インタビュー

「サイレントヒル f」開発陣インタビュー

岡本基氏、竜騎士07氏から進化したアクション要素や、ジャパニーズホラーの定義について語られた

【SILENT HILL f】
9月25日 発売予定
価格:
8,580円(スタンダードエディション)
9,790円(デラックスエディション)
「SILENT HILL f」

 コナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)は、9月25日に発売を予定しているプレイステーション 5/Xbox Series X|S/PC用サイコロジカルホラー「SILENT HILL f(サイレントヒル f)」のメディア向け体験会を開催した。

 イベントには、本作の開発を手掛ける台湾のゲームメーカー「NeoBards(ネオバーズ)」のメンバー、プロデューサーの岡本基氏、ストーリーを担当する竜騎士07氏、シリーズの楽曲を手掛けてきた山岡晃氏が登壇。本作についての気になる質問に答えてもらったので、ぜひ最後まで読んでもらいたい。

会場の入り口には、メインビジュアルの特大パネルとバケモノの人形がお出迎え
会場の中は和テイストなホラーな空間が広がっていた
試遊でも登場したボスのリアルな人形も
イベントに登壇したのは左からNeoBards EntertainmentのAlbert Lee氏、Al Yang氏、プロデューサーの岡本基氏、ストーリーの竜騎士07氏、コンポーザーの山岡晃氏
【SILENT HILL f | 発売日発表トレーラー (4K: JA/CERO) | KONAMI】

アクション性が進化した理由は、リメイク版「SILENT HILL 2」の再制作はしたくなかったから

――リメイク版の「SILENT HILL 2」ではあえてアクションの気持ち良さを排除していたと思うのですが、本作は逆にアクションの気持ち良さを取り入れている理由をお聞きしたいです。

岡本氏:「SILENT HILL 2」に関してはオリジナルのゲームの味わいがあるのでそちらに基づいていますけど、「SILENT HILL f」に関しては初期の段階でアクションの楽しさを入れたいというイメージがありました。NeoBardsさんを選んだ理由に紐づくんですけど、アクションゲームが得意なメーカーなので。

 「サイレントヒル」というとあまりアクションが楽しいというイメージが無いと思いますが、そこにアクションの面白さを入れたらどうなるのかという気持ちがありました。若いユーザーさんには歯応えのあるアクションゲームが人気になっていると思うんですけど、そういったアクションの面白さがあった方が新しいユーザーが入ってくれるんじゃないかと、そういうイメージがありました。

Al Yang氏:あえて私から1点付け加えるなら、リメイク版の「SILENT HILL 2」の再制作はしたくなかったので、過去作を繰り返さないためにはどのように調整するかを考え、“増やす”か“減らす”かしかなかったため、「SILENT HILL 2」と比べてアクション性を重視するという形になりました。

リメイク版「SILENT HILL 2」とは異なる作品作りを目指したと語るAl Yang氏
原作と比べればアクション性は増したものの、リメイク版「SILENT HILL 2」のバトルはあくまで恐怖を演出する要素の1つに過ぎなかった。画面はPS5版「SILENT HILL 2」
「SILENT HILL f」では「集中」や「持久力」などの要素が追加されたことで、バトルの爽快感や戦略性が格段に上がった

――あの「サイレントヒル」に竜騎士先生が関わるということに驚きました。そこで竜騎士先生に伺いたいのですが、本作は日本が舞台という事で日本ならではの恐怖をどのように定義してゲームに落とし込んでいますか?

竜騎士07氏:ジャパニーズホラーの定義ってものすごいたくさんあるので私ごときが話していいかわからないのですが、私はホラーの方向性は2つの方向があると思っていて、1つは“命の危険が迫るもの”。動物の本能として危機が迫ってるときには体が活性化して生き残るために戦うというホラー。

 もう1点は“現在の状況がわからないもの”。一体ここはどこなんだろう、現状は安全なのだろうかというのがわかりかねている状態。要するに不審になっている状態ですね。この2つの軸が動物としての感情のホラーだと思うのですが、ジャパニーズホラーはこの中では後者。チェーンソーを持った男が現われて命の危険が迫ってるのではなく、居心地の悪いものを何とか解釈して暗闇に目を凝らすというのがJホラーの魅せ方かなと感じています。

竜騎士07氏が考えるジャパニーズホラー論が語られた

――今作のタイトルが「SILENT HILL f」となっていますが“f”に込められた意味など伺えますか。

岡本氏:「SILENT HILL f」っていう言葉はユーザーさんもかなり考察してくださってると思うんですけど明かすと面白くなくなってしまうので、我々としては実際にゲームを遊んで見てもらいたいと思います。ただ、これは複数の意味があって、複数の意味を込めて“f”という単語を選んでいます。複数の単語が省略されてると思っていただいて結構です。

“f”の意味については実際にプレイして楽しんでもらいたいとのこと

――今回、1960年代の日本をモデルにしたということで、参考にした伝承だったり、歴史的事件だったりみたいなものはあるのでしょうか。

竜騎士07氏:もちろんです。今回の作品で描きたいテーマにぴったりな時代設定を考えた上で、1960年代という数字が出てきた時に、作品を描く上でその時代には日本ではどんな事件が起こっていただろうかとか、参考になりそうな出来事はなかっただろうかというところはもちろん調べました。なので作品の中でその一部は垣間見ることができると思います。

どういった事件などが反映されているのか気になるところ

――今回の約5時間のプレイで様々な展開があり、ものすごいボリュームのあるゲームになりそうだなと感じましたが、1周クリアまでの時間と、2周目以降のストーリー以外の部分での、ゲームプレイの変化の有無についてお聞かせいただければと思います。

Al Yang氏:1周目のプレイ時間についてはアクション要素にどれだけ慣れているかとか、プレーヤーのスキルとかアクション慣れにかなり左右されるところだと思います。短い場合ですと大体8時間。長い場合ですと大体12時間以上かかる形で、かなり個人差が出てくると思います。

 あともう1点、周回した際の要素についてですが、周回していくにつれて、異なる要素が増えてくる様子が見て取れるかと思います。実はプレイを重ねることで得られた知見によって、見えるものが変わるっていうこともあれば、そこでは満たされなかった条件を満たすことによって、さらに見えてくる要素もあります。

 プレイを重ねていくことによって、周回要素として手に入れたものがそのまますぐ次の周回に継承されていくものもありますので、様々な面から楽しんでいただけると思います。

岡本氏:1周目のプレイ時間について補足すると、ストーリーをどんどん進めていくかにもよります。その世界観を探索して、より深く観察するといった丁寧なプレイをしていればプレイ時間にも変化が見られるかと思います。初めての人は大体12時間、13時間ぐらいはかかっているのが現状のイメージです。

周回するたびに新たな要素が追加され、1周では終わらない長く遊べるゲーム性になっているようだ

――クリーチャーのデザインがこれまでと大きく違いますがコンセプトなどを聞かせてください。

岡本氏:keraさんという才能あるイラストレーターが1体1体丁寧に描いてくださったというのがあります。クリーチャーを作るにあたって、やっぱり「サイレントヒル」の場合だとトラウマであったり、様々なイメージみたいなものを反映するというのがシリーズの伝統みたいなものですので、竜騎士先生のコンセプトであったり、NeoBardsさんがゲームプレイの都合というか、こういうゲームプレイにしたいというアイデアがあって、矛盾もするし、ぶつかりもする、そういう様々な混沌とした意見をkeraさんと協議をしてデザインを落とし込んでくれました。

 デザインの方向性としては、花であったり、内臓であったり、ゲームの途中で出てきた巨大なクリーチャーがいると思うんですけど、ああいったクリーチャーのコンセプトが特に初期にはありました。特に初期に出てきたクリーチャーほど美しいものとおぞましいものが共存している傾向があると思います。

“美しい”と“おぞましい”という相反する要素で構成された魅力的なクリーチャー

――本作は日本の看板だとか、教科書とかそういったものの再現というか実在感がすごくあったと思うんですけど、そのあたりの開発のこだわりがあれば教えてください。

岡本氏:本作を作るにあたって、日本のチームとNeoBardsさんが密接に協力して作っていったということがあります。さらに言いますとトレーラーで「ALWAYS 三丁目の夕日」などで知られる白組さんが活躍されたんですけど、トレーラーを作るときに非常に綿密に何十冊もの本を集めて、そのときの資料なんかもNeoBardsさんに共有して作ったので、KONAMIと白組さんとNeoBardsさんの三者の努力が結集してこれだけのものになったと思ってます。

――ありがとうございました。