インタビュー

【ゆく年くる年特別企画】
スマホアプリ「予言者育成学園 Fortune Tellers Academy」の運営に直撃してきました!

波瀾万丈のサービスインを振り返り、来年への抱負を語る!

2月15日 サービス開始

 2015年12月、年の瀬も押し迫った折りにスクウェア・エニックスからAndroid/iOS用タイトル「予言者育成学園 Fortune Tellers Academy」(FTA)が制作中であることが明らかになった。

 初めてその内容を聞いたときから個人的に衝撃を受けたのだが、「FTA」はすべてにおいてスマートフォン用ゲームとしては他にないゲームだった。流行りの「クイズ」に答えるとはいえ、出題されるのはこれから未来に起きることを予想するという一風変わったものだし、バトルが発生すれば、敵の行動を予測しながらバトルを組立てていく戦略性の高いシステムを採用しており、正直戸惑った。

 だが似通ったスマートフォン用ゲームが多い中、ワクワクさせるゲームであると感じ、サービス開始時期に弊誌でもインタビューをさせていただいている。

 一方で非対応機種を減らすためにサービス開始を延期するなど、決して順風満帆に運営が行なわれてきたわけではない。とはいえ、熱狂的なファンを集め、ゲーム規模は増加の一途をたどっている。

 今回のインタビューでは、プロデューサーである藤澤仁氏と運営ディレクターの木村未来氏に登場を願い、年末年始と言うこともあるのでサービスインから約一年の軌跡を振り返ると共に、来年に向けてどういったサービスをしていきたいと考えているのかを語っていただいた。

 「FTA」ファンの皆さんはぜひともご覧頂きたい!

プロデューサーである藤澤仁氏
運営ディレクターの木村未来氏

プレーヤーに支えられたサービス開始

――あらためまして今年1年を振り返ると、いかがでしたか?

藤澤氏: いろんなことがあったんですが、振り返ると、苦しいことばかり思い出しますね。まず最初に、2015年12月に「ドラゴンクエストX」のクリスマス生放送で「こういうのを作っています」と発表させてもらいました。

 その段階では2016年1月18日にサービス開始の予定だったのですが、特定の動作しない機種があり、サービス開始寸前まできて出すのか出さないのかというシビアな判断が求められました。

 せっかく新しいゲームを始めるのだから、みんな一斉に始めたい、との想いからサービス開始を延期する判断をしました。それでもなんとか1月中にスタートしたかったのですが、結局1カ月近く対応期間をいただくことになり、厳しい船出だったなと思いますね。

木村氏: 2月15日のサービス開始をアナウンスしたのが、1月末のプロデューサーからの挨拶だったのですが、これを公開したらTwitterに「待っています」というコメントがずらっと並んだのは印象的でした。予言テストだけ先に公開したので、“サービスが始まるまで練習問題をやって待っています”といったコメントが見られました。

藤澤氏: 予言テストの制作チームはスケジュール通りに問題を作り始めていたので、Twitterに予言テストを掲載して、待っていてもらいました。

――「FTA」に対する反応はいかがでしたか?

「予言テスト」と「バトルシステム」、そして魅力的なストーリーが3本柱の同作。そのベースとなった世界観を支えているのは美しいグラフィックスと印象的な音楽だ

藤澤氏: 僕たちが最初に不安視していたことは「なんだこれは? わけわからんぞ」という感想が来ることだったんです。しかし、初めてプレイをする人でも、つまずくことはなく、すっとゲームに入ってきてくれたように思います。

木村氏: リリース以前の否定的な意見でよく目についたのが「スマホかよ」と。でもリリース後はすぐに、「ストーリーが面白い。小説のようだが手軽に読めて良い」といったように、反応が変わりました。

藤澤氏: 今から1年前くらいだと、コンシューマーゲームで遊んでいる人の、スマホゲームに対する反感、偏見は今よりも強かったように思いますね。この1年でまた変わってきたと思いますが、最初は「スマートフォン用のゲームです」と言っただけで、「はい、解散」とコメントされたことをよく覚えています。

 それでも実際にサービスが始まってからは、「まさかスマホのゲームで泣くとは思わなかった」という感想を何度もいただきました。

 この言葉は、象徴的だと思います。スマホゲームはちゃんとしたゲームとは別物と思っているけど、遊んでみたら面白かったと認めてもらえた気がして、心に残ってますね。

――その他には、どんな意見がありましたか?

藤澤氏: 動作が重い、電池が減るという問題は一歩ずつ、未だに継続して改善を図っている状態です。あとは、一番最初のバージョンから「大アルカナ戦」というレイドシステムを入れたかったのですが、どうしても入れられなかった。世界に強敵がいなかったので、「何を目指すのかわからない」というご意見をよくいただきました。1カ月後の3月19日にリリースした「バージョン1.1」で、ようやく「大アルカナ戦」が実装されました。

――サービスをしていてうれしかったことってありますか?

藤澤氏: プレーヤーさんから存外に多くのコメントをいただけるゲームではあるので、それが何よりうれしいですよ。また、「FTA」は斬新すぎるゲームなので、こういうアイデアがゲームとして実現するということに、驚かれていた人がたくさんいました。

 これは僕のポリシーとして、ゲームの完成度が上がるまでは宣伝はしないことにしていました。まずは少人数で遊んでいただき、完成度が高まった段階でプレーヤーさんを増やす施策を採ろうと。

 当初は、3カ月くらいでそこまで行けると思っていたのですが、実際に準備ができるまでに7カ月かかってしまいました。これは非常に深刻な問題で、7カ月という時間は、1本のゲームを遊ぶ期間としては相当長いと思うんですよね。普通なら飽きてやめてしまってもおかしくないのに、その間ずっと協力的に支え続けてきたプレーヤーさんがいたことが、このゲームが今日までやってこられた最大の要因だと思います。本当に感謝の念に堪えません。

3カ月後;ケイトリン先生の誕生日イベント、大アルカナの実装/など

念願の大アルカナが実装されたのはサービス開始3カ月頃のこと。プレーヤーの目標となる要素だったため、藤澤プロデューサーとしても満を持しての導入だったようだ

――ここでついに大アルカナが実装されます。これは念願だったわけですね?

藤澤氏: そうですね。大アルカナの実装で、ようやくプレーヤーが一緒に楽しめるイベントを作れました。自分たちも開発スタッフも、とにかく全員スマホゲームの運営ノウハウが足らず、あらゆるトラブルをすべて体験するようなやり方をしてきていました。ですが、この頃からようやく、キャラクターの誕生日であったり、あるいは季節イベント的なものを入れられるようになってきましたね。

木村氏: ケイトリン先生のお誕生日イベントは1番最初だったので印象に残っていますね。自分が運営に不慣れで、このゲームのプレーヤーさんに対してどういうサービスをしたら喜んでもらえるだろうか、というのを模索しながらでした。

 しかし、「ケイトリン先生のお誕生日にお祝いのイラストをプレゼントしたい」とイラストコンテストを実施したところ、200人以上ものたくさんの方から、心のこもったイラストをいただきました。またお祝いメッセージも毎日贈られてきました。それを見たときに、呼びかければ一緒に盛り上げてくれるプレーヤーさんの存在を初めて強く感じました。なので、運営次第でプレーヤーさんにもっと楽しんでもらえるだろうということ、藤澤のようにプレーヤーさん1人1人を大事にすることで、遊んでいる方とちゃんとコミュニケーションがとれるということを実感しました。

藤澤氏: このゲームの特徴でもあるのですが、SNSなどネットコミュニケーションが沸騰しました。Twitterの書き込み数も毎日数千にのぼりましたし、インターネット掲示板の勢いランキングでも1位になったりしたんです。その勢いもあって、イラストコンテストもたくさんの方が参加してくれた、という感じですね。

木村氏: サービスできなくてめげそうなときに「頑張って」とSNSで声をかけてくれたプレーヤーさんの名前も全部覚えてるんです。感動しすぎて、SNSの画面写真を撮っちゃいましたから。あれは泣きましたね。

――大アルカナが入ったときにプレーヤーさんの反応はいかがでしたか?

藤澤氏: 賛否両論ありました。「強敵が出て楽しい」という意見もありましたし、「強すぎて面白くない」という意見もありました。ゲームシステム的に、プレイ時間が決められていることから、遊びたいのに遊べないストレスが大きいというご意見もありました。これについては未だにあの手この手を打っている最中です。

 このため、大アルカナと戦いやすい時間を申請すると、そのクラスに編入してくれるという仕組みを作りました。それでも決まった時間に来るわけではないのですが、例えば朝起きられないから勘弁してくれという人の所には朝は来ない、というようにはできるようになりました。

――他に何か印象的なことはありましたか?

藤澤氏: 元々このゲームの特徴ですが、学園をモチーフにしているので、半月に1回クラス替えがあるんです。そのタイミングでプレーヤーさんのデータメンテナンスを行なうのですが、毎回メンテナンスは延長しがちだったんです。

 ですが、5月17日に「バージョン1.2」をリリースした日は、メンテナンスが終わった直後に、データが我々の意図したとおりになっていないと判明しました。「超特待生」になっていなければいけない人が「一般クラス」に入っていたり、「データがおかしい」となって、すぐに緊急メンテナンスに入りました。

 この修復に丸1日かかって、25時間張り付きでの対応となりました。この1年で1番心が折れたのは、この日でしたね。

――しかしこういうトラブルはほかでもよく聞くことですね。

藤澤氏: そうかもしれないのですが、自分がプレーヤーだったら、遊べない時間があることは腹が立つと思うんですよね。なので、ただ申し訳ないなという気持ちばかりでした。

 これが5月に起きたことなので、半年くらい前の話です。今だからこそ思うのは、自分たちは力不足だったなと。そのときは辛かったですけど、今思えば必要な時間だったかなという気がします。

――厳しい反応の中で1番大変なのは矢面に立つ運営さんだと思うのですが、木村さんはいかがでしたか?

木村氏: 矢面に立ってくれてるのは藤澤なのですが、運営の代表として、常にプレーヤーさんが納得するような説明をちゃんとするべきだという考えで運営しています。私も、プレーヤーさんに嘘をつかない点は守るようにしています。たとえば、メンテナンスを終了するスケジュールを後ろ倒しにするのはダメですね。基本的には絶対にしてはいけない。プレーヤーさんがこの時間なら遊べると、待ってくれているわけですから。プレーヤーさんとの信頼関係をどうやって作っていくか、というのが大事だと考えています。

――このほかにも意見はあったのでしょうか?

藤澤氏: ゴールドの使い道がないという意見があったので、特技をゴールドで買える「消費特技」という機能を実装しました。非常に直球的な対応だったのですが、消費特技はいまでも戦術として重要な地位を占めているので、これはよかったかなと思っています。

 この頃、プレーヤーさんのご意見で多かったのが、予言テストの倍率の変更時間についてですね。倍率が変わる時間が、24時間で1度変わって、そのあと1時間ごとに変わるというルールだったため、出題されてから24時間後の倍率が一番大きく変動する時間に張り付くのが得だと。そうなると、1日4問あるから4回張り付かなければいけないと不満になっていました。

 この点に関しては、倍率の変動タイミングを完全に24時間に1回にしました。これによって張り付きは不要になったので、遊びやすくなったと好評です。このあたりは、プレーヤーさんが不満を伝えてくれたからこそ解決された問題だと思います。

――しかしスマホゲームはいつでも遊べるので、張り付くシーンも多くなりますよね。

藤澤氏: そこは重大なテーマだと思っていて、スマホゲームではどこまで張り付きが許容されるかに関しては、率直に自分の認識が甘かったです。スマホのゲームの最大の利点は、どこでも遊べること。どこでも遊べるということは、いつでも遊べるということ。だから、時間指定も許容されやすいという気持ちがありましたが、結果的にストレスを生む要因になっています。これに関しては、ひとつずつ改善していこうと思っています。

 「大アルカナ戦」について「遊びやすい時間設定」ができるようにしましたが、将来的にはもっと遊びやすくする予定です。プレーヤーさんが好きな時間に大アルカナと戦える形にしていこうと思っています。そのためにはどういうルールであるのが最適かを考えながら、仕様を練っている最中です。

6月:「ドラゴンクエストX」との初コラボ/など

コラボレーションと言えば、ジョイサウンドさんや他業種とのコラボはあるが、他のゲームとのコラボは意外に少ない。藤澤プロデューサーが「ドラゴンクエストX」チームにいたことから、「ドラゴンクエストX」とのコラボが実現。現在も行なわれている

藤澤氏: 6月末にリリースしたバージョン1.3ですが、クラスによって大アルカナが3分で倒されてしまったり、あるいは1度も倒せなかったりと格差が激しかったんです。このため、大アルカナが倒されるたびにレベルアップしていくようにし、大アルカナに蓄積したダメージも引き継がれるようにしました。これによって、強いクラスはより強い敵と戦えるし、倒せないクラスは何回かに分けて倒せるようになりました。強いクラスにも弱いクラスにも、それぞれ違う道を作ったことで、「大アルカナ戦」自体は楽しさが増したと考えています。

――このあたりからゲーム性に広がりが出てきたんですね?

藤澤氏: そうですね。「アルカナクイーンコンテスト」や「ナイトコンテスト」とか、タロットカードプレゼントといったイベントも始まりました。あとは、「ドラゴンクエストX」との4周年記念コラボ第1弾も「バージョン1.3」の終わりの頃にやりました。

――「ドラゴンクエスト」が初めてほかのゲームなどとのコラボレーションになるのでしょうか?

藤澤氏: 問題を出すときにご協力頂いた企業さんはいらっしゃいますが、当社のほかのゲームとコラボしたのは初めてですね。4周年コラボ第1弾は簡単なコラボだったのですが、11月15日より12月15日の間開催している第2弾は、どちらのゲームのプレーヤーさんにもメリットがあるので、「ドラゴンクエストX」のプレーヤーさんがたくさん遊びにきてくれて盛り上がっています。

――コラボレーションの運営は大変でしょうか?

木村氏: 企業さんとのコラボで言えば、最初にジョイサウンドさんとの案件を担当したのですが、ゲーム同士のコラボと違ってそもそもお互いのプレーヤーさんの遊びが異なるわけですから、ジョイサウンドのお客さんに「FTA」を楽しんでもらい、「FTA」のプレーヤーさんにもジョイサウンドに行ってもらうという、相互に協力できるという形がどのようにしたらうまくいくのだろうかという部分に頭を悩ませました。今でも難しいなと思っています。

――「クイーンコンテスト」は結構思い出深かったと聞きましたが?

藤澤氏: 最初のうち、プレーヤーさんから頂いた心配の声で印象的だったのは、「お金を払うところがないんだけど」という点でした。これも自分の認識が甘かったんだと思うのですが、プレーヤーさんが本当に欲しいと思うものを提案できていなかったら、お金を払ってもらえるはずがないですよね。

 自分のような長年コンシューマー用ゲームを作ってきた人間は、すべてのプレーヤーは平等でなくてはならないというという考え方が骨の髄まで染みついています。ただ、それではお金を必要とするという領域に踏み込んだゲームデザインができていない。それが自分の弱点であることを素直に認識して、じゃあどうすると本当の意味で価値があるもの、欲しいと思えるものを提供できるかを考えながらイベントを作っていったのが、この時期でした。

――昔に比べると、楽しければ課金してもいいよという気持ちを持つようになりましたよね。

藤澤氏: 人によるでしょうね。今でもスマホゲームにお金を使うことに対する違和感を感じている人は、大勢いると思います。僕らはお金を使わなかったからといってプレイを制限しませんし、お金を使わないで遊ぶという楽しみ方もわかりますので、それを否定することもありません。

 しかし、現実的な話、それでは事業は立ちゆかないので、お金を払ってもいいというマインドを持つ方に対して、しっかりと価値のあるものを提供していかなければ事業としてもゲームとして成立しない。1番あってはならないことは、ゲームとしては楽しまれているのに、事業面が弱くてサービスが継続できなくなってしまうことです。そういう認識も覚悟も、自分は全然足らなかったと反省しました。

木村氏: 運営イベントを企画するにあたり、プレーヤーさんが1番欲しいもの、喜んでくれるものってなんだろうってずっと考えていて。何にだったら払ってもいいよと思って頂けるんだろうと考え、「やっぱり、一番ほしいのはアルカナではないでしょうか?」と、イベント企画とともに藤澤に提案しました。その時点では、まだ企画は完成していませんでしたが、藤澤から「だったらいっそ、好きなアルカナをもらえたらいいんじゃない?」と助言をもらい、クイーンコンテストの企画ができていきました。

――好きなキャラクターもあると思いますが、プレーヤーとしてはバトルの効率化を考えますよね。

藤澤氏: うちのゲームのプレーヤーさんたちは、キャラクターへの愛が強い気がしますね。効率を重視するよりも、このキャラクターが好きだから欲しいと言ってもらえます。そういう風になったらいいなというのは、自分でも目指していたことの1つなので、実現できてよかったと思います。

 この時点で、ゲームとしてもリリースから半年経ったので、開発に集中する期間をもらい、「バージョン2」を作りますとアナウンスをしました。開発に時間をいただいて、3カ月の間「バージョン2」の作り込みに入ったのがこの時期でした。

 これまでは、SNSなどでは活発にコミュニケーションが取られていたのですが、ゲームの中にコミュニケーションの場がなかったんですね。なので、ゲームの中にコミュニケーションの場がある方がいいのではないかと、「談話室」という掲示板をゲーム内に作りました。

 あとは「優等生」や「グリモアの鍵」など、作るには時間がかかる機能もこのタイミングで追加しました。

ハイエンドコンテンツの1つである「グリモアの鍵」。メインストーリーとは独立した、アルカナ個々の物語を楽しめる。読みたければぜひとも頑張っていただきたい

――「グリモアの鍵」の位置づけについて改めて教えていただけますか?

藤澤氏: 本来は、強敵を倒してストーリーを読み解いていくコンテンツという位置づけなのですが、サービスが始まってから7カ月も経って実装されたこともあり、長く遊んでくれている人にとっては「歯ごたえがない」という意見をいただいています。

 ただ、アルカナ自体がとても人気があるので、それぞれのキャラクターのストーリーを掘り下げるという役割を果たしてくれています。そういう意味では好感を持って読んでもらっているなと思う反面、バトルがあるのでテンポが悪いとか、今後も改善すべき点は多いなと思っています。

――談話室は結構使われていますね。

藤澤氏: まあまあですね。「バージョン2.1」で談話室の機能は改善をしましたが、今後も色々と手を掛けていきたいと思っています。

――ほかの掲示板ではギスギスしたりすることもありますよね。

藤澤氏: これまで、コミュニケーションによるトラブルの報告がはほとんどなかったのですが、最近はプレーヤーさんが増えたこともあって、時々報告を受けるようになってきましたね。コミュニケーションのルール付けを、もっと整えていく必要があると思っています。

木村氏: 談話室を作るにあたり、規約や管理機能などを念入りに備えたんですよ。他のゲームと違って、予言テストで企業名や個人名を扱うことがあるので、もしそちらに迷惑がかかる事態になったら、談話室を閉鎖しなければいけないかもしれない。閉鎖機能や警告機能もつけました。でも、運用してみるとマナーの良い人が多くて、毎日、社内でもチェックしてもらっていますが、最初の頃は驚かれました。「『FTA』のプレーヤーさんは、とっても礼儀正しいですね」と。

 ただし、中には暴れる人も少しはいたりするんですが、ほかのプレーヤーが「やめたまえ」と抑えてくれるようです。「そういう発言は『予言者育成学園』にふさわしくないですよ」とか。先輩が新入生にちゃんと教えてくれる感じで、ありがたいですね。

――優待生機能はどうですか?

藤澤氏: これは、一定以上の課金がある方は少しゲームを使いやすくする機能で、おかげさまでうまく機能しています。

 スマホゲームの特徴ですが、すごく少人数の人がたくさんお金を払っていて、90%以上の人はお金を払っていないという構造になります。それ自体を悪いとは思わないのですが、あまり健康的ではないなとは感じます。なので、これを少しでも平らにするということは、試み続けていきたいと思っています。優待生がうまくプレーヤーさんの間で根付いてもらえると、自分たちも長く運営を続けていけるので、ご理解をいただけるといいなという意味も込めて、優待生機能は充実させていきたいです。

――そういう収益構造はオンラインゲームの欠点ですね。

藤澤氏: 欠点だとは思いませんが、率直にいびつだなとは思います。楽しんだ人が楽しんだことに比例しただけのお金を払う方が、健康的だなと思うところもあります。なので、少しでもそれに近づくよう発言することは、運営として必要な姿勢だと思います。

 現時点での問題は、ゲームの使用容量が大きすぎる点ですね。なるべく多くの人に遊んでもらうために、容量削減の施策に取り組んでいるところです。

 皆さんが付き合いやすいゲームであろうという努力は、まだまだ今後も続くんだろうなと思います。

談話室でコミュニケーションを取ることで、「予言テスト」のヒントが見つかるかもしれない

9月:「バージョン2」をリリース

藤澤氏: 9月30日の「バージョン2」のリリースに合わせて、ようやくいろいろな施策を打てるようになりました。これでプレーヤーさんも一斉に増え、ランキングにも載るようになってきました。これまで遊んでくれたプレーヤーさんが、「ああすごく存在感が出てきた」と一緒に喜んでくれています。ここに来て、ようやく運営としては健康体になってきたかなというところです。

――第2弾の「ドラゴンクエストX」コラボについてお聞かせください。

藤澤氏: 非常に好調です。バージョン2.0.4に合わせてコラボをスタートしたのですが、アクセス集中によりサーバーがダウンするという状況でした。皆さん楽しみにしていたようで、瞬間最大アクセス数がこれまでの過去最高の3倍以上で、急メンテを入れてサーバーをスケールアップしました。サービス開始から9カ月目にアクセス集中でサーバーダウンするとは、僕たちも思っていなかったです。

 そういう、普通とはちょっと違う道筋をたどってきたゲームですが、少し時間が経ってからプレーヤーさんが増え始めて、今もまだ増え続けている状態です。これは運営をしている側としては、大きなやりがいになっています。「遅きに失する」というのはよくある話ですが、そうならないギリギリのところで間に合ったのかなと、ひと安心しています。

――サービスに入るときに思っていた理想から、どれくらい近づけたのでしょうか?

藤澤氏: うーん、僕は長年「ドラゴンクエスト」しかやってこなかった人間なので、全くのノンIPで、ましてややったこともないスマホのゲームで、最初からそんなにうまいくはずがないという気持ちで始めたというのが正直なところです。

 なのであまり過大な夢は見ていなかったです。ただ、せっかくほかにはないゲームなんだから、少しでも長く運営を続けられたらいいなということを最大の目的としていました。

 なので、今の時点ですでに、想像以上のことが起きているという感覚が強いです。しかも長く運営をさせてもらえそうな状況にあるので、思った以上の成果が上がっているなと、達成感は大きいですね。

木村氏: 藤澤が私に1番最初に話してくれたことがあります。それは、「未来の出来事を予想して、みんなでわいわい話している時ってすごく楽しいじゃん。それはこのゲームにしかないことで、それを実現したいんだ」と。そういうことがプレーヤーさんの間で頻繁に行なわれています。

藤澤氏: これまでは知らなかったけど、問題が出ていたからフィギュアスケートに興味を持ったとか、プレーヤーさんたちで盛り上がったらいいよねというのがまさに実現できています。このゲームを取り巻く環境としては、理想の状況が作れているんじゃないかと感じています。

――スタート地点としてもそうだったのでしょうか? 前回のインタビューもわいわいと話しているのが楽しいよねとおっしゃっていたと思います。

藤澤氏: スタート地点もがそれでしたからね。日本にはブックメーカーがありませんよね。これからどうなるのか。想像を巡らせること自体が楽しいのに、日本人にはそれをする機会がない。なので、このゲームがそういう存在になれればいいなというのが出発点でした。

ジャックマン教頭の設定資料
なにかとプレーヤーと関わることの多いジャン先生の設定資料

――キャラクターへの愛が濃いといいますが、今年1年、どのキャラクターが人気があったのでしょうか?

藤澤氏: 僕の性格なのですが、必ずそのとき目立っていないヤツを目立たせようとします。こいつがちょっと影が薄いから、グラフィックスを追加しようとか。

 そうやってバランスを取っているので、どのキャラクターも誰かには好かれていて、満場一致のスーパースターってはいない気がしますね。

木村氏: ネタになってしまうキャラクターは何人かいますけどね。それから、学園キャラクターも人気出ましたね。先生の中で、ジャン先生は愛されています。

藤澤氏: 顔を見る機会が多いからですかね。

木村氏: ジャックマン教頭は不動の大人気ですし。キャラクターの作成の段階でも1番苦労したと言ってましたよね。

 もう1つ、このゲームでキャラクター人気を左右しているのがアルカナのフレーバーテキストですね。アルカナ1人1人にお話がついているのですが、このテキストによってキャラクターや世界観に興味を持つ人が続出しているようです。テキストは藤澤が全部書いているのですが、これを読んでこのキャラクターがすごく好きになったという書き込みも多かったですね。

2017年の展望。「予言テスト」について

――来年の話に移りますが、この3カ月の見通しと、その先についてお聞かせいただけますか?

藤澤氏: プレーヤーさんが遊びづらいと言っていることを、1つずつ解決していくことですね。

 予言テストは、予知したあとにすぐバトルをしなければならなかったのですが、バトル権利を貯めて続けて予知できるようにしました。直後は好評だったのですが、時間が経つと貯めた権利を消費するのがめんどくさいという声が上がってくる。だから今度はこれを消費しやすくしようと。村上春樹が言う、どこかを直すと次におかしいところが気になってくるポンコツ車、という感じです。

 ただ、プレーヤーさんがやってほしいことだけをやればいいわけではなくて、想像もしなかった面白さを提案することがもう片方の使命です。そっちも抜かりなく準備をしています。

――バージョンアップにおけるマイルストーンはありますか?

藤澤氏: これはスマホゲームに限らないですが、サービス開始直後はプレーヤーさんからのご意見も多いので、それに追いつくように僕らもフル回転で対応をしてきました。ですが、9カ月経ちましたので、そろそろじっくりと作り込んでいくフェイズに入ったと判断しています。今後はだいたい2カ月に1回のバージョンアップをしていくことを目標にしています。

 「バージョン2.2」では、予言テストの仕様を大きく変えて、より刺激的に、より手軽にしたいと思います。遊びの仕組みはかなり完成してきていますが、予言テストの出題数は今後むしろ減らしていきます。そのかわり当たったときにすごくうれしいようにメリハリを付けたいと思っています。

 「バージョン2.3」が出る4月には、大アルカナというレイドボスがついに全種登場を終えます。その辺りでゲームとしてもちょうど1周年なので、バトルの仕様を大きく見直そうと考えています。要素を足したり、より攻略性が高く、より戦略性が高い機能を入れていきます。「バージョン2.4」以降は今のところ大きくは決まっていないです。

魅力的なストーリーも同作の大きなポイントの1つ。藤澤氏がすべて手掛けている。縦書き表示なのも小説を読んでいるかのようで楽しめる

――ストーリーで何か変わることはありますか?

藤澤氏: これ以上要素を足すとパンクしてしまうので、、新要素については予定はありません。第11章の次は12章、13章と堅実にやっていくことを目指します。ストーリーをなるべくお待たせしないようにアシスタントも入ってもらったので、頑張ろうと思っています。

――1周年のリアルイベントに関して教えていただけますか?

藤澤氏: まだちょっと時間があるので、色々と仕込んでる最中です。来ていただける方もそうでない方も同じように楽しんでもらえるように、自分たちの身の丈に合った、自分たちらしいリアルイベントにできたらいいなと思います。

――「予言テスト」については何か予定していることはありますか?

藤澤氏: 「アンケート」という機能ができたので、それを使ったこんな遊びどうでしょうという提案をしていきたいと思います。

 「予言テスト」を1日4問するのは、少し多いかなという印象を持つようになってきたので、今後は3問にしていこうと思っています。上限予知数も今後は原則3点にしようと。今は4×4で1日に16回予知をしますが、3×3で9回、ほぼ半分になる。予言テストは僕たちの一番大切なコンテンツですが、今後はプレーヤーさんの時間を取り過ぎないようにする調整が必要な時期になってきたと思っています。

――テストは、実際にやってみて悩むという時間が発生することを考えると、たくさんあると重いなというイメージがありますね。

藤澤氏: 逆説的に言うと、「1つずつじっくり考えてられないよ」ということですよね。これは僕らが望む姿ではない。談話室ができたり、バトルも充実したりという状況なので、予言テストの数は減らしてもいい段階だろうというのが今の我々が考えている方向性ですね。

2017年、大アルカナとのバトルについて

――大アルカナについては、プレーヤーさんには楽しんで頂いている感じですか?

藤澤氏: 大アルカナは人を選ぶコンテンツだと思います。時間もそうですし、あまりに強すぎて自分がやるものではない、となってしまうこともあると思います。

 もちろん性格によって、瞬殺されたからやる気になる人もいれば、きついからやらないという人もいると思います。熱心に大アルカナをやっている人は、おおよそ半分くらいでしょうか。これはすこし少ないなと思うので、もっと大アルカナを面白く、遊びやすくするかたちにしていこうと思っています。

 9カ月もサービスを続けているので、もちろんトッププレーヤーさんたちも大事にしなければいけないのですが、新規プレーヤーも今後増えるはずなので、そちらにも等しく力を入れていこうと思っています。

――大アルカナを使った競技性のあるコンテンツとかイベントとかも視野には入れているのでしょうか?

藤澤氏: 任意に大アルカナと戦えるコンテンツは想定しています。例えば、自分が呼び出した大アルカナにフレンドが参戦してくれる、といったようなスタイルです。

 あと、生放送でバトルがあると盛り上がるので、そういった機能も強化していきたいと思っています。4月のバージョンがバトル強化バージョンなので、そのあたりにはそういう機能も作れたらなと思っています。

――今後について、運営的に何かコメントはありますか?

木村氏: アルカナというキャラクターは、やはりプレーヤーさんが好きでいてくれて、育てることで愛着も湧いてくる。それに強いアルカナも欲しい。その中でお気に入りのアルカナも出てきます。ですので、アルカナの育成の方もできるようにしていこうと考えています。

藤澤氏: 例えばアルカナに装備ができたり、自分なりのアレンジができたらいいなと。より攻撃力の高い、同じキャラクターでも人によって個性が出せるとかですね。

――キャラクターとストーリー、予言テストが「FTA」の3本柱ですが、どこに引かれてプレーヤーさんは入ってくるとお考えでしょうか?

藤澤プロデューサーは「FTA」だけにある要素は「予言テスト」と語り、この要素を大切に考えているという

藤澤氏: ここがプレーヤーさんが濃く遊んでいる、あるいは捨て置かれている、みたいなところはないと思っています。

 それでも、僕たちの最大の特徴は「予言テスト」です。バトルやストーリーはどのゲームにもありますが、「予言テスト」は僕たちしか持っていないものなので。

木村氏: 1年を振り返ると、時期によって注目された遊びが違ったように感じています。最初はストーリーの反応がすごく良くて、中期ぐらいに「予言テスト」にバリエーションが出てくる頃には各所で話題にもなりました。この頃からちょっとずつ、外でも予言者育成学園という名前を聞いたことあるとか、予言テストに出題させていただいた企業さんやイベント主催者さんから反応があったりということが出てきました。

 最近は、キャンペーンなどで強いアルカナを入手できるようになり、レイド戦でも高得点を出す人が増えたと同時に、戦略を練るような話題が増えました。大アルカナに対してこのメンバーで挑んだらいいんじゃないか、みたいな話がずいぶんと活発に行なわれるようになってきました。どの遊びも注目してもらっていると思うのですが、そういう傾向が出てきているのかなと感じますね。

今後のコラボ展開や「予言テスト」について

インタビューは2時間ほどにも及んだ。「予言者育成学園」への熱い想いを語っていただいた

――コラボは今後どうなりますか?

藤澤氏: 今のところは、いくつか準備中です。最近「うちの商品が問題になっていて、せっかくだから一緒にやりませんか?」と、ともすれば怒られてもおかしくないような所からお声がけいただくことが増えてきました。ありがたいです。

木村氏: コラボとは違いますが、プレーヤーさんもゲームを広めてくれているんです。予言テストで出題されているグルメイベントに足を運んでくれて、イベント会場で人気のメニューを確認して会場の様子を実況してくれたこともあります。

――この問題は盛り上がったというのはありますか?

藤澤氏: この間、ノーベル文学賞を取ったボブ・ディランが、ノーベル賞選考委員を無視しているのが個人的に面白くて、いつコンタクトをとるのかを問題にしようと提案しました。多くの人が、最後までコンタクトを取らないだろうと思っていたと思うのですが、問題を出した当日にコンタクトをとったということがありました。

木村氏: それですぐ、SNSが盛り上がってましたね。まさか連絡とった? みたいな。

藤澤氏: 他にも、北海道で初雪が降るのはいつ? という問題も、出した当日に降りましたから。答えが判明してしまっている問題が、数日出されたままになるという。

木村氏: その辺は予言テストはいきものっぽいところがあって、いつ答えが出るかわからないというのは醍醐味のひとつでもあると思います。

 私もそうなのですが、出題されている問題に対してみなさんよく調べていますね。どこにヒントがあるかとか、周りがどういう話をしているかとか、調べて答えに近づいていく。答えがわかってしまっている場合も、自分で調べて知ることができる情報の1つなので、そこも含めて楽しめるようになっていると思います。

藤澤氏: 今の時期だと「レコード大賞」とか、1年の総決算的な問題が続々と出てきます。

 あと年末ってみんなテレビ見る機会が増えるんじゃないかと思います。今後しばらくはそういう問題が多くなるので、みんなでテレビを見ながら楽しんでもらえればと思います。

――最後にひとことお願いします。

木村氏: このゲームの1番面白いところは「予言テスト」であり、唯一無二の遊びです。予知しているときの面白さをもっと多くの人と共有できるような場を作っていきたいと考えてますので、来年はさらなる「リアル連動」を目指したいです。いつも私たちを支えていただき、ありがとうございます。今後も、予言者育成学園をよろしくお願いします。

藤澤氏: プレーヤーさんあっての「予言者育成学園」だと、日々思っています。自分個人としては、今くらいの規模でプレーヤーさんと一緒にやっていけたら幸せだなと思っていますが、もっと大勢で盛り上がれるゲームに育てていくことも使命だと思います。来年は、今年以上にアイデアあふれる施策を打って、あの手この手で皆さんに楽しんでもらえるように頑張りますので、引き続き、終わらない学園生活を楽しんでいただければいいなと思います。

――ありがとうございました!