インタビュー

セガネットワークス編成局副部長 秋山隆利氏インタビュー

バトルについて。ジョブやスキルによって豊富なバリエーションを用意

バトルについて。ジョブやスキルによって豊富なバリエーションを用意

バトルのこだわりについて語る秋山氏
出撃させる仲間を選ぶ。200人超のキャラクターの中からわずか4人しか選べない
秋山氏が見せてくれたデーモン属性のキャラクター
バトルシーン

――「チェインクロニクル」のバトルは、ディフェンス系の派生ですね。このシステムを選んだ理由は?

秋山氏: やはり、カードだけのバトルはおもしろくないので、ディフェンスゲームを活かした形でバトルができないかなと。

――パーティーメンバーは全部で4人ですか?

秋山氏: フレンドのキャラクターを加えて5体です。

――画面右に9つのマス目がありますが、この置く位置によって戦い方が変わるわけですか?

秋山氏: 前衛とか後衛とかの有利不利があります。剣士に対して、弓と魔法使いは弱いです。盾は弓と魔法に対しては防御が強いので、彼らを前に置くことによってダメージを小さくできます。こうした仕様がいくつか入っているので、先に戦士を前の方に張り付かせて、魔法使い系をとにかく殺していくという遊び方ができます。後半になるとバッドステータスをかけてくるモンスターがでてきますので、今度は触れないように如何に倒すかなど、敵との相性で駆け引きをちゃんと考えなければなりません。

――ジョブは何種類くらいいるんですか?

秋山氏: いまのところ5種類です。戦士、騎士、僧侶、弓師、魔法使いです。

――結構シンプルですね。今後増えていくのですか?

秋山氏: 検討中です。

――ジョブはキャラクターによって固定なのですか?

秋山氏: キャラクターに固定というよりは、仕組み上の表現です。たとえば魔法使いなんだけど剣を持っているキャラクターもいます。このキャラクターは後ろの列にいると魔法をずっと撃つのですが、敵が近づくと普通に斬りにいきます。でも判定上は魔法使いになっています。あくまでも職業を表現するための1つのツールとして設定されている表示です。

――アサシンとかマーチャントと表示されていますね。デーモンなのにウォーリアだったり、魔法使いだったり。よくわからないですね(笑)。

秋山氏: アサシンとかマーチャントは弓師です。これらはアーチャーの判定になっているのですが、ほかにもダンサーみたいなのがいたり、結構いろんなものがいます。

――ジョブのカテゴリーとしては5つだけど、キャラクターの個性を表現するために細かく細分化されているわけですね。それを含めてどれくらいいるのですか?

秋山氏: ああ、数え切れないです。結構細分化されていますので(笑)。私が知ってるだけでも十何種類はいました。職業ごとに持っている武器の属性などが違っていますので、つまり戦い方が一様ではないということです。ちなみに、デーモンって書いてあるキャラクターは、もともとレイドボスのモンスターなんですよ。

――モンスターの割には可愛らしい感じですが、味方にはならないのですか?

秋山氏: さて、どうでしょう(笑)。

――そのレイドボス戦についてですが、どのような戦いになるのですか?

秋山氏: 戦う時間が決められていて、行動力とは違うポイントで管理されています。1ポイント使ってバトルに挑むのと、3ポイント使ってバトルに挑むのと2つのルールがあって、1ポイントを使うものは1分以内、3ポイントなら3分、「どっちを選択して戦いますか?」と言うゲームです。時間内にこのボスまで倒しきれないと逃げちゃうのですね。で、逃げたものを他の人に倒してもらうか、自分でもう1回挑戦するかという選択肢があります。このレイドボスは1番最初の戦いはレベル1で登場してきますが、再び登場すると今度はレベル2になって登場します。倒せば倒すほどどんどんレベルが上がってきますので、どこまでいけますかというのを競う、そういうゲームになっています。

――なるほど、「ドラコイ」と同じようなシステムですね。彼らが仲間になるのはどういうタイミングなのですか?

秋山氏: ごめんなさい、秘密なんです。

――このゲームにおけるバトルの魅力というのは何だと思いますか?

秋山氏: 簡単に操作しながらも、ちゃんとキャラクターの職業の駆け引きがあって、それが昔やっていたRPGの冒険ぽさをすごく感じさせるところです。昔は薬草をたくさん使いまくって、とても苦労して何とか勝ったり、そういうギリギリな戦いをよくやっていたように思うのですが、最近のRPGはそういうギリギリな遊びってないと思います。このゲームの中にはちょっとそういうギリギリさが入っていて、必死に戦っているなという感じが味わえて楽しいと思います。

――敵の攻撃について、画面左側からモンスター達がワラワラ攻めてくるというのはわかるのですが、押し寄せる以外に敵はどういうアクションをするのですか?

秋山氏: 1番最初は上の列から来ているのですが、途中から急に下の列に移動し始めて、2体でそのまま攻撃をしかけてきたりするパターンもあったりとか、結構いろんな攻撃パターンがあったりします。

――敵は飛び道具を使ってくるのですか?

秋山氏: 飛び道具はあります。魔法もありますし、あと放置しているとスキルも使ってきます。敵によっては全体攻撃を仕掛けてくるものもありますので、使われる前に早く倒す必要がありますね。

――スキルについて教えて下さい。

秋山氏: 大別して必殺技とアビリティの2種類があって、必殺技は貫通効果のあるスキルや全体にダメージを与えられるものや、攻撃を与えるとダウンさせられるものもあります。もちろんRPGですので、ヒールもあります。アビリティは必殺技とは別で、常時効果を発揮する特殊能力ですね。こちらも様々なものがあります。

――キャラクターの移動速度もそれぞれ違うのですか?

秋山氏: もちろん変化します。足の速いキャラクターもいますので、素早く移動して攻撃するというのがひとつの能力になっているキャラクターもいます。

――キャラクターのパラメータはレベルと攻撃力、HPだけ?

秋山氏: そうです。敵は単純にその3つだけなのですが、プレーヤーのキャラクターはここに武器によるパラメータが別にあります。なので武器を育てれば育てるほど、自分の基礎値に対する倍率がかかってくるので、単純に強くなります。

ビジネスモデルについて

秋山氏によればすべてのストーリーを無料で遊べるという
まずは精霊石を購入する
全滅しても精霊石で復活できる

――ビジネスモデルについて質問します。まず、このゲームは、サーバー対抗を意識したり、サーバーリセットがあったり、このサーバーは勝った負けたというような、そういう仕様があるものではないのですよね?

秋山氏: 現段階ではありません。あくまで1人でちゃんと遊べ、楽しんだりすることができるようなゲームにしています。今は1人で確実に楽しめるようにするというのが目標なので、まずはここに注力しようということです。

――そしてメインストーリーや200名のキャラクター分のキャラクターストーリーは、すべて無料で遊べるのですよね?

秋山氏: ゲーム内のクエストで精霊石を入手する事ができますので、理屈上は無料でも全て遊ぶ事は可能です。

――その200名分のストーリーは、サービス開始後のアップデートで少しずつ足していくわけではなく、いきなり入るのですか?

秋山氏: メインストーリーに関わっているものは全て初期に提供します。それ以外はタイミングを合わせ定期的に提供する予定で考えています。

――このゲームはFree to Playですが、課金へのモチベーションが高まるタイミングというのはどのあたりに設定しているのですか?

秋山氏: あくまで私に限ってですが、キャラクターがどんどん手に入り始めて、ちょっとバトルが煮詰まり始めたあたりに欲しくなりました。このキャラじゃやっぱり弱いのかなと言うことでキャラクターを手に入れていると、思いのほか簡単に入ってくるので、こういうのも欲しいなと思うようになりと言った感じです。

――たとえばバトルの勝ち負けを左右してしまうようなアイテムや、全滅したときにコンティニューできる要素とかはないのですか?

秋山氏: コンティニューは用意しています。1番重きを置いているのは行動力を回復するアイテムです。これが言い換えればストーリーを楽しんでもらう時に払ってもらう対価という考え方です。ストーリーが楽しいゲームを売りにしていますので、ストーリーを楽しんでいただく事に商品性を感じていただけると嬉しいです。

――なるほど、その行動力は最大いくつまでストックできるのですか?

秋山氏: 行動力はレベルによりますが、30~80程度までストックする事ができます。

――1つのクエストをプレイするのに、いくつ消費するのですか?

秋山氏: だいたい6から20位ですね。

――結構幅がありますね。

秋山氏: クエストの質によって変えています。メインストーリーはちゃんと時間をかけて遊んでもらうという設計になっていますので、結構多めに設定しています。逆にユーザー自身が快適に遊ぶ為に努力するような場所は、少なめにしています。こちらはユーザーの快適さにかかっていると思いますので、慎重にバランス調整を行なっており、今もバランスを調整しています。

――このゲームの課金モデルを今一度教えてもらえますか?

秋山氏: アイテム課金になります。ベースのところが精霊石を買っていただいて、それでキャラクターを入手したり、パーティーコストを増やすもの、行動力を回復させたり、レイドボス用の行動力を回復させるものなどが利用可能です。モバイルのユーザーさんがわかりやすい事が1番だと思いますので、全て精霊石を中心に経済を成り立たせています。

――「コラボクエスト」というものもあるというお話ですが、これはどういったものですか?

秋山氏: 完全に新規のキャラクターが登場するお話です。これについては社外も絡むお話なので、もう少ししたらお話しできると思います。

――ちなみに秋山さんが考えるこのゲームの大きなモチベーションは、キャラクターなのか、バトルなのか、ストーリーなのか。いろんな要素がこのゲームの中に詰め込まれていますが何でしょうか?

秋山氏: 個人的にはストーリーがおもしろいと思います。日本のRPGはゲームのシナリオの中に登場するキャラクターから、「おまえは勇者だ」って持ち上げられているようなものが多くて、なんだか強制されている感が強いなと思うのですが、チェインクロニクルは割と自発的にその人の赤裸々なものを見ているような感じがあって、違う視点でとてもおもしろいなと感じています。

――確かにこの子がかわいいな、好きだな、おもしろいなと思ったら、この子のクエストをやればいいわけですから、非常に明快ですよね。

秋山氏: 全く興味がないキャラクターがいたんですが、たまたま手に入って、たまたま精霊石が欲しかったので、クエストを遊んだら「あ、ドジっ子なんだこれ」って気づいて、そのまま気に入って自分のパーティーに加えたりとか。なんだか人の歴史を探ったり、追ったりするのって赤裸々な感じでおもしろいと思うのです。

気になる今後の展開について

秋山氏はマルチプラットフォーム展開や海外展開について強い関心を見せた
タブレット版では、スマートフォンとは縦横比が異なるため、上下に空欄が表示される形になる

――このゲームってスマートフォンでなくても、ニンテンドー3DSとかPS Vitaで出てもおかしくない内容だと思いますが、携帯型ゲーム機への展開についてはどのように考えてますか?

秋山氏: 僕個人はその方向で考えているのですが、おそらく会社の戦略も関連してくると思うので、今のところ何とも言えません。情報感度の高い人たちは、ハードは特に選ばないと思いますから、広いお客さんに対して幅広く提供できるのはスマホの方が優れていると思います。ですので、まずはスマホでどれだけの事が実現できるかを確認して、想像通り実現できた後に、今度はよりコアなお客さんに喜んでいただける提供方法を揃えた上でコンシューマゲームに提供するとか、そのようなイメージで考えています。

――タブレット対応についてはいかがですか?

秋山氏: Unityなので、基本対応しています。

――タブレットでは、スマートフォンの画面が大きく表示される形ですか? それともタブレット用にカスタマイズしているのですか?

秋山氏: 基本はスマートフォンの画面を表示する形ですが、タブレットでも不快にならないようにカスタマイズも行なっています。

――どちらで遊ぶのがオススメですか?

秋山氏: そうですね、個人的にはタブレットのほうが好きですね。やはりキャラクターをちゃんと操作している感とか、冒険している感、遊んでいる感はタブレットの方が優れていますね。でも移動の中でも、スマホらしい遊び方はできるので、甲乙つけがたいなと。個人的な趣味としてどちらかというとタブレットが良いと思います。

――海外展開についてはどのように考えていますか?

秋山氏: アジア展開はしていこうと思っていますが、実はまだ検討している最中なのですね。すごい量のストーリーなので、翻訳するとすさまじい量なのですね。また、ストーリーの質にこだわっていますから、これを実現できるかもわからない。ですので、実現性を検討しています。

――ちなみになぜアジアなんですか?

秋山氏: 絵のテイストがアジア地域向きであると言うことが1番の理由です。欧米展開はもちろん考えていますが絵をどうするかに課題が残ります。

――日本で高い支持を得ている作品でも欧米ではなかなかうまくいかないというものと感覚的に近そうですね。

秋山氏: ほぼその感覚ですね。もっとヒーローはヒーローらしい格好であるべきとか、ああいった地域に根付いた感覚的なところにギャップがるようです。

――でもこの1年で欧米市場でキッチリ数字を出す日本のメーカーさんも増えてきましたから、やり方によっては大いにチャンスはありますよね。

秋山氏: とても魅力的な市場ですし、「チェインクロニクル」も魅力的なコンテンツですので、実現できる方法を模索したいと思います。

――当然アジアにはローカライズしていくのですよね?

秋山氏: そうですね。ストーリーを読ませるRPGですので、現地の言語で見せる必要があります。

――その場合のコストをどうするのかという話ですね。

秋山氏: 今だと展開する上で、その場合のコストは必要と考えています。何よりもここまでこだわって作り込んでいるゲームなので、やはりゲームがわかっている人間が翻訳しないとストーリーの面白さが伝わらないのではと考えています。

膨大な量のテキスト量を誇るソーシャルゲーム。まずは最初のローンチがどうなるか注目したいところだ

――とはいえ、大変ですね、これ(笑)。

秋山氏: そうですね。どうやって翻訳するんだろうってのが正直なところです(笑)。ですが、開発には頑張っていただきます。

――しかもソーシャルゲームなのに、ボイスもあるので、ボイスのローカライズも必要になってきますね。

秋山氏: 展開するならば、ボイスも別途とる必要があると考えています。

――海外展開では、本当にコンシューマゲームくらいの予算感で、規模感でグローバル展開すると。

秋山氏: それぐらいの意気込みで作ったタイトルですので、是非、多くのユーザーさんに遊んでいただきたいなと考えています。

――正式サービス後のアップデート計画について教えてください。

秋山氏: SNSやコラボシナリオの提供などを予定しています。

――アップデートサイクルはどのぐらいのスパンを考えていますか?

秋山氏: いまは1カ月に1回くらいのペースでコラボをやろうとしていますので、そのぐらいのペースで考えています。

――正式サービスまでのスケジュールについて教えてください。

秋山氏: 今の時点で明確な日程は言えませんが、Androidは7月18日ごろにβテストという形態で公開しようと準備を進めています。

――クローズドβテストですか?

秋山氏: クローズドではありませんが、テストサービスとしてオープンする予定です。現段階では日程が確定しておらず、流動的なんですね。7月後半から8月初旬頃にかけて、Android、iOSの正式サービスが行えるよう頑張っています。

――Android先行なのは、やはりユーザーをバラしたいからですか?

秋山氏: いえ、Androidを先行で提供するのは、流動的にバージョンアップができる点を重視したからです。Androidは都度更新ができますから、新規サービスで不具合が出てもすぐに対応できることがとても大きいと考えています。特に新規サービス提供時は不具合が多く発生しますから、お客さんの快適さを追及すると、この方法が1番良いと考えました。

――わかりました。最後にゲームファンへメッセージをお願いします。

秋山氏: セガの本気ってこういうことなのかなと思うのですが、個人的に気に入っているのが「キズナが物語を強くする」と言うキャッチコピーです。実際絆ということに対してすごくこだわっているゲームなので、シナリオだけじゃなく、ゲームの連動性というところを含めて、この絆というキーワードでうまくまとまっているところは珍しいと思います。ぜひ体験してみていただきたいと思います。

――以上です。ありがとうございました。

(中村聖司)