インタビュー

【ゆく年くる年特別企画】2016年の「Shadowverse」を振り返る! プロデューサー木村氏インタビュー

カードは第3弾以降も続々拡大! 注目の日本産デジタルTCGのこれまでと将来を聞く

12月29日 「Rise of Bahamut/バハムート降臨」追加

 2016年6月17日にリリースを開始し、半年が経過した現在、600万ダウンロードを突破している人気の本格スマホカードバトルゲーム「Shadowverse(シャドウバース)」。今月29日には第3弾カードパックとして「Rise of Bahamut/バハムート降臨」も追加され、来年に向けてよりいっそう盛り上がりが期待できる。

 今回は、そんな勢い高まる「Shadowverse」のプロデューサーである木村唯人氏に、「Shadowverse」が歩んできた半年を、思い出深いトピックとともに振り返っていただいた。ローンチ前後の話題から、「バハムート降臨」以降の展望などについてたっぷり伺ってきたので、ぜひご覧いただきたい。

「Shadowverse」は想定よりも多くのプレーヤーに楽しまれていた!

「Shadowverse」プロデューサーの木村唯人氏

――まずは「Shadowverse」の作られた経緯など。木村さんはもともとカードゲームがお好きでいらっしゃるとうかがっていますが。

木村氏: そうですね。僕はもともと好きでカードゲームをやっていたのですが、スペック的に「ようやくスマートフォンでデジタル対戦型カードゲームができるような時代になったな」と思い、新しいゲームの企画として始めた、というのが最初の制作の経緯ですね。

――以前にうかがったインタビューでは宮下さんがゲームのデザインをやっていたということでしたが、木村さんはどのような立ち位置で関わられたのですか?

木村氏: 私はもっと上のレイヤーを見ていて、どういう人たちに遊びやすいものにするか、e-Sports的な側面をどう作るか、また1試合のゲーム時間や、「こういうシステムを入れたほうがいい」という話もしました。

 僕もカードゲームは結構できるので、そういう部分での方針を示しているという感じです。このゲームの面白さは色々あるのですが、そのなかでどういうところをフィーチャーしていくのかなどですね。デジタルでも色々できるけど、あえてこれはやらない、これはやる、そういうところの判断をしていました。

――この半年、振り返ってみていかがでしょうか。

木村氏: 僕らが想定したよりも非常に多くの方々に遊んでもらえているというのはありますね。当初はもっと小さい規模ではじめて、コツコツとカードゲームというものの普及をやっていこうかなと思っていたのですが、その必要もあまりなく、非常にたくさんの人がいきなり遊んでくれて、遊び方が広まってくれました。

――仕事柄色々とゲームの業界人に話しを聞くのですが、あの本格的なカードゲームで、あそこまでの規模になるというのは、一様に皆が驚いていました。

木村氏: 僕らも驚いています(笑)。当初は1年かけて広めていこうとしていたものが、最初からやり方もすんなり入って楽しんでもらえたので、そこは驚きましたね。

ベータ1のときには悪かったテンポも正式リリースでは改良され、ストレスのないプレイを楽しめるようになった

――ローンチ前に戻りますが、ベータテストが実施されていたとき、どんな声が届いていたのですか?

木村氏: 印象的だったのは、ベータ1のときに「テンポが悪い」と言われていたことですね。確かに悪かったのですが、作っているときには慣れてしまっていた。しかし実際にベータ1でやってもらった方には「テンポがよくない」という意見が多かったので、それはもう全部直そうということで修正しました。

――テンポというのは。

木村氏: カードを出したときとか、攻撃するときとかのレスポンスの部分ですね。そこが死ぬほど悪かった。それをベータ2である程度直して、リリースまでには全部直しきれたかと思います。

――このゲームはいける、と思った瞬間はありましたか?

木村氏: ベータ2の段階で非常に面白くなったな、という感触はあって。ゲームはすごい面白くなったので、あとは「どう受け入れられるかかな」というところまではいけた、と作ってる最中に思いました。

――それはもう自信を持ってローンチできたということですね。

木村氏: そうですね。ただデジタルカードゲームというジャンル自体がどう受け入れられるかはわかりませんでした。アナログカードゲームは日本でも結構流行ってますけど、デジタルカードゲームというジャンルはあまりやられていなかったので。

さまざまなバージョンのテレビCMがお茶の間に流れた。見かけたことがある人も多いのでは

――テレビCMですが、状況としては結構早いタイミングで打ってきたなという印象でした。

木村氏: テレビCMは、最初にこのぐらいの時期にやろうというのは予定していました。対戦ゲームなのでたくさんの人に知ってもらえること自体が面白さにつながる、という認識で、とにかく宣伝をがんばって。「『Shadowverse』で対戦してみない?」というのを話せる環境づくりの一貫として、プロモーションもゲームの面白さに直結するものだという考えのもと、プロモーションには力を入れていました。

 対戦相手がインターネット上でも少ないと面白くない。適切な相手と当たらないと面白くない。そういう意味では、多くの人が遊んでいる必要がありました。あと、リアルでの友達を誘うにも「あのテレビでやってるやつ」となれば誘いやすい。

 また、想定よりもたくさんの人が遊んでくれたので、イベントサポートというか、リアルでも戦える場所を作るというところには、当初の予定よりもかなり力を入れました。やっている人が多いぶん、そういう機会が少ないと定員があふれてしまうので、色々なところでたくさんやらないと、いつも競争倍率が高くて参加すらできなくなる。それを避けるためにも、そういう部分を広げていく努力はしていましたね。

大型アップデートにともなうルール変更でバランス調整を実施

――正式配信後の大きなトピックとしては、まず最初の大型アップデートがあって、2Pickやマスターランクの登場、ルールの変更などもありました。その頃の話などをお聞かせください。

木村氏: 当初出したときには、もうちょっと調整を入れるのが前提で出していて。1回リリースして、変えるべき部分は決めていたけれど、ちょっとお試し期間という部分もありつつ、リリースしてユーザーの反応を見ながら変更していこう、ぐらいのつもりでいた部分がいくつかありました。

 そしたら爆発的に皆さんが遊んでくれたので、そこは急いでやらなきゃな、という流れにはなりましたね。幸い、たくさんプレイしてもらえたおかげで、対戦回数が非常に多く、そのぶん大量で質の高いフィードバックが得られたので、それをもともと予定していた大型アップデートに組み入れて修正をかけました。

――ちょっとずつ改良できればと思っていたところが、予定が早まったわけですね。

木村氏: あらかじめ準備しておいてよかったと思いました。

――そのフィードバックによって、変えられてよかった部分はありますか?

木村氏: 1つは先攻、後攻のドロー枚数がそれで確定した、というのがあります。

――そこはもともと、悩んだところでもあると。

木村氏: そうですね。手を入れるかどうか考えていたところで、しっかりしたデータを得られたので、それですぐに決まりました。

後攻1ターン目のドローが2枚になり、手番的に不利な後攻が「事故」になるケースも軽減。結果として先攻・後攻の勝率バランスも落ち着いた形になっていった

――後攻の初手2枚ドローが組み入れられたり、所持できる最大枚数が増えたことにより、先攻と後攻の勝率バランスに変化はありましたか?

木村氏: 以前は先攻有利でしたが、変更後はほぼ半々になりました。

――木村さんの場合はどちらがお好きとかありますか?

木村氏: 僕は後攻が好きですけど、これはデッキにもよりますね。先攻の場合は実はあとのことをあまり考えずにガンガン攻めると意外と相手の対応が間に合わずに勝てることがありますが、後攻の相手が何を持っていても勝てるような戦い方や、リスクをどのタイミングで取るかの選択、という部分が難しくあります。

 一方、後攻は進化と手札の多さを生かして耐えきればいいので、保守的なプレイをしていけば勝てる、というのがセオリーになるのですが、先攻が攻めきろうと思った場合は対応できないことも……といったプレイの難しさがありますね。

――先攻と後攻で戦い方が変わるというのは、改めて本作の面白いところですよね。

木村氏: かなり変わりますね。これはこのカードゲームの特徴でもあって、先攻と後攻でプランが全然変わります。ほかのカードゲームは、言うほど変わらないものも多いですが、後攻のときに強いカードと先攻のときに強いカードは「Shadowverse」の場合は全然違うので、同じデッキでも使い方、最初の手札の交換は変わってきます。

――ちなみに、木村さんはどんなプレイスタイルを好まれているのですか?

木村氏: あまりこだわりはないですね。本当はコントロールが好きなのですが、最近はあんまりコントロールでは勝てないから、使わなくなっているうちに戦い方とかもあまりわからなくなってきて……(笑)という感じです。

 最近は、勝てそうであれば何でも使います。世の中には「勝てなくても面白いデッキを使いたい」とか、そういう人もいるのですが、僕は勝てないのはあまり好きじゃなくて。

――デッキのトレンドもしっかり見ていると。

木村氏: まあ、勝つのが好きなので(笑)。今はエルフを使ったり……ロイヤルも使っていますし、ビショップも使っています。あとは、「このデッキが強すぎる」という話題があったら使ってみて、「実際はあまり強くないな」と確認する、といったチェックもしています。話題になっているものはよく見ていますね。

2組のカードから1組を選択しながら即興でデッキを組み上げていく2Pickが遊べるようになった

――2Pickへの反応はどうですか。

木村氏: 2Pickはなかなかいい反響が出ています。2Pickが本当に好きな人はずっとやっていると思いますし、そうじゃない人はたまに気分転換でやるとか。あと、ルームマッチの2Pickというのはずっとやりたかったことなんです。ああいうリミテッド戦を手軽に友達とできるというのが、今までのカードゲームの文化にはなかった。

 かならず手間がかかるしお金もかかる、というのがリミテッド戦の宿命みたいなものなので。ただすごい面白いからもっとやってほしいな、と思っていて、そういったところから2Pickのルームマッチ対戦は無料でできるようにしています。

――その後はPC版のリリースもありましたが、これは最初から予定されていたのですか?

木村氏: はい。

――リリースしてみていかがでしたか?

木村氏: やってよかったなというところはありました。今振り返って思うと、e-Sportsとしては絶対に必要なことでしたね。通信環境は安定性の高い有線でできますし、電池は不要ですし、メモリも大きいですし、配信も同時にできます。スマホでも配信はできますが、そういうことをいっぺんにやって安定して動かすのにPC版は欠かせません。大きな大会では、進行上PC版が必要になってくるという感じでした。

 あとは、海外だとPCで遊ぶ方が日本よりも多いので、そういった意味では海外でも遊ばれますし、ほかにもユーザーが配信するにはPC版の方が便利とか、色々な良い効果がありますね。今の配信文化にも合っていますし。

――ユーザーの動向的には、PC版とスマホ版のどちらの動きがいいのでしょうか?

木村氏: スマホでやっている人のほうがもちろん多いですね。PCでやっている人はコアな方が多いというのはあります。ただ、今の話の通り、何か特殊なことをやるときはPC版があると便利、みたいなところがありますので。特殊なことをやる人には、影響力が大きい人も多いですね。

――現状では、プレーヤーが1番多いランク帯はどの辺になるのでしょうか?

木村氏: B、Cあたりが1番多いですね。下が多くて上に行くにつれて少なくなっていくという感じです。

――乗り越えるのがキツイ、壁になっているランク帯というのはありますか?

木村氏: キツイ壁というものはありません。Aランクからは連勝ボーナスがなくなるので、そこからランクを上げていくのが難しくはなりますが、各ランク帯はつねにそのランクの人たちの適切な壁になっていると思います。

拡張カードパックへの反響とこれからのカードの方向性

――これまでカードパックが第3弾までリリースされてきましたが、ユーザーの規模が予定よりも広がったことによって、リリース計画に影響はあったのでしょうか?

木村氏: いや、あまりないですね。カードパックの導入は最初の頃から決まっていて、3カ月くらいに1回新パックを出す、というのを最低限やらなきゃいけないと。

――前回は第2弾の「ダークネス・エボルヴ」が追加となりましたが、振り返ってみていかがでしたか?

木村氏: 初めての追加カードパックということで非常に盛り上がってもらえたというのと、新しいカードを見た人たちがそれを使ったデッキについて色々と話をしてくれているのが、非常にうれしかったです。カードゲームはそういうものなのですが、それが結構大きな規模で行なわれていたというのがよかったなと。

 反響については、新カードについては年中同じようなことが言われていて、「あのカードが強い、このカードが弱い」「あのリーダーが強い、このリーダーが弱い」といったような意見が非常に多いですね。これも対戦ゲームの宿命かなと思っているのですが、それ以外はむしろあまり何も言われないですね。

――ユーザーの注目はカードバランスに集中していると。

木村氏: 集中していますね。

――ベータテストからこれまでのサービスのなかで、リーダー人気や強さの変遷などありますか?

木村氏: 初期はカードの数の関係もあってヴァンパイアが強かったのですが、カードの種類が多くなり、ルールが見直された結果、今ではそうでもなくなっています。最初期はビショップが結構弱かったのですが、今はビショップも強くなっています。これも、ある程度予想はしていたことなのですが。

――今はそれぞれのリーダーの勝率にバランスは取れているのでしょうか?

木村氏: それなりには取れていますね。リーダーでバランスを取るという概念もあるのですが、デッキでバランスを取るというのもあって、「ある1つのデッキが勝ちすぎない」という点は重視しています。

 それが結果としてリーダーのバランスにもなるのですが、突出したすごい強いデッキが出ないことがデッキの多様性を生むので、そういうところを見つつ、リーダーも見てバランスを取っています。第3弾が出てカード枚数が増えてくればさらに選択肢が広がるので、これからまたいろんなデッキも作れるようになってどんどん面白くなるはずです。

 第1弾、2弾ではまだ入門編、ぐらいまでしかカードが出ていなかったので、第3弾でようやくカードの枚数が十分なくらいに達するかな、という感じですね。

回復カードの大量導入で真価を発揮する「エイラの祈祷」はビショップの人気カードの1つ

――「ダークネス・エボルヴ」で注目されていたカードやデッキはありましたか?

木村氏: 話題になったのは「エイラの祈祷(自分のリーダーが回復するたびに全フォロワーの攻撃力と体力が+1)」や「封じられし熾天使(カウントダウン1で別のアミュレットに変化し4枚目の『栄光のセラフ・ラピス』破壊時に勝利)」などですね。

 変わったカードだったりお手軽に強いカードがとくに話題になりました。「スタンダードカードパック」のみのゲーム環境では、進化させたカードを使って効率よく戦う、みたいなところに焦点を置いていたのですが、「ダークネス・エボルヴ」では進化したカードがあれば何かができたり、進化したときに何かが起きたりするのが選択肢として増え、進化というものをどこで使うかがより重要になりました。進化に対してフィーチャーしたという僕らの狙いどおり、そういう風になったなと思います。

――12月29日には第3弾「バハムート降臨」が出ましたが、そちらの狙いはいかがでしょうか?

木村氏: 第3弾には「エンハンス」というものが入り、コストが少ないときと多いときで効果が変わるカードが出てきます。これによって、より柔軟なデッキが作れるようになり、序盤にも終盤にも使えるカードが増えて守りやすくなります。守りから攻めに転じるタイミングに変化が出てくるので、その辺りで戦術に結構影響が出るのかなと思っています。

――今後もカードパックは追加になると思いますが、新カードパックの方向性や、考え方などがあれば教えてください。

木村氏: 考え方としてやりたいことは何個か決まっています。今後こう拡張していくというアイデアがあって、それを今回は何にしようかなと決めています。もう少しカードが増えてくると話が変わってくるのですが、ゲームデザインをちょっとだけ拡張していく、今はまだその段階かなと。今回のエンハンスは「使い道が2つあるカード」というコンセプトで拡張されていますが、次もそうやって、何かを拡張する要素が出てくるという形になると思います。

――さらに将来的な話として、いわゆる「スタンダード落ち」、古いカードパックがレギュレーションから落ちていくというのは有り得るのでしょうか。

木村氏: 常にそれは検討しつつ、どうするかというのをこれから決めていかなければいけないなと考えています。

――現在はどういう作業に入っているのでしょうか?

木村氏: 今は第6弾のカードの選定中です。バランスだけで言うと、第4弾を調整中というところでしょうか。こちらはそろそろ終わるところです。第3弾の発表が終わったら、第4弾の情報も少しずつ出していくと思います。

――ストーリーについてですが、こちらは拡張を考えていますか?

木村氏: ストーリーはもちろんあれで終わりではなく、続編が出てきます。全員のメインストーリーが拡張される予定です。

――ちなみに、ストーリーが完結することはあるのでしょうか?

木村氏: ストーリーは完結されますが、新たなストーリーが出てくる形になると考えています。

――ストーリーを販売する予定などはありますか?

木村氏: 今のところ、予定はないです。

――「Shadowverse」は全体的に暗めな世界観が特徴だとは思うのですが、今後は明るい雰囲気のストーリーや拡張パックが登場する可能性はありますか?

木村氏: うーん、それはどうでしょうね(笑)。なんとも言えません。

e-Sportsへの本格的な進出について

――「Shadowverse」をプレイするにあたって、大会も1つの注目ポイントだと思うのですが、ツイッターを活用して大会情報をどんどん上げていたのが印象的でした。

木村氏: 先程お話したとおり、イベントサポートにはかなり力を入れてやってきました。キャラバンもやっていましたけど、その辺りも色々と注力していました。

――この半年間での大会に関する印象的な出来事はありましたか?

木村氏: やはり「RAGE」という大きな大会が開かれたことは非常に印象的でした。評判も良かったですし、そこで色々な個性ある人々がトップに出てきて、その点もよかったですね。

「RAGE」Vol.2で緊急発表された「Shadowverse」賞金制大会。賞金総額700万円という高さも話題を呼んだ

――規模の大きい賞金制大会の第1回ということになりますよね。

木村氏: そうですね。「RAGE」Vol.3が最初です。

――日本だけでなく、海外での大会も今後あると思いますが、そちらはどのように広がると見ていますか?

木村氏: 日本はオンライン大会からリアルの大会という流れがありましたが、それと同じく海外もそういうふうになるのかなと予想しています。

――その時期はいかがでしょうか?

木村氏: まだいまのところは。ただ、オンライン大会が始まってきたので、これからというところですかね。

――大会といえば、プロチーム「Team Cygames」も木村さんが手がけていらっしゃいますね。

木村氏: そうですね。僕が発起人ですね。

――「Shadowverse」の発表イベントのときに「Team Cygames」は全然関係ない、とはおっしゃっておられましたが、今後は関わっていくのでしょうか?

木村氏: 僕自身カードゲームを好きなので、プロプレーヤーチームも作ったし、カードゲームも作ったという形なので、この2つは僕から見れば関係ありますが、実際にはあまり関係はありません。

 この2つが何かコラボレーションして、というのもあまり考えていません。「Shadowverse」はゲーム側からe-Sportsを促進していて、「Team Cygames」はプレーヤー側のe-Sports文化、プロプレーヤー文化というものに貢献できればという狙いがあります。

――そもそもの狙いが違うと。ということは、「Team Cygames」には現在は「マジック:ザ・ギャザリング」のプロプレーヤーの方が所属されていますが、ほかのゲームタイトルにも波及していく可能性があるのでしょうか?

木村氏: ゼロではないです。ゲームプレーヤーに注目が集まるということは何のゲームでもいいと思っているので。「マジック:ザ・ギャザリング」はアナログのゲームですが、非常に日本人が強いんですよ。

 日本で流行しているから日本が強いというタイトルは結構あるのですが、世界中でやられていて、日本人がトップを取るというゲームはあまりないので、「マジック:ザ・ギャザリング」のプレーヤーはこれからもっと評価されるべきであろう、というところも含めてはじまったプロジェクトですね。

――「Shadowverse」についても、世界に広がって日本人が勝つのが理想となるのでしょうか?

木村氏: 逆に「Shadowverse」は海外の方が強いといいなと思っています。やっぱりe-Sportsでどちらかが強すぎるとあまり成り立たないので……日米同時リリースはしていますが、日本が先に流行ったので、今は日本が強くて当たり前な状態ではあります。なので、海外で強力な方がいて、日本が頑張ってそれに勝たなきゃ、ぐらいのほうが盛り上がると僕は思っています。

今後の「Shadowverse」はどのようになる?

――今後「Shadowverse」がどういう風に成長していってほしい、という思いはありますか?

木村氏: 「ありさデュエルバース」という漫画があってですね。これはサイコミ(無料マンガ配信サービス)で連載中なのですが、あんなふうにみんなが「Shadowverse」をやっている世界になる、というのが1番の目標ですね。「Shadowverse」をみんながやっていて、それが学校や職場などで共通の話題になり、新しいカードが出たらそれについて話が盛り上がる、みたいなものがどんどん広がっていけばいいなと思っています。

――初心者といえば、友人がチュートリアルが難しいと言ってましたが……。

木村氏: 世の中にはいろんな人がいますからね(笑)。そういう場合は、キャラバンに参加してもらえれば、ティーチングゾーンもあります。キャラバンの狙いには、誰かに教えてもらえるような環境づくりをしたいというものがあって、たくさんの人がやっていれば誰かに教えてもらえるという連鎖が起こるといいなと。そういう意味では、たくさんの人にやってもらうのが大事かと思います。

――知り合いに勧めているのになかなか一緒にやってくれないのですが、いい誘い文句みたいなのはありますか?

木村氏: 「待ち時間にやると面白いよ」と勧めるのが1番ですね。これは私の周辺の話ですが、アナログのゲーム大会などで待ち時間や空いた時間にやっているという人は結構いらっしゃいます。

 トッププレーヤーの方でも遊んでいる方がいらっしゃいますし、有名なところでは格ゲーのふ~どさんなんかもやっています。みんな大会中の待ち時間にもやれるので、これは熱心なゲームファンにとって1番のメリットじゃないですかね(笑)。こちらとしても、それでいいと思っているので。

――「Shadowverse」はもっとガツガツ広めて行くぞ、というイメージがあったのですが、本日お話を聞いていて、もっと腰を据えて将来を見ているということがわかりました。

木村氏: 今後も地道に頑張っていきます。

――2017年も期待しています。本日はありがとうございました。