インタビュー

Switch2版&『東リベ』キャラ配信記念「餓狼伝説 City of the Wolves」インタビュー

月1キャラ追加は「できる限り続ける」。選択、実装の苦労をSNK本社で聞いた

【Switch2版「餓狼伝説 City of the Wolves」】
10月22日発売
価格:2,970円(STANDARD)

 実在のサッカー選手であるクリスティアーノ・ロナウドや音楽家のサルバトーレ・ガナッチの参戦、「ストリートファイター」や「北斗の拳」などの枠に囚われないコラボで話題に事欠かないSNKの対戦格闘ゲーム「餓狼伝説 City of the Wolves」。直近では「鉄拳」シリーズから、三島平八の技を使うミステリアスな少女・麗奈の参戦が発表され、3D格闘ゲームファンからも注目を集めている。

 10月22日にはNintendo Switch 2版の配信と『東京リベンジャーズ』よりマイキーとドラケンの2人の新キャラクターが追加となり、この盛り上がりのタイミングでSNK本社にて本作の開発陣にインタビューを行うことができた。

 開発の裏話やコラボ実現の経緯、さらに追加キャラクターの選定の基準など、興味深いお話を伺えたので、ぜひ最後まで読んでいただきたい。

左から、メインプログラマーの山田清範氏、Nintendo Switch 2版ディレクターの林竜也氏、ディレクターの近谷駿斗氏、サウンドディレクターの山添浩史氏、アートディレクターの山本哲也氏(以上SNK)、Switch2版への移植に協力したプログラマーの栗比真志氏、プログラマーの兼高空氏、代表取締役社長の松下正和氏(以上ヘキサドライブ)
SNK社内の様子
懐かしの筐体やハードなど、NEOGEOにまつわるアイテムが展示されている
会議室はキャラクターモチーフのものになっている。覇王丸やギースの他に、リョウや舞、庵の部屋などもあった

参戦キャラ候補はまだまだたくさん! 完全新規のキャラクターも!?

――10月22日にダウンロード版が配信されたNintendo Switch 2版についての特徴をうかがえますでしょうか。

近谷氏:まず、キャラクターなどはPS5版やPC版などと同じキャラクター数がいます。動作は60fps、外で持ち歩いて「餓狼伝説」をみんなでワイワイ対戦が楽しめます。皆さんが気になっているのはプレイフィールの部分だと思いますが、PS5やPCとほぼ同じ感覚で遊べるよう調整しています。

 Switch2版ならではの点であれば、amiiboにも対応しているので持ってらっしゃる方は1度試してもらえると。

本作のディレクターを務める近谷 駿斗氏

――Nintendo Switch 2版には舞のクラシックコスチュームが付いていますね。

近谷氏:クラシック舞については、1周年記念の番組で説明させていただいた通り、今作の舞はもともとヒールを履いていました。なのでそれをそのままクラシック舞に流用してしまうと、足がどうしても浮くという問題がありました。今回は、そこを解決しています。本作が発売してからもいろいろな方から以前の赤色のクラシック舞が使いたい、見たいという声をいただいており、どうにかできないかと山本さん(アートディレクターの山本哲也氏)に相談していました。

 実装について山本さんどうですか?

山本氏:頑張りました。本作のローンチ時は新デザインにしたのですが、忍衣装の要望がやっぱり高かったですね。新しい舞のイメージも定着できたかなというタイミングだったので、新たにクラシック衣装をコスチュームとして出すことになりました。

――ヒールの部分は具体的にどのように解決されたのですか?

山本氏:かかとが上がっていると歩幅などが変わるので、かかとを下ろした状態でも同じ距離だけ進むように、少しモーションを直す形でクラシック舞に適応させました。

近谷氏:モーションで直した箇所は結構ありましたよね。

山本氏:200ぐらいは直しましたね(笑)。

アートディレクターの山本 哲也氏
ヒドゥンギア発動時しか見られなかった舞のお馴染みのコスチュームが待望の実装

――他のキャラクターの追加コスチュームよりも実装するのに労力がかなりかかったと。

山本氏:移動値が変わってしまうので、ちゃんと合わせておかないとクラシック舞と通常の舞とで性能が変わることになってしまいます。なので調整は細心の注意を払いました。

山添氏:コスチュームが変わるとアートさんが一番大変なんですが、レザージャケットから着物のコスチュームになるんで衣擦れや足音を新たに設定して、サウンド面でも手が入っています。

サウンドディレクターの山添 浩史氏
通常コスチュームとクラシックコスチュームとで動く際の音が違うのだそうだ

――Nintendo Switch 2版配信のタイミングで『東京リベンジャーズ』とのコラボが行われておりますが、実装面や調整面などで「餓狼」のキャラとコラボキャラとで作る際の違いなどはあるのでしょうか?

近谷氏:通常キャラクターを作るときは、過去作にあったものをいかに現代風に表現するという部分であったり、eスポーツや大会などの部分を考慮しながらいろいろなものを加えていくことがテリーやロックといったいわゆる旧キャラの作り方です。今回のコラボにおいては、キャラクターが持つ雰囲気を最大限活かすようにしています。

 たとえばマイキーだったら蹴り技がとても強いというのがベースにあるので、戦いながらその点を感じられるようにしています。ドラケンは根性のあるケンカといいますか、パワフルで力強いという印象がありますので、その点を本作のREVアクセルなどのシステムに合わせたうえで表現しています。

 アート的には何かありますか?

山本氏:全部言われちゃいました(笑)。コラボですとIP・キャラクターをお借りしているので、モデリングなども原作やアニメなどの雰囲気をしっかり再現できるように作成しました。今回でいうと顔は特にそうですね。顔はどの角度から見ても原作の雰囲気を損なわないというところに注力しました。

 動きについても先ほどありましたようにマイキーはスピード系、ドラケンはパワー系となっています。「餓狼」のキャラとの違いとしては、パワーウェイブとかバーンナックルなどの派手なエフェクトがある技を持つ人たちではないので、そこをどうやって必殺技として落とし込むかを色々模索しながら作りました。

 エフェクトでも差別化を図りたかったので、マイキーであれば蹴り技が主体なので足に砂煙が入ります。キャラクターのイメージカラーも意識して、マイキーは赤、ドラケンはちょっと派手目なピンクのエフェクトが入ります。そういったイメージカラーも落とし込みながら作りました。

アニメの雰囲気を再現して、見事に「餓狼」の世界に落とし込んでいる
キャラクターが持つイメージカラーをエフェクトで表現

――いろいろなジャンルからコラボキャラクターが出てますが、このコラボで「餓狼」に興味を持ってくれたという実感はありますか?

近谷氏:今がSNSの時代で良かったのが、1つ検索をかければいろんな反応が見られることです。このキャラを使って戦って楽しかった、あの技がめっちゃかっこよかったなど、SNKのことを普段つぶやかない人たちもつぶやいてるところを見ると、やっぱりコラボって裾野を広げるんだなと。いろいろな方に楽しんでもらえていることを感じています。いろいろな挑戦ができることもプラスだと思いますし、他IPとのコラボを経て勉強することもありますので、やって良かったなと思っています。

――コラボ関連の話で、『東京リベンジャーズ』や「鉄拳」といったコラボが実現した経緯をうかがえますでしょうか?

近谷氏:『東京リベンジャーズ』は、長く続いている「餓狼」シリーズに対して、若い人や新しい人たちにも「餓狼」というものに興味を持ってもらうにはどうしたらいいんだろう? みたいなところをいろいろ考えながら選択しました。そのなかで、現代の漫画やアニメのコラボとして『東京リベンジャーズ』が良いんじゃないか? と決まりました。

 また、いろいろな方たちが支えてくれているという観点から見て「ストリートファイター」とコラボしたように、「鉄拳」ともコラボをしたいなと。昔、SNKからもギースとコラボしたことがあったので、そういったシナジーというか、楽しんでもらえるキャラクターが誰が良いかというところから選んでいます。

「鉄拳8」から麗奈の参戦が発表され、大きな話題を集めた

――『東京リベンジャーズ』からはドラケンとマイキー、「鉄拳」からは麗奈というキャラ選別はSNK側で行われたのですか?

近谷氏:まずはSNK側から提案しています。ただ先方にもルールがありますので、たとえばマイキーは女の子を殴らないというルールもあったりします。一方的に指名するというよりは、一旦こちらから提案をした後に、話し合いながらどのキャラクターにするかを決めていく、というイメージが1番近いと思います。

――それでいうと、マイキーはオッケーが出たということなんですね。

近谷氏:許してもらいました。ただ、原作が好きな人も少しは納得できるようなものも入れています。

山本氏:ヒドゥンギアに、女性キャラは殴らないという設定は活かしています。格闘ゲームという枠の都合上プレイ中で全く殴らないというのは難しいんですが、どこかでそういうネタは仕込めたらなと思って盛り込んでいます。

メインプログラマーの山田 清範氏
男は容赦なく殴り倒すマイキーだが、女性を殴らないという設定がゲームにも盛り込まれている

――『東京リベンジャーズ』のコラボをきっかけに初めて格闘ゲームを触るユーザーにメッセージをいただけますか。

近谷氏:本当に初めて触る人に向けて言うと、格闘ゲームってやっぱりどうしても難しかったり、難しいことができて初めて一人前みたいなイメージがあると思うんですが、その辺のことは気にせずに、自分で使っていて如何に楽しく気持ちいいかというところだけを見るのがおすすめです。なので、まずはキャラクターを触ってみてもらえたらなと思います。

 本作にはスマートスタイルという操作方法があって、ボタンを連打しているだけでまずは敵を倒せるようにはなりますし、そこからさらにシステムに触れていってもらって、これは面白いと思ったら難しい要素に飛び込んでいくことも1つの楽しみ方だと思います。まずは「こんなキャラクターが出たんだ1回触ってみよう」で触ってほしいなと。そこから、「楽しいから他のキャラも見てみよう」となってくれるのが1番嬉しいですね。

山添氏:今回はアニメの作中で使われている曲をジュークボックスに実装してるんですよ。「餓狼」ユーザー視点からすると暴走族の2人がやってきたって視点になると思うんですが、『東京リベンジャーズ』のファンからしたら、自分たちの好きなキャラクターであるマイキーとドラケンが違う世界に参戦して、馴染みのあるアニメのアガる曲がかかって、それをバックにその世界の人たちと戦う、という視点で楽しんでもらえるんじゃないかなと思ってます。

――『東京リベンジャーズ』まで来ると、他のIPの可能性がファンの中で広がると思うんですけど、今後も期待していいんでしょうか?

近谷氏:そうですね。想像するのは自由ですからね……(笑)。これが来たら楽しいな、と予想していただいて、もし当たったらすごいですし、当たらなかったとしても、将来的に絶対ないとも言い切れません。このキャラクターで戦ってみたいと想像しながら遊んでいてもらえると、待ち方的には楽しいんじゃないかなと思います。

 シーズン3のシークレット枠で出たケンシロウであったり、「ストリートファイター」といったコラボがあったんで、あの人が来るだろうみたいなファンが想像をしてるのも僕たちは見ていました。「リベンジ」というキーワードからヒントを得ながら「このキャラじゃないか?」と言っている人たちもいて、鋭い人もやっぱりいるなと思ったりしていましたね。

――作品の枠にとらわれないコラボIPといった印象ですが、SNK作品のキャラですとMr.カラテが年齢を重ねたロバートなど、世界観も意識していると感じています。SNK作品の中では何か超えるべきではないラインがあったりするのでしょうか? たとえば、八神庵が参戦するなどは難しいですか?

近谷氏:将来的に絶対にない、あるいは可能性があるみたいな話はできませんが、基本的には武器を使うキャラクターはあまり入れない方がいいんじゃないかな? みたいなのは「餓狼」の中のルールとしてはあります。「月華の剣士」とコラボするのなら「サムライスピリッツ」の方がシナジーはあると思います。

 また庵も出せはするのですが、「KOF」との垣根がなくなっていくみたいなところもあります。そこをどう捉えていこうかというのは、今後考えていくべきことですね。

「KOF」と「餓狼」の棲み分けのため、SNKキャラクターの参戦は慎重に行っているようだ

――コラボキャラに目が行きがちですが、ラオコーンが参戦したのも結構驚きでした。参戦の経緯などをうかがえますか?

近谷氏:ラオコーンは、ギースのアニメが大張監督(アニメーター・監督の大張正己氏)の主体のもとでできるという話が上がったときに、大張監督が昔SNKの「餓狼」のアニメを作っていたという繋がりでヒントを得ました。

 「餓狼」はボスキャラクターがあまり多くはなく、カインなどのほかにもっと悪いキャラクターがいないかと探したときに、ラオコーンという存在が非常に大きいなと。今回「餓狼」のアニメに大張監督がいるので、ぜひ出せないかと打診してオッケーをいただけての参戦となりました。

 当時映画を観ていた人たちはテリーとラオコーンが戦っているところを見たいという夢があったと思うんですよ。かなり時間がかかりましたが、その夢を叶えて喜んでもらえたらと。

――発表されたときのユーザーからの反応などはいかがでしたか?

近谷氏:「ラオコーンだ!」という反応はもちろんいっぱい見ましたし、「どうすんのやろ?」という声もありました。映画の当時の話やスーリアの話であったり、映画を知っている人ほどラオコーンとどうやって戦って、どうやって勝つのかという部分は期待してもらっているなというのは見ていて感じました。

1994年に公開された映画作品から参戦のラオコーン。ゲームに初参戦ということもあり、昔からの「餓狼」ファンに衝撃が走った

――ラオコーンまでも参戦するなら、ホワイトとかマイナーなキャラもありえそうですね。

近谷氏:一概にそうとは言えませんが、基準としては、「餓狼伝説」のキャラクターを1回全て並べて、まずローンチで出ているキャラクターと前作に出ていたキャラクターは割と優先度が高くなっています。

 一方で、「KOF」で常に出てるキャラクターよりは別のキャラクターが優先されます。なかでも、たとえば3D化が初めてというキャラクターですね。その後に、「KOF」に出てるけど有名だったり、待たれているキャラクターがいれば参戦の列に戻して……という作業をしています。

 なのでマイナーキャラを押していこうというよりは、どんなキャラクターをみんなが待ってるだろうか、などをとくに考慮して出していますね。リックとかもダックとかもそうですが、どのキャラクターもすごい熱量で参戦希望の声は届いています。

――なるほど。それではまだまだ参戦キャラの候補はたくさんあるといった感じでしょうか?

近谷氏:そうですね。それこそ秦兄弟であったり、秦の秘伝書関係の人であったり、女性キャラクターが少ないので千堂つぐみや李香緋だったり、さっき言っていた悪役がもう少し欲しいとなったら山崎など、いろいろなキャラクターの候補はあります。悩みどころは「餓狼伝説3」から考えると10年経っているので、タン先生って今何歳なんだろう? と。さすがにヨボヨボのおじいちゃんを出して戦ってもなぁ……みたいな考え方はありますね。

――現状、追加キャラクターはコラボキャラや過去作のキャラが中心といった感じですが、完全新規のキャラクターなどは考えているのでしょうか?

近谷氏:まずローンチ時点で出させてもらったのがジョーの弟子のプリチャと、カインのところにいたボックスの2人がいて、話の中で牙王などのキャラクターもいろいろいるので、新しいキャラクターたちを表にどんどん出していきたいなっていう気持ちもあります。

歴代キャラクターと新規キャラクター。どちらも参戦が期待できそうだ

月1のキャラクター追加とアップデートは出来る限り続けていきたい

――Nintendo Switch 2版やコラボ、新キャラや新コスチュームなどたくさんのトピックスがあり、かなり開発が大変かと思うのですがいかがですか?

近谷氏:大変なことはいっぱいありますね。大変とちょっとベクトルが違うんですが、今世に出ているものと今作ってるものがどんどんズレていくので、そこで混乱するようなことがありますね。今これが出ているから、将来的にやりたいことはどのタイミングでやろうか、みたいな逆算がとくに大変です。

 今求められているものがあったとしても、入れようと決まったとして何ヶ月後にできるだろう……みたいな。その辺りの時間のギャップは苦労というか毎回考えさせられますね。

山田氏:本当に時間がもうね(笑)。如何に早く作れるかを常に考えつつ、でも失敗はできないというのが常に付きまとっている状態なので、1日1日を大事にしていますね。技術的な話ではないですけど。

近谷氏:キャラクターの追加だけに注力すればもうすこし楽なのかもしれませんが、僕らが「このシステムとこのシステムを入れたいんだけど」みたいなことを言い出すことも多いので(笑)。

山田氏:自ら追加するんですよね(笑)。これを期間内にやれるの? という状況で、なんとか続けていっているところです。

山本氏:アートも同じくで、やはり月1でとなると1バージョン1バージョンのスケジュールがめちゃくちゃタイトな進行管理になります。それが毎月繰り返されていて、スタッフの頑張りもあってなんとか配信できているという状況です。キャラ配信以外の部分でもアートの素材が必要になったり、新仕様が必要というのもあるので、とにかく1日を大事にやっていく感じですね。

林氏:Switch2版の視点になるんですが、毎月アップデートで1キャラクター追加という過密なスケジュールを組んでいる中、Switch2版が加わるにあたって、本番で使用しているUnreal Engine 5のバージョン更新が入っているんですね。

 これを月1アップデートの合間にエンジンを更新するというのがなかなかに大変な作業になりました。Switch2版の開発と並行して大元の方は開発を進めていくといった感じで、その間にUIの大幅改変があったり、進めた分がまた巻き戻るというのを繰り返しながら開発していったところが苦労しましたがやり甲斐もありました。

山添氏:月1アップデートは想像の通りめちゃくちゃ大変で(笑)。様々なものが並行して走っているので、それぞれで差異が出ないようにするのも大変ですね。月1配信というのは決まっているのでやらないといけない。それ以外にそれぞれのバージョンで試作もあり、こなしていくだけでヘトヘトなんですが、「それ以外にも何かできへんか?」みたいなものも心がけようともしています。

 たとえばブルー・マリーの配信のタイミングで、別に誰にも言われてないのに歌を乗せようと思って、これはサウンドチームが自主的にやりました。もちろん普段の作業もしながらなので、「こんなめちゃくちゃ大変なことをなんでやるって言い出したんやろ……」とも思ったんですが、配信されてユーザーが喜んでくれたら、「やっぱりやった甲斐があったな」と思いました。少しでもサウンド面から何か貢献できないかというのは、同時に考えるようにしています。

Nintendo Switch 2版のディレクションを務める林 竜也氏
ネオジオCD版「リアルバウト餓狼伝説スペシャル」で初めて聴いた、あの「Blue Mary's BLUES」が新録で収録されていたのには感激した

――過酷なスケジュールですが、慣れてきたといった感じでしょうか?

近谷氏:慣れてきたかなぁ……? 背中にずっと炎があって走っている感じで、熱さは全然変わらないけど止まったら焼かれるみたいな感じの気持ちでいます(笑)。

――このペースのアップデートはいつまで続けられるのでしょうか?

近谷氏:出来る限りやりたいと思っています。やはりいろいろなキャラクターを見たいと言われるのが1番大きくて、それを1年に何体って縛ってしまうと「あのキャラは何年かかるの」となりますから。

――キャラクターが増えれば増えるほどゲームバランスの調整なども大変になってくると思うのですがその辺はいかがでしょうか?

近谷氏:それはもう頑張るしかないかなと。別に楽になるツールが生まれるとかもないですし(笑)。

――バランス調整におけるポリシー的なものはあるのでしょうか?

近谷氏:eスポーツの存在は意識しています。キャラ追加のスケジュールが大体決まったとしても、その月に大きな大会があったりするとそこに被らないように最大限配慮します。EVOなどの大会のスケジュールも見ながら、アップデートの規模感や調整内容を決めていくみたいな感じです。

――大きな大会が無いときには大きな調整が来るみたいな感じなのでしょうか?

近谷氏:選手が会場に向かう飛行機に乗っている間にバランスが大きく変わったとなったら、「これまで練習してきたのに……」となりますよね。ですが、大会が無い月というのがじつは無くて。なので塩梅とルールを見ながらタイミングを決めています。調整チームの方たちが日頃から大会の動向を見て、どのキャラが強い弱いみたいなデータを集めて、常々話しながら調整をしていると思っていただければと。

――さらに、これだけ大変なスケジュールでアニメーションを出しているのも驚きですね

近谷氏:アニメはアニメでチームがあって動いていて、この新キャラクターが出ますよというのを最大限アピールできるような形をとっているイメージです。

山添氏:普通の収録をこなすだけでも大変なのにそれが月1あり、テキスト量も膨大なので収録時間もかかり、そこにアニメの収録もあり、収録だけでえらいことになっています。サウンドもそうですし翻訳班も膨大な作業をこなしています。だけど、アニメもやはり喜んでもらえるので、やるだけの価値はあると感じています。

林氏:ショートムービーは1番ギリギリですね。リリース発表の前日に仕上がって来るとかもありますね。

大張監督によるアニメーショントレーラーが定期的に配信され、ファンを喜ばせている

本編のアップデートと並行して進める、Nintendo Switch 2への移植作業

――今回、Nintendo Switch 2版の移植を主に担当されたヘキサドライブですが、移植にあたって苦労された点などありましたでしょうか?

栗比氏:1番最初に苦労したのは、先ほども話がありましたが、もともと使用していたUnreal Engine 5のバージョンがSwitch2に対応していなかった点です。まずはSwitch2版に対応できるバージョンまでアップデートしよう、という話になりました。

 ただ、そのアップデートでいろいろと問題が起きて正しく動かないことがあり、解決するために結構時間をかけて対応したのが大変だったと思います。やっと対応が終わったと思ったら、本編の方のアップデートが進んでいるので、その差分を埋めなくてはならなかったりして、そちらも苦労した点ですね。

兼高氏:運営型のゲームなので、ゲームバージョンが上がるにつれて、少しずつ弊社での開発環境と差分が出て、追いつくようにこちらもちょっとずつ対応して、想定しない挙動になっているというところは1つずつ開発側でもチェックをしながらバグを潰していったのですが、ここは苦労しました。

栗比氏:Switch2で動くようになったものの、そのときは結構低いフレームレートだったんですね。そこからフレームレート60fps厳守で動く対応もしました。

 ただ、本編の負荷軽減の対応とSwitch2版がマッチしない部分があり、一部Switch2専用に変えて対策したんですが、これは本編で動いている処理に影響を与えないように入れないといけません。そこは工夫しながら、他のプラットフォームとクロスプレイしたときにもちゃんと動いて同じ体感で遊べるようにしました。

兼高氏:60fpsで動くことは絶対で、だからといって画面がボケボケの解像度の低い状態で出していいわけではありません。既存の動的解像度などのグラフィック処理に加えて、今回Switch2版ではDLSSという描画したものに対してアップスケーリングを加えて描画を綺麗にするという機能も使って、既存のプラットフォームの見た目と比べ合わせながら調整するといったところも新たに手が加わっています。

――本編のアップデートを追いかけながら対応を続けて、最終的には追いついたと。

栗比氏:そうですね。本編とSwitch2版の対応を同時に出来るような形にしました。

松下氏:現場でもずーっとゲームをプレイしていましたね。

兼高氏:自分は「餓狼伝説 City of the Wolves」がリリースされた頃からプレイしていたので、今回SNKさんから移植案件が来たときは「やった! 自分の経験が活きるかもしれない」と思いました。移植ではあるけれども、格闘ゲーマーとして大事にしたい部分は自分の意見を開発メンバーに伝えながら進めていった部分はあります。

 ユーザー目線で考えると、60fpsがちゃんと出て、出先でトレーニングモードで研究できるようにしたいわけです。Switch2版だからといってプレイフィールが変わってしまうといけないので、そこは格闘ゲーマーとして大事にしました。

ヘキサドライブのプログラマー栗比 真志氏
ヘキサドライブのプログラマー兼高 空氏
ヘキサドライブ代表取締役社長の松下 正和氏

――リリースからプレイされていたとのことで、Nintendo Switch 2版でプレイフィールを損なわないようにするのが大変だった部分などはありましたか?

兼高氏:ギースとクラウザーはちょっと苦労しました。とくにREVアクセルの残像が出たときに処理が重たくなる。今回Switch2で全キャラクターを全ステージでそれぞれパフォーマンス計測をしたのですが、そこで処理上の問題が発覚したのがギースやクラウザーでした。対応は、リードプログラマーの栗比主体でSNKさんと相談しつつ進めていきました。

栗比氏:検証するうえでいろいろ試したんですが、ギースとギースの2人を並べたときにREVアクセルを起こすと60fpsを保てなくて54fps程度まで下がっていました。特にSwitch2の携帯モードのときは少しスペックが落ちてしまうんですが、外でも遊べるように60fpsを守るため、いろいろなステージで戦わせて60fpsで安定するまで調整をしました。

兼高氏:かなり苦労したのですが、REVアクセルを使ったときに青っぽいフィルターがかかり、幸いにもそこで3Dモデルのポリゴン数を下げても見た目に大きな差異がないことがわかりました。その対応で再度ギースやクラウザー以外も全キャラREVアクセルをやってみて、見た目に変化がないかを全てのステージで試して、重たいステージでも60fpsが出るかも合わせて確認することができたので、最適化を入れました。

林氏:後発のプラットフォームなので、キャラクターのデータなどのアセットを変更すると運営のアップデートに影響が出ます。なので、できるだけプログラムの処理で改善していくという中で頑張っていただきました。

さまざまな工夫と努力により、大元と遜色のない仕上がりになったようだ

――Switch2は、ジョイコン1本での操作やプロコン、携帯モードなど他のハードよりも操作できるデバイスの選択肢が多い中、格闘ゲームを移植するというのは難しいと思うのですがそういった部分で頑張ったところなどありますか?

兼高氏:他プラットフォームですと、コントローラーをそのまま持って親指にボタンが4つあって、人差し指にそれぞれボタンが計4つあるという状態かと思います。Switch2版ではおすそわけプレイに対応するのでJoy-Conを横持ちにすることで人差し指周りのボタンが1つ減ってしまいます。

 本作はアーケードスタイルとスマートスタイルの2種類の操作形態があり、アーケードスタイルの方は特に問題なくボタンの数は足りたんですが、スマートスタイルがボタンの数が足りません。

 そこでおすそわけプレイをするユーザーがどういったユーザーかな? といったところを考えて、簡単にコンボが出せるスマートコンボボタンは絶対必要だし、REVブロウボタンも必要といったところから選定した上でのキーアサインになっています。ワンボタンで出せなくなった部分もありますが、本編のゲーム同様にボタンコンフィグから設定を変えられるので、この辺りはプレーヤーが自由に変更して操作しやすい配置を探すことを可能にしております。

――今回の移植をヘキサドライブにお願いした決め手などはどこだったのでしょうか?

林氏:当時Switch2は情報がクローズなところがあったので、その中でできる開発会社を探すことがまず条件でした。Switchの開発経験も豊富でしたので任せて安心だろうというところでお願いしました。

松下氏:ありがとうございます!

林氏:本人を前にして言うと照れますね(笑)。

――実際にお話が来てどうでした?

松下氏:SNKさんとは初めてのお仕事で、格闘ゲームの開発も初めてでした。社内には格闘ゲーム好きが多いので、我々にとってもとても良い経験になると思い、本当に嬉しかったですね。

――SNKサイドへの質問なのですが、PS5やPCで既にリリースされている中で改めてSwitch2で発売しようとしたきっかけは何だったのでしょうか?

林氏:新規ユーザーの獲得というのが1番の目的です。PS5とXBOX、PCに比べて、Switch2のユーザーは若いユーザーが多いので、そういう層にアピールするためにもやっぱりSwitch2の展開は重要かなということで発売が決まりました。

――最後に、すでにプレイしているファンやSwitch2版から入るユーザーに向けて一言いただけますでしょうか。

近谷氏:携帯機で遊びたいという意見は発売した当時からよく耳にしていまして、ようやくSwitch2で出せるようになりました。ぜひいろいろ触っていただけたらなと思います。

 初めての格闘ゲームだという方も、難しいみたいな印象を持たずに一旦触ってみて、友達と一緒に戦ってみたりして楽しんでいただけたらと思います。クオリティもすごく高くて楽しめると思うので是非よろしくお願いします。

――ありがとうございました。

最新機材も揃う。今後の情報にさらに期待!

 新キャラクターの追加とアップデートを毎月行うという、常識では考えられないスケジュールで歩み続けている開発陣。開発の現場も少し覗かせていただいたが、こちらまで熱気が伝わってくるほどの空間であった。

 サウンドスタジオはもちろん、最先端の機材を揃えたモーションキャプチャースタジオまでも社内に構えており、最高の環境で「餓狼伝説 City of the Wolves」や、まだ未発表のSNK最新タイトルを開発しているのだそうだ。

 リリースから2年目に突入した本作だが、枠に囚われないIPとのコラボやNintendo Switch 2版のリリースでさらに幅広い層から注目を集めそうだ。ユーザーを驚かせ続けるであろう「餓狼伝説 City of the Wolves」の今後の展開からも目が離せない。