インタビュー
SteelSeries、次はDPI・ポーリングレート設定の自動化マウス? エティシャム・ラバーニCEO独占インタビュー
“ゲーマーの問題解決”を掲げる老舗ブランドの次の一手とは?
2026年2月13日 00:00
本稿では、ゲーミングデバイスブランド「SteelSeries(スティールシリーズ)」CEOのエティシャム・ラバーニ氏へのインタビューをお届けする。
SteelSeriesは、2001年に創業したゲーミングデバイスに特化したメーカー。最近では世界初となるハイレゾ認証ワイヤレスゲーミングヘッドセット「Arctis Nova Elite」を2025年11月に発売するなど、マウスやキーボードも含めて様々なゲーミング製品を発売している。
2026年は、SteelSeriesにとって25周年となる節目の年。CEOとして10年以上、ゲームデバイス業界では35年以上のキャリアを持つラバーニ氏に、SteelSeriesの現在地と今後の展望を伺った。
日本市場は“最大規模”。現在は「マウス」の問題解決に取り組む
――まず日本のゲーミングデバイス市場について、どのように見ていらっしゃいますか。
ラバーニ氏:日本市場は世界で見ても最大規模であり、大事なマーケットのひとつだと思っています。イギリスと比較した時、その市場規模は約3倍あります。また興味深いのは、日本は世界のゲーマー人口のわずか2%を占めるに過ぎない一方で、世界のゲーム収益の9.1%を占めています。
そうした色々な要素を見ても、日本市場は非常に重要であり、弊社としても大切にしています。
――日本市場ならではのユニークな点や、海外との違いはありますか。
ラバーニ氏:日本はあらゆる面で違う部分はありますが、特にプレイされるゲームのジャンルに大きな違いがあると思います。アメリカやヨーロッパ、イギリスではFPSが非常に人気です。人と競争したり、グループや友人と一緒にプレイしたりすることが好まれます。
一方で、もちろん日本でもFPSは人気がありますが、どちらかというとRPGの方がより人気が高い傾向にあります。日本のゲーマーは、人と一緒にやるよりも、一人でストーリーを体験したいという特徴があるのだと思います。ファンタジーの世界に入り込み、キャラクターが何を感じているのかを理解し、物語にどれだけ没入できるのか。その点が、日本のユーザーにとっては非常に重要だと感じています。
――ありがとうございます。ただその一方で、今の日本では円安などの影響でゲーミング製品の価格が上昇しています。この状況をどう見ていますか。
ラバーニ氏:この問題は会社としても認識しています。コストの上昇は日本だけでなく、アメリカやヨーロッパなど世界中で起きています。ゲーマーたちは、価格が高くなった理由や購入するだけの納得できる理由を求めますし、そうでなければ「待つ」という判断をするはずです。だからこそ、私たちは価格に見合うような、価値のある製品を開発すべきと考えています。
――現在の市場において、“SteelSeriesらしさ”はどのような点にあると考えていますか。
ラバーニ氏:実は弊社は今年で25周年を迎えます。SteelSeriesがユニークなのは、他社とは違う商品を作る点にあります。過去の話になりますが、「ゲーミングヘッドセット」というカテゴリーそのものを最初に作ったのがSteelSeriesでした。また最初のメカニカルキーボードや、キーボードでのアクチュエーションポイント調整機能を初めて導入したのもSteelSeriesです。
私たちは決して新しい技術からスタートするのではなく、常に「今、ゲーマーはどんな問題に直面しているのか」という問いからスタートします。その問題を解決しようとする過程で、新しい技術に出会うのです。
先日発売した「Arctis Nova Elite」も、世界初となるハイレゾ認証のゲーミングヘッドセットです。カーボンファイバードライバーや、ハイレゾ音源用チップセットを搭載するだけでなく、ベースステーションを介してPC、プレイステーション、Xboxの音声入力切り替えがよりスムーズに行なえるようになっています。
新製品の開発には4〜5年かかることもあり、「なぜもっと早く出さないのか」と聞かれることもありますが、他社とは違う、本当に良いものをつくるために、時間をかけて開発しています。
――“ゲーマーの問題解決”がすべての開発のベースになっているということですね。では、現在のゲーマーはどのような問題を抱えていると考えていますか。
ラバーニ氏:多くの分野で、多くの問題があると思います。ヘッドセットについては先日発売したのでここでは多くを語りませんが、現在3〜5年かけて開発している製品に、たとえばマウスがあります。マウスにも良い製品が数多くありますが、まだ「自分のために作られた、自分に合ったマウス」が存在していないと感じています。
ちなみに、あなたはマウスでゲームをするとき、どのような持ち方をしますか?
――私は「かぶせ持ち」です。
ラバーニ氏:なるほど、かぶせ持ちですね。マウスは、ゲーマーによって「つかみ持ち」だったり、「つまみ持ち」だったり、あなたのように「かぶせ持ち」の人もいます。大きく3種類あると考えていますが、ここでの問題は、どの持ち方にも対応できるマウスはまだ存在していないのではないか、ということです。
ゲーマーは、1つのタイトルだけでなく多くのゲームタイトルをプレイすると思います。そのとき、ゲームによって最適な持ち方が変わってくるのではないか、というのがひとつ。
また、タイトルによって最適なDPIやポーリングレートの設定が変わってくるはずです。自分にとって最適な設定を理解し、ゲームに合わせてひとつひとつ調整しなくてはならないのが現状ですが、ここを自動化して解決したいと考えています。
――なるほど。ということは、次に出てくる製品はマウスになる……という理解でいいでしょうか?
ラバーニ氏:HA HA HA(笑)(特に返事はせず、ただただ笑っている)。
製品開発は本気の喧嘩もする。ビジネスを超えた情熱のブランド
――少し話題を変えますが、開発を続ける中で、ブランドとしての変化はありましたか。
ラバーニ氏:2001年の設立当初は、eスポーツの選手が勝てる商品を作ることが目的でした。SteelSeriesが一躍有名になったのは、「CS:GO」の大会です。ある選手がトリプルヘッドショットを決めたのですが、その時使っていたのが弊社のマウスパッド「Icemat」でした。それで一気に、SteelSeriesの知名度が上がりました。
それ以来、プロ選手を中心に開発してきましたが、現在はゲームがeスポーツだけのものではなくなっています。中にはリラックスのために、夜の時間にゲームを楽しみたいというライフスタイルの方も増えました。そのため、現在はeスポーツ選手だけでなく、すべてのゲーマーに向けた製品開発を行うブランドへと変化しました。もちろん、現在もeスポーツチームとの商品開発などの取り組みは継続しています。
――ご自身もゲームがお好きだと伺いました。最近気に入っているゲームはありますか。
ラバーニ氏:個人的には戦略系のRTS(リアルタイムストラテジー)が好きで、戦うだけでなく考える要素のあるゲームが好きです。最近ハマっているのは「Tempest Rising」(2025)です。また、RPGも好きで「ディアブロIV」(2023)もプレイします。実は昔、Activisionに在籍していた頃に「Vampire: The Masquerade - Bloodlines」(2004)というタイトルの開発に関わったこともあり、そういったジャンルが好きなんです。
――最後に、CEO就任から10年以上が経ちますが、現在のプロダクトや会社に対する思いをお聞かせください。
ラバーニ氏:私は以前他社にいましたが、SteelSeriesに来て本当に素晴らしいと思っているのは、社員が皆、情熱的なゲーマーであることです。
私たちは自分自身のことを「スティールヘッズ」と呼んでいるのですが、彼らはゲームが大好きで、他のゲーマーのことも真剣に考えています。だからこそ、製品開発の際には、お互いに激しく意見をぶつけ合い、喧嘩もします。そうした情熱が、良い製品を生み出すことに繋がっていくのだと思います。「スティールヘッズ」にとって、製品開発は単なる仕事ではなく、情熱の結果なんです。それが、私がこの会社に10年以上在籍している理由でもあります。
――今後も、素晴らしい製品に出会えることを期待してもいいでしょうか?
ラバーニ氏:100% YESです。
――楽しみにしています。ありがとうございました。






































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