から使えます。でも、序盤でその説明を出すとコンソール系のお客様は「え、何それ? わけわからない」となっちゃうし、遅れて出すと、「そんなの知ってるよ!」となっちゃうし。だから僕の答えは「出すな!」なんです。わかるプレイヤーの方は最初からやるし、試してみれば答えがすぐ出ます。逆に気付かない方はお友達に教えて貰ったり、リンクシェルやフリーカンパニーのスタッフに聞いても良いのです。開発が追加したチュートリアルリストを持ってくるのですが、「いらないよ!」って(笑)。

(後編に続く)

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(2012年 10月 11日)

[Reported by 中村聖司]