インタビュー

「風燕伝:Where Winds Meet」開発者インタビュー

建築物の模型を作って構造を研究。リアルさと創造力を融合させた世界

 インタビュー後半は、ストーリーデザイナーのAvery Wang氏とVera Du氏、コンセプトアーティストのZHONG Zhou氏、オーディオデザイナーのYida氏の4名が、主にゲームの物語やビジュアル、サウンドに関する質問に答えてくれた。

――それぞれどういった担当で、本作のどんな部分をプレーヤーに体験してほしいのかを教えてください。

Avery Wang氏:シナリオ担当です。150時間越えのシナリオに感動してくれたら嬉しいです。

Vera Du氏:シナリオ担当です。一番体験してほしいのは、開封にいるコミュニケーションを取れるNPCたちです。私たちは彼らを生きてる人間だと思っています。一見しただけではそうは見えなくても、実はすごいという人物もいます。そのサプライズ感と驚きを体験してほしいです。

Yida氏:オーディオデザイナーとして音全体を担当しています。本作の音楽や音の多様性をぜひ体験してほしいです。中国の古典楽器をほぼすべて使ってると言えます。単に音が流れているのではなく、古民謡や劇など、誰かがそれを演奏していると感じるようにしていますので、それも感じてほしいです。

 マップによっても音の体験が違っています。自然の中で聞こえる音と、開封に入ると聞こえる賑やかな生活音などの違いも楽しんでほしいです。ボス戦でも緊張感がある音に注力しています。

ZHONG Zhou氏:コンセプトアーティストとして、建物や街並みを作っています。世界全体を構築するにあたりロマンチックな部分とリアルな部分がありますが、個人的にはリアル感があるところをお勧めしたいです。

 いろいろな研究や実在する文物を見たり、実在している史跡から推測して建物を再現しています。書籍などで研究してディティールを再現しているので、そういった所を見ていただけると嬉しいです。

――ストーリーには史実とフィクションが混じり合っているということですが、遊ぶ前に歴史を勉強した方が楽しめますか? それとも史実を知らないほうがいいですか?

Vera Du氏:プロダクトを立ち上げた当初からグローバルで展開する計画があり、なるべく多くの方に同じ感動を共有して頂きたいと思っていますので、歴史を知らなくても楽しめます。史実や歴史上の人物は、一番ドラマチックな部分を再現しようと思っています。

 ある所にキャラクターが濃いぽっちゃりしたおじさんがいます。その人と一緒に過ごす時間は楽しいです。その人物は実は歴史上のとある人物なのですが、面白い性格をしているので単におじさんとしても受け入れられるように作っています。

――キャラクターメイクができますが、男女どちらが人気ですか?

Avery Wang氏:キャラクターに関しては、自分で作ったキャラクターが一番没入感を感じられると思うので、作れるようにしました。皆さんにもご好評をいただいており、正しい選択だったと思います。キャラクターの男女比はほぼ半々です。

【キャラクターメイキング】

――ファンタジー要素はあるのですか?

Avery Wang氏:人を惑わす幻術のようなものはあります。武侠にマッチしているかどうかで入れるかどうかを決めています。魔法や妖怪などは存在していません。

――何気なくそこにいるようなNPCにちょっかいを出すと戦闘が始まったり、ストーリーが始まったりするということですが、どのくらいのストーリーを作ったのでしょうか。

Avery Wang氏:メインストーリーは全体の2割程度で、残り8割はやってもやらなくてもいい要素になっています。メインストーリーだけでいいという人もいるでしょうし、探索が好きな人なら、世界の隅々まで探索するでしょう。

 例えばゲームの中では、料理を作ったり、色々な店でご飯を食べることができます。すべての食べ物を収集したらグルメなサブクエストが始まるかもしれない。そんなふうにプレイによってゲームで体験できるコンテンツが変わります。

――序盤に主人公を補助してくれるホンシェンという少女が登場しますが、彼女はどういったキャラクターですか?

Avery Wang氏:ホンシェンは幼い頃から主人公と一緒に成長している女の子です。武力を高めて主人公と一緒に世界に出て、偉い人になりたいと思っています。ホンシェについては、チャプター2で大きなイベントがあります。

【ホンシェン】

――五代十国時代の開封を再現するにあたって苦労したところ、見てほしいところを教えてください。

ZHONG Zhou氏:開封を再現するにあたって、いろいろな所から断片的なヒントをもらってパズルのように作りました。資料写真の容量だけで200GB以上あります。遺跡を観たり、開封の周りの自然や地形、当時の川の流れなどは、現在の姿をドローンで撮影して、当時の姿を再現しようとしています。

【精密に作られた模型】

【開封】

 個人的なおすすめポイントは樊楼(はんろう)です。当時の開封で娯楽施設として有名な建物です。外観が美しく、複雑な構造ですが機能性があって建物として不自然ではないようにするため、模型を作って構造を再現しました。模型はパーツ単位になっていて、ゲーム内の建物もこのパーツを組み合わせることで作っています。模型を作るのは大変でしたが、パーツは他の建物にも流用できたので、模型があることで開発の効率は上がりました。

【樊楼】

【「風燕伝:Where Winds Meet」 - ファイナルβテストPV】

――史実に基づいてリアルに再現しているということですが、例えば日本の戦国時代もので武将がサラブレッドに乗っているように、プレーヤーのイメージに合わせて変更した点はありますか?

Vera Du氏:樊楼のような建築物はなるべく史実に基づいたものにしようとしていますが、その建物の中で暮らしている人たちは武侠が好きな皆さんの想像力に合わせて作っています。実は中には1つの門派が隠れているのです。樊楼は中央が吹き抜けになっているのですが、お酒を注ぐ時には空から降りてきて、吹き抜けの側から注いでくれます。

赤い巾につかまり、女たちが自由自在に空中を移動する

ZHONG Zhou氏:開封には地下都市もあります。当時の開封には排水システムがあって、そこがひとつの町のようになっていたそうなので、それをもっと拡張して地下の町を作っています。

――サウンドのリアルな質感にこだわる理由はなんですか?

Yida氏:音声によってプレーヤーの没入感を高められます。オリジナリティも出しながら、プレーヤーの皆さんが自分のキャラクターになり切れるようにしたかったからです。

――サウンドの収録で、打撃音を作るためにセロリを使うのが面白いと思いました。そのほかに面白い音声の作り方や、作るのが大変だった音などのエピソードがあれば教えてください。

Yida氏:琵琶という楽器があります。高価な楽器なのですが、ゲーム内で壊すシーンがあります。心は痛みましたが、本物を壊すことでいい音を作ることができました。またとある洞窟の中の音が表現できなくて困っていた時、琴をクレジットカードで弾くことで洞窟に合った雰囲気を出すことができました。

――日本のユーザーが興味を持つようなポイントがもしあれば教えてください。

Avery Wang氏:オープンワールドというプレイ体験は、例えば「ゼルダの伝説」などで日本のユーザーさんも慣れているのではないかと思います。またストーリーが断片的に語られているというストーリーテリングの手法にも慣れているのではないかと思います。まずは遊んでみてほしいと思います。

ZHONG Zhou氏:アートの担当者としては、歴史的な知識がなくても直感的に探索できるポイントをたくさん用意しています。文化背景がなくても楽しめると思います。

――ありがとうございました!