先行レビュー

【サイレントヒル f】日本家屋や学校の気味の悪さを5時間にわたって体験! 「SILENT HILL f」先行プレイレポート

持久力・精神力や遠距離武器の廃止などアクション性の高い最新作

【SILENT HILL f】
9月25日 発売予定
価格:
8,580円(スタンダードエディション)
9,790円(デラックスエディション)
「SILENT HILL f」

 コナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)は、「サイレントヒル」シリーズの完全新作となるプレイステーション 5/Xbox Series X|S/PC用サイコロジカルホラー「SILENT HILL f(サイレントヒル f)」を9月25日に発売を予定している。本作の発売に先駆けてメディア向け体験会が開催された。

 「サイレントヒル」はこれまで数多くのシリーズが展開されてきたが、今回の「サイレントヒル f」は初の日本を舞台とした作品となっている。ストーリーは「ひぐらしのなく頃に」でお馴染みの竜騎士07氏が担当していることでも大きな話題を呼んでいる。

 体験会ではPS5版をプレイすることができ、ゲーム冒頭から5時間という長尺で恐怖の世界を体験することができた。プレイして見えてきた本作ならではの新たな世界観やアクション、「サイレントヒル」シリーズが持つ不変の魅力を紹介していきたいと思う。

【SILENT HILL f | 発売日発表トレーラー (4K: JA/CERO) | KONAMI】

変わったのは世界観だけじゃない。アクションや成長システムなどゲーム性が大きく進化

 ゲームの舞台は昭和時代の田舎町、戎ヶ丘(えびすがおか)。1960年代の日本の寂れた町並みがリアルに再現されており、曇天の薄暗さも相まって不気味さを見事に演出している。

 本作の主人公は、戎ヶ丘に住む高校生「深水雛子」。幼少時は快活だったが、親、環境、友人関係、世間体などの問題からいつからか笑わなくなったという、なんとも“サイレントヒルらしい”闇を抱えていそうな設定である。

身近な日本ということもあり、過去作よりも町並みのリアルさが肌で感じられる
主人公の「深水雛子」。悪夢の世界に迷い込んでしまったのは何か理由があるのだろうか

 ゲームの冒頭では同じ学校の友人同士で集まり、何気ない会話を交わしていた。そんな平凡な日常が唐突に崩れ去る。町は霧に包まれ、人の姿は消え、おぞましいバケモノが蔓延る世界へと一変する。

 別稿のインタビューで竜騎士07氏が語っていた“現在の状況が分からない恐怖”がゲーム開始早々に雛子とプレーヤーに襲い掛かる。

何の前触れもなく、町に起こった異変に巻き込まれてしまう雛子たち

 世界観とは別に、ゲーム的な部分でこれまでのシリーズと大きく異なる点はなんといってもアクション面だ。本作は日本ということで銃火器のような遠距離武器は一切無く、バケモノとは常に接近戦で殴り合って戦わなければならない。

初期武器となるのは、シリーズお馴染みの鉄パイプ

 過去作でもボス戦以外は接近武器で戦うのが基本だったのでそれほど大きな変化は無いかと思っていたが、実際にプレイしてみるとバトルシステムは全くの別物と呼べるものとなっていた。

 今作では新たに「持久力」というスタミナのような要素が追加され、戦闘中の走りや回避、攻撃などのアクションを行なうと持久力が減少するようになっている。持久力が0になってしまうと息切れをしてしまい、回復するまでの一定時間行動不能になる。行動不能中はもちろん無防備になってしまうのでとても危険な状態だ。

 通常の回避アクションだけではなく、敵の攻撃が当たる直前で回避をするとスローモーションの演出が入る「見切り回避」というものも存在し、見切り回避に成功すると持久力が回復するという特大メリットがあるので積極的に狙っていきたい。

 今回のプレイでは、無暗やたらに回避で持久力を使い過ぎてしまうとせっかくバケモノが隙を晒しても“肝心なところで攻撃ができない”という歯がゆい状況に何度も直面し、持久力管理がかなり大事だと痛感した。

持久力が追加されたことで、よりスリリングな戦いが楽しめるようになった
リメイク版「SILENT HILL 2」のように回避行動を適当に連発しながら安全に戦うという戦術がとれなくなっている

 見切り回避はタイミングさえ合えばすべての攻撃に対して発動できるが、敵の特定の攻撃に合わせてタイミングよく攻撃をすると「見切り反撃」を繰り出すことができる。敵を確実によろけさせる強力なカウンター攻撃で、上手く使いこなせれば戦闘をかなり有利に進められる。

 見切り反撃が決まったときは特殊な攻撃演出が入り、「サイレントヒル」らしからぬ爽快感が味わえるのはとても新鮮だ。ただ、見切り攻撃ができる攻撃は限定されているため、ただ敵の攻撃を待ち構えているだけだと対応していない攻撃でダメージを受けてしまう。見切り反撃を狙うには敵の攻撃モーションをしっかり覚えて、反撃と回避のどちらを使うか見極めが必要になる。

敵の攻撃時に特殊なエフェクトが出た瞬間が、見切り反撃ができる合図

 持久力以外にも、戦闘にまつわる新システム「精神力」というものが存在する。精神力は「集中」というアクションを行なうのに必要で、集中をすると見切り反撃がやりやすくなったり、強力な「渾身の一撃」を放つことができる。

 精神力は一定時間で回復するのだが、渾身の一撃を使用すると精神力ゲージの最大値が減るというデメリットがあり、アイテムで回復するか祠で心を鎮めないと精神力が自然回復がしなくなるので使い所が重要。持久力と精神力の配分を常に意識して戦うという、戦略性の高い本格的なアクションゲームへと進化していた。

弱と強の攻撃だけではなく多彩な攻撃法があり、戦闘の面白さが格段に増している

 先に少し触れたが、今作には祠というポイントが随所に設置されており、ここでは手動セーブをはじめとした様々なことができる。

 特定のアイテムはお供え物として奉納することができ、「功徳」と呼ばれるポイントを獲得できる。功徳を使うと装備品のお守りが手に入る「おみくじ」を引いたり、絵馬を供えて能力を強化する「祈願」や精神力の回復などが行なえる。

 装備品の獲得や主人公を強化させることでゲームの難易度が大きく変わりそうなので、功徳をどのように運用していくかも攻略のポイントになりそうだ。

オートセーブに加えて手動のセーブも可能。装備や成長要素のおかげで、アクションが苦手な人でも難易度が多少緩和されそうだ

謎の多い物語や裏世界など、ファン納得のシリーズ伝統の魅力は健在

 戦闘部分だけを見ると過去作とはまるで別のゲームといえる内容だが、「サイレントヒル」の根幹となる魅力はしっかりと押さえられている。

 濃い霧に包まれて先の見えない場所を探索していくシリーズ伝統の恐怖感はもちろん健在。アメリカのマンションや病院なども怖いが、田舎の日本家屋や学校なども引けを取らない気味の悪さである。

 今回の試遊ではヘッドホンを装着してプレイをしたのだが3D音響も恐怖を増幅させていた。“遠くの方から徐々にこちらに近づいてくる音”が響き渡ると気が気でなく、学校を探索して回る足取りが何倍にも重くなる。

海外のホラーとはまた違った、ジャパニーズホラーを堪能できる

 恐怖の象徴ともいえるバケモノも、日本人形やカカシといった日本ならではのテイストのものから、花と臓器といった美と醜が入り混じったものまで、不快感を凝縮したような“サイレントヒルらしさ”に満ちている。

テイストは変っても、見ているだけで不安になるようなバケモノの不快感は健在だ

 これはゲームシステム的な不安を煽る要素だが、今作では「SILENT HILL ZERO」と同様で武器に耐久度が設定されており、耐久度が0になると壊れて使用できなくなってしまう。耐久度が心もとない状態で複数のバケモノに囲まれたらもはや絶望しかない。

 工具袋を使えば耐久度を回復させることが可能だがアイテムの所持制限があるため、回復アイテムを多めに携帯するか工具袋を重点的に所持するか、ここがプレーヤーを大いに悩ませる。

すべてのバケモノを相手していては武器がいくつあっても足らなくなるので、可能なところは無視して進んでいきたい

 今回のプレイでもいくつかの謎解きが出てきたが、単なるパズル的な謎解きではなく、“登場人物の中の誰かの心情を表した”かのようなメッセージ性のある内容であった。

 “誰か”が“誰か”へ向けている“内に秘めた妬みや憎しみ”といった負の感情を読み取ることができ、こういったところから人物像の深堀や考察が楽しめるシリーズ伝統の面白さも健在だ。

謎解きの意味深なメッセージや登場人物の不可解な言動など、プレイしていて常に疑心暗鬼に陥っていた

 「サイレントヒル」シリーズに欠かせない要素である「裏世界」も確認することができ、今作でも現実世界と裏世界を交互に行き来してゲームを進めていく。

 物語中に雛子が意識を失う場面がときおりあるのだが、目を覚ますと薄暗い不気味な神社に飛ばされている。そこは現実世界よりも凶悪なバケモノが蔓延っており、まさに悪夢といえる空間だ。

 敵か味方かわからないが雛子に手を貸す仮面の男の存在や、その“仮面の男を信用するな”という声が聞こえてきたりと、とにかく謎が多くプレイしていて物語にぐいぐいと引き込まれた。

雛子が意識を失うことで、裏世界へと招かれてしまう
懐剣や薙刀など、裏世界限定の武器も存在する

 今回の長時間の試遊で、「サイレントヒル」シリーズの新しい形と、変わらない魅力の両方を存分に体験することができた。

 本作もマルチエンディング形式を採用しているとのことなので、何度も周回プレイを楽しめる仕様となっている。謎が謎を呼ぶ物語の先で、雛子がどのような結末に辿り着くのか今から気になって仕方がない。