2024にJリーグ、2025に女子サッカーリーグ追加を目指す！ 「フットボールマネージャー2024」開発者インタビュー【#TGS2023】

　セガより11月7日にプレイステーション 5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch/PC/Netflix向けに配信予定の「Football Manager」シリーズ最新作「Football Manager 2024（フットボールマネージャー2024）」。

　「Football Manager」シリーズはその名の通り、プレーヤーがサッカーチームの全権監督となり、チームの編成から、試合の戦術など、所属チームの運営をしていくシミュレーションゲームだ。ゲーム内には52カ国以上の1,000を超えるチーム、約50万人の実在する選手データが登録されており、そのデータ量と正確性から実際の現場でも参考にされているほどだ。シリーズ最新作となる「Football Manager 2024（以下、FM24）」では、ファン待望の日本語化と、明治安田生命J1、J2、J3リーグがゲーム内に登場することが決定した。

　本稿では、開発会社・Sports Interactive（スポーツ・インタラクティブ）のスタジオディレクターであるマイルズ・ジェイコブソン氏にインタビューを実施することができた。本作の魅力や今回のJリーグ追加の経緯など、「FM24」に対する熱い思いを語っていただいたので、ぜひ最後まで読み進めてほしい。

Sports InteractiveスタジオディレクターのMiles Jacobson（マイルズ・ジェイコブソン）氏

400万単語を超える翻訳作業

　インタビューのはじめにマイルズ・ジェイコブソン氏は「FM24」が正式に日本語に対応されることに対する喜びと、日本のプレーヤーを長いこと待たせしてしまったことについて謝罪した。ゲーム内には400万を超える単語があり、それを可能な限り正確に翻訳することに長い時間を費やす必要があったという。また、日本語化MODを制作されている方々には非常に感謝していることも述べた。今作からは日本語に対応するので、今まで日本語化にかけていた時間を、ゲームを楽しむ時間に向けてもらうことができたら嬉しいとコメントした。

――日本語への対応やJリーグの追加など、「FM24」でゲーム内に日本向けの要素が初めてデビューする形となりましたが、その決断に至った要因を教えていただけますか？

ジェイコブソン氏：言語の追加自体は長いこと考えていました。ただ、 「Football Manager」シリーズはPCハードがメインの作品ということもあり、日本の市場規模はさほど大きくありません。ですが、今はコンソールやモバイル版もあり、市場規模を大幅に広げることができました。また、我々の中で最も重要だったのがライセンスです。Jリーグ実装に向けた議論が進んだことが、今回の日本デビューへの決め手と言えるでしょう。

　日本にも「Football Manager」シリーズの熱烈なファンが多くいるのは把握しています。そういった方々が母国語以外の言語でゲームプレイをする必要があるのには不公平さを感じていました。なので、今作では我々ができる最高のクオリティで翻訳したものを日本にお届けできるように頑張りました。

　本シリーズは本格的なシミュレーションゲームです。日本でも「プロサッカークラブをつくろう!」や「EGA Pocket Club Manager」など、サッカーを題材にしたマネジメントゲームがありますが、「Football Manager」シリーズはまったく違うベクトルのゲームとなっています。例とするのであれば、「フライトシミュレーター（Microsoft）」のようなものです。「Football Manager」シリーズは「フライトシミュレーター」と同じように、本格的なシミュレーションをサッカーで行なった作品です。

　本作では52カ国以上の1,000を超えるチームが存在しており、1,500人のスカウトにより調査されデータ化された約50万人の実在する選手とスタッフのデータが登録されています。データの精確さから、実際のフットボールクラブの人々が選手の移籍やスカウトなどの参考にするほどです。また、「Football Manager」シリーズではAIによって全てのことがシミュレートされます。試合中は選手の思考を1/4秒毎にシミュレーションしており、選手それぞれの身体能力のパラメーターや、監督の指示などを元にAIが判断し、試合に反映します。チームの運営でもプレーヤーが選択する行動の一つ一つでチームの行く末が変わっていきます。そのため、同じストーリーはなく、プレイするたびに違う体験を味わうことができます。

19年の歳月をかけたJリーグライセンス取得への道

――世界のユーザーからJリーグ実装の要望はあったのでしょうか？

ジェイコブソン氏：Jリーグのライセンス獲得までに19年を費やしました。Jリーグライセンスは多くの企業やゲームパブリッシャーが関係しており、正直にお話すると我々はそこに入り込むには小さすぎました。

　Jリーグは日本の方々だけでなく、世界中のプレーヤーから導入を希望されていました。私が今回来日していることをX（旧Twitter）で投稿したところ、多くの方々がJリーグについての発表があると予想し、盛り上がっていました。まだ発表前ということで私自身は何も言えないので、「キットカットを買いに来たのと、東京ゲームショウに行くだけさ」と誤魔化していました。Jリーグを追加できたことは私自身とても嬉しいことです。Jリーグが国外に広がるきっかけ、そして日本でも「Football Manager」が成功するきっかけになってほしいです。

――今回、様々なプラットフォームに対応していますが、それぞれ違いなどはありますか？

ジェイコブソン氏：はい。「Football Manager」はプラットフォームに分けて、それぞれ調整されております。

　PC版の「Football Manager」が全ての要素を兼ね備えたシミュレーションゲーム。

　プレイステーション 5/Xbox Series X|S版の「Football Manager Console」が一部のシミュレーション部分をダウングレードすることで高速化し、コンソールのプレイ環境に調整したもの。

　Nintendo Switch版は「Football Manager Touch」としてコンソール版からオンラインモードを取り除いたものになっています。

　Netflix版は「Football Manager Mobile」で従来の3Dエンジンではなく、2Dエンジンを使用しています。ゲームシステムも簡略化されており、初心者でも手軽に遊べるようになっています。

　プレイ環境によってプレーヤーの求める体験や環境は大きく変わります。PCでプレイされる方はじっくり時間をかけて楽しみたい方が多いです。コンソールでプレイされる方はご家庭のテレビでプレイされる方が多いと思われるので、限られたテレビの占有時間でも遊べるように、PC版よりも早いゲームプレイを意識しました。また、モバイル版などはトイレや移動中でも、片手で快適に遊べることをコンセプトに考えられています。

――「FM24」から初めてプレイされる方にオススメな機種と、オススメの遊び方はありますか？

ジェイコブソン氏：すでにNetflixのサブスクリプションをされている方であれば、Netflix版がオススメですね。サブスクリプションされている方であれば無料でプレイすることができますし、他プラットフォームよりシンプルなので、入門にも良いと思います。まずはコレに慣れて頂き、そこから他のプラットフォームに移動していくといいかもしれません。もちろん、最初からガッツリとやりたい方にはPC版が従来の「Football Manager」となっているので、プレイしてほしいですね。

　一つ理解して頂きたいのは、このゲームがマラソンのようなものだということです。短距離走のように、短い時間で走り切るものではなく、少しずつ理解していき、学んでいく、長距離マラソンのようなゲームとなっています。

　そのうえで、自分が知っている有名チームの監督として運営したり、小さい弱小チームを最強のチームに育て上げたりなど、それぞれ楽しみを見つけてプレイしていってほしいです。

――今回、モバイル版がNetflixのサブスクリプション加入者向けに限定されているのは何故ですか？また、こちらは「Football Manager 2023 Mobile」の2024年版という認識で正しいですか？

ジェイコブソン氏：今回、Netflixの加入者限定としているのは新しい試みです。今の時代、サブスクリプションというビジネスモデルは多くの場所で見かけるようになりました。ゲームを開発している私としては、より多くの方にプレイして頂きたいので、今回このビジネスモデルを導入しました。Netflixが抱える多くの利用者に「FM24」をプレイしてもらえることを期待しています。私自身、Netflixで今まで知らなかった多くのドラマや映画を見つけて楽しんでいるので、同じようにNetflixのユーザーに「FM24」を知って頂き、プレイする機会になってほしいと考えています。

　また、Netflix版を開発しているのは2023のモバイル版を開発しているチームですので、「Football Manager 2023 Mobile」の2024年版の認識で正しいです。あくまでもビジネスモデルが変更されただけです。

ゲーム内の要素についてや今後の展望も

――前作「Football Manager 2023」からセーブデータの引き継ぎは可能ですか？

ジェイコブソン氏：はい。セーブデータの引き継ぎは可能です。「FM23」でプレイを中断した箇所から、「FM24」の要素を取り組んだ状態で再開することができますのでご安心ください。

　ただ、アチーブメントやトロフィーなどの要素は引き継がれないのでご注意ください。セーブデータの引き継ぎというのは長年の課題でした。開発チームでもつねに取り組んでいたのですが、技術的な問題などもあり困難な部分でした。ですが、今作ではその問題も解決でき、しっかりとセーブデータの引き継ぎが行なえるようになりました。私自身、「FM23」のセーブデータを今テスト中の「FM24」に入れてテストしていますが、問題なくプレイできています。

――今作、マルチプラットフォームとなっていますが、機種ごとのオンライン対戦はどこまで対応されるのでしょうか？

ジェイコブソン氏：オンライン対戦にはいくつかモードがあります。バーサスモードであればPC版とXbox Series X|S版は対戦できます。PS5版は来年2024年には可能にしたいと考えています。他のモードでは基本的に同機種間でのオンライン対戦に限定されます。そのため、オンライン対戦についてはマルチプラットフォーム対応と言えないのが現状です。将来的には全ての機種間でオンライン対戦に対応したいと考えています。

――システム的な質問になりますが、ゲーム内でプレーヤーである監督の年俸をあげるメリットはなんでしょうか？

ジェイコブソン氏：高い年俸をもらうということは、それに付随して大きな責任もついてまわることになります。ゲーム内でもそれは同じで、年俸が高ければその分だけ高い成果を求められます。一方で年俸が多ければ、それだけチームに対しての責任や影響力が大きくなります。その結果、移籍に使えるお金が増えたり、交渉を有利に運ぶ要因にもなります。ちなみに私自身はプレイするときに年俸はいつももらえるだけもらうようにしています。

　この年俸の部分は以前からプレーヤーの要望がいろいろ届いている部分でもあり、他社ゲームのように入手したお金で家や犬を買うなどの使い道をいれないかという声もあります。ただ、我々のゲームはシミュレーションゲームなのでそれらを入れる場合、税金や生活費などを追加することになります。正直なところ、サッカー以外の事をシミュレーションしたくないので、今後も入れることはないと思います。

　使い道がないからと年俸を下げるのが正しいということではないのだけはご理解ください。それがメリットになる時もあれば、デメリットになる場合もあります。また、逆も然りです。

――日本デビューということもあり、今後の展開や日本のプレーヤーコミュニティに期待していることをお聞かせいただけますか？

ジェイコブソン氏：はい。今年が日本への初デビューとなりますが、今後も継続して展開していく予定です。日本では女子サッカーもサッカーを語る上で重要なチームとなっているので、「Football Manager 2025」では女子サッカーリーグを追加いたします。ゲーム自体も日本の方がプレイしやすいように少しずつアップデートしていき、日本のコミュニティを育てていければと思っています。

　日本のプレーヤーコミュニティに限らず、世界中で「Football Manager」のプレーヤーコミュニティには助けられております。ゲームの素晴らしさを伝える口コミや、困ったプレーヤーを助けて協力するなど、私達のゲームを成長させるうえでとても大切な方々です。それに応えられるように、私たちも日本語対応に向けて頑張りました。本作の翻訳には2、3年ほど前から取り掛かっていました。ですが、ゲームの翻訳は簡単ではなく、日英、英日を問わず、必ずといっていいほど違和感のある箇所は出てきてしまいます。そういうことが起きないように可能な限り気をつけてきました。私達は翻訳の部分でも最高のゲーム会社を目指したいので、是非プレーヤーの皆様からフィードバックを頂きたいです。今回、新たに日本のXアカウントも設立しましたので、今まで以上にコミュニティの活性化を共にしていくことをお手伝いしていただけると助かります。