インタビュー

羊蹄山に感じた“寂しさ”が篤を生み出した。「ゴースト・オブ・ヨウテイ」アートディレクターJoanna Wang氏インタビュー

【Ghost of Yotei(ゴースト・オブ・ヨウテイ)】
10月2日 発売予定
価格:
スタンダードエディション:8,980円
デジタルデラックスエディション:9,980円
コレクターズエディション:31,980円

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントより、10月2日に発売予定のPS5用アクションRPG「Ghost of Yotei(ゴースト・オブ・ヨウテイ)」。本作は、「Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)」の続編にあたるタイトルで、前作から329年後の蝦夷地(現在の北海道)にある羊蹄山周辺を舞台にした作品だ。今回は、女性キャラクターの篤が主人公として新たに登場。「羊蹄六人衆」への復讐を果たすという物語が描かれている。

 リリースに先駆けて、開発元のSucker Punch Productionsで本作のアートディレクターを務めたJoanna Wang氏にインタビューを実施。同氏は「Ghost of Tsushima」でもリードアーティストとし武器やアクション面を担当してきたほか、この「Ghost of Yotei」では全体のアートディレクターを務めている。今回は特にゲームのビジュアルやアート面に関して、どのようなところに力を入れてきたのかお話をお伺いした。

Sucker Punch ProductionsアートディレクターのJoanna Wang氏
「ゴースト・オブ・ヨウテイ」
【『Ghost of Yotei』 - State of Play Gameplay Deep Dive [日本語 - JAPANESE]】

羊蹄山の壮大な風景と主人公・篤のストーリーが融合!

――大ヒットした「Ghost of Tsushima」の続編ということで、本作の開発をスタートするにあたり、最も注力したポイントを教えていただけますか?

Joanna Wang氏: まずは、プレイヤーの皆さんに、今まで「Ghost of Tsushima」を愛してくださってありがとうございますと感謝を伝えたいですね。前作から継続した部分に関しては、シリーズのビジュアルアイデンティティといいますか、アートスタイルはさらに強化していきたいという気持ちがありました。

 まるで生きている絵画のように、非常に鮮やかな色味やドラマチックな照明、そして自然を表現するスタイルを、さらに強化することに注力しています。このシリーズはリアリズムを追求するというよりは、プレイヤーの感情を表すところにも力を入れた作品です。非常に映画っぽくミニマリストなところもありますが、そうしたアートスタイルに特に注力しています。


――アート面でいうと、前作にもあった「黒澤モード」に加えて、今作は新たに「三池モード」や「渡辺モード」などが追加されています。こちらのモードが追加された理由を教えていただけますか?

Joanna Wang氏: これは「Ghost」シリーズの大きな目的のひとつですが、プレイヤーに自分の一番お気に入りの時代劇の中に入って生きているような感覚を体験していただきたいという思いがありました。そのため、一作目の「Ghost of Tsushima」で黒澤プロとコラボができたことは、本当に光栄に思っています。

 そして今回、今までは私たちをインスパイアしてきた他の監督さんたちにもオマージュをしたくて、こうやって正式にコラボが実現できたことに対して非常に嬉しく思っております。

――今作では様々な武器や様々な装備が登場するほか、アクション面でも強化されている部分があると思います。その中で、とくにビジュアル的に注目してほしいかところがあれば教えていただけますか?

Joanna Wang氏: 今作では「Ghost of Tsushima」のシステムをさらに強化しており、深堀りしたかったというのがありました。新しい武器システムによって、プレイヤーの好みのスタイルでプレイしていただけるようになっています。また、自分のレベルにあった難易度で遊ぶこともできるので、プレイスタイルに対する自由度がさらに広がっていると思います。

 ビジュアル面に関しては、主人公の篤が持っている刀の唾には狼の模様が付けられています。その唾は、篤自身と彼女の弟、そして幼少期を象徴しているものになっています。それを彼女が常にリマインダーとして持っているというところも、一番注目してほしいポイントですね。


――先日公開されたトレーラーを拝見しましたが、いずれも日本の美を感じさせるような風光明媚な映像を楽しむことができました。実際に本作を開発するにあたり、複数のポイントをロケーションされたそうですが、舞台に北海道の羊蹄山を選んだ最大の決め手はどこだったのでしょうか?

Joanna Wang氏: 羊蹄山を選んだという部分に関しては、北海道を象徴する非常に有名な場所であり、実際に私も現地に足を運んだこともあります。そこで洞爺湖から望む羊蹄山を見たときに、本当に完璧な形をしていたんです。上に少しだけ雪がかぶっている状態で、それがさらに洞爺湖の中に同じ形で反射される風景になっており、本当にマジカルというか神秘的だなと感じました。

 それと同時に、そびえ立つ大きな山を見ながらある意味寂しく感じてしまったところもありました。そういった寂しさというのが、今回の主人公である篤のストーリーにも繋がっています。篤は一匹狼ではありますが、彼女は決して負けません。非常に力強い武士でもあるため、そうしたところも羊蹄山と重なるのかなと感じています。

 その篤の実家が、羊蹄山のふもとにあります。裏庭から羊蹄山が見える場所ですが、それを毎回見るたびに彼女の家族や幼少期を思い出させるようなものにもなっています。そうした意味でも、今回のロケーションと彼女のストーリーを全部繋げることができました。


――現実世界の北海道では、四季の移り変わりでも景色が大きく変化します。本作はダイナミックに天候エフェクトが変化するそうですが、例えば季節や時間帯によって見た目が変わってくるのか、それとも何か特定の場所に行くことで冬のような景色になるのか、どういうような作りになっているのでしょうか?

Joanna Wang氏: 北海道は日本の他の場所とはまた違う、特別なところだと思っています。まず、非常に広大な景色があります。遠くに地平線が見え、そして縦方向もエンドレスに広いと感じました。そうしたところを表現するために、今回は前作とは異なる方法でマップを構成しています。

 それぞれのリージョンには異なる性格が設定されており、特殊な季節を感じたり、あるいは色味で表現していたりします。南には春の景色。桜が散って、地面にも花びらが落ちておりピンク色に染められています。また、ミストを感じるようなところがあったり、夏の景色がある場所では竹やぶがあって深い緑を感じさせてくれます。どんどん北の方向に進んで行くにつれて、秋の紅葉や明るいオレンジ、黄色が目に飛び込んできます。

 そして一番北にたどり着くと終わらない冬のような景色があり、真っ白な世界が広がっています。そこに一点だけあるのが、いつ風に吹かれてしまうかわからない真っ赤なもみじです。このように、「Ghost of Yotei」の世界は非常にダイナミックな作りになっています。

 今作では、日時や季節を感じさせることによって各リージョンにアイデンティティを持たせ、プレイヤーが今どこにいるのかすぐに分かるような状況にしたいと考えました。プレイヤーは、前作よりもさらに自由度が増した探検ができるようになっています。そうした自由があるからこそ、リージョンごとのアイデンティティが重要になってくると考えました。


――ちなみに、今作のマップの広さは前作と比べてどのくらいになるのでしょうか?

Joanna Wang氏: マップの大きさに関しては、「Ghost of Tsushima」とだいたい同じぐらいです。しかし、前作よりもさらにオープンで野性的であり、自由を感じさせるためにいろいろな工夫をしており、距離を感じさせるところやバラエティ豊かな森も用意しています。

――開発側で特にここを見て欲しいといったオススメのスポットはございますか?

Joanna Wang氏: タイトルにもあるように羊蹄山が私の一番気に入りスポットです。山の一番上まで登っていただけると、雲海が自分の足元に見えます。そこから、ゲーム内のいろいろな方向の景色を眺めることもできます。

 その場所にずっと立っていると、昼から夜になるという時間の変化も体験することができます。そして夜になると、オーロラが見えてきて、さらにそのまま立っていることで日の出になります。さらに、遠くに雲が飛んでいく様子や、山の上から渓谷の方に風が吹いていく様子も見ることができます。

 私から見ても、各チームのみんなが作り上げたアートスタイルがどのように融合しているのか、細かいところまで気を使ったところや、みんなで協力して作り上げた世界が一気に見られます。そうしたところが、自分にとってすごく意味のある場所でもありますし、プレイヤーの皆さんにもぜひそのスポットを見つけていただき、「Ghost of Yotei」の世界を感じていただければと思います。

――ありがとうございました!